第二十話「託される願い~さらば、親愛なる友よ~」
本日、二回目の投稿となります。
今回、二人目の魔法裁縫師が、ついに覚醒いたします!
斗真たちが、シャルトリューズの森に向かった頃に、時間はさかのぼる。
王宮の地下に作られた、牢屋の中で、桜は、一人、判決の時を待っていた。
全て、偽りなく、質問に対しても答えた。
もう、クロスに対しても、自分の気持ちを偽る義理など、どこにもない。
自分が知っている限りの、クロス王国で行われていた悪事の全てを、洗いざらいぶちまけた。
自分も、無事では済まないだろう。
でも、桜は、自分の運命を受け入れていた。
(・・・死刑になったとしても、もう、全てを受け入れる覚悟は出来ている)
掌の中に、握りしめている、アクセサリーを見て、桜は自嘲するように笑みを浮かべる。
命を懸けても、どんなことをしても、守りたかったものは、結局守れなかった。
そんな自分だけが、のうのうと、生きていくつもりなどない。
(・・・お前らと同じ場所にはいけないだろうけど、オレも、もうすぐ、そっちに行くからな)
その時だった。
「クロスの元勇者、サクラよ。少し、いいか?話がしたい」
牢屋にやってきたのは、ベアトリクス女王と、ブリアック女王だった。
そして、彼女の傍らには、足を震わせながら、兵士に肩を借りて、辛うじて立っているといった状態の、鬼島梨香の姿があった。
彼女の身体からは、水色の光の粒子が噴き出し、身体が、うっすらと透明になっていた。
「・・・鬼島ちゃん!?どうして!?」
「・・・ひっひっひ・・・クロスを・・・出る時に・・・千鶴に見つかっちまってねぇ・・・。ちょっと・・・無茶・・・しちまったのさぁ・・・。ひっひっひ・・・まあ・・・ギリギリ・・・間に合ったから・・・良しとするかねぇ・・・」
それは、斗真たちが出ていった後に起きた。
ユキから、鬼島が倒れたという報せを聞いて、ベアトリクスは、慌てて駆けつけた。
そのまま、すぐに病院に運ばれたが、鬼島の身体はもはや致命傷を負っており、内臓のほとんどが腐り果てていて、今の今まで、生きていられたこと自体が奇跡ともいえるほどの、死に体同然の状態であることが分かった。そのことを、ずっと、彼女は隠していたのだ。
そして、鬼島から事情を聴くと、彼女に、重傷を負わせたのは・・・千鶴だった。
桜の仲間が連れだされたという話を聞き、桜に急いで、報告しようとした時、鬼島の前に現れたのは、千鶴だった。そして、仲間であるはずの鬼島に、いきなり襲い掛かってきたという。
「・・・鬼島ちゃん・・・!」
「・・・桜・・・私の最後の発明・・・受け取ってもらえるかい?コイツは・・・今までの発明品の中でも・・・最高傑作さぁ・・・!」
鬼島が懐から取り出したのは、藍色のボディを持つ、竜の形をした小型のメカだった。
「キュイッ!キュイッ!!」
ドラゴン型メカは、桜の掌に乗って、懐いているかのように、頭をすりすりと掌にこすりつけてくる。
「・・・それは・・・和田と・・・神谷と・・・矢守が・・・アンタのために、作ってくれって、私に頼んできたものさぁ・・・。アンタへの・・・プレゼント・・・だとさ」
「・・・アイツらが!?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『ほら、こんな感じなんだけど、どうかな?頭は、オレの、ワニのアクセサリーをイメージして、赤色のフルフェイスにしてみたんだ!!』
『・・・この、竜のような形をした、自立行動型のメカを、作ってくれって?』
『あたしたち、機械とか、そういうの、全然分からなくってさー!でも、鬼島ちゃんなら、きっと、桜ちゃんのサポートをしてくれる、すっごいメカを作れると思って!頼みます、この通り!!』
いつでも、桜が一人にならない様に。
一人で、何でも、抱え込んでしまう、不器用な人だから。
桜が少しでも、喜んでくれるなら。
あの、優しい笑顔を、失ってほしくないから。
仁美たちは、桜のストレスや悩みを少しでも解消できるように、癒しとなる、ペットロボットを設計して、鬼島に、作ってもらえないかと、頼み込んできたのだ。
頭部は、赤色の仮面で覆っていて、身体の各部分には、金色の装飾が施されていて、ボディは、紺色をしていた。それぞれ、神谷と矢守、和田のイメージカラーをあしらっていた。
『・・・忙しい時に、こんなことを頼んでしまって済まない。あの人、セルマから色々と言いつけられて、正直、すごく、ストレスが溜まっていると思うんだ。私たちじゃ、何て言って、慰めてやればいいか、分からなくてな・・・。桜、可愛いものとか好きだし、こういうのがあれば、少しでも、心が落ち着くといいなと思ってな・・・』
『それに、異世界に来る前から、ずーっとお世話になりっぱなしだから、たまには、プレゼントをして、ありがとうって、伝えたくってさ!』
『頼む!!この通り!!』
鬼島は、そんな3人の申し出と、桜を心から大切に思いやる気持ちが嬉しくて、引き受けたのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・ひっひっひ。・・・桜・・・アンタは・・・本当に・・・あの子たちに・・・慕われていたんだねぇ。・・・ずっと、アンタが、あの子たちの、学費や生活費を稼いで・・・傷つかないように・・・守り続けていたって・・・話を聞いてねぇ・・・アンタらしいなって・・・思ったよ」
そういって、鬼島は、鉄格子に近づき、桜に優しく微笑んだ。
「・・・アンタ・・・本当に・・・優しいヤツだからねぇ。困っている人を見ると・・・なんだかんだ言いつつも・・・放っておけないんだよねぇ。私のことも・・・いじめられている時・・・いつも・・・助けてくれていた。あの子たちも・・・私も・・・アンタがいつも・・・助けてくれた。だから・・・異世界でも・・・生きてこられた・・・桜が・・・私たちを・・・いつも・・・守ってくれて・・・いたから」
「・・・話は聞いたぞ。お前が、クロスの賠償金を稼いでいたのは、金を稼ぐ才能を、クロス国王やセルマに認めてもらうことによって、金の成る木になるお前を手放させないためだったってこと。それは、そこの女や、お前の仲間を、王族や他の勇者たちに利用されないために、守るために、クロスのために、働き続けていたこともな」
自分が、金を稼ぎ続けていれば、クロスもやすやすと自分のことを手放すようなことはしない。
そうすることによって、仲間たちを、軍事力強化のために利用されないように、守り続けていた。
「・・・そ、そうやって、ずっと、弱い人や、苦しんでいる人を、守り続けていた・・・。アンタだけが、本物の・・・勇者・・・だった」
そういって、鬼島は、鉄格子の間に腕を通して、桜の胸倉を掴み、顔を鉄格子に叩きつけるほどの勢いで、桜を引き寄せる。
「・・・そんな、アンタが、こんなところで、和田たちの仇も討たないまま、全てを諦めるなんて、冗談じゃないだろう!!」
「・・・鬼島、ちゃん・・・!」
「・・・ここで、おしまいに、しちまったら、アンタだって、本望じゃ、ないだろう・・・?」
本当に、このままで死ねるのか。
愛していた恋人に裏切られて、大切な仲間を奪われて、このまま、死をただ待つだけなんて、納得できる結末などではない。
しかし、自分は、大罪を犯しているのだ。
捕らわれの身となっている以上、好き勝手に行動をすることなど、出来るわけがない。
「・・・まあ、私に、一つ、提案があるのだがな」
ベアトリクスがそう言うと、ブリアック女王が兵士に命令をして、牢屋の鍵を開けた。
「・・・本来なら、お前に、判決を下してから、然るべき罰を与えてやるはずだったのだがな。エルフ軍が、予想よりも遥かに早く、動き出してしまった。じゃから、この事は、私とブリアック女王、そして、ヴァネッサ女王と、ディアドラ女王も承諾しているということを、あらかじめ、伝えたうえで、お前に一つ、仕事を頼まれてもらいたい」
そして、桜を牢屋から出すと、ベアトリクスは、鬼島から、ドラゴン型メカを受け取ると、桜の手の中に収めた。
「今日の日没、それが、タイムリミットよ。それまでに、今回の事件の元凶であるオラドールのエルフ軍の頭目、邪眼一族の渾沌、最低でも、その二人の首を持ってきなさい」
「・・・ちょ、それって、いいのかよ。オレが、逃げるとか、思わないのか?」
「逃げようと思っているヤツなら、そんなこと、言わないでしょうが。それに、使い魔を使って、一応監視はしているから、心配しないで」
桜は、まさか、自分の罪を償うという名目で、牢獄から戦場に送り出されるとは、夢にも思っていなかった。唖然としている桜に、今にも消えそうになっている鬼島が、フラフラと、おぼつかない足取りで近づいて、懐から、黒いプレートを取り出した。
「・・・ひっひっひ・・・これを使えば・・・アンタの・・・魔法裁縫師としての力が、覚醒、する。私の・・・最後の発明・・・アンタに・・・託すよ。これを使って・・・アンタが・・・やらなきゃならないことを・・・やってきな。これが・・・私が・・・アンタにしてやれる・・・最後の・・・おせっかいさぁ・・・ひっひっひ・・・」
プレートを腹部に押し付けると、銀色の光が帯となって飛び出し、桜の腰に巻かれた。
それは、斗真が使用している変身用ベルトと、同じデザインのものだった。
「鬼島ちゃん・・・!!」
「・・・今まで・・・ありがとうね・・・。桜・・・アンタのこと・・・ずっと・・・見て・・・いる・・・からね・・・。情けないところ・・・見せるんじゃない・・・よ・・・」
笑顔で、胸に軽く拳を押し付けると、彼女の身体が、ついに崩壊した。
水色の光の粒子が、天に昇っていき、彼女の形見である眼鏡だけが、床に音を立てて、落ちた。
-・・・これからも、ずっと、アンタのそばに・・・いるからね・・・-
「・・・死ぬほど痛くて、苦しかったでしょうに。それでも、あの子は、最後まで、アンタのことを気にしていた。そして、泣き叫びたくなるほどに、痛くて苦しい思いをしながらも、あの子は、傷だらけの身体を引きずって、ここまで、やってきてくれた」
どうする、といったように見てくるベアトリクスたちを見て、桜の決心が、固まった。
目を開き、涙をぬぐった右目には、熱く燃え上がる炎が宿っていた。
このままじゃ、終われない。
どんな刑罰であろうと、受け入れよう。
でも、その前に、自分がやらなければならないことを、やらないままで、終わることなど出来ない!!
「・・・アイツらに、ダサいところを、これ以上、見せられないからな・・・!!」
桜が左腕を、天井に向かって突き出すと、ドラゴン型メカが飛んできた。
そして、頭部と尻尾が胴体に飲み込まれると、バックルのような形に変形する。
「・・・オレのけじめを・・・ちゃんと、つける!!」
自分自身の罪と向き合い、けじめをつけるために。
全ての因縁に、清算するために。
今、桜が、再び立ち上がった。
「・・・変身!!」
『飛竜乗雲!!竜・姫・転・身!!』
竜型のドライバーを挿し込むと、桜の身体が、金色の光に包まれていく。
そして、身体に変化が起こった。
セミショートの髪が、腰まで伸びて、まるでサムライのように、後ろで縛られていく。
身体が、成熟した女性の艶やかな肢体に変わり、たわわに実った豊満な胸に膨らんでいく。
ドライバーから飛び出した、巨大な藍色の竜が、桜の身体の周りを覆い尽くすと、身体に吸い付くように、白い着物に変わって、装着されていく。
そして、左目には眼帯をつけて、顔には、藍色の隈取が浮かび上がった。
胸元を大きく開き、着崩した着物を身に纏う姿は、サムライというよりは、浪人のようにも見える。
手には、刃に青い竜の紋様が刻まれた、細身の刀剣が握られている。
『竜刃の侠客・オレイカルコス・ナイト・・・!!』
桜の身体に起こった変化を見て、ベアトリクスたちは、自分たちの予想が想像以上のものであることを悟り、思わず震えあがった。
「・・・これが、二人目の、魔法裁縫師・・・!」
「・・・オレが、斗真と同じ、魔法裁縫師、だって・・・!?」
魔法裁縫師として、覚醒を果たした桜の姿を目の当たりにして、彼女たちはもちろん、桜自身も、自分の身体に起こった劇的な変化に驚いていた。
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名前 :サクラ・マクノウチ
種族 :人間(異世界人)
性別 :男性(一応)
年齢 :17歳
レベル:1
信頼度:C(冒険者未登録)
強さ :A
器用さ:S
持久力:A
敏捷性:A
賢さ :A
精神力:S
運 :A
職業 :魔法裁縫師・元勇者
スキル:魔法闘衣錬成 S
:身体強化 A
:精神強化 A
:竜との対話 S
:魔力探知 A
:魔力操作 S
:解呪 S
:危険探知 A
:罠設置 A
:剣術 S
:騎乗能力 S
武器 :魔導刀【ヤマタノオロチ】
属性 :竜
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「・・・めったに見ることのない、竜属性の、魔法裁縫師ですって・・・!?」
「それは、炎・水・地・風・雷の5つの異なる属性の力を、自在に操る事が出来る、100万人に一人、出るか出ないかと言われている、伝説級の魔法属性ではありませんか!!」
「斗真の持つ全属性には劣るかもしれんが、これも、なかなかの能力じゃないの・・・!!」
そこまで賞賛してから、改めて、ベアトリクスたちは思った。
クロスの連中、斗真に続いて、桜というデカい魚を逃がすなど、もはや、人を見る目に関しては絶望的過ぎる。
そして、クロス王国なんかに抱き込まれないで、本当に良かったと、心から安堵するのであった。
桜、魔法裁縫師として、ついに覚醒しました!
千鶴に傷つけられて、致命傷を負っていたのに、斗真たちや桜にも最後まで隠し通して、桜が魔法裁縫師として覚醒するために必要な変身アイテムを開発して、彼に託して、鬼島ちゃんも散りました。
今後、桜は、ふたなり系女剣士として、活躍します!斗真とは違って、変身を解除しても、男の身体には戻れません。
クロス王国の人を見る目がなさすぎることも発覚し、今後、クロスには、ザマァの猛ラッシュを叩き込んでいこうと思っております!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
次回も、よろしくお願いいたします!!




