3-14 確保
今回もー雑にー行ってしまったー
ロンドリウス旧大統領府地下、非常用統制区画。
爆発の余震が、何度目か分からない揺れとなって壁を叩いた。
照明は半分が落ち、非常灯だけが赤黒い影を作っている。
「……外はどうなっている」
椅子に深く座った男――ロンドリウス大統領は、側近に低く問うた。
「確認中です。ただ、上層部との連絡が……」
その言葉は、途中で途切れた。
――ドンッ。
地上とは明らかに違う、鈍く重い衝撃。
直後、天井から粉塵が降り注ぐ。
「な、何だ今のは!」
「上だ!上から来てる!」
次の瞬間、轟音と共に天井が“正確に”破壊された。
破壊は乱暴ではない。
必要最小限。計算された一点突破。
砕けたコンクリートの隙間から、黒い影が降りてくる。
ロープ降下。
一人、二人、三人。
暗視ゴーグル、完全武装、識別パッチは最小限。
だが、その動きには迷いが一切なかった。
「――自衛隊だ!」
誰かが叫ぶ。
「全員動くな!」
日本語訛りのない、はっきりした英語。
同時に、銃口が一斉に向けられる。
威嚇射撃はない。
だが、引き金が“いつでも引ける”角度だった。
「大統領、こちらを向いてください」
先頭の隊員が一歩踏み出す。
「抵抗しなければ、誰も撃たれません」
側近の一人が震える声で叫ぶ。
「ここは主権国家だぞ!侵略行為だ!」
「侵略ではありません」
即答だった。
「国際難民保護条約および大量虐殺防止条項に基づく、身柄保護です」
「……保護、だと?」
「はい。あなたは“保護対象”になりました」
大統領の顔から、血の気が引く。
その背後で、別動班が迅速に動いていた。
通信機器の確保、記録媒体の回収、警護兵の武装解除。
誰一人として、無駄な動きをしていない。
「対象確認」
隊員の一人がタブレットを確認する。
「顔認証一致。DNA簡易スキャン一致」
「よし」
先頭の隊員が合図を出す。
「大統領、立ってください」
「……拒否する」
一瞬、空気が張り詰める。
だが次の瞬間、大統領の腕が後ろに引かれた。
「っ!」
「抵抗は記録されます。やめてください」
手錠――いや、拘束具が装着される。
衝撃吸収と神経制御を兼ねた最新式だ。
「これで終了だ」
隊員が短く告げる。
上空。
ローター音が重なり合い、夜空を切り裂く。
複数の輸送ヘリが、正確な間隔でホバリングしていた。
地下から引き上げられた大統領は、フードを被せられ、無言でヘリに乗せられる。
「対象、確保」
「こちら了解。離脱準備」
ヘリは即座に高度を上げる。
追撃も、妨害もない。
地上ではまだ戦火が続いている。
だが、この一点だけは、すでに終わっていた。
管制回線に、淡々とした報告が流れる。
「――ロンドリウス大統領、身柄確保完了」
誰も歓声を上げない。
それが“仕事”だからだ。
ヘリは夜の向こうへ消えていった。
ロンドリウスの運命を、そのまま運びながら。




