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sweet time  作者: さや
3/10

そして今日も、30分間の練習が終わった。


クラスメートが少しずつ音楽室を出ていく中、僕はピアノのところまで行って、水野さんに話しかけた。


「お疲れ様。

すごかったね!ピアノ」


「………え?」


「すごくきれいだった」


僕がそう言うと、彼女は頬を染めて小さな声でうつむいて言った。


「そんなこと………まだちょっと間違えるし…」


「そうなの?

全然わからなかったよ」


「でもすごいね~。

僕、『ねこふんじゃった』もまともに弾けないから」


「…そうなの?」


「うん。

今度教えてくれる?」


「ふふ…。

いいよ」


水野さんは『ねこふんじゃった』にウケたようで、明るく笑った。

やった!

学校で久しぶりにみた彼女の笑顔に、僕は心の中でガッツポーズをした。


「なになに、二人なんか仲いいよね。

もしかして、付き合ってるの?」


僕たちがピアノの前で談笑していると、クラスの女子がやってきた。

明るくてよくしゃべる、ちょっと世話焼きな子だ。


「ち…違うの!!

ちょっと話してただけ」


水野さんが赤くなって慌てて否定する。

そんなにバッサリと強く否定しなくても…。

僕はちょっとショックを覚えた。


「え~。

そんなに一生懸命否定したら余計にあやしいなぁ」


その子は空気を読まずに楽しそうに水野さんをからかう。


「本当に!

別に、小崎くんとはなんでもないから!」


水野さんはさらに力いっぱい否定した。

そんなに否定すると、逆に疑われるって…。


「…水野さんの言うとおりだよ。

本当に僕たち、付き合ってるわけじゃないから」


僕は仕方なく彼女に助け船を出した。


「ふーん。そうなんだぁ。

ごめんね。勘違いしちゃって」


その子はそう言ってテヘッと笑うと、友達と帰って行った。


後には気まずい感じの僕たちだけが残る。


「じゃあ、僕、美術部いくから…。

今日は遅くなりそうだから、先に帰っていいよ」


僕は周りに聞こえない程度の小さな声で水野さんにそういうと、美術室に向かった。

最近は僕が終わるのを彼女が待っていてくれて、一緒に帰るというのが普通になっていたが、今日はなんとなくそういう気分になれなかった。

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