2-15 終戦会議 前編
プロローグが読みにくいので全て書き換えていきます。
日ノ本国代表団が国際連盟本部の大理石の広間に入った瞬間、空気がわずかに揺れた。
中央円卓、その正面。そこに座していたのは リ・カーン王国国王、カーン六世。
銀髪の王冠の下から覗くその双眸は、怒りと屈辱で燃え上がっていた。
周囲の各国代表“これはただの停戦協議ではない。王国の威信と、地球側の安全保障が正面衝突する場だ”
と悟り、息を呑んで沈黙した。
日本側は、
首相・日野大政
外務大臣・山口啓二
の二人が最前列に出る。
そしてリ・カーン王国の最後の足掻きがはじまった。
国際連盟事務総長が深刻な声で開会を告げた。
「本日は、日本国およびリ・カーン王国の戦闘終結と和平合意を協議するための特別会合です。」
日野大政首相はゆっくりと立ち、日本としての正式な戦況報告と終戦条件を読み上げた。
隣には山口外務大臣。資料を手に淡々と状況を説明する。
「…以上が今回の戦闘における日本側の行動と被害状況です。
王族お二人の身柄は日本国の監視下で保護しています。
捕虜ではありません。」
淡々とした口調だったが、王国側にとってはその言葉すら侮辱だった。
王はゆっくりと立ち上がった。
「保護だと?」
低い声が議場に響く。
「私の子らを拘束しておいて、保護と呼ぶのか。」
周囲の王や各国代表はざわついた。
カーン六世は席を離れ、演壇に歩み出る。
「我が都市は焦土となった!」
「民は泣き叫び、騎士たちは瓦礫と共に沈んだ!」
「王族は捕らえられ、王国の誇りは踏みにじられた!」
杖を強く叩く。
「これを“終戦処理”と呼ぶとは、あまりにもおぞましい!」
大議堂に怒号が反響する。
他国代表が立ち上がる。
「日本の行動はやりすぎだ!」
「国王陛下の言はもっともである!」
「民間人の被害が大きすぎる!一国の被害としては類を見ないぞ!!」
議場は一気に混乱し、議長であるアンドレアスが声を張り上げる。
「静粛に! 静粛に!!」
だが王は止まらない。
「王子殿下と皇女殿下を“拘束”しておきながら、何が保護だ!
王族を鉄格子に閉じ込めたまま、どうしてこれが正義と言える!」
諸外国の代表がざわつき、周囲の国王、大統領らも眉をひそめ、王国側擁護の声が次々と上がる。
「日本国の武力行使は常軌を逸している!」
「圧倒的技術で古代兵装を破壊し、王族を拘束するなど……国家の尊厳を踏みにじる行為だ!」
怒号と非難の声が連盟ホールに轟く。
事務総長が両手を広げて制止を試みるが、その声は抗議の嵐にかき消された。
日本側代表席の前に置かれた名札に向けて、王国側代理は指を突きつける。
「日本国よ、貴様らは都市を焼き払い、王族を枷につなぎ、なお“和平”を名乗るつもりか!
これほどの屈辱があろうか!」
日野首相は静かに言葉を選び、反論する。
「我々は戦闘行為を停止し、王族の安全を確保しているだけです。連盟の監視下に置き、保護措置として――」
だが、王国側の怒りはその説明を聞き入れようともしなかった。
「安全!?保護!?この世界の歴史で王族が他国に拘束された例など、ただの一度もない!
それを“安全”と言い換えるとは……どこまで我らを侮るのだ、日本国!」
拳を握りしめ、机に叩きつけるように声を上げる。
「それに!!我々の魔道騎士はただの守護者ではない。誇りそのものだ!
その誇りを土足で踏みにじり、古代より続く王族の尊厳までも奪った!
これは戦争ではない! 王国の魂を壊す暴挙だ!」
周囲の国々からも重い視線が注がれる。
「技術差は理解している。だが、だからといって王族を捕らえ、都市を壊すのは妥当ではない。」
「国際社会はこの事実を無視できない。」
議長が深い声で制す。
「王国側の怒りは理解する。しかし――」
しかしそこで王国側代理はさらにかぶせるように吠える。
「理解などしていない!
我々の国王カーン6世がこの場に参じているからこそ、王族を辱められた怒りは倍にも膨れ上がっているのだ!」
「……では、続けて我が国の立場を明確に述べます」
日野はまず低い声で、しかし圧力を伴って言う。
「貴国では私たちの国民の数十名の拉致・殺害は“些事”なのでしょう。
しかし我が国では、国民一人の命であっても守るべき対象であり、今回の王国による行為は、明白な“国家の敵対行動”です」
「その程度でわが国をどん底に落としたというのか?あまりにも横暴が過ぎる!!」
リ・カーン王国や諸外国が声をさらに荒げる。
だが日野はその声に勝る声を上げた。
「私は日本国の総理大臣として、自国民を守る義務がある。
そして私は、あなた方に何度も大使館を通じて“拉致を止めろ”と忠告してきたはずだ。
だが返答は“無視”の一点張りだった……」
日野の声は低く、押し殺した怒りがにじんでいた。
「それなのに──お前たちの国民が十万“ぽっち”死んだだけで、この騒ぎかよ……」
その瞬間、真っ先に反応したのはリ・カーン王国ではなかった。
別の第三国の代表が、机を叩いて立ち上がった。
「これ以上王国に何かあれば――日本国を地図から消し去る!!
国際社会は黙っていないぞ!!」
会議室に凍りつくような緊張が走る。
日野の声がそれまでの丁寧な口調から一変した。
その口調は完全に怒りに染まっていた。
「……黙れよ。
王国が最初に手を出さなきゃこんなことにならねえよ…」
第三国代表が凍りつき、椅子に崩れ落ちる。
日野はゆっくりとされど確実に言葉を続けた。
「“日本を地図から消す”? ──無理だ。絶対にな」
「リ・カーン王国に出撃した艦隊や部隊は、確かに我々の主力の一部だ。
だが“全部”じゃない。十数倍の艦隊が常時稼働してる。
それも数隻や数十じゃない数百だ。
その気になれば全世界相手に戦争しても、無傷で滅ぼせる程度の戦力はあるんだよ」
誰も息を呑むことしかできない。
「そもそも、この会議だ。
王国に“慈悲”を持たせるために開いたのは私だ。
正直、こちらはまだまだ余裕で戦闘継続が可能だ……」
日野は机に両手をつき、各国代表と王国代表を鋭く睨みつけた。
──視線をゆっくりと巡らせ、全員の顔を見下ろす。
「だから二度と言わせるな。
日本に“黙れ”なんて言う資格は、どこの国にもねぇよ」
プロローグとか初期のころの俺のやつ読んでると早く書き換えたくなってくる。




