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「…でも、本当にもう秘密にしなくていいの?
からかわれるの嫌なんでしょ?」
「うん…。
だけど、恥ずかしいのは少しだけ我慢すればいいことだし…」
「我慢か~。
僕は、すっごく嬉しいけどね」
「え?」
「これからはいつでも水野さんと話ができるし。
それに、僕の彼女だってみんなに自慢できる」
僕はいたずらっぽく笑った。
「………………」
水野さんは目を大きく見開いて、それからぽつりとつぶやいた。
「……………ずるい」
「え?」
「小崎くんって、口がうまい……」
「ぇえ??」
「……いつも、私ばっかりドキドキしちゃう……」
「え…?そんなことないよ……」
僕は焦って言葉を探す。
「…あ!
でもほら、僕も、水野さんがピアノ弾くのをいつもきれいだな~って見とれてたから、おあいこだよ。ね?」
「え?」
水野さんが驚いた。
「きれいって…曲が、って意味じゃなかったの?」
「水野さんがピアノをひく姿が、だよ」
僕は照れながら笑って答える。
「……………………………やっぱり、ずるい」
またも言われて、僕は困ってしまう。
「え~~~?
だって、本当にきれいなんだよ…」
「だから……。
もう。しゃべっちゃだめ!」
水野さんは僕がなにか言うのを遮って、僕の口の前に右手をだして『やめて』みたいな仕草をした。
「ええ~?」
僕はどうしたものかと困って、ポリポリと頭をかく。
しゃべるなといわれても…
「せっかく今一緒にいるんだから、しゃべりたいんだけど…」
そう言うと、水野さんはじっと僕を見つめてから、うつむいた。
そのまま、顔を上げない。
「……水野さん?」
僕はちょっとかがんで彼女の顔を覗き込む。
「なんで黙ってるの?」
また拗ねてるんだろうか…?
すると、彼女は小さな声で言った。