第十話「アレクシア・アッシュクロフト~メモを書いても放置していたら意味はない~」
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「おーい!トーマ、そっちはどうだ?」
「・・・あれ?あそこに立っているのって、もしかして・・・」
「・・・・・・アレクシア!?」
後ろから大アネキたちの声が聞こえてきた。
僕とグリゼルダさんが何とも言えない顔をして、振り返ると、そこには大アネキたちが手を振って、こっちに向かっていた。
「アレクシア!?おい、久しぶりじゃねーか!まさか、トーマに封印を解いてもらったのか?・・・て、あれ?どうしたんだよ、アイリス?」
「・・・お前たちのせいだ」
アイリスお姉ちゃんは現在、満面の笑顔で仁王立ちしているアレクシアさんの前で正座をしていた。
血の気が引いて真っ青になっており、冷や汗が顔中に噴き出している。
「・・・皆様、どうもお久しぶりですわね。無事、お会いできて嬉しいですわ」
「・・・る、ルシア(アレクシアの愛称)ちゃん?どうかしたのかい?あ、あの、ものすごく怒っていらっしゃるみたいなんですけど・・・」
「・・・とりあえず、団長、ミーナちゃん、ビビちゃんは・・・正座してください」
「・・・・・・何故」
「正座してください」
有無を言わさない笑顔と心臓が凍り付くような冷たい声の迫力に圧倒されて、大アネキたちの顔色も血の気が引いて、緊張した面持ちで正座をした。
「・・・さて、どうして、こんなことになったのか、分かりますか?」
「い、いや、全然心当たりないんだけど!?」
「・・・・・・今回ばかりは無実!」
「・・・そうですか。まあ、今しがたに起こったことではありませんからね。とりあえず、まずはこれを見ていただけませんか?」
アレクシアさんがにっこりと、さらに微笑んでから、白衣のポケットから紙を一枚取り出した。
厚紙のようなその紙には、魔法陣と無数の魔力を発動させる効果のある【魔法文字】が書かれていた。
「これは、お前が作った転移魔法用の魔法陣じゃねーか」
「これが一体どうかしたのかい?」
「ええ、これはですね、300年前に外なる神と戦った後、セルマに奇襲を食らった時に、わたくしが皆様と一緒に、空間転移をしたときに使ったものなのですよ」
「そういえば、そうだよね。あのまま、セルマに魔石の中に封印されそうになった時、君がこの転移魔法を発動してくれたから、ボクたちは逃げる事が出来たというわけだ」
「・・・・・・ええ、本当なら、皆様と一緒に、あの拠点のある小島に転送されるはずだったのですがね」
ヤバい、アレクシアさんのこめかみに、血管が浮かんでいる。
「・・・本来なら、あの拠点に全員が転送されて、もっと早く救助されるはずだったんだ。しかし、転移魔法が失敗して、私たちは離れ離れになって、飛ばされてしまったんだ」
「え、失敗?アレクシアが失敗?いやいや、アレクシアは魔法のエキスパートで、失敗したことなんてなかっただろう?」
「・・・・・・猿も木から落ちるとは、このこと」
「・・・誰のせいで、こんなアホなことになったと、思っているのですか?」
アレクシアさんが大アネキたちに、魔法陣を突き出した。
魔法陣の裏には、いくつか、走り書きがあった。
『夕飯 焼肉 食べ放題!』←大アネキが書いた文字。
『明朝7時 宿屋ロビーに集合 遅刻厳禁』←アイリスお姉ちゃんが書いた文字。
(ミミズがのたくったような意味不明の文字)←ビビ姉が寝ながら書いた文字らしきもの。
(今回の報酬の割り当ての計算)←オリヴィアさんが書いたらしい。
『娼館夜8時 ジュディ嬢と2時間の甘いひと時』←ヴィルヘルミーナさんが書いた文字。
「「「「・・・・・・」」」」
うわー、大アネキたちの表情が見る見る青くなって、汗がまるで滝のように流れ出している。
「・・・このメモ書きに、心当たりはありますよね?」
「・・・私たちが、外なる神と戦った後に、今後の予定を書き込んでおいたものだ」
「・・・そうですよね?ですが、どうして、転移魔法の魔法陣にこんなものを書き込んだのですか?おかげで、刻まれている魔法文字が落書きで上書きされてしまい、転送場所がメチャクチャになってしまったのですよ」
「・・・つまり、ボクたちが世界中に散り散りになって飛ばされたのは・・・」
「・・・・・・そのまま300年間も、宝石の中に閉じ込められ続けていたのは」
「・・・ぜ・ん・ぶ、貴方たちの大チョンボのせいですわ・・・うふふふふふふ」
ビキッ!ビキッ!ビキッ!!
ヤバい、アレクシアさんの額に血管が何本も浮いているよー!
「ぐ、グリゼルダさん、どうにかならないんですか!?」
「・・・無理。てか、私はコイツらのアホ過ぎるミスのせいで、300年間も、洞窟の中に放置され続けていたんかい。本当にもう、コイツらは」
グリゼルダさんが、こめかみを抑えて、頭痛を抑えていた。
そりゃそうだ。
本来ならもっと早くベリス姉さまに見つけてもらって、魔石から解放されていたのかもしれないのに、散り散りになって飛ばされたものだから、ベリス姉さまも見つける事が出来なかったのだろう。さらに、アレクシアさんがかけた【気配遮断】の魔法がかかっていたのなら、なおさらだ。
「・・・まあ、それがなければ、トーマに出会うこともなかったから、別にいいんだけどね」
あれ?どうして、グリゼルダさん、僕のことを見て、顔を真っ赤にしたんだろう?
「・・・でも、アイリスお姉ちゃんは拠点に転送されていたのに、どうして、ベリス姉さまは見つけられなかったんだろう?」
「・・・恐らく、ベアトリクス様が拠点に探しに来たときには、まだ転送されていなかったのかもしれないわね。すれ違いで転送されて、そのまま拠点の近くに放置されていたってこと」
「それに、気配遮断の魔法がかかっていたら、気づかれなかったんじゃないですか?」
「一人だけならね。でも、拠点の島に、気配遮断の魔法が発動しているものが一度に七体もあれば、複数にかかっている魔力がわずかだけど感じる事が出来るのよ。気配遮断を主に盗賊や暗殺者が好んで使うのは、個人活動が多いからよ。一人だけ使う分には、相手に気配を悟られなくなるからね」
そうか、一度に大勢の人が集まって、気配を消しても、発動している魔法の魔力を放ってしまっているから、意味がないんだ。でも、逆にそれを利用すれば、みんなが集まっているところに、ベリス姉さまがやってくれば、みんなを発見して、封印を解放する方法が他にもあったのかもしれない。
たまたま、僕が解除出来たというだけで、もしかすれば、他にも色々とやり方があったのかな。
(実は斗真の魔法裁縫師の能力がなければ、解除するのに数百年以上の時間がかかる方法しかなかったため、斗真に封印を解除されたことが、一番最短ルートの解除方法だったが、この時は全員知らなかった)
「そのうえ、こんなにも可愛くて、抱っこするといい匂いがして、食べたくなっちゃうほどに愛らしい男の娘を仲間に入れて、自分たちがやらかしたことも忘れて、あーんなことやこーんなことや、イチャコラチュッチュッしてやがったですってぇ?そんなこと、許せるはずがないでしょう・・・?」
どこの誰だろうか、そんなにも可愛らしい男の娘というのは。
おそらく、僕ではないだろう。どこからどう見ても、365度、立派な日本男児なのだから!
「・・・一周したら、360度ですわよ」
はい、すみません。現実から目を背けたかっただけです。
「・・・いいご身分ですわねぇ。わたくしが宝石の中に閉じ込められている間に、そんなにも愛くるしい男の子と遊び惚けているなんて・・・覚悟は出来ているのかしら、ねえ?」
「ちょっと待ちたまえ!ボクはトーマ君に対して、遊びで接したことなど一度もないよ!ボクは生まれて初めて、トーマ君という、一人の男の子に心底惚れこんでいるんだ!だから、トーマ君が入浴しているところを壁越しに覗いたり、身体を洗っているところに忍び込んで、背中に生乳を押し付けてセクハラしたり、寝ている時を見計らって部屋に忍び込んで、夜這いを仕掛けたことも、全て大真面目にやっているのさ!遊びとは心外だね!」
「大真面目に言い切るな、このバカ!」
まさか、入浴中にいきなり男湯に乱入してくるとは思わなかった。グリゼルダさんが飛び込んで、ヴイルヘルミーナさんを蹴り飛ばさなかったら、僕はどうなっていたのだろうか。まあ、あの後、僕も恥ずかしさのあまりに、鼻血を噴き出して気絶しちゃっていたけどさ・・・。
「なぜか私の寝床に下着姿で飛び込んできたから、ボコボコにしたこともあったな。もはや、トチ狂ったとしか思えん」
ああ、それでこの間、アイリスお姉ちゃんに朝っぱらからボッコボコにされていたのね。
「・・・・・・トーマが寝ている間に、寝床に忍び込んで、抱き着いて寝るのは、とても刺激的でクセになる」
「ちょっと待って!?それは初耳なんだけど!?てか、僕が目を覚ました時、ビビ姉、いなかったよね!?」
「・・・・・・違う。背中にくっついていた。トーマが気づかなかっただけ」
「そういえば、この間、トーマが部屋を出てきたときに、ビビアナがトーマの背中にしがみついていたのを見たな。まさか、あのままで、トーマと添い寝をしていたってことか!?」
「・・・・・・トーマの肌のぬくもり、気持ちよかった♥」
「あー、それ、分かるな!オレもよく酔いつぶれては、トーマに部屋まで送ってもらうんだけど、どさくさに紛れて抱き着いて、トーマの匂いを嗅ぐと、すごくいい気持ちになるんだよなー!」
「そうか、その手があったか!レベッカのくせに、随分と、こざかしいことを思いつくものだな・・・!今度、私もそれをやってみるとしよう。そして、そのまま私とトーマは姉弟の一線を超えて、既成事実を設けて、夫婦となるのだ・・・!」
あかん・・・!
ここに、通報した方がいい、変態が四人もおる・・・!!
あまりのショックに、僕は両手をついて、その場に崩れ落ちた。
「・・・ルシア、コイツら、死なない程度にお仕置きをよろしくね」
「了解ですわ♥あと、もう二度とトーマちゃんにそんなことが出来ない様に、たぁっぷりと、お仕置きしなくてはいけませんねぇ・・・うふふふふふふふ♥」
「「「「ご、ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁいっ!!」」」」
「お・し・お・き・で・す・わ♥」
≪ただいま、大アネキ、アイリスお姉ちゃん、ビビ姉、ヴィルヘルミーナさんがアレクシアさんが召喚した魔法植物に締め上げられて、この世のものとは思えないお仕置きを受けています。しばらくお待ちください≫
10分後。
ぼろ雑巾のようになった大アネキたちが、地面に倒れて、ピクピクと痙攣していた。
グリゼルダさんが僕の視界を覆って、何が起こっているのか、見えないようにしてくれた。どんな目に遭ったのか、恐ろしくて聞く気にもなれない。
「・・・なるほど、そういうことになっていましたのね」
「アンタにとっても、あまりいい思い出のない場所で起きている事件だから、色々とあるかもしれないけど、どうか、力を貸してくれないかしら?」
「そういうことでしたら、いくらでも力をお貸しいたしますわ。それでは、回復術士、【神樹のアッシュクロフト】こと【アレクシア・アッシュクロフト】。今日からもう一度、こちらでお世話になりますわ。どうぞ、よろしくお願いいたします」
そして、僕の方に振り向いて、にっこりと微笑んだ。
「よろしくね?トーマちゃん♥うふふ・・・♥」
こうして、新しい仲間、アレクシアさんが加わった。
6人目、アレクシア・アッシュクロフトのプロフィールは近々、主要登場人物に書き込みます!
今後、レベッカたちがとんでもないへまをやらかしたり、イタズラをした時には、彼女がお仕置き担当として活躍いたします。お仕置き系のキャラって、昔から好きでした。一番好きだったのは、こち亀の大原部長です。
次回もよろしくお願いいたします。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。




