3-7 別の星の誰かの通信
あけおめ!!
今年もよろしくお願いします!
惑星テラーズ軌道上。
蒼白色の恒星光に照らされた巨大な艦隊基地で、通信士官たちがざわついていた。
「……本当に、あの惑星か?」
銀灰色の肌を持つ青年士官が、震える声でスクリーンを見つめる。
「ああ、間違いない。第三観測群が確定データを送ってきた。
プライムスと呼ばれる惑星だ。」
光の粒子が立体映像に変換され、そこには――
大気圏から上昇する巨大な影。
そして、黒鉄色の船体に日の丸を輝かせた「宇宙戦艦」が映っていた。
「……冗談だろ。あの文明、ついこの間まで惑星表面から出られなかったはずだよな?」
「観測記録でも、恒星間航行技術の保有は“未確認”だったはずだ。しかも調査として送っていたRAが一機消息を絶っている…」
騒ぐ室内に、低い声が響く。
「全員、静まれ。」
艦隊司令レウノスが入室し、映像を見据える。
赤い瞳に驚愕の色はない。むしろ、興味を持っていた。
「……確かに観測されたのは“宇宙戦艦”だ。しかも重力制御を使用している。
技術水準は――我々の第二級連邦艦に匹敵する。」
「第二級!? まさか、プライムスの文明が……?」
驚く部下に、司令は淡々と告げた。
「これは“進化”ではない。“誰かが介入している”。そう考えるべきだろう。」
場が重く沈黙する。
そこで通信士官が声を上げた。
「あの、司令……観測チームから緊急通信です!」
「繋げろ。」
通信回線が開き、重い息と共に声が響いた。
『こちら第三観測群……! プライムスで強力な索敵波を確認!おそらく我々を……捕捉されました!』
「なに……!?」
直後、映像の中でプライムス星の宇宙戦艦艦首が――ゆっくりと観測機の方へ旋回した。
『司令! 彼らはこちらを“敵”と認識していないようですが……
完全に監視されています!』
レウノス司令は目を細めた。
「……面白い。“こちらの存在に気づいてなお攻撃しない”か。
ならば――」
彼は部下へ向き直った。
「外交評議会に送れ。『プライムスは、既存記録より遥かに高い技術力を保有。観測機を識別し、追跡可能。緊急に接触方針の再検討が必要。』これを最優先連絡でだ。」
「は、はい!!」
司令は続けた。
「それと……プライムスとの接触は慎重に行え。
“無礼な接触は、我々が滅びる未来を招く”と伝えておけ。」
その声には、畏怖すら滲んでいた。
最後に司令が静かに呟く。
「――辺境の惑星“プライムス”。
我々は、とんでもない存在を見落としていたのかもしれんな。」
通信は各惑星政府へと一斉に送信され、銀河に新たな緊張が広がり始める。
夜の東京湾岸。
人の気配はなく、政府通信タワーの屋上には、日野大政の姿だけがあった。
風がコートの裾を揺らし、
彼はゆっくりと空を見上げる。
肉眼では何も見えない。
だが――彼は確信していた。
「……そこにいるんだろ。」
テラーズ星の観測艦。
この星プライムスを、はるか上空から冷たく眺めている存在。
日野は無言で片手をポケットに入れる。
残った手をゆっくりと持ち上げ、指で“銃の形”を作った。
親指が引き金。
人差し指が銃口。
ただそれだけなのに、動作には異様な重みがあった。
空を見上げる彼の目には――
夜空の星々が映り込み、
まるで“銀河そのもの”が宿っているかのように光っていた。
「……この星を観測するのは勝手だ。」
囁くような声だった。
しかし、その言葉は空気を震わせるような冷たさを持っていた。
「だがな。下にいる俺らを、ただの対象として見るなら――」
彼は狙いを定めるように指先をゆっくりと動かし、
観測艦がいると推定される一点へ向けて、静かに“銃口”を向けた。
風が止む。
夜が、息をひそめる。
「こっちも……見てるんだよ。」
そして、親指が軽く下がる。
「――バン」
乾いた一言。
発砲音の代わりに、夜空へ吸い込まれていくような小さな響きだった。
もちろん弾など出ていない。
ただのジェスチャーにすぎない。
それでも――
その瞬間、遠い宇宙のどこかで、観測者たちの心臓が跳ねたような気配があった。
日野は手を下ろし、またポケットへ戻す。
無表情。
しかし瞳の奥では、銀河が静かに回転していた。
「観測者でいたいなら、勝手にすればいい。でも……」
夜空に視線を向けたまま、彼は小さく笑った。
「“人間が黙ってる”なんて思うなよ。宇宙人さん。
あんたらが見てない場所も我らはいる…」
その言葉は風に溶け、静かな夜の中へ消えていった。
ただ一人。
銀河を宿した目の首相だけが、遥かな宇宙と遥か彼方にあるであろう地球をその目で見つめていた。
今九州いまーす!うぇーい!
ちなみにここに登場してる宇宙戦艦は改造された韋駄天だったりする。




