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作者: ユタセコ

息抜きに

ここは夏の教室の昼下がり。

黒板に文字書く少女と、机に座る少年が2人。


「どうしたの?難しそうな顔をして」


少女は自分の席に戻ると隣の席の男子に尋ねた。

彼は剣道部の田中くん


「ああ、文学少女のふみさん。

ちょっと気になったことがあってさ。」


私は文学少女のふみまなび。

みんなから文学少女と呼ばれてる。


田中君は手に持った漫画を寄越すと、

ワンカットを指し示す。


「前回倒した宿敵が、今度は味方として登場したんだ。現実ではこんなこと有り得ないよな。」


「ああ、そういう事」


「でも、漫画じゃ良くある事なんだぜ。

剣道やっていてもこんな事無いし、

どうしてこんな展開になるんだろう」


「知らないの?

日本じゃ当たり前にあったシュチェーションよ。

特に戦国時代にはね。」


「どうゆう事?」


文学少女は語り出す。

なぜ、日本の漫画は宿敵が味方になる事が多いのか?



「戦国時代にはね、破れた武士は勝った武士の傘下になる事が暗黙のルールがあったの。

実害、その領土の武士をすげ替えると領民の反発があるからっていうのもあるんだけど、安土桃山時代とかの文献やら読むと顕著だよ。

男子って織田信長好きでしょ?」


「ふみさん。みんなそうだとは限らないよ」


「そうなの?

でね、破れた武士は忠誠を誓うでしょ?

そして仲間を増やして展開を統一していくストーリーは誰もが憧れるが王道ストーリーとして日本に根付いたの。

海外だと敵と裏切りものは断罪ものだから、

殺されてしまって仲間にはなれないのよ。

仲間は最初から仲間として加わった登場人物に限られていて、中国なんかは歴史的にも民族による政権交代の繰り返しているわね。」


「へぇ、日本だけって感じなんだ。

良く知っていて凄いね。」


「更に言えば、日本にはこの王道ストーリーを成立させるのに欠かせない文化があるの。」


「文化?」


「そう、それは“名乗り”の文化よ」


「名乗りってはじめまして、私は田中ですって言うやつ?」


「そう、剣道だって前掛けに名前を入れてるでしょ?相手に自分の情報をさらけ出すのは日本の文化よ。

柔道だって帯で実力を明らかにしてるわ。」


「垂ね。でもあれは只、引率の先生が誰か分かりずらいからしているだけじゃないの?」


「いいえ、現在のメリットは置いといても、名乗りの文化の名残りなの。

じゃなければ、リングアナが声高に選手紹介する文化は育たないわ。

名乗らなければ、勝った後に自分の傘下に入れられないでしょ?剣道の道場破りも、名乗らなければ始まらないのよ」


「名乗りかぁ、たしかに名乗らずに攻撃するのは卑怯だし。」


「そうなのよ。

それが日本の美意識というものの一つね。

相撲って、お互いが呼吸を合わせて立ち会うでしょ?

普通はレフェリーがいないと、勝負って正々堂々とはいかないものなのよ。

それが成立するにはこの意識が不可欠。世界で唯一と言って良い競技が相撲よ。」


「でも、名乗りっていつからあるの?」


「田中君、あなたは素晴らしいわね。」


「あ、ありがとう。」


「古くは万葉集に出てくるわ。

とある天皇が女性に向けて読んだ歌の中に“どうか私が名乗りますから、貴方も名乗りをしてください”と詠んでるわ。」


「えっ、果たし合いの申し込み?女性に?」


「呆れたわ、前言撤回。女性に試合を申し込む訳ないでしょう。結婚の申し込みよ。この時代に女性が身分を明かすのは結婚に承諾した時よ。顔も連絡先も住んでる場所だって明かさない時代なの。」


「じゃあ、時代によって名乗りって意味が変わっているって事?」


「見た目上は、ね。

本来の意味合いは変わってないのは分かる?

本質と言っても良いわ。」


「名乗りの本質?」


「名乗りは、名が相手に乗るのよ。

私の名前を貴方の上に乗らせる。

つまりマウントしますよって宣言する事。

相手に名乗るのも、私の傘下に加われって言う宣言。女性に名乗るのも、私の妻になれっていう宣言よ。


名乗りの本質は、相手を自分で上書きする意思からきているの。」


「ええっ、なんか怖いな。」


「ちなみに、参考までに。

日本人の女性を口説く時は、女性から名乗ったら脈ありよ。名乗らなかったら名前、携帯、住んでる場所を順に聴き出しなさい。貴方にどれ位好意があるか分かるわ。」



「ふみさん?」



「ちなみのちなみにね、

今話題の詐欺を見抜く方法があってね、

それは丁寧に名乗りをするかどうかなの。

相手に自分の意図を通そうとすればする程、無意識に名乗りが長くなってしまうのが日本人。よく分からない部署が出てきたら、作り話の可能性が高いわ。慣れたホンモノの警察は聞き手が分かる範囲でしか言わないの」


「う、うん、」


「更にね、

これを応用すれば、あっ、もう時間ね。」


「あの、」


「ちなみに、

あなたに何を聞かれても、私の事は教えないわよ」


「ぇえ、、、」



キンコーンカンコーン

予鈴が響く


「じゃあ次、視聴覚室だから、遅れないようにね。」


そんな感じで、今日も昼休みが終わります。




Q問い

なぜ、日本の漫画は宿敵が味方になる事が多いのか?


A答え

名乗ってマウント取れれば皆んな友達

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