3-39 強者vs最恐
ラグナライン崩壊後 ドルマリス西部戦線中枢宙域
補給線を失ったドルマリスは、沈黙しなかった。
むしろ逆だった。
「――切り札を出す」
司令部の奥深く、封印されていたハンガーが開かれる。
そこに眠っていたのは、ただの兵器ではない。
戦略兵器級RA
全高120m
黒銀の装甲に覆われた巨体。
名を――
《ゼル=ヴァルガ》
ドルマリス宇宙連合、最強RA。
そしてその搭乗者は――
「……久しぶりの戦場だな」
ドルマリス最強の戦士、ヴァルグ・ゼルド
数十の戦場を単機で壊滅させてきた戦場喰らい。
その視線の先には、ただ一つ。
「地球圏の“氷帝”……」
宙域E-17 迎撃ライン
地球圏艦隊が前進するその進路上。
空間が裂ける。
黒い閃光。
《ゼル=ヴァルガ》出現。
「敵巨大RA、1機確認!」
「質量、氷帝を上回ります!」
艦橋に緊張が走る。
だが――
紀晴は静かだった。
「……来たか」
通信を開く。
「氷帝」
出撃
格納庫。
巨大な影が一歩、踏み出す。
「了解」
短い返答。
「氷帝」が再び宇宙へと出る。
その正面に、黒き巨人。
静寂。
先に口を開いたのはヴァルグだった。
「貴様が“氷帝”か」
衛騎のパイロットが答える。
「そう呼ばれている」
「ならば――試させてもらおう」
次の瞬間《ゼル=ヴァルガ》が消えた。
次の瞬間、衛騎の側面に出現。
音速を超える速度で放たれる重斬撃。
だが――
「見えている」
衛騎が片腕で受け止める。
装甲が削れる。
だが止めた。
そのまま反撃。
「重力打撃」
拳が空間ごと叩きつけられる。
ゼル=ヴァルガが後退。
だが体勢は崩れない。
「いいな……!」
ヴァルグが笑う。
能力解放
「重力制御……だけではないな」
ヴァルグの機体が赤く輝く。
「――空間断裂駆動、起動」
ゼル=ヴァルガの周囲に黒い亀裂が走る。
それは“空間そのものを切り裂く刃”。
一閃。
衛騎の右腕装甲が切断される。
「……やる」
衛騎は後退しない。
「氷帝領域、最大展開」
戦域温度が極限まで低下。
空間の運動が鈍る。
その中で、氷帝だけが動く。
両者が同時に踏み込む。
拳と刃。
重力と空間断裂。
衝突のたびに、宇宙が歪む。
ゼル=ヴァルガの斬撃が肩を裂き、
氷帝の重力打が胸部装甲を凹ませる。
互角。
完全な互角。
「空間断裂駆動――第二段階」
ゼル=ヴァルガの装甲が裂けるように開き、内部から赤黒いエネルギーが噴き出す。
機動速度が跳ね上がる。
一瞬で背後。
斬撃。
衛騎の左脚部が切断される。
「損傷率、42%!」
警報が鳴り響く。
だが、追撃は止まらない。
連続する空間断裂の刃。
肩部、腰部、背部ユニット。
次々と削がれていく。
「……速いな」
紀晴の額に汗が浮かぶ。
氷帝領域を最大展開してもなお追いつかない。
(奴は、重力そのものの制御に割り込んでくる……)
空間断裂
それは単なる攻撃ではない。
氷帝の支配領域を、内側から切り裂いてくる。
ヴァルグが吠える。
「終わりだ、氷帝!」
ゼル=ヴァルガが上空に跳躍。
両腕に巨大な断裂刃を形成。
「空間断罪斬」
振り下ろされる、必殺の一撃。
衛騎は回避不能。
残る出力では防御も不可能。
紀晴は静かに目を閉じた。
(ここまでか――)
その瞬間
――宇宙が、閃いた。
白でも青でもない。
純粋な雷光。
「なっ……!?」
ゼル=ヴァルガの斬撃が弾かれる。
いや――
叩き落とされた。
戦場に新たな機体が降り立つ。
100級RA。
白銀の装甲に、雷紋が走る。
背部に巨大な翼。
名は――
雷帝
そして、そのコクピットから聞こえる声。
「……一人で背負い込みすぎだろ、紀晴」
紀晴が目を見開く。
「その声は……」
雷帝、参戦
「遅れて悪いな、氷帝」
「俺が来た」




