3-29 第一次カロン銀河連合エルドル星系沖宙戦 日本視点
2か月に一度あるかないかのレベルで筆がのっとる。
時と場所は変わり、約50時間前 カロン銀河連合 国境線 エルドル星系
そこには日本国自衛隊第4主力連合艦隊とアメリカ、ドイツ、そしてスウェーデンの艦隊が粛々と戦闘の準備を開始していた。
第4主力連合艦隊旗艦である超神弩級戦艦「伊勢」
全長数キロメートルにも及ぶ巨体は、まるでひとつの要塞のように静かに宙に浮かび、周囲の空間に圧倒的な存在感を放っていた。
「各戦隊、配置完了」
艦橋に響く報告は簡潔だが、そこに一切の迷いはない。
戦術モニターには、幾何学的に整列した艦隊陣形が映し出されている。
前衛にはドイツ連邦宇宙艦隊の重装甲巡洋群。
中衛にはアメリカ機動宇宙打撃群の高速打撃部隊。
側面をスウェーデン宇宙防衛艦隊の精密射撃艦隊が固め、
その中央奥――
日本第4主力連合艦隊が、静かに主砲を沈黙させたまま構えている。
まるで巨大な弓が、弦を引き絞ったまま放たれる瞬間を待っているかのようだった。
「カロン側、国境防衛艦隊を展開中」
索敵担当が告げる。
「敵艦影数……増加。現在確認数、二千を突破」
艦橋の空気が、わずかに重くなる。
だが、誰も動揺しない。
それは、この艦隊にとって想定内の数字だった。
「こちら米第2機動打撃群旗艦。「エンタープライズ」」交戦プロトコル、共有する」
通信が開く。
すぐに別回線。
「ドイツ連邦宇宙軍、シールド構築完了」
「スウェーデン艦隊、射撃同期準備よし!」
各国の声は短く、的確で、そして揺るがない。
「……よし」
伊勢艦長が、ゆっくりと立ち上がる。
その動きだけで、艦橋全員の意識が一つに収束する。
「第4主力連合艦隊、戦闘態勢へ完全移行」
「主砲、第一〜第八砲塔、起動」
重い機械音が艦内に響く。
装甲の奥深くに格納されていた主砲塔が、ゆっくりと展開していく。
一門一門が、都市を…いや国を一撃で消し飛ばせるほどのエネルギーを秘めた砲だ。
それが八基。
そして副砲、対艦ミサイル群、RA、すべてが一斉に起動する。
「敵艦隊、前進開始!」
スクリーンに、赤い光点の壁が迫る。
まるで、星の海そのものが押し寄せてくるようだった。
その瞬間。
伊勢艦長は、静かに言う。
「全艦隊へ通達」
通信士が回線を全域に開く。
「各員の奮闘を願っている!」
一拍。
「地球圏へ向かう本隊の帰還時間を確保する」
「我々はここで、カロン銀河連合を食い止める」
その言葉に、どの艦からも異論は出ない。
なぜなら全員が理解しているからだ。
ここでの戦いは――
“帰還を成立させるための戦い”だということを。
アメリカ艦隊司令が笑う。
「時間稼ぎじゃつまらんぞ!
どうせなら敵の首を掻き切ってやろうではないか!」
ドイツ艦隊司令は短く応じる。
「防衛線の維持は簡単に出来るからな」
スウェーデン艦隊司令は淡々と。
「精密射撃で敵中枢を削る」
そして最後に――
伊勢艦長が言う。
「日本第4主力連合艦隊――前へ」
次の瞬間。
宇宙が、閃光で満たされた。
ドイツ艦隊の重粒子砲が一斉に放たれ、
アメリカの高速打撃群が光速を超えて敵陣へ突入し、
スウェーデン艦隊の精密ビームが指揮艦を正確に撃ち抜く。
そして。
遅れて、しかし圧倒的な存在感で――
「伊勢」主砲、発射。
八つの光柱が、一直線に敵艦隊中央を貫いた。
それはまるで、宇宙そのものに亀裂が走ったかのような光だった。
爆発。
崩壊。
連鎖誘爆。
敵艦隊の前列が、一瞬で消滅する。
だが、それでもなお後続は止まらない。
むしろ怒涛のように押し寄せてくる。
「敵第二波、接近!」
「いいだろう!」
伊勢艦長は、わずかに笑った。
「作戦目標を時間稼ぎから敵艦隊の全滅に変更!」
「全艦――迎撃開始」
その戦いは、50時間続くことになる。
地球へ帰るための、
最後の壁を支えるための、
静かで、激烈な防衛戦がはじまった。




