2-1 日本国とムー
2章もよろしく!
4度くらい見返したり、文字増やしたら過去一の大作出来た
日本国首相官邸 大会議室
そこには内閣関係者はもちろん自衛隊の幹部などもその場にいた。
そして首相である日野大政が話し始める。
「さて今日皆さんに集まっていただいたのは今後の我々日本の身の振り方についてです。
我々は戦争という愚行に進んでしまった」
「異世界に飛ばされてから既に3か月が過ぎようとしています。世界も我々を認知し始めたはずです。」
その場にいた誰もが日野が言った事に沈黙を貫いた。
「だが我々はこの世界において一番の戦力を保有している。
だからこそ我らは今後戦争が起きた際の調停者としていれば良いのではないでしょうか?」
そういったのはまだ若い外務省勤務の官僚であった。
「ですがそれでは…」
誰かがそう言い切る前に大政が言った。
「何を馬鹿なことを考えている!我々は現在の艦隊のほとんどが調査団として宇宙に出向いている!
確かに自衛隊の力を使えばたやすいだがな…
それでは周辺国家と仲良くすることは出来ん!」
大政の声が会議室に響き渡る。
その言葉には苛立ちと、同時に重い責任を背負った者だけが持つ焦燥がにじんでいた。
「…我々は力を誇示するためにこの世界に来たのではない。
日本国民の生活を守り、この未知の世界で共に生きる道を探すためだ!」
外務省の若い官僚は一瞬、口をつぐんだが、再び意を決して口を開く。
「しかし、総理…この世界には我々の常識では測れぬ魔法が存在します。
魔法は氷の山などを出現させるなどのこの世の理を無視します。なのでもしかしたら人の心なども操る魔法があるのかもしれません」
その言葉に、防衛省統合幕僚長の神谷が深くうなずいた。
「確かに。周辺国家との友好を望むのは当然ですが、抑止力としての準備は怠るべきではありません。
艦隊が調査を終えて帰還するまでの間、防衛を強化すべきです。」
大政はしばらく黙考した後、ゆっくりと手を組んだ。
「…ならば、まずは接触した国家との国交を開く。
同時に、諜報と情報収集を徹底し、この世界の力の均衡を正確に把握する。
我々が戦争に巻き込まれぬためには、何よりも正しい情報と判断が必要だ。」
会議室の空気が、先ほどまでの緊張から、静かな決意へと変わっていくのを誰もが感じた。
そして、大政は最後に一言、低く呟いた。
「…我々は、この世界で二度と“愚行”を繰り返してはならない。」
首相である日野大政を慰めようと隣にいた外務大臣の山口武夫やまぐち たけおが話し始める。
「総理…」
重厚な椅子から身を乗り出すようにして、外務大臣の山口武夫が口を開いた。
年配ながら切れ長の目に鋭い光を宿し、その声は穏やかだが一言一言が重かった。
「総理、そのためにも今、我々は“存在の意味”を示すべき時です。
異世界の諸国は、既に我々をただの新興国とは見ていないかもしれません。
彼らにとって我々は、どこからともなく現れ、文明も軍事力も飛び抜けた“未知の大国”なのです。」
山口は手元の資料を軽く叩きながら続けた。
「恐れられれば孤立し、侮られれば飲み込まれる――この二つの道しかなくなります。
だからこそ、まずは信頼を築く。そして、その信頼が虚像で終わらぬよう、必要な場面では毅然と力を見せる。
これが外交の最初の一歩です。」
防衛省の神谷大将が静かにうなずく。
「…つまり、軍事的抑止と外交的友好の両立、というわけですな。」
山口は短く「その通りです」と答え、大政に視線を戻した。
「総理、もしお許しいただけるなら、私にこの世界の主要諸国への公式訪問の準備をさせてください。
彼らに“日本”という国を正しく知ってもらうために。」
大政は数秒、じっと山口の目を見つめた。
やがて、静かにうなずく。
「…やれ。だが、忘れるな。これは友好の旅であると同時に、我が国の覚悟を示す試金石でもある。」
山口の口元にわずかな笑みが浮かぶ。
「承知しております、総理。」
会議室の空気は、再び新たな緊張感と期待に包まれた。
この瞬間、日本の異世界での第二歩が、静かにだが確実に動いた。
数週間後
機械王国ムーの首都、セイラン国際空港。
滑走路脇に整列する儀仗兵の槍と旗が、淡い陽光を受けて輝いていた。
空港の一角には巨大な王国の紋章旗がはためき、歓迎式典の準備が整えられている。
日本政府専用機が静かに着陸し、タラップが接続される。
先頭に姿を現したのは、外務大臣・山口武夫。
濃紺のスーツに身を包み、一歩ずつゆっくりとタラップを降りる彼の背後には、外務省の精鋭スタッフやSPの姿が続く。
出迎えたのは、機械国家ムーの外務卿のレナード・アシュレイ。
金糸の刺繍が施された深緑の礼服に、短く刈り込まれた白髪の髭――年齢は六十を超えているが、その瞳は隙のない知略家の光を放っている。
「日本国よりお越しの山口武夫閣下、ようこそムー王国へ。
陛下と我が国民を代表し、心より歓迎いたします。」
流暢な日本語だった。すでに事前の言語交換プログラムが両国間で行われていた証拠だ。
山口は深く一礼し、握手を交わす。
「レナード卿、このたびは我々を快く迎えてくださり感謝いたします。
我々は、この新たな世界で互いの信頼を築くことを望んでおります。」
カメラのフラッシュが幾度も瞬き、各国報道陣がその瞬間を記録していく。
式典用のレッドカーペットを歩きながら、二人は低声で会話を続けた。
「山口閣下、貴国の技術力と軍事力は既に多くの国が知るところです。
しかし、ムー王国は力よりも協調を重んじる国。
我々は、日本が単なる“強国”ではなく、“信頼できる隣人”であると確信したい。」
山口は、わずかに笑みを浮かべながら応じる。
「そのために私は参りました。
我々の力は決して侵略のためではなく、互いの平和を守るためにある――そう信じていただけるよう、誠心誠意お話ししましょう。」
その言葉に、レナード卿はうなずき、視線を王都の遠くの塔へ向けた。
「あの塔が、陛下がお待ちになっている王宮です。
本日は公式晩餐の席が設けられております。
どうか、我が国の真意と文化を肌で感じていただきたい。」
やがて車列が動き出し、王宮へと向かう。
外の街並みには、西洋と東洋が融合したような異世界独特の建築が並び、石畳の道沿いには国民が旗を振っていた。
その中には、興味と警戒の入り混じった視線を送る者も少なくない。
そして彼らは同じ車に乗り非公式の会談が行われた
「山口閣下――」
レナードは低く抑えた声で切り出した。
「この会談、我が国にとってはもちろん、貴国にとっても容易なものではないでしょう。」
山口はその目をじっと見つめ、軽くうなずく。
「そうでしょうな。
我々がこの世界に現れた時点で、多くの国が日本を“未知の変数”として見ています。
しかし、我々にとっても同じ。ムー王国の真の意図は、まだ測りかねています。」
レナードはわずかに笑みを浮かべた。
「率直なお言葉、ありがたい。
では率直に申し上げましょう――陛下は、日本の軍事力を恐れております。
同時に、その経済力と技術力を羨んでもいます。」
山口は一瞬だけ沈黙し、そして慎重に言葉を選ぶ。
「恐れと羨望は、しばしば戦争の火種になります。
ですが、それは信頼で変えられるものです。
私の使命は、それを証明すること。」
レナードは歩を進め、車列へ向かいながら小声で続ける。
「閣下、貴国は“調停者”を名乗るつもりなのか、それとも“大国”として振る舞うのか――
それによって、この世界の勢力図は大きく変わります。」
山口は歩みを止め、真っ直ぐにレナードを見据える。
「その答えは、まだ我々の中でも定まってはいません。
だからこそ、こうしてお会いしているのです。
ムー王国が、我々の初めての扉――その役を担うのですから。」
その言葉に、レナードは短く笑い、車へ乗り込んだ。
「…ならば、扉を閉ざすのはお互いの愚行ですな。
では、王宮で続きを。」
こうして、日本とムー王国の本格的な関係構築への第一歩が、密やかに踏み出された。
後書き
えーとなんでムーと日本のファーストコンタクトを書かないのかと…
単純に思いつかなかったから…




