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TOD  作者: ナナシノススム
前半
62/273

前半 02

 孝太は目を覚ますと、何やらリビングの方から千佳の声が聞こえたため、そちらへ行った。

 そこには、母親と一緒に料理をしている千佳の姿があった。

「孝太、おはよう! 早速、朝食を作るのを手伝ってるんだよね!」

「ああ、おはよう……」

「テンション低い!」

 寝起きでまだ頭が働かない孝太と違い、千佳は朝から元気だった。

「むしろ、千佳は朝からテンションが高いな」

「だって、孝太の朝食を作れるなんて、楽しいもん!」

「……真面に食べれる物を出してくれよ?」

「それは、大丈夫! 私はあくまで手伝いだから!」

 千佳はそう言ったが、見ていると母親の指示を聞きながら、基本的に千佳が朝食を作っていた。ただ、楽しそうにしている千佳を見て、孝太は朝から気分が高まった。

 それから孝太は顔を洗うと、リビングに戻った。すると、スーツを着た父親が椅子に座っていた。

「父さん、おはよう」

「孝太、おはよう。今朝は千佳ちゃんが朝食を用意してくれているんだな」

「うん、そうみたいだよ。手伝いとか言ってたけど、ほとんど千佳が作ってるし、真面な料理が出るといいんだけど……」

「不味くても美味しいと言え。それで父さんは母さんと上手くいった」

 それは聞いて良かったのか、聞かない方が良かったのか、判断に難しかった。ただ、昨夜から父親が普段しない話をしていることは確かで、そのことは単純に嬉しいと孝太は感じた。

「はい、お待たせ!」

 千佳は嬉しそうな様子で、テーブルに料理を並べた。

 料理自体はいつもどおりで、ご飯にオムレツ、それとサラダだった。この中で、ご飯は炊くだけだし、千佳の手が加わっているのはオムレツとサラダだ。オムレツもサラダも簡単に作れるため、当たり前と思いつつ、見た目的には普通に美味しそうだった。

「よし、食べようか。それじゃあ……」

『いただきます!』

 昨日の今日なのに、千佳は孝太達の挨拶にピッタリ声を合わせた。そして、声が揃ったことを喜んでいるのか、嬉しそうに笑った。

 それから、孝太はまず箸でサラダを取った。すると、箸でつかんだ野菜だけでなく、繋がったキャベツが一緒についてきた。

「あ、ごめん。ちゃんと切れなくて……」

「別に、これぐらいなら問題ねえよ」

 実際、野菜がちゃんと切れているかどうかの違いだけで、味は何の問題もなかった。

 それから、孝太はオムレツを食べた。味付けを母親がしてくれたのか、特に普段食べているのと変わらない、いつもどおりの味だ。と思っていたら、不意にガリっと変な音がした。

「そうだ、ちょっと殻が入っちゃって、全部取ったつもりなんだけど……」

「……これぐらいなら、大丈夫だよ。それに、味は美味しいよ」

「それなら良かった!」

 父親から助言を受けていなかったら、文句の一つでも言いたいところだったけど、千佳の喜ぶ顔を見て、文句を言わなくて良かったと孝太は感じた。

「何だか、娘ができたみたいで楽しくなってきちゃった」

「いえ、そんな! 娘だなんて……」

 千佳は慌てている様子だったけど、顔は満面の笑顔だった。そんな千佳を見て、孝太は今後の関係について、自然とこんな風になるんだろうと様々な想像が浮かんだ。

 千佳が時々遊びに来て、それを両親が迎え入れる。千佳はきっと両親、特に母親と今後もっと仲良くなっていく。そして、みんなと一緒に遊んだり、時には二人で遊んだり、そうなっていくんだろう。そんなことを考えて、孝太は千佳からの告白の返事を今すぐにでもしたくなった。

 ただ、美優達の件が落ち着くまで、この気持ちを抑えようと、孝太は決心した。

「母さん、今日は学校がねえけど、千佳と一緒に出掛けてくるよ」

「あら、デート?」

「いや、そうじゃなくて……」

「昨日も言ったけど、あまり危険なことに近付かないでね?」

 冗談を言いつつも、母親は孝太達が何をしようとしているか、わかっている様子だった。それを感じつつ、孝太は頷いた。

「うん、大丈夫だよ。安心して」

「あ、孝太、ちゃんと着替えたいし、私の家に寄ってもいいかな?」

「ああ、その辺は大丈夫だと思う。後で色々と決めよう」

 ダークに参加希望を出したところ、今日の11時、学校の近くにある大きな公園で、ダークのメンバーと待ち合わせすることになった。とはいえ、結局のところ孝太達は囮のようなもので、詳細は圭吾と光に考えてもらった。

 ダークは普段、隠れて行動することが多いようで、これまで連絡することすら困難だったようだ。ただ、定期的に集まっている場所があるだろうと圭吾と光が考え、今回の目的はその場所を特定することが第一ということになった。そのうえで、ダークに協力をお願いするか、それが無理ならダークを監視することができれば、ダークがTODにかかわっていた場合でも対処できる。それが現時点での結論で、それには孝太達も納得した。

 とはいえ、具体的にライトのメンバーがどこで待機するかはまだ聞いていない。というのも、待ち合わせ場所に見晴らしの良い場所を指定された今、ダークのメンバーに見つからないようにするのが、なかなか困難になってしまったからだ。また、見つからないようにするため、少数にする場合、今ディフェンスにいる可唯がいないと戦力的に厳しいという話もあり、そちらもまだどうなったかわからない。ただ、この辺りは圭吾と光がどうにかしてくれていることを期待した。

 また、孝太は昨夜のうちにダークゴーからダークの情報を集めた。もっとも、ダークゴーはダークの宣伝を兼ねているため、基本的には良いことばかり書かれていて、話半分に眺める程度だった。ただ、ダークの目的と、実際に行っていることを知った時、孝太の中で少しダークの印象が変わった。それは、今回の件で何かしらか協力してもらえるのではないかと期待させるものでもあった。

 しかし、あくまでダークが自らを宣伝しただけのものであることを踏まえ、楽観的過ぎるのは良くないと気を引き締めた。

 そして、朝食を終えると、孝太達は仕事へ向かう父親を見送った後、出かける準備をしてから家を出た。それから、着替えをしたいという千佳の家へ向かいつつ、その途中で孝太は圭吾と光に連絡した。

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