第二話「虎の尾を踏むバカたち~斗真、誘拐される~」
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「なあ、アイツで間違いないんだな?」
「ああ、裏の世界では最近顔が売れてきている、やたらめったら腕っぷしが強い裁縫師だってよ」
「裁縫師?どうしてそんなヤツが、注目されているんだ?」
「知らねえよ。とにかく、俺たちは依頼人の言うとおりに、言われたことをやればいいだけよ。そうすれば、たんまりと大金が手に入るんだからな!」
「へっ、違いねえ!」
【サクラ雑貨店】から出てきた、黒髪黒目の、見目麗しい美少女・・・にしか見えない、小柄で華奢な少年を見て、建物の陰に隠れていた二人組の男たちが頷き合い、静かに動き出した。
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「素材、色々といい物が買えてよかったよ。これで新しい魔道具を作るんだ。楽しみだな~♪」
「何を作るんだよ?」
「えへへ、内緒!」
紙袋にパンパンに詰め込んだお宝の山を抱えて、僕は足取りも軽く、拠点に戻っていた。
これだけ珍しい素材があれば、みんながアッと驚くようなすごいものが作れちゃうかも?
さてと、早く拠点に帰ったら、さっそく今考え付いたものを作ってみようっと。
その時だった。
僕たちの目の前に、フードで顔を隠した、黒いマントを着込んでいる人が突然飛び出してきた。
「お前が、カジ・トーマだな?」
「え?」
「我が主のために、お前には来てもらおうか!!」
突然、懐から紙を取り出すと、僕の前に開いて突き出した。
紙に書かれている魔法陣が赤く光り出して、視界が赤い光で覆われる。
「なっ!?」
「ハハハハハハッ!!これで、俺たちも大金持ち・・・ぐはっ!?」
ヒュンッ、と風を切るような音がしたかと思うと、紙を持っていたフードの人物が、膝から崩れ落ちて倒れこんだ。
その近くには、ヴィルヘルミーナさんがカットラスを振り上げていた。
その瞬間、僕の身体はそこから消えていた。
(転移魔法・・・?でも、どうして、僕を!?)
視界がグルグルと回転して、僕の身体は、紅い光の中に飲み込まれていった。
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「よ、よし、あとはトンズラこいて・・・ひっ!?」
逃げようとしたマントの人物の前には、桜が立っていた。
そして、顔に突き刺さる寸前で、鋭く光る刀の刃を向けていた。
「・・・おい、テメェ。斗真に何をしやがった?」
「サクラ、コイツらをとりあえず捕まえて、適当な場所で尋問をしようか」
桜と、ヴィルヘルミーナの表情が、一切の感情がそぎ落とされたような無表情に豹変していた。
峰討ちを受けて倒れこんでいるマントの人物のフードを落とすと、気絶している男性の顔が現れた。
そして、フードがめくれて素顔が露わになった男は、桜とヴィルヘルミーナが放つ殺気に震えあがり、思わず腰を抜かしてしまった。
「・・・逃げられねえように、両ふくらはぎを切って、両膝の皿を割って、魔道具が仕えない様に、腕をへし折って・・・どうしてやろうかなぁ・・・クックック・・・」
桜が冷たく笑った。
極道の世界で生まれ育ってきた彼が、仲間を傷つけたものに見せる、底知れない狂気。
過去に、この笑みを向けられたチンピラが、何人病院送りにされて、恐怖のあまりに廃人にまで追い込まれたことだろうか。
男は、まるで蛇に睨まれた蛙のように震えあがり、必死で地べたを這って逃げようとする。
グシャッ!!
「あぎゃあああっ!?」
しかし、そんな男の手を、ヴィルヘルミーナが容赦なく踏みつぶした。
手の甲を砕くほどの勢いで踏みつけ、グリグリと弄ぶように踏みつけながら、彼女は震える男を見下して、凍り付くような怒りを孕んだ声で話しかける。
「・・・逃がさないよ。君は、ボクたちのことを本気で怒らせたんだからね・・・!」
この時、男たちはようやく理解した。
自分たちが連れ去った相手が、決して手を出してはならない虎の尾を思い切り踏んでしまったことに。
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「・・・うん・・・いてて・・・ここは・・・?」
頭の中がグルグルしていて、思考がまとまらない。
そうだ、僕は確かあの黒マントの二人組に、いきなり襲われて・・・。
「・・・おい、アンタ、大丈夫かいな!?おかん!この姉ちゃん、目ェ覚ましたで!」
誰かの声が聞こえる。
その声で、僕はようやく意識が覚醒した。
「・・・ここはどこ?」
「おう、目ェ覚めたんか。大丈夫か?」
そこにいたのは、褐色色の肌に燃えるような赤色の髪、まるで歴戦の戦士のように鍛え抜かれた身体とバキバキに割れた腹筋、そして、ビキニアーマーから飛び出しそうになるほどの豊満な胸が特徴的な女性だった。
そして、その傍らには同じく赤色の髪をツーサイドアップにまとめ上げている、褐色色の肌を持つ、猫のようにクリクリとした丸い金色の瞳が特徴的な、可愛らしい女の子がいた。
「驚いたで。アンタ、いきなり転送魔法で、牢の中に飛び込んできよったんや」
「・・・牢・・・?」
その言葉で、周りを見回してみる。
鉄格子。
狭くて冷たい、石作りの部屋。
床に敷かれている、布団代わりのワラ・・・。
簡易トイレのようなものしか置かれていない、殺風景なこの部屋は・・・。
「・・・牢屋、ですね。これは」
うん、間違いなく牢屋だな。
鉄格子から見える外の風景は、ランプの灯りだけが灯っている、石作りの監獄のようだった。
しかし、長い間、手入れがされていないらしく、よく見ると、あっちこっちがボロボロになっている。
「騒いだら看守に気づかれるで。まあ、いきなり牢屋に飛び込んできよったんがバレたら、アンタの命が危ないからな」
「・・・ありがとうございます。僕は【彩虹の戦乙女】の裁縫師の梶斗真といいます。ええと、貴方がたも、あのマントの男たちに連れてこられたんですか?」
「マントの男?いや、ウチらは、アムレットの国王と側室に嵌められて、罪人に仕立て上げられて、ここに幽閉されとったんや」
アムレットの国王に嵌められた?
あれ?というか、この話、ついさっき、桜たちが話してくれた話に出てこなかったか?
「・・・あの、失礼ですが、もしかして、アムレットの王妃様と、第一王女様ですか?」
「何や、今頃気づいたんかいな。てっきり、ウチらのことを知っとるもんやと思うとったで」
「そうや。こちらにおられるんが、アムレット王国王妃の【アルビナ・フォン・アレクサンドリア】陛下や!ほんで、ウチが第一王女の【アンジェリカ・フォン・アレクサンドリア】や。まあ、今は王位をはく奪されて、王家を追放された身やねんけどな・・・」
やっぱりだ!
さっき、桜が話してくれた、国王が真実の愛を見つけたとかいう、訳の分からない理由で婚約を破棄して、冤罪を仕立て上げて、罪人として捕らえた王妃様と第一王女様って、この人たちのことじゃないか!?
僕がその話をすると、二人が、目を丸くして驚いた。
「そうか、アムレットの国王と側室は、ウチらが国家転覆を図った大罪人として国民に触れ回っとったけど、その事を疑ってくれている人もおるんやな」
「ホンマにありがたい話や。誰が国家転覆なんてやるかっちゅうねん。やろうとしてるのは、側室の方や!!アイツは、オトンを誑かして、誘惑して、完全に自分の虜にしよった!!オトンは完全に骨抜きにされよって、ウチや、おかんの話に全然耳を貸してくれへん」
「・・・前々から、側室の【アニタ】には、色々と良くない噂を聞いとるからな。公爵令嬢で、身分に関しては申し分があらへんけど、得体のしれない呪術や魔法の研究をしていたとかいう話も聞くし、裏でうちらを追い出すために、大臣や貴族たちの大半を味方につけよった。アイツは最初から、王妃の座を乗っ取るために、国王陛下に近づきよったんやな・・・」
アルビナさんが深くため息をついた。
しかし、その表情が徐々に真っ赤になっていき、ギリギリと歯を食いしばって、憤怒の形相に変わっていく。
「・・・せやけどなぁ・・・ウチかて、アムレットに嫁いできて、王妃として、国のために尽力してきたつもりやったんやけどなぁ。ウチに不備があって、婚約を破棄されるんやったら、まあ、しゃあないと思えるんやけどな・・・婚約を破棄した理由が・・・『真実の愛を見つけた』やて?随分とコケにしてくれるやないかい。ましてや、側室は、アンジェリカとほとんど年が変わらない、親子ほどの年の差があるっちゅうのに・・・婚約を強引に押し通すとはなぁ・・・!」
う、うん、はらわたが煮えくり返る気持ちは分かるよ。
どう考えても、国王陛下と側室がこれは悪いだろう。そもそも真実の愛なんて、浮気の言い訳の代名詞みたいなものだし、王妃様からすれば裏切りでしかないぞ。
「そのうえ、アンジェリカまで罪人に仕立て上げて追放しよってからに・・・!アンジェリカは、国王陛下の血を受け継いだ、国の正当な継承者やないか!冤罪をなすりつけて追放するやなんて、アイツは、側室に骨抜きにされたばかりか、親としての心も見失ったんか!?」
「おかん、それはしゃあないわ。オトンは、ウチがおかんに似ていることと、おかんに憧れて、政治や交易の勉強に励んでいることが気に入らんかったからな。政策や交易を、国王である自分を差し置いて、おかんに信頼がおかれていることを、オトンは妬んどったみたいやし。せやけど、オトンの考えは正直甘すぎるんや。あんな、頭の中にお花畑が咲き乱れとるような思考回路やったら、あっという間に他国にスキを取られて、いい様に利用されるんがオチやしな」
国王、妻と娘にボロクソ言われまくっていますな。
まあ、頭の中がお花畑というのは、間違っていないだろう。
そうじゃなかったら、国のために尽力してきた妻と娘を、真実の愛を見つけたなどと言う理由で側室と浮気したり、罪人に仕立て上げて追放したりすることなんてないからね。
その時だった。
どこからか、ピー、ピー、と音が聞こえた。
その音は、僕が着ているジャケットの内側から聞こえてきた。
「あ、そうだ!ここに、通信機を内蔵していたんだった」
よっしゃ、これなら連絡が取れる!
僕は、看守がいないことを確認すると、通信機を取った。
「・・・こちら、斗真です」
『トーマ!?オレだ、レベッカだ!!大丈夫か!?』
「大アネキ、僕は大丈夫です。心配をかけちゃって、本当にごめんなさい」
『お前が謝ることはねえよ!それよりも、お前、怪我とかしてねえんだな?』
「うん、大丈夫。それよりも、この通信機には、発信機がついているから、桜に、僕が今どこにいるか、確認を取ってもらえますか?それと、桜に伝えてもらえませんか?さっきの話は、本当だったって。今、僕の後ろに、アムレットの王妃様と第一王女様が、同じ牢屋に捕まっているんです」
『・・・牢屋、だと?』
その瞬間、大アネキの口調が、感情を感じさせない冷たい口調に豹変する。
『・・・そうか・・・オレたちの可愛い弟を連れ去って・・・どこぞの牢屋に監禁してくれてやがんのかぁ・・・へへへ・・・キレちまったよ・・・完璧にな・・・!』
『あらあらまあまあ~、誘拐の黒幕は、どうやらアムレットに関係している誰かさんのようですわね?トーマちゃん、安心してくださいな♥必ず見つけ出して・・・念入りに、徹底的に、ブチ殺して差し上げますわ』
『・・・・・・犯人は極刑確定』
『・・・許さん・・・絶対に許さん・・・!!私の可愛い弟を、よくも誘拐して、牢屋に監禁なんぞしてくれたなぁ・・・!!』
『・・・サクっと暗殺、してこようかしら』
アカン、これ、大アネキたち全員本気で怒ってる・・・!!
『・・・トーマちゃん、ちょっといいかしら?』
しかも、ベリス姉さままでいましたか!!
この口調は、これまでに聞いたことがないぐらい、本気で怒っている・・・!!
『そこに、アルビナ王妃と、アンジェリカ第一王女がおられるのね?ちょっと、通信を変わってもらえるかしら?』
「あ、はい」
そういって、僕は通信機を、アルビナ王妃様に渡した。
「・・・ベリス姉さま、違う、サマリアのベアトリクス陛下が、お話したいようです」
「え゛っ」
アルビナ王妃様は、顔から血の気が一気に引いて真っ青になった。
どうやら、ベリス姉さまのことを知っているらしい。さすがは魔界の四大勢力の一角を担う、魔王軍のトップだ。
「・・・今、自分、ベリス姉さまとか、言うてへんかった?」
うん、そこはどうか気にしないでください。
色々と説明して、不敬罪がどうとかこうとか言われたら、面倒くさいことになりますから!!
今回の黒幕、完全にレベッカたちの怒りを買ってしまいました。斗真を誘拐するとか、もはや滅亡願望でもあるのかと思わざるを得ないほどの、考えの足りない連中です。
関西弁が難しくて、辞典や本を見ながら書きました。不都合な点がございましたら、申し訳ございません。
筋肉ムキムキ、腹筋が割れたの美人な母親と、元気ハツラツな関西弁のお姫様はいかがでしたか?次回斗真と一緒に、脱獄&情報収集に取りかかります。




