9話
最初の頃はチヤホヤされていたものの、物珍しさが減って来たのかチヤホヤ頻度が明らかに減った。
消費期限はどうやら早かったらしい。
ただ、仕事にも慣れてきて特に不便することは無くなった。
ただただ仕事をこなしていく。
と言っても依頼を掲示板に貼ったり、書類の整理をするだけで大きくやることはない。
基本的には午前中で仕事が終わり、午後は掃除をしている。
いい加減他のところもまわっていきたい。そう思う5歳児。
身分証もできたことだし、いつでも出ていけばいいんだろうけど。
何故かそうさせてくれない。どうしたら自由を手に入れられるのだろうか…
掃除が終わってから自分なりに修行するようにし始めた。
それから1年後。
修行の成果なのだろうか、協会長からお達しがあった。
「現職の冒険者を倒したら冒険者として認めよう」
相手は最低ランクの冒険者。本気を出さなくても勝てるであろう。
だが、苦戦を演出しなければ色々おかしいことになりそうだ。
勝てば官軍負ければ賊軍。
しかし、どうやって勝とう?
「それは始め!」
冒険者が笑ってこっちを煽ってくる。
相手の職業は剣闘士。ただのアホにしか見えない。そんなやつに煽られると少しイラっとする。だが俺はここで冷静さを
失わない。
相手の武器は木刀。こっちは真剣。
やろうと思えばいつでもやれる。
だが、演出を考えなければいけない。
考えていると相手が痺れを切らしたのか、攻撃を仕掛けてきた。まだ戦略を練っているから後でにしてほしいなと思い
つつ、攻撃を避け続ける。
3分ほど考えて思いついた。真剣を構え、攻撃しようとするが、相手が何故か膝をついている。
これは勝ったのであろうか。いや、こちらを油断させて攻撃する瞬間を狙っているのかもしれない。そばに転がっている
小石を拾い、全力で投球する。
その小石は見事に冒険者の頭へクリティカルヒット!
「想定外だ」
やってしまった。どうやら攻撃を避けている間にただただ相手の運動限界が来ただけらしい。
こうして俺は冒険者の仲間入りをした。こうして俺の物語が始まる。