0−0プロローグ 2150年から2200
色々挑戦中…
2165年9月3日。
この日は後に、“人類史の座標が別の場所へ動いた日”として語り継がれることになる。
宇宙航空無人探索船 〈ビッド〉 が、
深宇宙の暗黒を切り裂いて送ってきた映像――そこに映ったのは、
明らかに“人が住んでいる”としか思えない惑星だった。
初報ではただの誤認とされたが、超大型望遠鏡 〈ヒュペリオン〉 による再観測が状況を一変させる。
惑星表面には、気候が安定した文明圏。
そして軌道上には――20世紀の国際宇宙ステーション ISS に酷似した構造物が漂っていた。
科学者たちは震え、軍は警戒し、各国の首脳は言葉を失った。
「これは、地球外知的生命体の確定情報だ」
わずか一行の報告が、世界の優先事項をすべて塗り替えた。
こうして“対星間文明プロジェクト”が非常態勢のもと発足する。
ビッドはその後も惑星の衛星軌道上に留まり続けた。
だが、その挙動は常に監視されていた――
それはその星の住民がすでに高度な宇宙技術を持つことを示していた。
「さらなる友人や隣人が増えるかもしれない」
そんな希望の中、地球はかつてない速度で技術革新を進める。
そして 2166年11月2日――
人類初の光速超越船 〈紅〉 が完成した。
核融合発電機を心臓部に、装甲は最新の AS装甲。
護衛としてRA 〈ポプラ〉、〈ネグラ〉 を搭載し、
さらに“対宇宙戦艦”を想定して開発された
電圧型超長距離用レールガン62式 を積載する。
従来のレールガンが装填5秒だったのに対し、
62式はわずか2秒。
初速も桁違いで、既存の宇宙戦力を完全に過去へ置き去りにした。
最高速度は 光速の2倍。
もはや人類は、星々の狭間をただ見上げるだけの存在ではなくなった。
2167年1月29日。
宇宙港に静かに立つ紅の姿は、
人類の夢と不安をその艦体に映していた。
パイロット、外交官、科学者――総勢62名。
彼らは自らを“星間時代の開拓者”と呼ぶことを拒んだ。
ただ「人類の代表」として、未知を恐れ、未知に挑んだ。
そして――飛び立った。
長い航海の果て、
2167年9月7日、
ついにビッドが発見した星へ到達。
落下軌道へ移り、大洋へ向けゆっくりと降下。
その後、艦はとある沿岸国家へと到着する。
その国の名は シース国。
惑星名は テラ と呼ばれていた。
最初に懸念されたのは“言語の壁”だった。
だがシース国の住民は、
英語とドイツ語が混じったような言語を使用しており、
意外にも意思疎通はスムーズに進んだ。
通行条約
安全保障条約
といった複数の国際協定を結び、テラを星間社会の“最初の友邦”と位置づけた。
任務を終えた紅は地球へ帰還。
その情報は、後の 超神弩級宇宙戦艦群 の基盤となり、
RAポプラとネグラの名は後に続く カタストロフ級RA へと受け継がれていく。
■ダークマターの“解放”
2172年1月2日。
宇宙探査史を揺るがす第三の革命が起きる。
――ダークマターの発見。
それは驚くほど微細で、自分たちに触れると透明化する。
この性質ゆえ、今まで“存在していながら見えなかった”物質である。
さらにダークマターは常に同じ大きさで分裂を続ける 特性を持つ。
この不可思議な挙動に魅せられた研究者たちは
DRE Dark-matter Research Establishmentを設立。
以後、DREは数ある宇宙研究機関の中でも最重要機関として稼働し続ける。
■透明化技術の確立と“ミスト”
2180年。
DREはついに“ダークマター透明化実験”に成功する。
しかし人間へ装置を取り付けるには危険が大きかった。
そこでまずRAに搭載したところ、効果は予想以上だった。
透明化完了速度――高速。
透過率――98%。
熱探知――完全無効化。
まさに“見えない巨人”。
このRAは後に 〈ミスト〉 と呼ばれ、
宇宙戦略の概念を塗り替えることになる。
カタストロフ級RAの初めての誕生である。
2190年。
人類は新たな恐れを抱く。
もし次に出会う生命体が、テラのように英語系統の言語を持たなければ?
もし一言も通じなければ?
もし意図せぬ誤解で戦争が始まったら?
その危機を回避するために生まれたのが
自動翻訳機 である。
これは単なる道具ではない。
未知の文明と向き合うための“最初の盾”であり、
同時に“最初の架け橋”となった。




