婚約破棄されたんだけど父とクノイチが何とかしてくれました。
クノイチ出したかった。後悔はしていない。
ここイルネーゼ王国からはるか東、砂漠を越え海を越えた先に、黄金の国があるという。
そこは見たこともない財宝を持つ大君が統治する国で、不思議な文化が花開いているとか。
まあ、そんなおとぎ話はさておき、私、ベルグランド侯爵家令嬢ルクレツィアはピンチ(?)なの。
「ルクレツィア、君との婚約は破棄する。僕はジャカール子爵家令嬢クラウディアと結婚する」
——はーん? 私の婚約者の言葉の意味が分からない。周り見なさいよ、舞踏会に集った紳士淑女がポカンとしているわ。
私の婚約者、マイネへルン伯爵家嫡男アルフレッドは、ハニーブロンドの勝ち誇った顔をした少女と腕を組み、なんかめっちゃ怒っていた。
「クラウディアへことあるごとに嫌がらせをして、挙げ句の果てにはジャカール子爵家へ圧力をかけて僕に近寄らせないようにしていたそうだな。大臣の娘ともあろう君が、馬鹿げたことをしたものだ」
顔だけはいいアルフレッドは大袈裟にため息を吐き、私へ憐れみと侮蔑の視線を送ってきた。何言ってるんだこの男、と私があんぐり口を開けているのをいいことに、アルフレッドは用意されていた演劇のセリフのごとく次々と言葉を浴びせかけてくる。
「君はいつも舞踏会で私を放っておくくせに、女性が近づくことを許さず束縛ばかりする。はっきり言って、君との結婚生活は考えられない。僕はペットじゃないんだ、それに好きでもない、魅力も乏しい女性と結婚なんて嫌だ。男ならクラウディアのように可憐で、美しく、貞節をわきまえた女性とこそ結ばれたいものだ。そうだろう?」
アルフレッドは周囲へと同意を求める。生憎と、この場には堂々と他人を罵倒する意見に同意する無分別な人間はおらず、しかしアルフレッドはかまうものかと話を進めた。
「とにかく、人として女性として魅力のないちんちくりんな君との結婚はごめんだ! 帰って真っ当な礼儀作法を習ってくることだ!」
鼻息荒く、アルフレッドはクラウディアという少女を連れて、どこかへ去っていった。
一人、舞踏会のど真ん中で婚約破棄されて取り残された私は——首を傾げた。
「何この茶番。真面目な話なのか、お父様に確認しなきゃ」
それがいいと思うよ、と背後の小太りの紳士と背の高い淑女がうんうん頷き同意してくれた。
とりあえず、私は憐憫の視線を受けながら舞踏会のホールから出て、とっとと帰宅した。せっかく舞踏会のために選んだ黄色のアイリスをモチーフにしたドレスは、無駄になってしまったようだった。
帰宅した我が家、おそらくイルネーゼ王国有数の面積を誇るベルグランド侯爵家屋敷には、相変わらず王国の官僚たちが忙しくやってきては決裁の内容について議論したり、今後の方針や貴族の派閥争いの情報交換などをしていた。父が内務大臣を務めているため、常に屋敷を開放して会議場兼談話室として場所を提供し、毎日政治の最新の情報が飛び交う。王城に近く、そこそこ広く、飲み物や食べ物が充実しており、資料である書籍にも困らず、椅子やテーブルなど調度品が揃っていて清潔で上品な場所、という居心地のいい空間を提供することで、彼らは喜んでやってきて父へ有益な情報をもたらしてくれるのだとか。おかげで私は毎月入れ替えられる一流の芸術品を目利きする機会に恵まれ、それなりな鑑定眼を身につけられた。
しかしだ、「ちんちくりん」な私は政治になど関係ないし、官僚の彼らとは常識的に挨拶をしてにこやかに世間話をするだけだ。
思い出すとちょっとむかつく。私は不機嫌を隠して、玄関の扉を開く。
「ただいま戻りました、お父様はどちらに?」
すると、玄関近くの待合所となっているソファにいた若い官僚たちが「閣下なら先ほど会議を終えられて、お部屋に戻られたばかりですよ」と教えてくれた。私は礼を言って、父の書斎へと向かう。ずんずん廊下を突き進んでいると、すいっと私の後ろに影が現れ、喋った。
「お嬢様、今は旦那様は休憩の最中なので、ちょっと時間をずらしたほうがいいっすよ」
私は振り返り、その影からよっこいしょと出てきた一人の男装の女性を、ジト目で睨む。
「急いでいるのよ。何とかならない?」
「まあまあ、旦那様だって疲れはしますよ。お年なんだし」
「お父様はまだまだお若いわ」
「言うて四十八歳じゃないすか。お嬢様のちょうど三倍のお年っすよ。肩こり腰痛がひどくなるお年頃っす」
「もう! 急いでいるの、どうにかならない?」
「どうしたんすか、お嬢様。このキサラギに話してみんさい、ほらほら」
キサラギ——目つきの悪い、異国風のおかっぱ頭をした黒髪の彼女は、私の肩に手を回して馴れ馴れしくそう言った。まあ、私とキサラギの付き合いは十年を超えるし、どう見ても仕える主人の娘に対する態度じゃないのはいいんだけども。
私はその場でキサラギへ、舞踏会で婚約破棄された顛末を教える。
するとまあ、キサラギは訳が分からない、という顔をして盛大に呆れていた。
「はあ、婚約破棄。マイネへルン伯爵家のボンボン、馬鹿じゃないすか?」
「そうよね!? よかった、私がおかしいのかと思った! だって私、クラウディアとか言う子、今日初めて見たのよ? 何か意味のあるお芝居なのかと思って、とりあえずそのまま帰ってきたの!」
「間違いなく耐性のないボンボンが女にコロッと騙されたとか、まあ百歩譲っても旦那様の政敵がやらかした美人局に嵌まったとかそういうのでしょ。大丈夫っすよ、問題は婚約がダメになったところでベルグランド侯爵家はマイネへルン伯爵家と二度と復縁しないってことっすけど」
それの何がいけないのだろう。私の顔にはそう書いてあったらしく、やれやれと多少は世長けたキサラギがしたり顔で解説する。
「考えてみんさい、ベルグランド侯爵家の名誉を傷つけた馬鹿ボンボンの家と、もう仲良くなんてできないでしょ? かと言ってジャカール子爵家とやらに易々送り出してもマイネへルン伯爵家があっち寄りになってうざったい。舞踏会なり狩猟なりで顔合わせするの気まずい。そういうの、醜聞として残りますからね。あらぬ疑いを避けるためにも、旦那様としてはできれば穏便に解決したいとこっすよ」
キサラギはさらっと言ってのけるが、貴族の面子というものはかなり機微なもので、婚約破棄などという醜聞の代表格が両家の遺恨となれば将来の禍根となりかねない。もちろん力技や裏工作で解決するという手もあるけれど、そうなればお父様、ベルグランド侯爵にものすごく面倒をかけてしまう。
婚約破棄は至極どうでもいいが、私のせいで尊敬する多忙な父の手や気持ちを煩わせるというのが嫌だ。私はさすがに焦る。
「どうしよ」
「いや、事がここまでなっちゃあお嬢様はやることないっすよ。あ、そうだ」
「何? 何かある?」
「マイネへルン伯爵家のボンボンよりいい男を急いで捕まえてきてください。そんくらいできるでしょ?」
「簡単に言わないでよ! ど、どうやって捕まえるの?」
「そうっすねぇ、幼馴染で婚約者のいない高位貴族の男、いないっすか? 事情話したら味方してくれそうなやつ」
キサラギ、ノリが軽い。しかし他に手はないのならやるしかない。私は覚悟を決め、頷く。
「さ、探してみる……」
「頑張ってください。じゃ、私は旦那様に指示を仰いできますんで」
すったかたー、とキサラギは父の執務室の方向へと早足で去っていった。
こうしてはいられない。私は舞踏会のドレスのまま玄関へと舞い戻って、大至急しまわれそうになっていた馬車を引っ張り出させた。
ベルグランド侯爵家は仮にも名門、私一人でも王城だって顔パスで入れる。
でもさすがに王城で婚約者探しなんてはしたない——と思われるだろう。私もこんな事態でなければやらなかった。しかし、他にあてがない。
私は箱を一つ抱えて、幼いころから慣れ親しんだ王宮の片隅へとそそくさ向かい、顔見知りのメイドに「あらあらお久しぶりですわねぇ」と言われつつ、目的地の扉を思いっきり開いた。
「こんにちは、エリオット!」
そこは比較的侘しい部屋だった。金装飾の椅子やテーブルもなく、シャンデリアや立派な絵画も壁紙もなく、ただ白漆喰の壁と重厚なオーク材でできた家具などが並べられている部屋だ。
この部屋の主人は、贅沢を嫌っていた。華美な文化から離れ、遠く東の国のささやかな家具が好きだった。ベッド横の水墨画が描かれた衝立やシックな畳、でこぼこの土器のような花瓶にスズランが一輪。とても質素で王族の暮らすところのようには思えないが、私の目に飛び込んできたその人物——エリオット・ファルテー・イルネーゼは、綿のシャツとパンツに東の国から流れてきたという鮮やかな藍染の羽織を肩にかけていた。ふわりとした濃茶色の髪は能天気そうで、いつもニコニコしている。東方趣味が男らしくない、何かと華奢だと実父である現国王から遠ざけられたせいもあって、浮世離れした不思議な雰囲気を持っている青年だ。
そして、私の幼馴染で、大切な友人だ。だからこそ貴族のしがらみや面倒な関係に巻き込みたくなかったが、こうなっては仕方がない。
「やあ、ルクレツィア。どうしたんだい?」
「助けてエリオット! 助けてくれたら昔鼻水垂らしながら欲しいって言っていたガラスの馬の像あげるから!」
「待って、そんなことよく憶えているね!?」
私の挨拶がわりのジャブはエリオットの顔をほころばせた。深刻な話をする以上、少しは固さを取り除かなくてはならない。
私は箱の中身であるガラスの馬の像を取り出してエリオットに押し付ける。そして、さっき婚約破棄されたことと、婚約相手を大至急探していることをエリオットへ必死に訴えた。
「もう私の知り合いで婚約していない男性なんてエリオットしかいないのよ……どうにかしなきゃ、お父様が悪者になっちゃう。お願い、今ならお父様にもらった東の国の綺麗な箱もあげるから」
「待って待って、君の事情は分かるけど、いいのかい?」
「何が?」
「だって、私は王位継承権を放棄することが決まっている王子だよ? 君の家や大臣にとって、結婚しても何の利益もないじゃないか」
あっけらかんと自分との婚約はメリットがない、と語るエリオット。先年、王妃の一人だったエリオットの実母が離縁され、国王の憶えがよろしくないエリオットはそれを理由に王位継承権の放棄を迫られた。すぐに、というわけではない。兄王子が立太子するのを見計らってだ、でないと余計な憶測や批判を招くことになる。
しかし、そんなことは私は十分に承知の上だ。
「別に私はなくてもいいけど。エリオットとは気が合うし、そのへんの年寄り貴族と再婚する羽目になるくらいなら全然マシ! お父様の説得なら私が何とかするわ」
「えぇ……君、昔から貴族令嬢らしくないよね」
「悪い?」
「いいや、まったく」
エリオットはまんざらでもない様子で、こう答えた。
「いいよ、私でよければ婚約しよう。君のためなら喜んで」
「やったぁ!」
こうして、私はガラスの馬の像と引き換えに、キサラギから与えられたミッションをコンプリートしたのだった。
一方、キサラギはというと——何をしているのだろう?
◇◇◇◇キサラギ視点1◇◇◇◇
誰かを騙すということは、誰かに騙されることと表裏一体であると肝に銘じなくてはならない。
キサラギは今まで多くの人々を見てきた。騙す権力者、騙される民衆、騙して暴利を貪る商人に、騙されて死を選ぶ家族。洋の東西を問わず、みな、騙す輩はきわめて悪どいものである。
とはいえ、馬鹿正直に騙される謂れはない。抵抗できるときはしておく、まあやりすぎたって自業自得で済む話である。何があっても気にすることはない。
ベルグランド侯爵家従者は仮の姿であり、その実、ベルグランド侯爵直々に東の国からスカウトされた東国三大烈女の一人『義賊の鬼』にとっては、この程度の仕返し、児戯にも等しいのである。
◇◇◇◇
マイネへルン伯爵家嫡男アルフレッドが舞踏会で婚約破棄し、ジャカール子爵家令嬢クラウディアと婚約を結んだある晩のこと。
クラウディアはアルフレッドの求めにより、マイネへルン伯爵家屋敷に移り住んでいた。新しく、正しい婚約者であることを公に認めさせるため、アルフレッドはすぐに同居するよう強く要望したのだ。ジャカール子爵は二つ返事で娘のクラウディアを送り出し、両家の絆の強さを証明しようとした。
だが、肝心のクラウディアが乗り気ではなかった。それもそのはずで、彼女は父親の命令もあって「偉そうなベルグランド侯爵家の娘をぎゃふんと言わせるためには、婚約者を奪うくらいしてやろう」と子供のように考えていたにすぎず、別にアルフレッドのことが好きなわけではなかった。適当にしなを作ってお淑やかなふりをしているだけでアルフレッドはクラウディアに入れあげて、勝手に婚約へとことを進めたのだ。
急な同居、婚約とあっては、クラウディアは自室にこもってため息を吐くばかりだ。
「はー、あの男、また鏡を見ているんじゃない? お金があって顔がよくても、ナルシストって……もっとまともな男と結婚したかったわ」
クラウディアがジャカール子爵家から連れてきた若いメイドが、クラウディアをほんの少したしなめる。
「姫様、そのくらいで。結婚さえしてしまえば、外にお出になられればいいのです。いくらでも同衾しない理由は作れますわ」
「そうね。白い結婚なんて犯罪じみた不名誉なこと、私がやるとは思わなかったわ。でもあんなのと一緒にいるくらいなら、外に愛人を作ったほうがマシよ」
主従揃って結婚に対する篤実さや誠実さなどかけらも信じていない。クラウディアの母もそうだった、ジャカール子爵と儲けた子は申し訳程度にクラウディア一人、あとは自由奔放に屋敷の外でたびたび入れ替わる愛人と暮らし、クラウディア自身異父弟妹が何人いるかなど知る由もない。貴族の結婚とは大半がそうである、当然ながらそこに愛はない。世間知らずで恋愛に夢見る貴族の子女を、クラウディアは鼻で嘲笑える。アルフレッドもどうやらその一人であるように思えてならず、ますますクラウディアのため息は深くなるばかりだ。
とにかく、クラウディアはアルフレッドとともに過ごす気はない、ということは明らかで、マイネへルン伯爵家の使用人たちはすぐにそれを察知し、好き放題噂をする。
壁に耳あり障子に目あり、それを使用人に紛れてマイネへルン伯爵家屋敷に潜入していたキサラギは聞きつけ、瞬時に考えついた嫌がらせを実行した。
夕方、薄暗くなってきたマイネへルン伯爵家屋敷の廊下はまだ蝋燭の灯りがついておらず、前から歩いてきた人の顔さえ判別がつかない。もっとも、服装で大体は分かる。
アルフレッドは正面からやってくる薄紫のドレスを着た若い女性を、クラウディアだと認識した。他にドレスを着るような若い女性はマイネへルン伯爵家の屋敷にはいないからである。目深に被ったつば広の帽子は、どこかへ出掛けていたのだろうか。
「クラウディア。どうだい、屋敷には慣れたかい? 君のためなら何でも用意するよ」
甘ったるく、猫撫で声でアルフレッドはクラウディアへ声をかける。
そのクラウディアは、妖艶に笑って——アルフレッドの胸に飛び込んできた。
いきなりの抱擁に戸惑うアルフレッドへ、クラウディアは胸の中で囁く。
「ねえ、アルフレッド様」
「何だい、クラウディア」
「無事婚約も済みましたことですし、ね? 一緒に過ごしましょう?」
ふいっと、クラウディアはアルフレッドから離れ、くすくす笑いながらこう言った。
「夜、部屋でお待ちしておりますわ。コルセットを脱がせてくれる殿方を、ね?」
愛嬌たっぷりにそう言い残し、クラウディアは元来た道へと戻っていく。やがて、廊下からクラウディアが姿を消したあと、立ち止まっていたアルフレッドは顔を真っ赤にして、クラウディアの口にした言葉の意味——「コルセットを脱がせて」は夜伽のお誘いの決まり文句である——を理解して、歓喜していた。
まあ、こんなものである。
誰もいない洗濯部屋で素早く薄紫のドレスを脱ぎ、使用人の格好に着替えたキサラギは、クラウディアの私室行きの洗濯カゴにドレスと帽子を放り込んだ。用意していたクレンジングで化粧を落とし、あとは夕食の準備で慌ただしいメイドたちの中に加わるだけである。
(さて、夜にメイドのフリして強引な情事前の現場に居合わせ、他の使用人には起きていてもらうために食後のコーヒーを濃いめにしておくか……はー、私ってデキる女)
この日の午後十時半、事件は見事に起きる。クラウディアの私室へ押し入って婚前交渉に至ろうとしたアルフレッドに対しクラウディアが悲鳴を上げ、待ち構えていたキサラギが他の使用人とともに突入、アルフレッドを取り押さえるのである。
無論、次の日を待たずクラウディアは「この野蛮人! けだもの!」とアルフレッドを罵りながら実家へ帰った。二日後、マイネへルン伯爵家とジャカール子爵家の婚約は破談を迎え、「マイネへルン伯爵家の裏痴情! 派手な交際で淫蕩に耽るジャカール子爵夫人にとっても寝耳に水か!?」と新聞の紙面いっぱいに載るほどの大醜聞にまで発展するのだが——すでに逃げおおせているキサラギはこの顛末を主人のベルグランド侯爵に報告し、「ご苦労だった」とお褒めの言葉をいただいていたのである。
◇◇◇◇キサラギ視点1・終◇◇◇◇
朝起きたら屋敷の前が騒がしい。我が家に入り浸る官僚たちも騒ぎを避けて、裏門から入ってくるほどだ。
私はキサラギへ問う。
「キサラギ、何あれ」
「さあ? 放っておいていいでしょ、門番が何とかしてくれますよ」
「そうね」
門前がやかましいことに比べ、屋敷の中はいつもどおりの静けさだ。つまりは影響もなく、大したことではないだろう。実際にはジャカール子爵が直接の謝罪と直談判に来ていたのだということは、後で知った。
父、ベルグランド侯爵の書斎へ向かう最中、キサラギは私を褒め倒した。
「いやしかし、本当に条件に合ういい男を一日で見つけてくるとは。さすがっすね、お嬢様」
「褒められてる気がしないのは何で?」
「運がいいじゃないっすか。誇ることっすよ」
「え、そう? えへへ」
おだてられるとまんざらでもない。これが身内でなかったら警戒するところだが、キサラギはもうとっくに身内だ。素直に受け取っていいだろう。
まもなく、無事父の書斎に到着し、私は大きな執務机を挟んで父と相対する。強面の顔にモノクル、煙草パイプに燕尾服、胸ポケットには鎖で繋がる懐中時計。いかにもな紳士の様相をした父は、重々しくこう告げた。
「ルクレツィア。今後、舞踏会でマイネへルン伯爵家とジャカール子爵家の者に会ったとしても、会話する必要はない。万一不快な思いをさせられたならば、即刻貴族院と裁判所に話を付ける準備はしてあるから安心しなさい」
それはつまり、敵視と同じ意味合いを持つ。因縁をつける理由が生まれれば即刻バトル開始だ、という宣言だ。
アルフレッドは馬鹿なことをした。薄氷を履むように渡っていかなければならない貴族社会で、マイネへルン伯爵家とジャカール子爵家は余計な、かつ巨大なリスクを背負ってしまったのだ。ベルグランド侯爵家に睨まれ、警察や裁判機構を統括する内務大臣に睨まれ、まともな貴族ならごめんなさいと頭を下げて謝ってくるレベルだ。しかし、父は謝罪を許さないだろうし、一度敵対してしまえばいつまでも禍根は残る。何んなら千年以上前の因縁さえ未だに悶着がある、それが貴族というものだ。
とりあえず、マイネへルン伯爵家のアルフレッドとの婚約破棄の件は終わったと見ていい。ならば、次だ。
「お父様、エリオットとの婚約はどうなりましたか?」
「国王陛下に話を通した。おそらく大丈夫だ、こちらから持参金をいくらか用意すれば問題ないだろうが、条件次第では新しい爵位をいただくことにもなりかねん。その場合、すべて新生活の資金になる。我が家としては損はない、もっとも元王子の体面を保つだけの爵位をいただけないようなら、我が家に入婿ということにしてもかまわない。紋章院にも確認したところ、少し遡れば手頃な伯爵位がいくつかある。エリオット殿下に好きなものを選んでもらえるよう手筈は整えておこう」
父、万全である。娘のためにすでにちゃんと大枠の話をつけてきていた。細かい部分は政治的な話やエリオットの境遇を考えて慎重に詰めていく必要があるから、現段階ではこれがベストである。まあその旨は私の出る幕ではない、父がいいようにやってくれるだろう。
さらに、父は私の背後に控えるキサラギへ視線を向け、こう言いつけた。
「キサラギ」
「はい」
「お前はルクレツィアについていくように。いいな?」
「おおせのままに」
私が振り返ると、ぺこり、とキサラギは頭を下げて承諾していた。嫁ぐ娘に馴染みの従者やメイドをつけてやる——それは一般的なことだが、今回ばかりは話が違う。
「いいのですか? キサラギはただの使用人ではなく、お父様の大事な部下でもあるのでしょう?」
「キサラギには私の下で十分働いてもらった。もう本来なら自由にしてやるべきだが、私もキサラギもお前のことが心配でな」
「そういうことっす。お嬢様とエリオット様の邪魔にはなりませんから、おそばに置いてくださいな」
「うーん……まあ、キサラギがいいのならそれでいいけれど」
キサラギはメイドとしても、他の仕事をさせても優秀な使用人だ。嫁ぎ先までついてきてくれるのなら断る理由はない。本人が行きたいというのなら叶えてやるべきだろう、私は広い心で受け入れる。
こほん、とあからさまな咳払いをして、父は話題を変えた。
「しかしだ、婚約を結んだあと、しばらくお前とエリオット殿下にはこの国を離れてもらおうと思っている」
「え? 何か、問題でも?」
「王子が継承権を放棄するのはさすがに大事件だろう? 詮索や好奇の目が厄介で、落ち着いて生活ができん。新婚旅行と思って好きな国へ行くといい」
なるほど、言われてみれば父の言うとおりだ。新生活を見越せば、私は納得して頷くしかない。
「むう。じゃあ、エリオットに何か役職を与えてくださいませんか? さすがにずっと無位無官というのは、エリオットも気まずいかと」
「では、大使の席でも探しておこう。殿下は聡明であらせられるからな、それだけにたかが派閥争いのせいで王位継承権を失うのが惜しい」
このとき初めて、私は父からのエリオットへの評価を耳にして、そういうことなのだと思った。
優秀かそうでないかよりも、上手く世間を渡れるかどうか。王侯貴族というのはそれが大事なのだ。エリオットは父母の不仲が原因で、自分が悪くないにもかかわらず王位を捨てるまでになってしまった。アルフレッドは……身から出た錆でああなったけど、本来なら顔のよさを活かして舞踏会の花形になっていたかもしれなかった。きっと父は、そういう人を何人も見てきたのだろう。失うには惜しい人材を見送ってきた、だからこそ父は屋敷を開いて官僚たちの安全地帯を作り、世話をしている。
今回もそうだろう。私との婚約がエリオットにとっていいこととなるように、それを考えるのは婚約者でもある私の仕事だ。
「大丈夫ですわ、お父様。エリオットはいい鑑定眼を持っています。ガラスの馬の像やあの……キラキラした箱」
「螺鈿漆塗文箱ですか」
「そうそれ。そういうものを愛でる余裕もあるし、一度野に放ってあげたほうがいいです。案外、苦労を重ねて大物になるかもしれませんもの」
自分でも耳年増な発言だなと思うけど、王城という籠からエリオットを放してやれば、好奇心旺盛で異文化が好きなエリオットはあちこち行って商取引や交友関係を広めようとするだろう。外交官に向いているかもしれない、だとすれば大使の席はピッタリだ。
その私の意見に感心したように、父は目を細めていた。
「分かった、そうしよう。そうなるとお前も苦労することになるが」
「かまいませんわ。どうせなら気の合う殿方と苦労を分かち合いたいですし」
この受け答えにはキサラギも得意げに笑った。
「言うようになりましたねぇ、お嬢様」
——私、完全に子供扱いされている。キサラギからすれば私は小さい子供のころから世話をしているから、そういう保護者目線になるのか。保護者が嫁ぎ先までついてくる、と言われないよう、気を引き締めなければ。うん、それはちょっと恥ずかしいからね。
「キサラギ、よろしく頼むぞ」
「はい、承知いたしました」
こうして、私は無事、エリオット・ファルテー・イルネーゼと婚約を交わし、結婚の段取りを進めていくことになった。
◇◇◇◇キサラギ視点2◇◇◇◇
とある夜会、目元を覆う仮面をつけ、帽子を被った紳士淑女がサロンで談笑していた。
毎日のように開かれる交歓会は、社交界の情報収集にはうってつけだ。中には他国のスパイや商人もいるだろう。とはいえ、ここで得られる情報の価値を考えれば、中堅どころ以下の貴族は招待されて出席しないという選択肢はない。今宵もサロンが満員になるほど、人で埋め尽くされていた。
煙草の煙がくゆる一角で、扇子ごしに紳士淑女がこんな話題を出していた。
「聞きまして? ジャカール子爵が隣国の諜報員から多額の支援金を受け取っていたと」
「それをマイネへルン伯爵家へ嫁ぐ娘の持参金として、賄賂を贈ろうとしたのでしょう? 浅ましい話ですわ」
「末席とはいえ、マイネへルン伯爵家も貴族院に議席を持っておりますからね。しかし、嫡男の醜聞は如何とも」
「このままでは、マイネへルン伯爵は辞職に追い込まれるでしょうね」
「けっこうなことですわ。金で国を売るような国賊に議席を持たせるなんて、いかに国王陛下が寛容であっても許されることではありません」
「まったく、そのとおり!」
はっはっは、ほっほっほ、と同意の笑い声が上がる。彼らにとって利害関係者のうち自分たちに益を与えない者はみな敵で、証拠もなく国賊扱いして追い落としてもいい存在だ。対して、この場で自分たちに利益を与える情報をもたらし、気分よくさせてくれる者たちは「いてもいい」存在なのである。そのくらいの認識だ。
ごく自然に紳士淑女に混ざっているキサラギは、すべての会話に耳を傾け、ベルグランド侯爵家、特にルクレツィアに関する話題に神経を尖らせていた。だが、基本的にルクレツィアについての直接的な話はなく、もっぱらマイネへルン伯爵家とジャカール子爵家への悪口雑言ばかりだった。もっとも普段から彼らは嫌われていたのだから、ほんの少しの醜聞の種があれば芽吹くものだ。
会話がひと段落したころ、遠くから聞こえる管弦楽団の曲が終わった。ではこれで、とひとまとまりになった集団は解散し、新しい人々と会話に興じるため場所を移す。
すっかりどこぞの貴族の夫人と化したキサラギは、おおよそ人々の口に上る話が予想の範疇内だったことに胸を撫で下ろした。
(はー、やれやれ。仮面舞踏会様々だわ、こりゃ)
正体を露わにしないことを条件に参加できる夜会はそう多くはない。だが、そういう情報はベルグランド侯爵家にいれば自然と耳に入ってくる。キサラギはそれらに身分を隠して参加し、有用な情報がないか、今貴族の間で興味が持たれているジャンルは何か、醜聞は、評価は、といったことをしっかり情報収集する。キサラギを通じて多忙なベルグランド侯爵は社交界の事情に明るくなり、時間の節約と妙な輩に絡まれるリスクを大幅に軽減しているというわけだ。
(しっかし、マイネへルン伯爵家に「議員辞職」なんて逃げ道を用意してやるなんて、旦那様も慈悲深い。落とし所は廃嫡だろうけど、恨むなら色ボケ男と浅知恵を働かせたジャカール子爵家を恨んでね)
もちろん、そうやって聞くばかりがキサラギの仕事というわけではない。
少し離れたソファに座る紳士が、周囲の淑女へこんなことを言っていた。
「しかし、マイネへルン伯爵家の嫡男は、ベルグランド侯爵家令嬢のわがままに付き合わされていたと聞くが」
キサラギは素早く、自然にそこへ立ち寄り、紳士の肩を叩いてきつめに訂正する。
「いえいえ、そのような事実はございませんわ。マイネへルン伯爵の負け惜しみですわよ、それは」
紳士はケチをつけられたと反論しようと口を開いたが、その前に——キサラギが思ってもみなかったことに、他の淑女たちがキサラギと同じ立場に立ち、不機嫌そうな声を荒げた。
「そうよ。あなた、いつからマイネへルン伯爵のスピーカーにでもおなりになったの? ルクレツィア様は目立つことを嫌い、芸術品をこよなく愛するご令嬢ですわ。私、幼いころから存じておりましてよ」
「ええ、私もですわ。何より、多くの芸術品に触れてきただけあってセンスがとてもよろしいの。滅多に舞踏会にはいらっしゃらないけれど、いつも気品ある新色のコーディネートにははっと目を奪われますわ。一度誰に選んでもらっているのとお尋ねしたの、そうしたら、すべてご自分で選んでいるのですって。驚いたわ、本当に」
やんややんやと淑女たちはルクレツィアの肩を持ち、褒める。これには紳士も予想外だったのか、口をつぐむしかない。
目の前で交わされる自分の主人への賞賛に、キサラギは扇子で隠した頬を緩めていた。
(何だ、お嬢様もきちんと見る目がある人には評価されてたんだ。心配して損しちゃったわ)
これならば、ルクレツィアも貴婦人となってやっていけるだろう。安心したキサラギはゆっくりと、その場を離れた。
◇◇◇◇キサラギ視点2・終◇◇◇◇
私、ベルグランド侯爵家令嬢ルクレツィアとイルネーゼ王国王子エリオットの婚約は無事成立し、結婚式は帰国してからやることが決まった。なので、今やることは荷造りだ。私は王城のエリオットの部屋に入り浸って趣味の品の状態を見て、これは保管する、あれは修復させる、そうした分類を時間をかけて行っていた。
ところで、螺鈿細工というのは、虹色に光る貝殻を薄く砕いて、漆塗りした箱へ貼り付けるのだとか。
私の手にある顔ほどの大きさの、手紙を入れる箱だというそれは、蝶々が草木の間を飛ぶ柄だった。シンプルで優美なその箱を、私はエリオットへ手渡し、そして——。
「へぷし!」
なぜかくしゃみが出た。真っ先に箱を私から遠ざけたエリオットが、励ましの文句を口にする。
「うわ、神のご加護を、ルクレツィア」
「うん……それより、どこに行きたい? せっかく国を離れられるんだから、エリオットの行きたいところに行きましょ?」
「ありがとう。じゃあ、東の国なんてどうかな。君のところに、東の国出身の従者がいただろう?」
それは明らかに、エリオットの趣味でもあった。東方趣味のエリオットは手にした箱に喜びを隠せていない。
それにしても、私たちがどこかへ行くとすれば近隣諸国よりも船旅で何ヶ月か離れた土地に行ったほうがいい。となればやはり東の国は真っ先に候補に上がるのだ。キサラギの故郷、そこならば色々と都合がいい。
「そっか、キサラギに通訳をしてもらえばいいのね。こんな遠い土地で現地語の通訳なんて雇うのは難しいし、ちょうどいいわ!」
「よかった。この箱があまりにも綺麗だから、他にも美しいものがあるんじゃないかと思って、今からわくわくするよ」
現金な反応をするエリオットが何とも微笑ましかった。目の前の美術品を見たままに感じ、美しいと知れば素直に欲しがり、手に入るのではないかと子供っぽく嬉しがる。そんな姿を見せるのは、きっと私の前でだけだろう。普段の「エリオット王子」は優柔不断で一歩引いた冷静な見識を持ち合わせた学者肌の青年で……なんて評されているのは、本人がそう演じているからだ。派閥争いにこれ以上巻き込まれないため、政治には興味がありません、無私公正を重んじますとばかりの態度を取ってきた。そんな姿からは、今のエリオットを想像することは難しい。
エリオットにとってこの婚約、結婚は結局のところどんな意味を持つのだろう。エリオットは自由になれるのだろうか。いまいち分からない私は、箱を撫で回す本人に尋ねてみることにした。
「エリオットは、私と結婚するのは嫌じゃなかったの? それでよかったの?」
すると、エリオットは髪の毛を揺らしながらふにゃりと笑った。
「ははっ、今更だね」
「何よ、気にしているんだから」
「ごめんごめん。実を言うと、君のおかげで退屈な僧侶にさせられずに済むんだ。王位継承権を放棄した王子は僧籍にして二度と故郷に戻らせない、そんなふうに言われていたところ、ちょうどベルグランド侯爵家が婚約の話を持ってきてくれたから……それならそちらに、ということにしよう、ってね」
「えっ、そんな話になって」
「本当に、ギリギリのタイミングだったよ。十八の誕生日と同時に王位継承権の放棄が決まっていたからね」
「あと一ヶ月じゃない! はー、よかった! エリオットともう会えなくなるところだったわ!」
そんなとんでもない話になっていたとは、私はまったく知らず知らずのうちにエリオットを助けられたようだった。僧侶なんかになったら悪いことをしないかぎり高価な美術品や芸術品に触れることはできなくなるし、貴族令嬢とこうして気軽に話すことだってできなくなる。
しかし、エリオットをそんなにまで嫌うなんて、王様は見る目も何もない。ぷんすかする私に、エリオットは突然惚気出した。
「そういうところ、好きだよ。ルクレツィア」
「えっ、いきなり何?」
「ずっと君のことが好きだったから」
「えー? そんなこと今まで言わなかったのに、怪しい」
「政争に負けた王子なんて君には似合わないじゃないか。言えなかったんだよ」
「ふぅん、気にしなくてもいいのに」
私は本心からそう言ったけど、エリオットははにかむばかりだった。どうせ、私の邪魔をしたくないからとか、そんなことを考えていたに違いない。私にはあの偉大なるベルグランド侯爵というとんでもない後ろ盾がいるから、政略結婚する必要さえ実はなかった。アルフレッドとの婚約だって、母方の伯母が数年前に見合いを勧めてきたから——私視点ではなあなあで婚約していただけにすぎない。もちろん、マイネヘルン伯爵家は思いっきり政治的意図をもって婚約の話を持ってきていたのだろうけど、肝心のアルフレッドがご破算にするとは思ってもみなかっただろう。
だから、今まで婚約しているという実感は薄かった。それが今となってはエリオットと婚約していて、新婚旅行の話だってしている。
「ねえエリオット、私のことはその、すぐに結婚相手って見なくていいからね。今まで普通の友達だったしさ」
「普通の友達にいきなり婚約の話を持ってくるあたり、君ってすごいよね」
「いいの! 承諾したエリオットだって大概じゃない!」
「つまりお互い様ってことだね。ははは、確かにすぐに恋人や夫婦にはなれそうにない」
「でしょ」
「でも、私はちゃんと君のことが好きだから、いつでもそれらしく振る舞ってくれていいよ」
——そういうことは、真正面から私を見て言ってほしい。
エリオットはキラキラ蝶々の模様が光る箱を愛おしそうに眺めながら、満足げだ。
「努力する」
「待っているよ」
私の友達は変わった人だ。その変わった人は今や婚約者であり、近々結婚するし、新婚旅行にも一緒に行く。
いつしか私はこの人と夫婦らしくなったりするのだろうか。でも今は一緒に好きなものを眺めたり、確かめたりすることをしたい。
やがてイルネーゼ王国は東の国への使節団派遣を決定し、駐在大使にハクスベルク公爵エリオットを任命する。数百年前に断絶した公爵家を継いだ俊才は、遠く離れた東の国へと妻とともに向かい、たくさんの美しいものを発見する旅となる。
それらを故郷へ持ち帰り、東方の知られざる魅力を伝道することになるが、エリオットの妻ルクレツィアの熱心な芸術文化保護活動により両国は緊密な友好関係を築いていく。
おまけ
東の国行きが決まったあと、私から直接キサラギに伝えるときわめて渋い顔をされた。
「ちょい待った、お嬢様それはだめ。東の国はだめっす」
「何でよ」
「あー……私がちょっと悪い方向に有名人でして、はい」
「何かしたの?」
「したからこんな遠い国に来たんじゃないすか」
「へー、でもちゃんと私の従者って身分があれば大丈夫じゃないの?」
「まあ、うん、そうね……いやいや、顔出して歩けないくらいには有名人なので」
「……何やったの?」
「色々と」
——色々とって何なの。
しかしもう決まったことだから変えられない。
「でもエリオットと約束しちゃった」
「はー、何でそう勝手なことをするんすかね!」
「ごめん」
「いいっすよもう。私が捕まったらちゃんと保釈手続きしてくださいね!」
「ねえ、本当に何やったの?」
「色々と」
——保釈しなければならない色々とって何なの。
そのとき私の疑問は深まるばかりだった。
まあ東の国ではキサラギは何度も何度も大騒動を起こすことになるのだが、それはまだ先の話。
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