第十五話「四国同盟~お偉いさんが集まる会議というのは、緊張のあまりにお腹が痛くなる~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が完成しましたので、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
翌日。
スピタルの王宮から、王命を受けた兵士たちがやってきて、桜から事情を聴くために、桜を王宮に連れて行った。桜は、大人しく投降した。
桜は、毒気を抜かれたというか、もう、思い残すことはないと言った表情で、素直に、命令に従う。
あれから、朝日が昇るまで、二人きりで、取り留めのない話をしていた。
心の中にずっと溜め込んでいた感情を、全てぶちまけたせいか、憑き物が落ちたような顔をしていた。
もしかしたら、これが、本来の幕ノ内桜なのかもしれない。
「・・・斗真、一つだけ、いい?」
「・・・何?」
「・・・シャルトリューズの森の【オラドールの集落】。そこのエルフたちが、今度の事件の元凶だ。セルマが、その集落の長と、何か話し込んでいるのを、聞いたことがある。・・・その集落の、エルフたちを、必ず倒してくれ。・・・これ以上野放しにしておいたら、あのエルフたちは、森どころか、この大陸全体を支配するつもりでいる」
「・・・それは、本当なの!?」
「・・・クロスの勇者や、邪眼一族とか言うヤバい連中とも、繋がりがある以上、シャルリューズの森を支配するだけじゃ、済まないと思わないか?」
そう言って、僕たちに深く頭を下げると、桜は、兵士さんに連れていかれた。
「トーマ、申し訳ないのだが、これから、スピタルの王宮で、ブリアック女王陛下に、この度の騒ぎについて、報告しなければならない。そこで、お前とアレクシアにも、同伴して欲しいのだ」
「ええっ!?ぼ、僕みたいな、一般人がついていって、大丈夫なんですか?」
「ああ。・・・というか、実は、ブリアック女王から、どうしても、お前に来て欲しいという、通達があってな。女王陛下からの直々のご命令ともなれば、拒否するわけにもいくまい」
「あらあらまあまあ~、そんなに、緊張しなくても、お姉ちゃんたちがついていますよ~?」
「トーマの姉は私だけだ。私こそが、トーマにとって、唯一無二のお姉ちゃんだ。まあ、いずれは、妻になるのだがな」
お姉ちゃん、ちょっと何を言っているのか、分かりません。
そろそろ、お姉ちゃん専用の通訳さんが欲しいなあ。
「・・・アイリス、昔と比べると、だいぶ、本音で話すようになりましたわね~。昔は、もっとこう、素直じゃないと言いますか、頑固と言いますか、自分の気持ちを正直に言うことなんて、ほとんど、なかったではありませんか」
「・・・なぜ、そんなに、嬉しそうに言うのだ」
「いえいえ、お気になさらずに~♥これも、トーマちゃんの影響ということですわね~♥」
そして、僕たちも兵士さんに連れられて、スピタル城の王宮に向かうことになった。
ううっ、何だろう・・・。
まさか、こんな重要な時に、まさか、女王様から直々に呼び出しされるとは思わなかった。
こんなの、学生時代に、職員室に先生から呼び出しされて以来の緊張・・・いや、それ以上かもしれない。もし、粗相でもやらかしたりしたら、最悪・・・その場で、処刑されてしまうかもしれない?
いやいや、いくら何でも、いきなり、死罪はないでしょう?
でも、もしも、万が一の時は・・・。
「トーマちゃん、何を考えておりますの?」
「この国の処刑って、ギロチンか、火あぶりか、縛り首か、どれなのかと真剣に考えていました」
「お前、時々、訳の分からないことを言い出す時があるよな」
どんな展開になろうとも、常に、最悪の展開を考えておけば、ちょっとやそっとのことで動じなくなるのさ。身体に悪い生き方かもしれないけど、心臓が思わず止まるような、ショックな出来事に、しょっちゅう驚かされているうちに、こう思うことで、自分のメンタルを守っているのですよ。
ネガティブ?何とでも言え。
人間、ネガティブを通り過ぎると、もはや、ヤケクソで何でも乗り越える事が出来るってもんだい。
腹をくくったら、もう、怖いものなどない!
僕は、覚悟を決めて、女王陛下との謁見に臨むことにした。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
・・・何て、思っていた時期もありましたね。
「お待ちしておりましたわ。わたくし【医療の国スピタル】を治める【ブリアック・フォン・ブエル10世】でございます。この度は、遠路はるばるとお越しいただいたにもかかわらず、おもてなしが出来なかったばかりか、このような騒ぎに巻き込んでしまい、大変、申し訳ございませんでした」
ブリアック女王陛下は、申し訳なさそうに、深々と頭を下げて、謝罪をしてきた。
女王陛下というよりは、女医さんのようにも見える、清潔感のある、真っ白なコートに身を包んでいる、知的な雰囲気の美しい女性だった。腰までまっすぐ伸ばした長い茶髪に、猫のような耳を生やしていて、セルフレームの眼鏡をかけている。しわ一つなく王族の服を着こなしているあたり、彼女の誠実な人柄がうかがえる。
うん、それまでなら、まだ、いいんだけどね・・・!
「トーマちゃん!お姉ちゃん、来ちゃったわ~♥」
「久しぶり、トーマ!元気にしていたかしら?」
「いつぞやは、大変、お世話になりましたわ」
な~ぜ~に~、スピタルの王宮に、他国の最高責任者が、雁首揃えて、待ち受けているのかなぁっ!?
ベリス姉さま、【ブラオベーレ王国】の【ヴァネッサ女王】に、【ハニーベル王国】の【ディアドラ女王】までもが、いるのかなあ!?
他国の王族や貴族と、国際会議を行う場所として使用する、荘厳な作りの会議室には、なぜか、豪華な顔ぶれが、僕たちを出迎えてくれた。
この瞬間、僕の緊張はすぐに限界を突破して、さーっと血の気が引いていく音がした。
「姐さん!それに、ヴァネッサに、ハニーベル王まで、どうして、ここにいるんだよ?」
「大アネキ~っ!!いい加減に、こういうときぐらい、ため口で話すのは、やめてくださいっ!!」
「・・・こ、これは、一体、どういうことですかな?」
「ああ、私が、招集をかけたんだ」
何が何だかさっぱり分からない。
僕たちは空いている席に座るように言われて、座席に、腰を下ろした。
「・・・この度、みんな、多忙のところ、急に集まってもらって、申し訳なかった」
そういって、ベリス姉さまが、深々と頭を下げて、お詫びの言葉を言った。
「・・・クロス王国の数々の悪逆非道で愚かな行為を、これ以上、見逃すことは出来ないと判断する証拠が見つかった。これは、クロスに召喚された異世界人が持っていた”すまほ”に、記録されていた映像と動画である」
そういうと、ベリスお姉さまが、僕を呼んで、こっそりと耳打ちしてきた。
「・・・トーマちゃん、これ、どうすれば、さっきの動画と画像を出すことが出来るのかしら?」
「・・・もしかして、僕、スマホの使い方が分からないから、呼ばれたんですか」
「・・・それもあるんだけど・・・とにかく、さっきまでは、セリアに頼んで、出してもらったんだけど、急に画面が真っ暗になっちゃって・・・お願い、バレない様に、助けてちょうだい」
周りの王様にバレない様に、威厳のある態度をとっているけど、僕にだけ見えるように、涙を目の端に浮かべていた。
ベリス姉さま、貴方は魔王軍のトップでしょう?
少しは、プライドというものを持ちましょうよ?
スマホを操作すると、画面が次々と、部屋に浮かんでいた、巨大なスクリーンに映し出されていく。
「・・・これは、クロス王国の、王宮の地下にある【封印の間】と呼ばれる、立ち入り禁止とされている部屋の中を、偶然、異世界人が撮影したものだ」
『どうも~、レポーターの矢守忍でっす。さて、今回は、セルマっちから、いつも、この部屋には絶対に入ってはいけないと言われている、禁断の間を、こっそりと、忍び込んで、調査してみたいと思いま~す』
矢守さんが、まるでテレビのレポーターのように、話し始めた。
『普段は、鍵がかけられているのですが、ついさっき、国王陛下から緊急の呼び出しを受けて、セルマっちが飛び出していった後、何と、鍵をかけ忘れてしまったようです』
『鳳たちが何かやらかしたらしいな。戻ってくる前に、何か、セルマの弱みになるようなものはないか、調べるぞ』
『オレ、見張りをしていた方がいいか?』
『ああ、頼んだ』
この声は・・・和田さんと神谷さんだ。どうやら、これを撮影しているのは、神谷さんのようだ。
そうか、あの二人、桜のために、色々とクロス王国が隠していることや、セルマの弱みになる秘密を探していたんだ。
鉄の扉が開き、神谷さんと、矢守さんが、部屋の中に入っていく。
長い階段を、慎重に、一歩、一歩、踏み外さないように降りていく。
『・・・この辺りは、確か、私たちが召喚された、召喚の間のあたりだな』
『あー、そういえば、そうだったね』
階段を下りていき、大きく開けた部屋に入ると、そこには、目を疑うような光景が広がっていた。
『・・・ね、ねえ、レンちゃん、何、これ・・・?』
『・・・随分と、趣味の悪い部屋だな』
僕たちが転送された、召喚の間の真下に広がっていたのは、あまりにも異様な雰囲気が漂う部屋だった。
部屋の床には、巨大な魔法陣が書かれており、その魔法陣の周囲を、8体の不気味な怪物の石像が置かれている。
「・・・この石像と、魔法陣。最初にこれを見たときには、私も、思わず目を疑った。まさか、クロスが、このようなものを手に入れて、王宮の地下で、保管していたとは、夢にも思わなかった」
「・・・あの、これって、何ですか?」
ベリス姉さまは、深くため息をついてから、口を開いた。
「・・・古の時代に、世界を滅ぼしかけた、災厄の象徴とされている八体の魔神・・・【魔神八傑衆】の魂が封じ込められている、石像よ。そして、この魔法陣は、多くの魔力を吸収して、蓄えた膨大な量の魔力を一気に放出し、石像に魔力を流し込んで、魔神八傑衆を復活させるための魔法陣なのよ・・・」
え・・・?
その言葉を聞いて、ヴァネッサ女王たちが、ざわつきだした。
「何ですって?それでは、クロスは、魔神八傑衆を、復活させようとしているということですか!?」
「・・・ええ、もはや、これは言い逃れが出来ない重要な証拠になるわ。どういうつもりで、魔神八傑衆を復活させようとしているのか知らないけど、もはや、クロスは英雄の国ではないわ。邪眼一族にも匹敵する、世界を支配しようと目論んでいる災厄でしかないわ」
「・・・魔神八傑衆が目覚めてしまえば、世界は、かつてのような、滅亡の危機を迎える。クロスは、それを知っていて、それでも、復活させようと目論んでいるということなんですか!?」
「ああ、セルマほどの魔導師が、魔神八傑衆の存在やその力を知らないはずがない。そこで、私たちは、クロス王国が今後、世界に危害を加える、危険な存在と見なし、クロス王国の暴走を食い止めるべく、同盟を組んで、クロスと対抗するべきではないかと思うのだが・・・みんなはどう思うか、意見を聞きたい」
まさか、クロス王国が、世界を滅ぼしかけた魔神を復活させようとしていたなんて・・・!
もしかしたら、邪眼一族も、それを知っていたから、クロスの勇者たちに協力したのだろうか?
そうなれば、英雄の国と邪眼一族が、裏で手を組んで、世界を我が物にせんと、今度の計画を思いついたのかもしれない。
「さらに、セルマが長年、書き続けてきた、禁忌とされている人体実験や、魔神たちの復活に関する研究の記録も、全て、彼女たちが画像に取り込んで、保管してくれていた。全ての記録は撮りきれなかったようだが、肝心の、魔神八傑衆の復活の儀式に関する考察と記録は、全て、保存されてあった」
つまり、セルマが中心になって、魔神を復活させて、良からぬことを企んでいたというのは、もはや、間違いないらしい。
これだけでも、十分に、セルマやクロス王国を糾弾することが出来る。
英雄の国と呼ばれて、世界中の人々から信頼と尊敬のまなざしを受けていたクロスが、まさか、裏で、魔神を復活させようとしていたなどと、公になれば、クロス王国は、滅亡待ったなしの状態に、追い込まれるだろう。
「・・・なるほど、確かに、ここで、手を組んでおかない理由はありませんね」
「お互い、北と南の大陸の情報を交換し合うことで、今後の、国の繁栄にも繋がりますからね」
「そういうこと。・・・それで、どうする?今こそ、手を取り合って、偽りの英雄たちを打ち倒し、世界に危害をくわえようとする害悪から、民たちを守るために、共に戦おうではないか!」
「異議なし!」
「そのお話、お引き受けいたします!」
「是非とも、よろしくお願いいたします!」
ベリス姉さまの言葉を聞いて、ヴァネッサ女王、ディアドラ女王、そして、ブリアック女王が賛成した。ここに【魔法の国サマリア】、【ブラオベーレ】、【ハニーベル】、【スピタル】の同盟が結ばれたのであった。
すごい瞬間に、出くわしてしまった。
というか、本当に、僕たちがこんなところにいていいのかと、つくづく思ってしまう。
「うん?トーマちゃん、どうやら、どうして、自分たちがここに呼ばれたのか、分かってないみたいね?」
そういって、ベリス姉さまが、僕をいつものように膝の上に乗せて、おっぱいに、顔を押し付けて、髪の毛を撫でながら、話し出す。
「あのねえ、今度の同盟の話はね、トーマちゃんのおかげ・・・というか、トーマちゃんのせいで、思いついたのよね」
え・・・?
あ、あの、その、僕のせいって・・・。
それを聞いた瞬間、ディアドラ女王が、僕の方を向いて、にこやかに笑った。
「・・・図書館周辺の異変調査まではお願いしたはずだったのですがね?かつて、この大陸を支配していた、アイスキマイラの討伐をしなかったばかりか、獣人として姿を変えて、保護するとは思いませんでしたよ。その辺についての、責任はちゃんと、とってもらいたいと思いましてね?」
「・・・まあ、私も、ちょっとごり押ししちゃったから、ディアドラからすれば、面子を潰されちゃったわけだし、レベッカたちの看板にも泥を塗ってしまったわけよ。それで、どう、責任を取ろうかと話していたら・・・同盟を組むことによって、今後、大陸で起きるトラブルや事件が起きたとき【彩虹の戦乙女】に任せることにしようということで、手打ちにしたのよ。公には出来ない、面倒なトラブルを解決するための、トラブルバスターズとして、ちょっと、お仕事を引き受けてもらえないかなー・・・なんて」
うん、そうですね。
僕、正直、あり得ないことをやらかしまくっていましたからね・・・!
普通だったら、今頃、処刑されていてもおかしくはない。
それでも、ユキちゃんを、どうしても守りたかった。
もし、それで、罪に問われる時が来たら、ユキちゃんが処分されないように、僕が全てを引き受けることも、覚悟はしていた。
しかし、まさか、こんなことになるとは、僕も想定外だった。
「いいんじゃねーの?むしろ、仕事が増えて、ラッキーって感じなんだけど」
「どこかの誰かが、大飯ぐらいで、すぐに依頼料を使い込むからな。それに、お姉ちゃんなのだから、トーマの不始末は、お姉ちゃんも一緒に背負ってやるのが当たり前だ」
「あらあらまあまあ~、これは、もう甘やかしていられませんねぇ~。一人前の男性になれるように、わたくしも、きちんと、色々なことを教えて差し上げなくてはなりませんわ~」
「・・・皆さん・・・本当に・・・ごめんなさい!!」
僕は床に座って、頭を床に押し付けて、謝った。
土下座をして謝らないと、これは、まずいだろう!
「泥を塗ったと言っていましたが、それなら、オリヴィアちゃんとヴィルヘルミーナちゃんがいる時点で、とっくの昔に、泥だらけになっているのですが?」
「ダンジョンから財宝をこっそりくすねてコレクションするわ、人を見下してくる上に、依頼料を踏み倒そうとする嫌な依頼主に対する腹いせで、こっそり全財産を巻き上げてくるわ、可愛い女性の冒険者や、女性の魔物を見たら、だれかれ構わずに声をかけまくって、手を出した結果、寝取られたと、相手の男性から訴えられたことも一度や二度じゃないぞ」
「・・・それも、そうだったわね・・・」
ベリス姉さま、落ち込まないでください・・・。
ディアドラ女王「ユキ(アイスキマイラ)のことは許してあげるから、その代わり、こっちで何かトラブルが起きたら、よろしく頼むわねー♥(意訳)」
ディアドラ女王、斗真のワガママと、ベアトリクスのごり押しには少々腹が立っていた模様。そこで、クロス王国を糾弾しようという話に乗っかって、同盟を組み、ちゃっかりと、強力な戦力を手に入れました。敵として戦うよりも、味方として取り込む方が、メリットがあると判断したようです。
ここまで読んでくださり、本当に、ありがとうございます。




