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第四話「凶報~勇者軍side➀~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします!!


 黄の大陸「レオノール」。

 セブンズ・ヘブンのほぼ中央に位置し、七大陸の中でも最大級の面積を誇る大陸。

 

 そして、その大陸に君臨する大国が【聖王国クロス】である。


 世界中から人々が訪れる宗教都市であり、世界一美しい国として賞賛されている大国であり、国を立ち上げたのは、300年前に世界を支配せんと侵略を行おうとしていた魔族が召喚した「外なる神」と呼ばれている異形の化身を見事討伐し、世界に光をもたらした【英雄王】と呼ばれる勇者と、彼と共に幾多の危機を乗り越えて戦い、勇者と共に世界の平和を守り抜いた【戦士】、【僧侶】、【武闘家】、そして【魔術師】の4人であることから「英雄の国」とまで呼ばれ、現在に至る。


 しかし、その王国に不穏な気配が訪れようとしていた・・・。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・それは、まことの話か。セルマよ」


 「・・・はい、間違いございません」


 クロス城の玉座の間に、緊迫した空気が張り詰めていた。

 

 クロスを統治する国王【イグナーツ・フォン・イステル5世】は、王宮魔導士である【セルマ・ティアマット】からの報告を受けて、目を見開き、表情が強張っていく。


 その知らせはまさに青天の霹靂、もはや最悪としか言いようのないものだった。






 ー召喚した勇者たちの一人が脱走し、こともあろうに300年前に世界を支配しようと目論んだ最凶最悪の傭兵団『七人の獣騎士(プレイアデス)』の団長・業火のレッドグレイブを復活させた。-


 




 セルマは一見すると小柄で童顔、まだ10代後半にも見える少女の風貌をしているが、実は聖王国クロスを立ち上げた勇者軍の一人である【魔術師】本人であり、現在ではクロスの発展と文明の発達を促進させた功績を認められて【魔の勇者】という称号を得た、国王と王妃に次ぐ高い権力を持つ王宮魔導士である。


 長い紫色の髪を髪飾りで留めて、ゆったりとしたフード付きのローブを身に纏い、その素顔はフードで隠れてうかがい知れないが、彼女は淡々と冷静な口調で、諭すように報告を続ける。


 「陛下、これは我々が召喚して魔王討伐の命に背いたばかりか、このクロスや世界そのものを300年前の危機を再来させる由々しき事態でございます」


 「う・・・うむ・・・お主がそこまで言うのならば、直ちに手を打たねばならぬな」


 そこで、セルマはニヤリと微笑んだ。


 「ご安心ください。それについては、もう手は打っております」


 「ほう、それはどのような策であるか?」


 「現在、復活を果たしているのは団長のレッドグレイブだけでございます。戦闘スキルも魔法スキルも皆無に等しい役立たずの異世界人と、いくら無双を誇ったかの傭兵団の団長とはいえ、二人きりでは何も出来やしないでしょう。きっと彼らは残りの仲間を探し始めることでしょう。彼らが再び集まる前に、先日召喚した勇者軍を差し向けて、魔王軍ともども殲滅させるのです」


 「・・・・・・なるほど、確かにそれが一番先決やもしれぬな。我が聖王国クロスに敵対する愚か者は、例え我らが召喚した勇者の一人とはいえ、このような事態を引き起こした大罪人として毅然たる態度で処罰をせねばなるまい」


 「そこで、勇者軍において作戦の指示などを、このわたくしめにお任せいただけませんでしょうか?この魔の勇者セルマ、聖王国クロスとセブンズ・ヘブンの平和と秩序をお守りするためなら、わたくしのこの身が朽ち果てようとも、王国に歯向かう愚か者たちを一人残らず殲滅いたしましょう」


 セルマが顔を上げて、その瞳が紫色の不気味な光を帯びると、それを見ていた国王の瞳から光が消え失せた。そして、人形のように感情を失った国王が頷いた。


 「・・・魔の勇者セルマよ、勇者軍を導き、我がクロス王国に災いをもたらさんとする愚か者たちに、必ずや制裁を与えて滅するのだ。この世界の平和と秩序はお主たちの手にかかっておる」


 「・・・かしこまりました」


 セルマはフードの下で、にやりと狂気に満ちた笑みを浮かべて頷いた。


 (・・・上手くいったぞ。所詮国王や王族など、私の魔術にかかればどうということはない。さて、あとはあの役立たずどもを焚きつけて、私の計画の駒として活躍してもらうとしようか)


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「ったく、どうなっているんだよ!!まさか、梶のヤツが生きていたなんて!!」


 豪勢な貴賓室の中で、セルマから梶斗真が生きていることを告げられた桐人、柳太郎、桜、千鶴、そして美月は驚愕した。そして、自分たちの襲撃が失敗に終わったことを責められて、次の指令が来るまで部屋の中で待機しているようにと命じられたのだ。


 桐人は驚きと苛立ちを隠しきれず、部屋に置かれていたゴミ箱を思い切り蹴り飛ばした。


 「落ち着きなよ、桐ちゃん。こんなところで苛立っていても仕方ないっしょ?」


 桜がスマホをいじりながら苛立つ桐人をなだめるように言うと、桐人が髪の毛をバリバリとかきむしる。


 「落ち着いていられるかよ!!アイツ、死ななかったうえに、300年前に封印されたはずの最凶最悪って言われていた傭兵団の団長を復活させて、手を組んだらしいじゃねえか!!もしそんなヤバい連中が俺たちの所に乗り込んだりして来たら、どうするんだよ!?」


 「だーかーらー、落ち着けって言ってンじゃん。梶っちだって、まさかたった二人だけでうちら全員やクロス軍を相手に出来るとは思ってねーべ?仲間を見つけるために世界中を探し回るはずだから、その傭兵団が全員集まる前に見つけ出して、今度こそ完璧に片付ければいいだけっしょ?」


 「戦力はまだ梶くんたちのほうが圧倒的に弱いから、向こうもおそらく手を出すことは出来ないと思うよ。それまでに相手の戦力や能力を調べ上げたうえで作戦を立てる時間は十分にある。私たちが出来ることは、セルマさんからの指示を受けて、それを忠実にやればいい。そうだよね?桜さん?」


 「千鶴ナイスフォロー♥それにさ、相手の出方がまだ分からないんだから、ここで焦っていても仕方ないじゃん。どう?これで少しは落ち着いた?」


 桜と千鶴に説き伏せられて、桐人はバツが悪そうに頬をかく。


 「・・・あー、その、スンマセンでした。落ち着きました、ハイ」


 「うむうむ、桐ちゃんって結構素直というか、聞き分けがいいよねー♪」


 「そ、そうかな?何だか、俺、褒められてんのかな?」


 意外と素直な性格のようだ。


 「ふん、騒がしいことだ。弱い犬ほどよく吼えるとはこの事か」


 「・・・あん?」


 柳太郎がふんぞり返って腕を組みながら、桐人を小馬鹿にするような発言を口にする。

 ようやく落ち着きを取り戻しかけていたところに、火に油を注ぐような行為を平然とする柳太郎に対して、桐人が不機嫌な声を上げる。


 「例え誰が相手だろうが、我らは選ばれた勇者だろうが。この力で圧倒的なまでに叩き潰してやればいい。まあ、貴様のようなチャラチャラした、外見も中身も浮ついているような軽薄な軟弱者には勇者の力は分不相応だったのだろうがな」


 「・・・テメェ・・・!!」


 「ちょっと、雨野やめなよ。桐ちゃんも落ち着きなって」


 「頭が悪そうな、股の緩いバカ女は黙っていろ。女風情が俺に意見などするな」


 「・・・はぁ?ちょっと調子乗り過ぎじゃね?そんなことを言って、真っ先にアンタがやられたりしたらマジで笑えるんですけどー?それに、あたしまだ処女なんでそこんとこよろしく、この脳筋ゴリラさん」

 

 「・・・ふん、下らん連中だ」


 柳太郎の不遜な態度に桐人は苛立ち、桜も不機嫌そうに座り込んで再びスマホを見る。柳太郎は仲間たちから向けられる非難の視線にも動じることなく、どっかりと椅子に座り込んでいた。

 

 「・・・そういえば、雁野さんは?」


 そこで、千鶴が桜に尋ねた。

 よく見ると、さっきまで一緒にいたはずの5人目の勇者、美月がどこにもいないのだ。


 「雁野さんなら、さっきお手洗いに行くって言って出て行ったけど?」


 「・・・それにしては、遅すぎない?」


 道に迷っているのだろうか、とこの時は彼らはまださほど気にしていなかった。


 しかし、数十分後彼らはセルマに再び大目玉を食らう羽目になるのである。


 




 なぜなら、もうこの時すでに美月はクロス城を飛び出していたのだから・・・。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「さてと、このまま洞窟にいるわけにもいかねーし、一旦オレたちのアジトに行くとするか」


 「アジトがあるんですか?」


 僕が尋ねると、レベッカさんが胸の谷間に手を突っ込んで一枚の紙を取り出した。


 紙には何やら見たことのない文字や文様が描かれており、これが何なのか、さっぱり分からない。


 「これはオレたちのアジトに転移できる魔法が施されているんだよ。迷子になったり、酒を飲み過ぎて酔いつぶれたり、任務中のトラブルが起きた時に、一旦緊急避難する時にこれを使ってアジトに戻る事が出来るんだ」


 「前半と後半の使い方の用途が違い過ぎる・・・!」


 きっとレベッカさんは前半に挙げた理由でよく使っているんだろうな。


 「これはな、すごいんだぜ?目的地に転移出来るだけじゃなくって、その目的地にいる仲間がいると教えてくれるんだよ。ほら、こんな風に・・・ほへ?」


 転移魔法の紙から、黄色の光が浮かび上がる。


 そして、光の中に一人の女性の姿が浮かび上がった。


 金髪に眼鏡をかけている知的で端正な美貌、そしてシスター服に身を包んでいる彼女は瞳を閉じて黄色の魔石の中で眠っているようだった。シスター服越しでも分かるほどの、モデルのようなスタイル抜群のプロポーションに僕の心臓が高鳴る。


 それに、この人もレベッカさんに負けず劣らず・・・その・・・胸が・・・。


 (で・け・えーっ!!)


 うう、いかんいかん、雑念は捨てるんだ梶斗真!!


 「・・・この人ってもしかして・・・」


 「ああ、間違いねえ」


 レベッカさんは喜びを隠し切れないような笑みを浮かべていた。






 「『七人の獣騎士(プレイアデス)』の一人、雷鳴のアーヴィングだ!!」 

勇者軍、早くも仲間割れ&崩壊寸前(笑)

召喚されて1週間立たずですでに仲間割れが起こっている上に、そのうちの一人が国王の命令を無視して城を飛び出す始末。意外と桐人は短気ですが、人の言うことには素直に耳を傾けるタイプで、桜が一見軽そうな見た目や言動とは裏腹に、物事を考えてから慎重に行動する知性派な人物です。


もうこの時点で、柳太郎と美月に死亡フラグが立ちそうな様子です。

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