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TOD  作者: ナナシノススム
試合開始
41/273

試合開始 11

 冴木と篠田は、美優の祖父母とペットの犬を、あらかじめ用意していた建物に匿った後、それぞれの車に乗った。それからハンズフリーでスマホの通話を繋いだ後、城灰高校を目指して車を走らせた。

「上手くいって良かったわね」

「ああ、協力してくれて、助かった」

「ところで……」

「俺は何も話さないからな」

「もう、せめて質問ぐらいさせてよ。でも、まあいいわ」

 篠田が珍しく察してくれたのか、それ以上聞いてこなかったため、冴木は今後の作戦を話すことにした。

「この後、城灰高校の外でターゲットを待つ」

「ターゲットなんて言い方、私は嫌ね。だから、いつもどおり美優ちゃんって呼ぶわ」

「……わかった。これから美優を城灰高校の外で待つ。だが、もしかしたらオフェンスが校内に入って美優を殺そうとする恐れもある。できれば他のディフェンスと合流して、各門を見張りたい」

「さすがに校内に入るオフェンスなんていないんじゃないかしら?」

「そう思いたいが、何を考えているかわからない奴がオフェンスにいる可能性もある。警戒はしておきたい」

「確かに、冴木の言った『悪魔』とかは、手段を選ばないんだものね」

 不意に悪魔のことを言われ、戸惑ったものの、冴木は説明を続けた。

「あと、元から校内にオフェンスがいる可能性も考えた方がいいかもしれない」

「そんなことあるのかしら?」

「可能性としてはある。生徒がオフェンスで参加するケースは考えづらいが、教師がオフェンスで参加するケースは、十分あるんじゃないか?」

「その場合、どうするのよ? 私達が中に入ったところで不審者扱いされるし、打つ手がないじゃない」

 篠田の言うとおりで、冴木は何も答えられなかった。

「まあ、レアケースだし、起こらないことを祈るわ。それに、たとえそんなことがあったとしても、美優ちゃんの友人が守ってくれるはずよ」

「そうだな……話を戻す。美優と合流した後は、ここから離れて、ある建物に潜伏する。そこは万全なセキュリティがあるだけでなく、五日分の食料も確保している。そこでゲーム終了まで乗り切るんだ」

「地味な作戦ね」

「変に動き回るより、この方が確実だ」

「万全なセキュリティっていうけど、本当に大丈夫なのかしら? 故障したらどうするのよ?」

「ネガティブに考え過ぎだ」

「冴木がポジティブ過ぎるのよ」

 相変わらず、篠田とは話が合わず、冴木は苦笑した。そのうえで、とにかく従ってもらおうと、ある言葉を伝えることにした。

「それじゃあ、篠田に何か案はあるのか?」

「それはないけど……」

「代替案がないなら、俺の案に従え」

「……何だか意地悪ね。わかったわ。冴木の案に乗るわよ」

 いつも篠田のペースに振り回されていたが、一矢報いたような気分で、冴木は思わず笑みが零れた。

 そうして、城灰高校が近付いてきたところで、冴木は妙に制服を着た高校生の姿を見かけると感じた。

「冴木、何だかおかしいわ。周りにいるの、城灰高校の生徒よ」

「待て、今日は短縮授業だったのか?」

「そんなことないと思うけど、何でかしら?」

「美優が外に出ていたらまずい! とにかく学校へ行って、状況を確認しよう」

「わかったわ」

 冴木と篠田はスピード違反など気にすることなく、速度を上げた。そうして、城灰高校の前に車を止めると、それぞれ車を出た。

「もうほとんどの生徒が下校したんじゃないかしら?」

「いったい、何があったんだ?」

「丁度良かったわ。千佳ちゃん!」

 篠田はそう言うと、門の近くにいた女子高生に声をかけた。

「篠田さん、どうしたんですか?」

「それはこっちの台詞よ。みんな下校しているけど、何があったのかしら?」

「その……さっきたくさんの不良達が来て、騒ぎになったんです。それで、今日はもう下校になったんですけど?」

「美優はどこにいる!?」

 焦りのあまり、冴木は大きな声が出てしまい、千佳が驚いた様子で体を震わせた。

「ああ、すまない。俺達は美優を捜しているんだ」

「そうなの。美優ちゃんのいる場所、わかるかしら?」

「美優なら、剣道場の方へ行きましたけど?」

「だったら、すぐ案内してほしい。美優に危険が迫っているんだ」

「どういうことですか?」

「説明は後よ。とにかく美優ちゃんのいる場所まで案内して!」

「わかりました」

 千佳は状況を飲み込めず、動揺した様子だったが、どうにか納得してくれた。

「それじゃあ、こっちに……」

「やあやあ、もしかして、君達もディフェンスかい?」

 不意にそんな声が聞こえて、冴木達は振り返った。そこには先ほども見かけた、戦隊もののヒーローに見えるコスプレをした男性が立っていた。

「私は正義の味方『セーギ』だ! 共にターゲットを守ろう!」

「……早く美優に会おう。千佳と言ったな? 案内してくれ」

「そうね。急いでいくわよ」

「わかりました」

「なるほど! 無視とは驚いた! しかし、このセーギは負けない!」

 セーギと名乗る男がまだ何か言っていたが、冴木達は無視すると、千佳の案内で美優がいるだろう剣道場へ向かった。

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