第二十一話「シャルトリューズ森林戦③~嫌がらせ?いえいえ、これはゲリラ戦です~
総合評価1000ポイントもいただき、本当に、ありがとうございます!!
すごく嬉しいです!!これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!!
「里長!第一小隊の部隊長と、兵士たちが、落とし穴に落ちて、戦闘不能になりました!!」
「里長!第二小隊の兵士の大半が、地面から、突然現れた網に引っかかり、雷の魔法を受けて、身動きが取れなくなりました!」
「里長~っ!!第三小隊の兵士の3割が、魔法植物に絡めとられて、関節技を決められて、負傷しました!!」
「お、お黙り!!この無能共が!!」
オリガは、部下に対して、容赦なく怒鳴りつけた。
怒鳴られて、鞭で叩かれた兵士が吹き飛ばされて、そんな兵士を冷たく一瞥してから、オリガは、血走った眼を見開き、髪の毛を両手でガリガリと掻き出した。
「おのれぇぇぇぇぇぇっ!!どいつもこいつも、無能のクズばかり!!あんな、クズどもなんかに、後れを取るとは、何て無様なの!?お前らは、エルフ族の恥よ!!」
(ざまあないですね)
その様子を見て、渾沌は、オリガを冷たく嘲り笑う。
そして、真剣な表情に変わり、現在の状況について、考察する。
(・・・ヴェロニカ様の先見は、間違いないとは信じておりましたが、これは、想像以上ですわ。小規模な奇襲、罠の設置、相手のホームグラウンドであるはずの森の中で、まさか、その地形を利用して、これほどの作戦を展開してくるなんて。・・・ヴェロニカ様、私も、カジ・トーマに興味を持ちましたわ。彼ほどの逸材を手に入れる事が出来れば、邪眼一族も、劇的な変化を遂げることでしょうね)
そして、斗真に対して、最高の賛辞を、心の中で述べるほどに、斗真に対する評価がうなぎ上りであった。
(そのうえ、私の幻術を避けるために、あんな、高台の上に、要塞を設けて、真下にいるエルフ軍を迎撃するなんて。あの高さまでは、私の魔力では、霧がギリギリ届かないから、幻術も使えませんわね。まさか、こんな形で、私の幻術を破るなんて・・・!)
術を封じられて、子供だましとしか言いようのない、戦いを展開されているにも関わらず、渾沌は、不思議と、胸の奥から、高揚とした気分になっていくのを感じた。
「・・・楽しませてくれるじゃありませんか、彩虹の戦乙女・・・!」
武人として、軍師として、これほどなまでに、楽しませてくれる好敵手の存在は、渾沌にとっては、ずっと待ち望んできたものだった。彼と戦うのならば、今まで退屈しきっていた、自分の闘争心を、大いに満たしてくれるに違いない。
不利な状況に追い込まれているにもかかわらず、彼女は、獰猛な笑みを浮かべて、次の作戦をどう仕掛けるか、頭脳をフル回転させていた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ゲリラ戦という戦術がある。
遊撃戦とも言われていて、シャルトリューズの森のような、鬱蒼とした森の中といった見晴らしが悪い場所で、有効的とも言われている作戦だ。
本来なら、小規模の兵士が待ち伏せをしていて、奇襲、後方支援の襲撃を行い、撤退して、さらに別の部隊が攻撃を仕掛けて・・・その繰り返し、だったと思うんだけど、僕たちの作戦は違う。
渾沌さんの幻術は、実体を感じさせるほどの強烈な幻術らしいので、出来るだけ、霧が張り巡らされている森の中には入らずに、小高い丘の上に陣を敷いて、エルフ軍が、スピタルに向かって進軍し、真下を通りかかる時に、一気に殲滅することにした。
丘に続くありとあらゆる道には、落とし穴、金タライ、雷の聖霊石を加工して作った【電気ネット】、アレクシアさんが用意した【お仕置き用魔法植物】といった、子供だましでしかない罠を仕掛けて置いた。
その結果は、この通りだ。
エルフ軍は、スピタルに近づくどころか、丘の手前で、立ち往生している状態になっている。
「おほほほほほ!実に愉快ですわ!あのバカ共が、こんな、子供だましに引っかかって、何ともまあ、情けないところを見せてくれますこと!!おーほっほっほっほっほ!」
アレクシアさん、超ご満悦で、悪役がやりそうな高笑いをしていた。
よっぽど、恨みつらみが溜まりまくっていたんだな。
今までで見てきた笑顔の中で、一番、心から大笑いをしているであろう彼女を見て、僕は何とも言えない気分になる。
しかし、この嫌がらせの繰り返しが、実は、意外と効果的なのだ。
相手のホームで、圧倒的に有利な状況において、僕たちが仕掛けた、無数の罠によって、迂闊に攻め込めない状況に追い込まれている。自分たちの勝利を確信しきっていた、エルフ軍にとっては、この想定外の状況は、精神的に大ダメージを与えている。
さらに、こんな子供だましに引っかかって、負傷したことにより、彼らのプライドはもはや木っ端みじんになっていた。そりゃそうだよね、自分たちが生まれ育った森なら、どんな敵が来ようとも、地の利に長けている自分たちが有利だと思っていたのに、落とし穴や金タライ、電気ネットに引っかかって、手も足も出ないんだから。
「それじゃ、次の攻撃、行くぜ!!アイリス、準備はいいか?」
「フッ、いつでも行けるぞ!」
アイリスお姉ちゃんの左目の眼球に刻まれた、黄金の獅子の紋章が輝く。
そして、空に向かってまっすぐ腕を伸ばすと、上空に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
「・・・巨大猪ごときに、私の稲妻が、耐えられるかな?」
アイリスお姉ちゃんの瞳が、猛禽類のように、瞳孔が細く引き締まり、狙いを定める。
そして、魔法陣から、黄金の光が激しく迸る。
「雷轟電撃・雷魔法・梟の聖槍!!」
魔法陣から、カッとまぶしく光ったと思った瞬間、轟音と共に、巨大な稲妻が、次々と落ちていく。
稲妻の槍が、真下にいる巨大猪の身体に、次々と直撃して、刺し貫いた。
-グオオオオオオオオーーーッ!!!-
絶叫を上げながら、電撃に包まれた巨体な体躯が、瞬く間に、黒焦げにしていく。
さらに、身体に積んであった砲弾や爆弾にも引火して、次々と凄まじい音を立てながら爆発し、巨大猪が耐え切れずに、糸の切れた人形のように倒れこんでいった。
丘の上にいるにも関わらず、地面が震える衝撃が伝わってくる。
「・・・ふん、所詮、畜生ごときに、私の稲妻が、耐えられるものか」
アイリスお姉ちゃんは、傲慢の紋章を発動している影響のせいか、他者を見下す高慢な性格になっている。
倒れこんだ巨大猪を見下ろして、鼻を鳴らして、冷たい笑みを浮かべた。
「・・・大分、混乱してきているな。あのような、ウドの大木を潰されたぐらいで、もろいものだ。グリゼルダ、ヴィルヘルミーナ、先行部隊をさっさと潰してこい。これは・・・命令だ」
「仰せのままに、お嬢様♥」
「・・・さっさと終わらせてくるわ」
ヴィルヘルミーナさんと、グリゼルダさんが、僕が作っておいた緑色のレインポンチョを羽織り、崖を下りていく。
カメレオンのように、周りの景色と同化して、気配さえも消してしまう能力を持つ魔物【ガレナリザード】の皮と、木の聖霊石、風の聖霊石、闇の聖霊石を組み合わせた繊維で作った、この【カメレオンポンチョ】を羽織ると、ジャケットに含まれている、透明化能力と気配遮断の効果を、さらに強化することが出来る。
カメレオンハットが、自動的にフードと一体化して、両目を覆うゴーグルの形に変形する。
「・・・すごいね。森のどこに、罠が仕掛けられているのか、映し出してくれるなんてね」
「靄が出ているとは思えないほどに、視界が、すごくよく見えるわ。これなら、行ける!」
そして、足音も立てずに、ヴィルヘルミーナさんと、グリゼルダさんが、風のように駆け抜けていく。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ヒュンッ!!
「・・・え?」
ゴト・・・。
コロコロ・・・。
「ギャアアアアーーーッ!?」
「なっ、い、一体、何が起きたのだ!?」
「い、いきなり、突然、何かに、斬られた!?」
エルフ軍の兵士たちは、大混乱に陥った。
突然、味方の兵士の首が転げ落ちたり、喉が切り裂かれて、次々と倒れていく。
風を切るような音が聞こえたかと思いきや、急所を鋭い刃物のようなもので切りつけられて、悲鳴を上げる間もなく、エルフたちが倒れて、絶命していく。
「今度は、何が起きたのよ!?」
「さ、里長ぁぁぁっ!!どうするんだよっ、こんな連中なんかに、勝てるわけがねえよっ!!」
「い、いきなり、斬られて、皆、死んじまったぁぁぁっ!!も、もう、嫌だぁぁぁっ!!」
「何が、楽に勝てるだよ!!何が、スピタルなど敵ではない、だよ!!アイツら、恐ろしく、強いじゃねえかっ!!どうしてくれるんだよっ!!俺たち、このままじゃ死ー」
里長に訴えてきた、エルフたちの動きが急に止まったかと思うと、ズズズ・・っと、首が上半身からずり落ちて、地面に落ちて、転がっていく。
「ひっ・・・!!ひぃぃぃぃぃぃっ!!お、お、お前たち、私を守りなさい!!命を懸けてでも、私の盾となるのよぉぉぉっ!!私は、こんなところで、死ぬべきエルフではないのよぉぉぉっ!!」
オリガは錯乱したように叫び、部下たちを置いて、一人だけ、里に向かって一目散に走り出した。
「さ、里長ぁぁぁっ!!俺たちのことを、見捨てるのかぁぁぁっ!!」
「うるさい、うるさい、うるさい!!お前たちなど、何人死のうと、知ったことではないわ!!私だけが、生き残れば、それでいいのよぉぉぉっ!!」
縋り付くように、オリガに悲痛な叫びを上げたエルフに、彼女は、血走った目を向けて、ありったけの侮蔑の言葉を吐き捨てて、木の根に足を取られつつも、我先にと逃げ出した。
「い、い、嫌だぁぁぁぁぁぁぁっ!!死にたくな・・・!!」
ヒュンッ!!
風を切る音と同時に、兵士の身体が、膝から崩れ落ちて、地面に倒れこんだ。
フードを外し、グリゼルダと、ヴィルヘルミーナが姿を現した。
「・・・ふーっ、懐かしいねえ、この感じ」
「まあ、何とか、300年前のカンを、だいぶ取り戻せたって感じね」
彼女たちが通ってきた後には、生きているエルフの兵士は、一人もいなかった。
急所を一撃で仕留められて、完全に、事切れていた。
「部下を置いて、一人だけ逃げようとしたって、そうはいかないよ」
「私たちが、どうして、最凶最悪と呼ばれていたのか、教えてあげないとね」
わずか30分で、先行していた3つの小部隊と、巨大猪は全滅し、エルフ軍の戦力の半分以上がそぎ落とされていた。グリゼルダたちが、里に向かって逃げて行った、オリガを追いかけようとした、その時だった。
全身に、寒気のような感覚を感じて、鳥肌が立った。
後ろをとっさに振り替えると、斗真たちがいる丘の辺りから、強力な魔力を放っているものが近づいていた。
急いで引き返そうとした時、ゴーグルでも見通すことが出来ないほどの、異常な濃度の霧が発生した。ミルクのように濃厚な霧に飲まれて、見る見る、視界が覆われていく。
「・・・この霧は、まさか・・・!」
「・・・さっきのヤツが、おいでなさったみたいね・・・!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・な、なんだ、この霧は・・・!?」
明らかに、これ、普通の霧じゃない。
突然発生した霧に飲まれて、近くにいた、大アネキや、アイリスお姉ちゃんの姿が見えない。
みんな、大丈夫だろうか。
「大アネキー!!アイリスお姉ちゃん!!ビビ姉-っ!!アレクシアさーん!!」
・・・・・・。
ダメだ、全然、返事がない。
何が一体どうなっているんだろう。
「・・・ようやく、お会い出来ましたね。魔法裁縫師のカジ・トーマ様」
「ほえ?」
霧の中をかき分けて、僕の目の前に、一人の女性が、にこやかな笑顔を浮かべて現れた。
青色のロングヘアーをなびかせて、眼鏡をかけた、綺麗なお姉さんだった。
目のやり場に困る、おっぱいがこぼれ落ちそうになるほどに大きく胸元が開いたドレスを着込み、青色のロングコートを着込んでいるお姉さんの手には、薙刀が握られていた。
「・・・あらあら、よく見ると、結構可愛い顔をしていますのね♥食べちゃいたいぐらいに♥」
「・・・まさか、貴方が、邪眼一族の、渾沌さんですか!?」
大アネキたちとやり合った、実体を持つ幻覚を見せる事が出来る、凄腕の魔法使いか!
「あら、ご存知でしたか。これは光栄ですわ。以後、お見知りおきを・・・」
「・・・一騎打ち、ですね?」
「ええ、どうか、お手合わせ願います。貴方の、魔法裁縫師としての、底知れない能力を、どうか見せていただけませんか。我が主、ヴェロニカ様が、非常に興味を持たれている、その力を、とくと堪能させていただきますわ」
ぺろりと、ぽってりとした唇を舌なめずりして、薙刀の刃を僕に向けてきた。
邪眼一族の、四天王の一人・・・!
気を抜いたら、絶対に、殺される!
僕は、グリゼルダさんの能力が宿った、緑色の宝箱をバックルに装填して、鍵を回した!
『闘衣召喚!!フェアリー!!』
「変身!!」
ここで、絶対に、打ち取る!!
グリゼルダさんが着ている、忍び装束を身にまとうと、両目を覆う巨大なゴーグルが現れた。
背中には、ホバーローターがついた、4枚の巨大なウイングが装着されていく。
そして、僕の周りには、3体の、トンボ型オプションが飛んできて、まるで僕を守ってくれているように、囲んでくれている。
『幻影の司令官、フェアリーナイト・・・ドレスアップ!』
次回、斗真と渾沌の決戦となります!
そして、一人、逃げ延びたオリガが、秘密兵器を起動させて、とんでもないことに・・・?
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします!!




