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第二十二話「シャルトリューズ森林戦④~斗真VS激流の渾沌~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。

 「最初から、出し惜しみはしませんよ。貴方の能力、しっかりと、観察させてもらいますからね!」


 渾沌さん・・・いや、もうさん付けはしなくていいか。


 渾沌が、薙刀を振るって身構えると、彼女の背後に、青色の毛並みを持つ、巨大なオオカミの頭と、鋭い爪を生やした両手が現れた。濃い真っ白な霧がまるで身体のように蠢いている。


 「こっちだって、そのつもりさ。ー大アネキたちの仲間として、胸を張っていられるようになるために、僕は・・・”俺”は、お前を超えていく!!」


 いつ以来だろう、自分のことを「俺」と呼んだのは。


 中学生の時に、喧嘩に明け暮れていた、あの時とはまるで違う緊張感だ。

 油断をしていると、身体が震えそうになる。


 それだけ、目の前にいる相手が、ヤバい相手だということが、はっきりと分かっていた。


 でも、恐怖よりも、さらに強い思いを持つことで、自然と、身体の震えが鎮まっていくのを感じる。


 「・・・いい目になりましたね。さあ、楽しみましょうか!!」


 「うおおおおおおおおおっ!!」


 「千軍万馬!霧魔法・魔犬(ミスティック・)軍団(レギオン)!!」


 霧が揺らめくと、僕の目の前に、無数の甲冑を身にまとった屈強な兵士たちが、現れた。


 馬にまたがり、剣、槍を握りしめて、空気が震えるような咆哮を上げて、一斉に押し寄せてきた。


 「いかがですか、私の霧で生み出した軍団は?この霧海牢獄(ニブルヘイム)に取り込まれたら最後、いくらあがこうと、私が生み出す幻からは逃げられませんよ。そして、霧や幻には、どんな攻撃も通じません」


 なるほど。


 確かに、霧は剣では斬れないし、殴れないし、矢を放っても、射抜くことは出来ない。


 しかし、渾沌が生み出す幻は、僕たちの物理的な干渉は受け付けないのに、向こうは、攻撃を仕掛ける事が出来る。この霧そのものが、彼女の魔力で生み出されたものであり、彼女自身でもあるのだ。


 (・・・恐らくだけど、渾沌は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の持ち主だ)


 「さあ、どうしますか!?どんな攻撃も、抵抗も、無意味となる、無敵の霧の軍団に、どう手を打ちますか!?異世界の魔法裁縫師も、私の幻術の敵ではありませんわ!!オホホホホホホッ!!」


 視覚や触覚、聴覚さえも麻痺させて、実体化しているように、精神に直接、影響を与えるほどの強烈な幻を見せて、相手の攻撃を封じ込めて、一方的に倒す・・・という戦い方が得意なんだろう。


 (霧をいくら風で払っても、霧に紛れて姿を消してしまえば、スキを突いて、再び霧を作り出して、幻で追い詰めてくる。つまり、彼女を倒すためには、逃げられるスキを与えてはいけないんだ)


 「さあ、霧の軍団よ!!一気に止めを刺しなさい!!」


 それだったら、こっちだって、方法がある!


 僕の目前まで、無数の兵士たちが、武器を振り上げて迫ってきている。


 地面が揺れて、空気が震えるほどの、圧倒的な人数の兵士たちに攻め込まれたら、僕は、身体の原型が残らないほどに、ボロボロにされることだろう。


 何の、解決法も思いつかなかったらの話だけどね・・・!


 (・・・この子、今、笑った・・・!?)


 「暗中飛躍!闇魔法・蜻蛉(ドレイク・)弾幕(オプション)!!」


 ヒュンヒュンヒュン!!


 僕を守るように、回転しながら飛んでいた、トンボの形をした魔道具が、目から、闇のエネルギーを凝縮した魔法弾を発射した。


 魔法弾が霧の兵士の身体に当たると、小さく、破裂した。


 ゴオオオオオオッ!!


 そして、小型のブラックホールのように円状に展開して、霧を吸い込みだした。


 「斬っても、殴っても、風で吹き飛ばしてもダメなら、一か所に吸い寄せてしまえばいい!」


 霧が、ブラックホールに吸い込まれていくと、兵士たちの姿が、次々と薄れて、消えていく。


 やっぱり、これが、効果的だった!!


 身体を霧に変えているなら、一点に集めて、動きを封じ込めてしまえばいいんだ!


 「きゃああああああああっ!?」


 霧が晴れると、ブラックホールから発生する超重力の波動を受けて、渾沌が地面に落下した。


 ブラックホールが小さくて、彼女を吸い込み切れなかった。

 しかし、強力な重力の波動をまともに食らい、すぐに立ち上がれないほどのダメージを与えていた。


 「・・・まさか、私の霧を、このような形で破るなんて・・・!でも、まだ、終わりじゃない!!」


 再び、身体を霧に変えて、鋭い爪を生やした巨大な腕を振り上げて、迫ってきた。


 「蜻蛉(ドレイク・)弾幕(オプション)、ガード!!」


 バシュウウウ・・・!!


 腕が振り下ろされた瞬間、僕の目の前に飛んできたトンボが、まるで盾のように、僕の目の前で回転する。


 すると、爪の攻撃を防いだと同時に、闇の魔力に触れて、巨大な腕が、霧散していく。


 「アタック!!」


 すぐさま、トンボに指令を送ると、霧が晴れて、隠れていた渾沌の姿を捕らえると、一直線に飛んでいく。


 「なっ・・・!?どうして、霧になった私の身体に、攻撃を仕掛ける事が出来るの!?」


 ドガンッ!!


 ドガンッ!!


 ドォォォォォォン!!


 トンボが彼女の身体に当たるたびに、爆発を起こした。


 「かはっ・・・!!」


 爆発と同時に、いくつもの、小型のブラックホールが発生して、渾沌が衝撃波を受けて、地面に力なく倒れこんだ。


 眼鏡が割れて、原形を保ってないほどに折れ曲がり、転がっていた。


 ロングコートもボロボロになり、手に持っていた薙刀も、刃や柄に無数のひびが刻まれていた。


 何が起こったのか分からないのか、しばらく、呆然としていたが、自分がボロボロになって倒れていることを悟ると、ブツブツと、信じられないと言ったような顔になって、つぶやきだす。


 「・・・こ・・・こんなこと・・・ありえない・・・わ・・・。わ、私の、幻が、通用しないなんて・・・!どうして・・・?どうして、私がいる場所を、探し当てることが、出来たの・・・?」


 「この魔道具には、魔力を感知して、自動的に追尾するホーミング機能を持っているんですよ。いくら霧に紛れていても、術者が魔法を発動している間は、核となる貴方自身の魔力が最も強く発動する。一番強い魔力を発している、貴方に狙いを定めていたから、幻に捕らわれることなく、攻撃出来たってわけ」


 「・・・ほーみんぐ?相手を自動的に追尾して、攻撃する?そんな魔法、聞いたことが、ありませんわ・・・?」


 「魔法って言うより、異世界の技術って言った方が正しいかな」


 「・・・なるほど、この世界の魔法を基準として考えているから、貴方が仕掛けてくる、奇想天外な発想を読み切れなかった。攻撃と同時に、魔力も吸われて、もう、霧を発生させることも・・・出来ない」


 闇属性の魔法は、相手にダメージを与えるだけではなく、攻撃と同時に、相手の体力や魔力を吸収してしまう特質を持っている。僕は、霧になった渾沌に、ブラックホールでダメージを与えつつ、彼女の魔力を、少しずつ奪い取っていたのだ。


 そのため、彼女は、さっきから霧に変化しようとしているが、出来なくなっており、とうとう諦めたように、がくりと頭を落とした。


 「・・・ですが、私は邪眼一族の中でも、選び抜かれた四天王の一人。捕らえられて、屈辱を味わうぐらいならば、誇り高き死を選ぶ!!さようなら、異世界の魔法裁縫師よ!!」


 「あまーい!!」


 僕は、あらかじめ用意しておいた、闇の聖霊石で作ったロープを素早く投げつけると、舌を噛み切ろうと口を開いた、渾沌の口の中にさるぐつわをして、ロープでぐるぐる巻きにして、動きを封じ込めた。


 もしかしたらやるかもしれないとは、思っていたけどさ、どうしてこういう敵の幹部って、誇り高き死を選ぶとか言って、自爆しようとするのかな!?昔からこういう言葉もあるじゃないか!


 「そうはさせないよ。僕たちの世界に、こういう言葉もあるんだから。えーっと、”死んで花見の酒モナカ”・・・だったっけ?まあ、いいか。とにかく、貴方たちの知っていること、全部、洗いざらい話してもらうからね!」


 「むぐーっ!むぐーっ!!むっぐぅぅぅーっ!!(待ちなさい!というか、亀甲縛りで拘束するなんて、この子は、何を考えているの!?ま、まさか、このまま、私にあんなことや、こんなことをするつもり!?可愛い顔をしているけど、やはり、男というのは、みんな、オオカミなのね!?で、でも、こういう、可愛いオオカミさんなら・・・その・・・ちょっとだけ・・・相手になってあげても、いいかもしれませんが・・・じゅるり♥・・・はっ、私は、今、何を考えていたのかしら!?)」


 あー、もう、何を言っているのか、さっぱり分かりません!


 というか、確か、泥棒を縛り付ける方法って、確か、こういうヤツだったかな?


 なんだか、間違っているような気もする。

 それに、こんな、エッチな縛り方ではなかったような気がするけど・・・。


 まあ、いいか!

 これしか、人を縛る方法、知らないし。


 僕は、縛り付けた彼女を抱き上げて、いったん、大アネキたちの所に戻ることにした。


 どうやら、霧に紛れて、要塞から少しだけ離れた場所に、連れてこられたようだった。


 「戻りました!」


 僕が戻ると、縄で縛りつけられている渾沌の姿を見て、大アネキたちは飛び上がるほどに驚いた。


 「まさか、コイツを倒して、捕まえてくるなんてな!さすが、トーマ!よくやったぜ!!」


 大アネキは、僕の背中をバンバンと叩いて、大喜びして、褒めてくれた。


 しかし、アイリスお姉ちゃんとビビ姉からは、なぜか、怒られました。


 「こういうのが好きなら、お姉ちゃんに言いなさい。お前のためなら、いくらでも、お姉ちゃんが付き合ってあげるからな?どこぞの馬の骨ごときに、こんなことをしてはならん。気があるのかと勘違いをして、色目を使ってくるかもしれんからな?」


 「・・・・・・よその女なんぞに、トーマが目をつけられたら、大変」


 「ほへんにゃはい、ゆるひへふひゃひゃい(ごめんなさい、許してください)」


 痛いです、痛いです、ほっぺたを思い切りつねらないでください。


 「さっき、ヴィルヘルミーナから連絡が入った。里長が、エルフ軍を見捨てて、里の方に逃げ込んだらしい。このまま、後を追いかけて、絶対に捕まえるぞ!!」


 これだけのことをしておいて、部下を置いて逃げたって?


 このまま、森の奥まで逃げ切るつもりだろうか。


 そうは問屋が卸さない!!

  

 「追撃、するんだな?」


 「おうよ!このまま、里に向かって突撃する!あのバカを、絶対に逃がすな!!」


 「了解!!」


 僕たちは、逃げたオリガを追って、オラドールの里に向かうことにした。

 


「死んで花見の酒モナカ」→正しくは「死んで花実が咲くものか」。


斗真、国語の成績が、少々苦手です。(国語のテストで、ことわざや慣用句の問題で、珍回答を連発し、赤点ギリギリだったこともある)。その代わり、理数系が得意です。


泥棒を縛る方法を、亀甲縛りと、一体どこで教わってきたのかというと、ギャグ漫画で覚えたようです。


四凶の一人、渾沌を倒し、残るはオリガと松本のみになりました!


次回、追い詰められたオリガが、とんでもないことをやらかして・・・!?


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

次回もよろしくお願いいたします!

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