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未来の日本 異世界に転移する  作者: 青識
3章 未来日本 新たなる大陸と遥か彼方の動乱

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3-5 会議は踊るし進みます 後編

議題が自然災害から医療分野へと移る頃には、会議室の空気はようやく「国際会議らしさ」を取り戻していた。


軍艦がどうだ、砲門がどうだと怒鳴り合っていた面々が、いまは資料とにらめっこをしている。


議長が新しい文書を取り上げ、咳払いした。


「では続いて……議題四。『医療体制の国際標準化と連携』について、討議します。

この議題は、日本代表からの提案に基づき設定されました」


どよめき。

また日本だ。


鷹津外務副大臣は、周囲の視線を受けながらゆっくり立ち上がる。


「ほな、続けて話させてもらいます」


鷹津は指を一本立てて言った。


「まず前提から言わせてもらうで。医療は、どこの国やろうと命を守る最後の砦や。

軍事や経済で対立しても、医療だけは協力せなあかん」


その言葉には、誰も反論できない。


鷹津はスライドを切り替えた。


「今回、各国の医療現場を視察させてもらったけど……正直に言うと“危ない”国が多かった」


場内が気まずい空気に包まれる。


「まず感染症対策。

外科器具が再利用されとる国もあるし、消毒が行き届いてへん場所もあった。

医師の負担が多すぎる地域もある」


ブランズ連合国代表が手を挙げる。


「日本……率直な意見だが、確かに我々は医療に関して後進国だ。

しかし、なぜそこまで詳しく視察していた?」


「そら、事前調査や。自然災害と医療は切り離せんからな」


ドルート帝国大使が苦笑した。


「……またしても、日本が一番準備が良いというわけか」


「いや、そんなつもりやあらへん。ただ、うちは“助け合える仕組み”を作りたいだけや」



国際医療協力ネットワークIMCMの創設


鷹津はポイントを示しながら説明した。


「内容はこんな感じや。

疫病や感染症の発生を、加盟国同士で早期共有すること。

各国の医療技術者を交換し、教育し合うこと。

大規模災害時は、救急医療チームを相互に派遣できること。

ワクチンや薬品の生産を共同で実施する体制の検討。

“医療を外交カードに使わない”国際条約を結ぶこと」


会議室がざわめいた。


「医療を外交カードに使わない」


この世界ではほとんど存在しない価値観だった。


アングロム王国の使節が恐る恐る挙手した。


「医療を……武器にしない、という意味か?」


「せや。

医療品の供給を止めて交渉カードにするとか、ワクチンを外交駆け引きに使うとか、そういうことは絶対にしたらあかん」


場内に、深い静寂が落ちた。


攻撃されたら反撃する国があっても、病人を見捨てる国は存在しない。


その圧倒的な“正しさ”に、反論が出ない。



ブランズ代表が尋ねる。


「日本は……医療技術を他国に開示するつもりなのか?」


鷹津は少しだけ笑った。


「そら全部は無理や。けど、基礎の基礎は共有できる」


「基礎の基礎……?」


「例えば、衛生管理の方法、手洗い、消毒の仕組み、救急搬送体制の整備……

こういうのは技術というより、“知識”の問題や」


場内の表情が徐々に明るくなる。


アングロム王国の代表が頷いた。


「それだけでも……我々の国は多くの命を救えるかもしれぬ」


「せやろ?医療はな、知識があるだけでそれだけで助かる命が増える分野なんや」



ドルート帝国大使が質問した。


「日本……もし大規模災害が発生した場合、そなたらの“救急医療チーム”を派遣してくれるのか?」


「状況次第やけど、可能性はある」


「しかし……」


大使は恐る恐る続けた。


「日本の医療は……我々と比べてあまりにも進んでいる。それを我が国に貸してくれれば……まるで支配されたように見えてしまうのでは?」


鷹津はきっぱり言い切った。


「そう思われたくないから、共同組織にするんや。

 ――“貸す”んやない。“一緒につくる”。

 そのほうが対等で、長続きする。」


ドルート大使は目を見開いた。


「……なるほど」


場内が再び静まる。


日本の言葉は、軍艦や経済力ではなく、“理屈”と“経験”によって信頼を勝ち取っていた。



「では、医療連携の枠組みについて……採択に向けた議論を続けましょう。

 日本代表案を基盤とし、各国から意見を――」


その瞬間、複数の国が一斉に手を挙げた。


「我が国も参加を希望する!」


「うちも医療技術者を派遣したい」


「医師の教育の場を設けてほしい」


「薬品の共同開発に興味がある!」


わずか半日前まで軍事で互いを威圧し合っていた国々が、いまは“医療”という共通の窓口で繋がろうとしている。


鷹津は小さく呟いた。


「……こういう会議なら、うちも悪くないな」


隣の外交官が笑う。


「副大臣、なんか……だいぶ楽しそうですね」


「まあな、国と国が喧嘩せんと、命を助け合えるなら……それが一番や」


場内の議論は、これまでにないほど前向きで、活気があった。

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