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第五話 豚人の異変、時は人を成長させる

稚拙な文章ですが、よろしくお願いします!

 豚人

 人族からそう呼ばれる種族は、普通5〜30人の集落で暮らしている。体格は小さな豚人でも1.7M(メドル)あり、厚い脂肪と硬い筋肉で覆われている。一人のリーダーが集落をまとめ、数人が戦士として狩猟を行い、別の数人が採集を行う。女豚人は狩猟や採集に加え、子育てや料理を行う。集落の中には全く働かず、横になっているだけの豚人もいる。力が重視される社会を構築しており、リーダーに逆らうことは許されない。逆らった場合は、見せしめに打ちのめされた後追放される。その代わり、リーダーは自分の命をかけて集落を守る。堅い掟と絆で結ばれている種族である。


 人族との戦いが激化し始めると、集落のリーダーたちがまとまり始め、豚人が100〜200ほどいる集落もでき始めた。普段はお互いの縄張りを犯さないが人間との戦闘になると連携をとり始める。人族たちは、3〜50ほどの集落を小集落、150ほどの集落を中集落、300ほどの集落を大集落と称し始めた。そして、集団としての力をつけ始めた大集落の豚人は、力を持たない小集落の豚人を襲うことも増え始めたのだった。






 ━西の平原・豚人呪術師の大集落━


「俺の集落の仲間をどこにやった!!!豆猿どもとの戦いはいくらでもやってやる!だから仲間を解放しろ!」


 豚人たちは多くの種類の鳴き声を使って、コミュニケーションをとっている。今話しているのは以前は、小集落のリーダーであった豚人である。身長は百九十Mもあり、まだ年齢も若く、身体に闘志が漲っている。

 両腕を戦士豚人に掴まれて、跪いた姿勢を強いられている。豚人リーダーに問われたのは黒いローブを着た怪しい雰囲気を纏う豚人であった。


「私の命令でガベラの森に追放した。おそらく死んだだろう」


 そう言って黒ローブの豚人はローブのポケットから黒く染まった歯を取り出す。手のひらに収まらない歯はパラパラと地面へ落ちて、軽い音を立てる。それを見た豚人リーダーは拘束を振り解き、駆け出す。


「き、貴様あああああああああああ!!!」

「・・・・・・・・・・・・若く強い豚人よ、まだ死ぬには惜しい。呪術『赫焃』」

「な、に・・・」


 渾身の力を込めて繰り出された拳を、軽く受け止める。まだ若いが、豚人リーダーの身体は大集落にいる戦士豚人に負けないぐらい巨大である。多数に囲まれ不覚をとったが、単独で負けたことなど数えるほどしかない。それも己の力が全く通用しなかったことなどない。何かの間違いだと、全身に力を込め直すがびくともしない。

 黒ローブの豚人が少し握る力を込めた気がした。


「ぐあああああああああああああ!!!」

「いい力だ。その力は豚人のために使うんだ」


 豚人リーダーは、自分の拳が砕けるような痛みに悶絶する。あっさりと黒ローブの豚人は手を放す。そして、まるで警戒など必要ないかのように、背をむけ歩き出す。


「その恨みは豆猿どもにぶつけるんだ。もし豆猿どもの集落を滅ぼすことができたら、お前の仲間を生き返らせてやろう」

「生き返らせる・・・?そんなことできるのか!?」

「今見せたばかりだろう、私の呪術と死骸の歯さえあったら生き返らせることは可能だ」


 豚人リーダーは苦しそうに手を押さえながら、疑わしい視線を向けている。

 その様子を見た黒ローブの豚人は悠然と告げる。


「別に信じなくても良いが、お前の仲間は返らないぞ」

「・・・・・信じていいんだな?豆猿どもの集落させ潰せば俺の仲間を返してもらえるんだな!?」

「もちろん」


 豚人リーダーは大きく息を吐き、覚悟を決める。仲間のためだ、集落を潰された自分達にもとより選択肢などない。


「やってやる、どこに攻め込めばいい?」

「時期は私が伝える。それまで自分の戦士たちを鍛えて待機しておけ」

「・・・・・・・」

「わかったら、出て行け。命令を守らなかったらわかっているな?」

「わかってる!!お前こそ約束は守れよ」


 豚人リーダーは最後まで念を押すように確認し、こちらを睨みつけるように部屋から出ていく。二人の戦士豚人が佇む中で、黒ローブの豚人はつぶやく。



「すべては豚人族の未来にために・・・・・」



 黒ローブの豚人の額には、黒い証が煌々と輝いていた。





 ━人族領西部・戦士の祠ー


「アイビーとモミジは体格のいい犬人を!俺は生意気に防具をつけてるやつをやる!!」

「わかったわ!」

「おっけー」



 場所は火竜の山の麓、山に沿ってガベラの森を探索していると、ぽっかりと不自然に穴が空いた洞窟を見つけた。奥が見通せないほど掘り進められ、狭く暗く戦いに向いてなったため洞窟に向かって『戦士の雄叫び』を放つことにした。自らの強さを誇示するように、肺を大きく膨らませ限界まで吐き出す。



「うおおおおおッッッッ!!」



 自分の縄張りを荒らされたと感じたのか、奥の方から獣の吠える声がした。甲高い声に軽い足音から、犬人だと判断した俺たちは、洞窟の入り口から少し離れたところで迎え撃つことにした。洞窟から飛び出してきた犬人は二匹、ただの番か群れの一部か。一匹は自分の胴体ほどの大剣をひきづるように持っている。刀身がほとんど錆びついていて、どこかから奪ってきたことがわかる。もう一匹は鉄の胸当てと革の帽子を装備しており、こちらに牙をむいて威嚇してくる。


「大剣に気をつけろ!あんな錆びたやつで傷でもつけられたら、熱が出るぞ!」

「あなたも気をつけてね!もしかしたら、増援があるかもしれないわ!」

「グッルルルルルルルルルウ、ルアァ」「シャアアア」



 俺は左腕の円盾を掲げながら、犬人に先駆ける。明らかに扱えきれていない大剣をふるう犬人を躱しながら、もう一匹の犬人に盾ごと体当たりを仕掛ける。

 俺は犬人とゴロゴロ地面を転がりまわる。素早く立ち上がると、目の前の敵を見据える。


「そっちは頼んだぞ!」


 うまく分断できた。あっちは二人がどうにかしてくれるはずだ。

 俺は目の前の犬人を改めて観察する。鋭い牙をむき出しに今にも襲いかかってきそうな気配を纏っている。激しく気が立っている様子だ、盾で殴られたのが効いているのだろうか


「ギャオオオオウンンン」

「はやい!・・・が軽いな」

「キャン!」


 種族特有の高い敏捷性を活かして、距離を詰めてくる。鋭い前爪を振るってくる。俺はそれを円盾で受け止め、右手の片手剣を反撃に振るう。胸当てに当たり深く捉えることはできなかったが、犬人は俺から悲鳴をあげ距離を取る。

 はぐれ豚人と比べれば、パワーに天と地ほどの差がある。命が脅かされるような危機感もない。


「ウオオオオオオオオオオン」


 傷をつけられた怒りで手を地面につき、四足で真っ直ぐ駆け出してくる。さっきより早い突撃だが、軌道が読みやすい。一直線に俺に噛み付いてくるつもりだ。


「ふんっ!」

「ギャっ!キャウウウウウウウウン」


 真正面からの突撃に叩きつけるように、盾を振り下ろす。顔面を盾で強打された犬人は痛みでふらつく。俺の前で致命的な隙を晒す犬人に、防具がついていない首元に片手剣で追撃する。

 勢いよく血飛沫が飛び出てくる。終わりだ。アイビーとモミジはどうなっただろう?


「そんな重い武器、せっかくの素早さが台無しだよー」

「遅いのよ、もっと早く勝てたでしょ?」

「大剣の範囲が広くて、思ったより近づけなかったんだよー」


 あちらも終わっていたようだ。アイビーがうまく大剣をいなし、その隙にモミジがトドメを刺したようだ。


「増援も来ないし、洞窟を覗いてみよーぜ!」

「そうね、犬人から採れる部位もないしね。何か持ってるかもしれないわ」

「教官に報告もしないとねー」


 俺たちは薄暗い洞窟の中を進む。意外に奥行きは広くなく、早く先ほどの犬人が住んでいた場所についた。何かの骨や火をつけた後の炭などが散乱している。

 何かの皮でできた容器や柔らかい葉を敷き詰めた寝床もあり、文明的な生活を感じる。


「なんもねーなー。お宝でもあるかと期待して損したな」

「道端にお宝が落ちてたら、誰でもお金持ちだわ」


 犬人の遺したものを蹴っ飛ばしながら、雑に漁っていく。どれもガラクタばかりだ。何かの皮にも汚れがこびりついており、使うこともできない。

 完全に無駄足かと思い、ため息をつきかけた時、モミジが声を上げた。


「え、待って!これ!」

「なんだ?何かあったのか?」


 どうしたどうしたとモミジに近づく俺とアイビー。モミジが赤い粉が表面に吹いている石を見せてきた。


「これ、火竜鉱石だよ!見たことがある!火竜が火を吐き出して、変質が起きた鉱物で希少素材だよ!」

「へえー、俺にはただの赤石にしか見えないけどな」

「武器を作るには足りなさそうだけど、お宝ね」


 すごい希少な素材があったらしい。犬人たちが山のどこかから採ってきたのだろうか。とにかく無駄足にならずにすんで良かった。


「お宝も見つけたことだし、帰るか!」

「そうね、今日の課題も達成してるし帰りましょ」

「疲れたよー」


 はぐれ豚人との戦闘から三ヶ月経った日の、実践訓練の一幕である。





「まとめると、豚人は強さを重視する階級社会を構成している。一番下にはぐれ豚人、次に豚人、戦士豚人(バトルオーク)上豚人(ハイオーク)の順で階級が上がっていく。上豚人には牙が生えていて、獰猛性などが上がり屈強であることが多い」


 ガベラの森で実地訓練が終われば、次は座学の訓練である。訓練場を挟んで家畜小屋の反対方向に、座学を学ぶ建物はある。

 見習い六十名ほどが入れる大きさの円状の建物で、ヤシの木を利用して作られている。太く硬い幹は立派な梁になり、厚みのある羽状の葉っぱは断熱性に富んだ屋根や壁となる。天井をバスケット状の骨組みにし、奥行きのある開放的な空間としている。俺たちは森の教卓って呼んでる。


「上豚人が5〜30ほどの豚人を率い、集落を形成している。集落ごとに掟や文化、独自の文字だってある。上豚人は一般的に人族は単独で勝てない。高い身体能力に加え、戦闘技術も備えているからな。もし戦闘になれば、熟練の小隊はいる。そして、必ず死人が出るだろう」


 勉強する内容は他種族のやモンスターの生態、戦闘方法が主である。教官の豊富な経験をもとに話される内容は、俺たちの興味をとても惹きつける。


 今日は俺たちとも因縁がある、豚人について。俺たちが命をかけて苦労の末に倒した豚人は、階級の一番下。まじかよ、どんだけ強いんだよ豚人。人間が弱いだけなのか・・・・?


「俺たちが授かる適性は神からの祝福である、と現代では考えられている。普通、他種族やモンスターにはない。この適性のおかげで俺たち人族は生きることができる」


 十五歳から授かることができる適性は、人族だけが享受することができる。身体能力とかが上がることはないが、さまざまな技術を授かることができる。


 戦神と武神は戦いへの技術を、人神は暮らしの技術を、霊神は神秘への道筋を、天神は博愛への手段を、人間に授けた。姿は見えないが、神様はいつでも人族を見守ってくれている。


「俺たちの体には神様が宿っている。人族だけの特権だ。だが、もし、もしだ。他種族やモンスターに適性が授けられるとしたら」


 教官は何かを考えるように目を瞑る。適性は弱い人間が他の強い生き物たちへの対抗手段だ。それが他の種族の手に渡ったら、想像もつかない。


「人族は必ず負けるだろう」


 部屋中の音が消えた。誰かの唾を飲む音が鮮明に聞こえる。教官の言葉に皆最悪の想像をしたのだろう。手につけれない化け物が自分達を蹂躙する想像を。


「そんな奴いても、俺のやることは変わらない。ただ戦うだけだ」


 俺の小さな呟きは静かな空間に思ったより響いたのだろう。俺の声が聞こえたアイビーとモミジがこちらに向かって微笑んでくる。なんだよ、こっちみんな。恥ずかしいな。


「まあ、全部妄想だ。今までそんな奴見たこともない。数々の戦場を見てきたこの俺でも。だから、安心しろ」


 教官のフォローする言葉に俺たちは弛緩した空気を取り戻す。


「今日はここまでとする。明日に備え、しっかり配給を食べて体を休めろ。以上、解散」


 今日の訓練はここまでらしい、あとは各々メシを食って体を洗ったりして寝ることになる。続々と席を立つ仲間たちを横目に、俺もアイビーとモミジと飯を食いに行こうと席を立つ。


「アレク、お前は俺について来い。少し話がある」

「あ?俺か?」


 飯を食いに行こうとしてたところに、教官に引き止められた。初めてのことだ。

 なんの話だと思いながら、足をハゲの方向へ向き直した。





読んでいただきありがとうございます!また次話もよかったら読んでください!

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