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第三話目 戦士の目覚め

稚拙な文章ですが、よろしくお願いします!

 激しい鼓動が全身に素早く血液を送り、体が急速に温まっていく。体の熱さに対して、どんどん頭はクリアになっていく。吹き飛ばされた衝撃ももうなくなり、いつでも戦える。


「あなたの攻撃も全く効いてないのよ!?どうやって勝つのよ」

「そうだよ、アレク。二手に分かれて教官に知らせにいこうよ」

「一人が助けを呼んでる間に、モンスターが来てサンスが襲われたらどうする?ただでさえ手に負えない化け物だぞ。サンスを守りながら、戦えんのか?」

「それは、、そうだけど」

「俺は逃げない、一回攻撃が効かなかっただけだ。まだなにも負けちゃいない」


 不安げな様子の二人を横目に俺は全身に力を込める。

 豚人は俺たちが三人固まっているのを警戒しているのか、襲いかかってこない。

 もう悠長に話してる時間はない、俺は走り出し二人に告げる。


「俺が一人で足止めする!お前らはサンス背負って教官のところへ行け!!!!」

「ちょっと、アレク!!!!!」「まって!」


 俺は二人の焦った声を背に、足元に落ちている枝を拾い豚人に投げつける。


「こっちだ、くそ豚野郎!今日はお前のくそ掃除してやるよ!」

「ブモォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」


 言葉など通じないはずだが馬鹿にされたと感じたか、それとも単に一人になる俺を倒しやすいと感じたのか素直に追ってくる。

 助かった、これで追ってこなっかたら一人で逃げたやつになる。ある程度の時間、鬼ごっこをして森の開けた場所で足を止める。



「よし、ここらでいいだろう」

「ブモォ」



 突然足を止めた俺に少し警戒している豚人。人を見つけたらとにかく襲いかかるモンスターとは違う。知能がある敵との戦いだ。確かに豚人の身体はとてもデカい。

 けど、よく見ると少し細い気がする。はぐれの生物とあって、あまり栄養が取れていないように見える。それから、わかることは二つある。


「一つ目はお前は素早くないってこと!!素早くお前ほどの力があれば、獲物を逃さない」

「ブモウオオオオオオ」


 奴の動きに注意しながら、距離を詰めていく。奴はまた同じように棍棒を斜めに振りかぶる。見える!、また横への薙ぎ払いだろう。


「ブモォォォォォォォォォォ、オオ」

「わかってんだよ!!!」


 予想通りの横方向への薙ぎ払いだった。体を傾け、奴の攻撃を躱し懐へ潜り込む。胴体への攻撃はあまり効果がなかったため、腕を斬ってみる。


「っち、さっすがに硬いな」

「オオオオオオオオオオオオオッッッッッ」


 血は吹き出てくるが、硬い筋肉によって深いところを斬った感覚は無い。それ以上の攻撃を許してくれない。奴がまた振り払おうとしたことがわかったため、距離を取る。


「ふううううう」


 なんだろう、体の調子が良い。敵の攻撃もよく見えるし、攻撃を受けることにあまり恐怖も感じない。心臓の音が心地よく、初めての本格的な戦闘なのに緊張もしていない。もしかして_____________________


「ブヒィィィブヒィィィィィ」


 俺の思考の隙を盗むように攻撃を仕掛けてくる。チッ、流石に正面からぶつかるのはパワー差が出る。教官が言っただろ、人間が他種族に勝つためには技術だって。

 俺は長剣を水平に構えて、奴を待ち構える。俺が受け止める気だと思ったのか、奴は渾身の力で上から棍棒を叩きつけてくる。


「おっっ、らあああああああああ」


 叩きつけられた衝撃を逃すように、長剣を弧を描くように動かす。衝撃の勢いをそのまま、奴の顔面へ叩き込む。俺の力だけじゃない。奴の力も加わっている。


「ブヒィッッッッッ」

「入った!!!」


 間抜けにも地面に棍棒を叩きつける姿勢で固まっていた奴の顔面に、叩きつけられた長剣は少しの抵抗を最後に豚人の鼻を切り飛ばした。初めてやつに大きな傷をつけることができたため、思わず声が出る。


(いける!攻撃が通じた。やっぱり戦える。こいつを倒してみんなを守ってやる!)


 そして、先ほどから感じていた違和感の答えを得た気がした。俺は、別に剣の天才ではない。それなのに初めての実践で下手くそなりに技を繰り出せているのは━━━━━━━━━━戦士の証のおかげだろう。


 戦士の適性は『戦い』の適性を得ることだ。怪我が早く治りやすいことはもちろん、戦闘への慣れ、恐怖感の克服といった戦いへの順応が早く行われる。初めての実践でも敵から目を逸らさず、自分の動きを出せる。


 訓練の最初、びびっていた俺たちを教官たちが笑っていたのはこの順応を知っていたからなんだ。

 俺が不安を口にした時モミジも言っていた、俺たちは戦士だって。そうだ!!!


「俺は戦士だ!!俺が戦士の限り、お前に負けることはない!!!!!」

「ブモォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


 自分が豚人という強敵と戦えている事実に、血が激しく巡る。体が熱い。もっともっとだ。俺はまだまだこんなもんじゃない。もっと成長するぞ!!!!!!

 奴が怒りのままに振り回す棍棒を距離をとりながら観察する。棍棒を振りつづけ体力が削れ少しずつスピードが落ちてくる。


(今だ!!!)

 棍棒の重さに少し奴の体が泳いだところに思い切り距離を詰める。踏み込んだ勢いそのまま、奴の体を斬りつける。


「ちっ、やっぱダメか」

「ブホホホホホホホ、ブルァ」


 振るった剣は奴の胴体には深く入らなかった。勘違いするな、俺の力が上がったわけでも、技術が伸びたわけもない。ただよく動けているだけだ。

 さっきのは奴の力も加わっていたから、通じた。奴に深手を負わせるためには、奴の力を使う必要があるということだ。けど、何度もできるほど俺の技術は高くない、ジリ貧だ!!


 それから奴の攻撃を避けながら、腕や脚を斬りつけてみたが決め手にはならない。幼い頃からずっと走り込んできたおかげで、まだ体力は持つがいつまで続けれるかわからない。


「なっっっっ、しまった!!!」

「ブモォォォォォォォォォォォォ!!!」


 ついに枯れ葉に足を滑らせ、体勢が崩れてしまう。目の前にいる敵はそんな隙を見逃すわけもなく、今までの鬱憤を晴らすかのように全力で棍棒を薙ぎ払う。


(避けれない!!)

「ガッッッッッッッッッッッ」


 凄まじい勢いで振り抜かれた棍棒は、威力を全く逃すことなく俺の胴体を捉えた。凄まじい力は俺の体を何回も地面に打ちつけ、それでもまだ止まらない。


「ううううっ、ぐはっ」


 喉元に迫り上がる何かを思わず、吐き出す。血だ。間違いなく骨が折れている。全身が焼けるほどの痛みは治らず、たまらず俺は地面をころげ回る。


「あああああああああああ、グアアああああ」


 いた痛い痛い痛い痛い痛い!!あまりの痛みになにも考えられない。敵の前であることを忘れ、ただただ痛みに身を任せる。

 歯を食いしばり、痛みを耐えようとするが上手くいかない。ただ地面に額をつけ身を固めているだけの俺だったが、ふと聞こえた足音に顔を上げる。

 やつだ。奴が俺にとどめを刺そうと、足を振り上げている。そうだ、まだ戦いの途中だった。


「うがああああああああああ」

「ブモォォォォォォォォォォォォ」


 気力を振り絞り転がり回り、奴の足のスタンプを間一髪避ける。無理に動いたせいか、また血が迫り上がってきた。口に感じた鉄の味に、思わず吐き出してしまう。

 避けられたのが気に入らなかったのか、俺を痛みつけるように蹴り上げる


「がはっっ、っっ」

「ブヒィ」



 また俺は無様に地面を転がりまわる。


(昨日からずっと地面を転がってるな。なんか笑えてきやがる)


 痛みは全く治まらないが、戦いの最中であったことを思い出したためか頭がよくまわる。

 俺はここで死ぬのか?仲間の三人は無事に逃げただろうか?他の見習いのところには豚人は出ていないだろうか?エンジュに会いたいな。最後にお母さんと話したい。


 さまざまな思いが頭の中を駆け巡る。戦士としての初戦だってのに、もう終わりだ。


 本当に自分の力のなさに嫌になる。何も成し遂げれなかったが、少し満足感はある。俺でも豚人族相手に少しは戦うことができた。戦士として爪先ほどの距離を歩めたって思ってる。


 あの豚がもう一度近づいてくる音が聞こえる。もうそろそろだ。

 地面に転がったまま、無様に俺の人生は終わりだ。


 心が生きるのを諦めかけた時、俺の胸が熱く燃え上がった気がした。初めは痛みかと思った。でも違う。痛みの熱さとは違う太陽の光のような暖かさだった。


 自分の胸に目を向けると、豚の棍棒で殴られたり蹴り上げられたりと、革鎧はひしゃげ服はボロボロになり胸のところが露出していた。そのため、俺の戦士の証が見えた。


(光っている、、、、)


 初めて戦士の適性をもらった時のように戦士の証が光り輝いている。まるで生きることを諦めた俺を、戦うことを諦めた俺を責めるように。戦い続けた俺を褒めるように。


(そうだよな、、、、最後が無様に踏み潰されるじゃ戦士じゃないよな。)


 俺はせめて立って戦士の誇りを胸に死んでやろうと、なけなしの力で腕に力を込め立ち上がる。そして近づいてくる奴を睨みつける。

 ふらふらになりながら立ち上がる俺を脅威と感じていない態度で、ゆっくり近づいてくる。そして俺に見せつけるようにゆっくり棍棒を振り上げる。俺は目を閉じる。


「俺は戦士として死ぬ。俺は最後まで戦士だった」

「ブモォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」


 死神の鎌が振り下ろされた。


読んでいただきありがとうございます!また次話もよかったら読んでください!

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