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第二十六話「禁忌の魔石~悪鬼羅刹、降臨~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!

新作が書きあがりましたので、投稿いたします!

第三章も、佳境に入りました。ここまで書き続けてこられたのは、読者の皆様のおかげです!

 「・・・さて、この度の、お前たちの所業、証拠は上がっている。オラドールの里の里長、オリガ・オラドールよ。お前は、自分が何をしたのか、分かっているのか?まさか、10年前のダークエルフの里に、魔法で操ったミノタウロスやオークの大軍を差し向けて、壊滅させたばかりか、民を捕らえて、最大最悪の禁忌の魔石【パラケルススの魔石】を錬成するために、生贄として捧げるとは・・・もはや鬼畜の所業である!」


 ブリアック女王が、玉座に座りながら、捕らえられたオリガと渾沌将軍を、憤怒の形相で睨みつけながら激しく糾弾する。


 オリガ・オラドールは、禁書を身体に取り込んだ反動か、髪の毛が真っ白になり、何十年も老け込んでしまい、老人のような姿に変貌してしまった。


 「・・・私は、悪くない。全ては、アレクシアが、七人の獣騎士(プレイアデス)が悪い。私に、恥をかかせやがって。私は、何も悪いことなどしていない・・・」


 「・・・何を言っても無駄みたいね。まあ、いいわ。そして、邪眼一族の、渾沌よ」


 今度は、オリガの横で、亀甲縛りにされている、渾沌将軍に、ギラリと冷たい光を放つ目で睨みつける。


 渾沌将軍は、観念しているのか、深くうなだれていた。


 「四大禁書の【ハイドラの書】を手に入れるために、オラドールの里のエルフたちを利用して、スピタルを侵略したら、禁書を奪い取って、切り捨てるつもりだったようですが、徒労に終わったようだな。この通り【ハイドラの書】は、こちらの、魔法裁縫師のカジ・トーマ様が、完全に、封印することに成功した」


 「・・・御見それしました。さすがは、伝説の魔法裁縫師様です。私の負けですわ」


 そういって、傍聴席で見ていた僕のことを見て、渾沌は憑き物が落ちたような、スッキリとした表情で言った。


 ハイドラの書には、カラフルな絵柄と、真ん中に埋め込まれている黄金の錠前が特徴的な【ブックカバー】がかけられており、完全に魔力を失って、中身がすべて白紙になってしまっていた。


 それをやらかしてしまったのは、他ならない、僕だった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一昨日、僕たちは、見事セルヴァンスを討伐することに成功した。


 そして、桜が、大量の砂となって崩れ落ちたセルヴァンスの残骸から、赤い光を放つ宝石を取り出して、その宝石がどういうものなのか、説明してくれた。


 パラケルススの魔石。


 それは、古の時代に、不老不死の命を手に入れようとした、錬金術師によって創り出されたもので、その石を身体に取り込むと、不老不死になり、強力な魔法を自在に操る事が出来ると言われている。


 しかし、その魔石を作り出す方法は、あまりにも非人道的なものであったため、パラケルススの魔石は絶対に錬成してはならない【禁忌】の存在として、歴史から抹消されて、錬成の方法を記した魔導書なども全て焼き払われて、闇に葬られた・・・とされていた。


 「どうして、禁忌になったの?」


 「・・・パラケルススの魔石の材料が、大勢の人間や魔族の魂だからだよ」


 桜が、忌々しそうに、吐き捨てる。


 和田さんたちが、クロス王宮の禁断の間と呼ばれている地下室で、偶然発見した古い魔導書らしきものには、パラケルススの魔石の錬成の方法について書かれていた。


 「・・・セルマは、300年以上前から、パラケルススの魔石の研究をしていたんだ。そして、その方法が、魔法陣に、大勢の人間、魔族、亜人種などを生贄として捧げて、魂を吸い取り、無数の魂を石という【器】に集めて、凝縮を繰り返し、錬成する。何十、何百人もの生命エネルギーを魔力に変換させることによって、不老不死をもたらすほどの莫大な魔力を生み出す、魔石が生み出される。それが、パラケルススの魔石の正体さ」


 「・・・その魔石の力を利用して、僕たちを、セブンズヘブンに召喚したってこと?」


 「ああ、不老不死をもたらすほどの、強い魔力を生み出す魔石なら、俺たちを、異世界に召喚することも出来るだろうな」


 「そうか、それで、アイツ、300年前と全然変わってないんだ!」


 「ああ、300年もたてば、いくら長命のエルフ族や吸血鬼であっても、成長はするし、年も取る。しかし、この”すまほ”や”たぶれっと”とかいうアイテムで見る限り、コイツは、3()0()0()()()()()()()()()()()()()()()


 「つまり、セルマは、体内に魔石を取り込んでいたから、あれだけの強力な魔法を、詠唱なしで、発動させることが出来たってわけね」


 「・・・しかし、パラケルススの魔石は、万能というわけではなかったようですわね~?」


 「そう、パラケルススの魔石っていうのは、使用期限ってものがあるんだ。取り込んだだけなら、不老不死のまま、長く生きることも出来るけど、強力な魔法を使うたびに、石の中に封じ込められている魂を消費していくんだ。魂のストックがなくなったら、魔石は、ただの石ころになっちまう。そうなったら、不老不死の能力も失われるってことさ」


 「・・・そして、その魔石が、セルヴァンスの体内にあったってことは、オラドールの里のエルフたちも、生贄を使って、魔石を作っていたってこと?」


 「ああ、現にその魔石が、ここにあるからな。ただし、生贄の人数が足りなかったせいか、セルマが取り込んでいる魔石と比べたら、魔力が圧倒的に少ないし、錬成もかなり雑にやったせいか、消耗がこの通り激しい。このまま使い続けていても、すぐに魔力がなくなって、この通りってわけだ」


 桜の掌の中で、石の輝きが失い、ただの石ころへと変わっていった。


 「パラケルススの魔石の錬成方法を知った時、俺は、どうやって里のエルフたちが、生贄を準備したのか、色々と調べていた。そんな時に、俺がいつも世話になっているツテから、10年前に、ここの連中がオークやトロールを魔法で操って、ダークエルフの集落を襲撃したことが分かったんだ」


 オラドールの里から少し離れた、湖の近くには、10年前にはダークエルフの集落があったらしい。

 しかし、その集落は、突然襲撃を受けて、村は焼き払われてしまったらしい。

 さらに、家や建物は全て焼き払われていたのに、ダークエルフたちの姿は、一人も見つからなかったという。


 そこまで話を聞いたとき、僕は、思わず背筋が凍り付きそうなことが、脳裏に浮かんだ。


 「・・・まさか、その、いなくなったダークエルフたちは・・・!!」


 「・・・ああ、ここにある、魔石に変えられてしまったんだ。忍たちが、スマホで撮影した写真の中に、オリガやエルフの魔導師たちによって、捕らえたダークエルフたちを生贄に捧げて、魔石を作り出した過程や記録が詳しく書かれている資料がいくつかあった」


 その時だった。


 「・・・そう・・・そんなことまで・・・やっていたのね。・・・アイツら・・・神にでもなったつもりでいるのかしら・・・?」


 アレクシアさんが、怒りを孕んだ、冷たい声でつぶやいた。


 目には光がなく、隠し切れないほどの怒りや殺意、憎悪に満ちたオーラを、威圧に変えて、放っていた。その迫力は、思わず、息が出来ないほどに、恐ろしいものだった。


 「・・・あの時、アイツらの息の根を止めておくべきでしたね。他種族を見下して、受け入れるという発想もなく、自分たちだけが優れているという思い込みに支配されている、あまりにも傲慢で愚かな連中のせいで、平穏に暮らしていたダークエルフや、亜人種が、犠牲になったというの・・・?」


 アレクシアさんが、震えるほどに、拳を握りしめた。


 そして、次の瞬間。




 ドオオオオオオオンッ!!


 バキッ、バキバキバキ・・・!!




 近くにあった、大木を、思い切り殴りつけた。


 大木は音を立てながら、ゆっくりと斜めに傾き、やがて、地面を叩きつけるようにして、へし折れた。


 「・・・聞こえてしまいましたわ・・・うふふふ・・・緒の切れる音がねえ・・・!!」


 そして、前髪を乱暴にかきあげて、倒れている里長に、ゆっくりと近づいていく。


 「・・・死なない程度に、やりなさいよ」


 「一応、そいつからも、色々と聞きたいことがあるからな」


 「・・・そうですねえ・・・それなら・・・死なない程度までなら、どれだけ、痛めつけても、構いませんわねぇ・・・?」


 そう言って、真っ青になって、震える里長の首根っこを掴んで、無理矢理起き上がらせた。


 「あ、あ、アレクシアぁぁぁ・・・!!」


 「・・・お久しぶりでございますわね、お姉さま。ご機嫌いかがですか?貴方の下らない野望のせいで、先祖代々から守り続けてきた里は壊滅し、多くのエルフたちが犠牲になり、あまつさえ、里を守護してきた聖竜セルヴァンスまで、醜悪な怪物に仕立て上げたばかりか、消滅までさせてしまうとはね。貴方のおかげで、この里は、もう森に住まう聖霊たちから、完全に見放されてしまいましたわよ?」


 「う、う、うるさいっ!!お前の、せいで、こんなことに・・・!!」


 「・・・300年ぶりに再会してみれば、全く変わってないばかりか、ねじ曲がった性根がさらにひどくなってしまったようですわね。己の欲望のままに、好き勝手に振る舞った結果がこのザマだというのに、自分の行為がどれだけ愚かなのか、省みることさえも出来ないのですね」


 「い、言わせておけば・・・!!」


 「ゴチャゴチャうるせぇんだよ。テメエのせいで、大勢のエルフたちが死んだんだよ。そのうえ、禁忌にまで手を出しただって?どこまで、他所様に迷惑をかければ気が済むのかしら?」


 ゴシャッ!!


 「ぐほっ・・・!!」


 アレクシアさんの拳が、里長の右頬にめり込み、骨がきしむ音が聞こえた。


 「・・・もう、テメェとは、話す言葉なんてねーよ。きっちりと、ヤキを入れてやるから、覚悟しろや!!」


 ゴシャッ!!


 グシャッ!!


 バキッ!!


 「ぶ、ぶれ、い、も、の、ごふっ!!ぐえっ!!」


 「はい~?何か言いましたかぁ~?きっこえまっせ~ん!!」


 グシャッ!!


 ゴシャッ!!


 グチャッ!!


 「貴方がクズだったせいで、たくさんの人が、犠牲になったんでしょうが!!私のせいで、こんなことになってしまって、本当に申し訳ございませんぐらい、言えねえのか?このバカが!!」


 「・・・い、言わせて、おけばぁぁぁ・・・!!」


 「出来損ない、脳内お花畑のゴミ、高慢ちき、無能、身の程知らずの腐れ外道・・・!!」


 その後も、アレクシアさんは笑顔を浮かべたまま、里長を罵り、里長が口を開こうとすると、拳を顔面にめり込ませて、歯が折れようと、鼻血を噴き出そうと、知ったこっちゃねえと言わんばかりに、里長を殴りまくった。


 そんな地獄絵図が繰り広げられている中、グリゼルダさんが、ため息をついて、僕たちに話しかけてきた。


 「・・・アレクシアがキレると、本気で怖いってことがよく分かったでしょう?」


 「・・・僕、アレクシアさんのことを、絶対に怒らせないことを、ここに誓います」


 「・・・俺も」


 僕と桜は、抱き合ったまま、真っ青な顔になって、ガクガクブルブルと震えておりました。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 そして、僕たちは、落ちていたハイドラの書を、拾い上げた。


 「・・・まだ、封印が解かれている状態だな。このままにはしておけない」


 「ベアトリクス様の所に持って行って、封印してもらうしかないよね」


 そして、僕がハイドラの書を持った瞬間、もう片方の手に持っていた魔石が、紅く輝きだした!


 「え、え、えぇぇぇぇぇっ!?何、これ!?」


 「まさか、魔石と禁書の魔力が共鳴しているのか!?トーマ、禁書を投げ捨てろ!!」


 「そんなことを言ったって、手から、離れないんですよ!!」


 まずい!!


 これ、絶対にヤバい!!


 さっきから投げ捨てようとしているのに、掌にくっついてしまったように、禁書が離れない!!


 そして、魔石からは、まるで虹のように、次から次へと色が変化していく不思議な光が放たれて、僕の両手を見る見る包み込んでいく!!


 その時、頭の中に、今まで聞いたことのない呪文が浮かび上がり、とっさに口にしていた。




 「ー神羅万象!!封印魔法・萬鬼ばんき封印!!!」




 呪文を唱えると、虹色の光が両手に集まり出して、僕はそれを、糸車で巻き取り、糸に紡いでいく。


 そして、紡いだ極彩色の糸を編んでいき、ブックカバーのような形になって、禁書の上から覆いかぶさった。


 ようやく完成すると、ブックカバーの上に、金色の錠前が現れて、僕はそれを閉じる。


 すると、錠前がブックカバーにめり込み、【封印】を意味する文字が浮かび、ラベルに刻まれた。


 「・・・え?何、これ?どうなっているの?」


 僕の手から禁書が落ちて、風にめくられていく。


 しかし、その中身は、何も書かれていない、真っ白なページしかなかった。


 アイリスお姉ちゃんが恐る恐る拾い上げて、じっと見ると・・・。


 信じられないと言った様子の顏になり、深くため息をついた。


 「・・・アイリス、どうなっているんだ?」


 「・・・信じられないことに、魔獣の力が全く感じられない。もはやこれは、ただの本でしかない。完全に、魔獣ハイドラの魂を、封印してしまっている・・・!」


 え・・・?


 アイリスお姉ちゃんが、僕に振り向いて、疲れ切ったような表情を浮かべて、近づいてきた。


 「・・・トーマ、これは、一体どういうことだろうか?」

 

 「・・・僕が一番、知りたいです」


 「・・・そうだろうな。これをやった本人が、一番、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているからな」


 全く心当たりが、ございません。


 そして、これはいったいどういうことになっているのか、ベリス姉さまに、まずは見てもらうことになった。


 その結果、ベリス姉さまや、ヴァネッサ女王様たちは・・・全員の目が飛び出し、椅子からひっくり返り、腰を抜かすほどの大騒ぎとなってしまった。

アレクシア、本気で怒ると、ヤンキーのような言葉遣いに変わり、容赦が一切無くなります。

里長、好き勝手やってきた報いを受ける羽目になりました・・・。

レベッカたちに対して怒っていた時は、まだ、ご機嫌斜めというか、味方に対しては寛大な方でした。


そして次回、終盤で、斗真がやらかした魔法について、ベアトリクスから説明されます。

さらに、桜についに裁きが下されます。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!

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