第五話「予期せぬ依頼~迷いの森のヒュドラ~」
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緑の大陸バーディネ。
大陸の3分の1を占める巨大な森【シャルトリューズの森】が広がる、豊かな自然と絵本の中の世界のような可愛らしくてクラシックな雰囲気の街並みが広がる美しい港町【メランシーア】が僕たちを出迎えてくれた。
「すごいですね、ここから見えるあの森の全てが【シャルトリューズの森】なんですか!?」
「大陸の3分の1を覆い尽くすほどの巨大な森だからな。あの森の中には多くの亜人種や魔物の集落が存在している。自然と一体化した生活を送っているんだ」
町の奥に広がる小高い緑の丘を越えると、その先には地平線の彼方まで緑の海が広がっているらしい。
「お前ら、気合を入れていくぜ!この森のどこかに、アレクシアがいるみたいだからな」
「あの、アレクシアさんってどういう人なんですか?」
「・・・この【七人の獣騎士】が空中分解しなかったのは、アレクシアのおかげともいえるかもしれないな」
「回復魔法のエキスパートよ。そして、長旅の間、私たちの健康や栄養の管理をしてくれていた超一流の料理人ね。彼女が作る料理は一度食べたら病みつきになるほどの美味しい料理で、しかも栄養バランスが良くて、身体能力や魔力を高めてくれるすごい料理を作ってくれていたわ」
「アイツの作る肉料理、メチャクチャ美味かったよな~♥早く会いたいな~♥じゅるり♥」
大アネキ、口から涎が滝のように流れまくっています。
「それに、身体中からにじみ出る母性、思わず抱き着きたくなる愛と夢と希望が詰まった大きなおっぱい、ボクの全てを包み込んでくれるような暖かい癒しのオーラはまさに聖母のような女性なんだぁ♥」
「・・・・・・アレクシアに抱き着くたびに、杖でボッコボコにされているくせにまだ懲りないのか、この色ボケアホカスエロ王子は」
「・・・今日もビビアナちゃんの痛烈なツッコミが胸に突き刺さるなァ・・・ぐすん」
この二人はいつも通りのやり取りというか、慣れてくるとある意味夫婦漫才のようにも見えてくる。
「・・・ただ、一度怒るとマジでヤバい。団長とミーナ(ヴィルヘルミーナの愛称)、オリヴィアの3バカトリオがしょっちゅう怒られていたけど、一度怒られるとトラウマのあまりに真っ白に燃え尽きていたからね。団長たちもアレクシアには頭が上がらないのよ」
「だってよ、ちょっと羽目を外してやり過ぎたら、アイツ、ものすごく怖い笑顔で説教するし、杖でボッコボコにするし、魔法植物を召喚して人のことをコテンパンにするんだぞ!?マジで怖ぇよ!アイツだけは本気で怒らせてはいけないって、オレそれだけは忘れないようにしているもん!お仕置きのレパートリーもたくさんあるし、容赦がねえし・・・!!」
「・・・あー、確かにそうだねぇ。このボクも、さすがにアレクシア君の逆鱗に触れた日のことは思い出そうとすると、ものすごく頭が痛くなってきてね。これ、恐怖のあまりに思い出してはいけないっていう危険信号のようなものかもしれないねえ」
『イタズラもオイタもセクハラもほどほどにしてくださいね~?でないと、今度は本当にブッ飛ばしちゃいますよ♥ウフフフフ・・・♥』
「すみませんすみませんすみません、もう皿一枚分もつまみ食いはしないんで膝の上にこれ以上石を乗せるのは勘弁してください!!」
「もう入浴中にいきなり抱き着いたりしないから、十字架にはりつけにして晒すのは勘弁してください!!」
「・・・・・・寝起きドッキリでバズーカ砲をぶっ放して、驚かしてしまってごめんなさい。どうか、砂浜に首だけを出して埋めて放置するのは勘弁してください。満ち潮が・・・海水が・・・迫ってくる・・・!!」
大アネキ、ヴィルヘルミーナさん、ビビ姉が青い顔をしてガクガクブルブルと震えだした。
トラウマを刻みつけているんですけど!?どれだけ怖い人なんですか、アレクシアさんは!?
「・・・ま、まあ、怒らせたりしなければウチのメンバーの中では常識がある方だ」
「団長たちが暴走しないための最終兵器ってヤツよね」
ートーマ、あっちでたくさん人が集まっているようだが、何かあったのだろうか?-
ユキちゃんに言われてみると、広場に面した建物に大勢の人が押し寄せていた。みんな武器を持っていたり、魔法使いのようなローブを身に纏っていたり、鎧と甲冑で武装している人までいた。
「あれは冒険者ギルドだな。何か目を引くようなクエストでも募集をかけているのだろうか?」
気になって近づいてみると、どうやらみんな建物の前に置かれた看板にかかっている貼り紙を見て盛り上がっているみたいだ。
「あの、何かあったんですか?」
「ああ、実は3日前にこの先のシャルトリューズの森の中で【ヒュドラ】が目撃されたらしい。ヒュドラなんて最近全然見かけなくなったS級ランクの魔物だからな。討伐すれば一気に2ランクも昇格するし、懸賞金もがっぽりもらえるっていうことで、みんな盛り上がっているんだよ」
「久しぶりの大物だからな。腕が鳴るぜ」
「・・・しかし、ヒュドラって確かもっと首があったような気がするけどな。何でも、赤いワニみたいな頭と、青いトカゲみたいな頭と、黄色のヤモリのような首を持っている三つ首のヒュドラだってよ」
何だろう、ものすごく個性的というか、いまいちイメージがわかないって言うか・・・。
「ヒュドラって、確か首がたくさんある蛇の化け物だったよね?口から毒や炎を吐き出してくる、あのヒュドラのことかな?」
「おそらくそうだろうな。だが、そのようなヒュドラなど聞いたことがないがな」
「ヒュドラ退治なんて結構やってきたけど、3つ首のヤツって言うのは聞いたことがねえな。最低でも5つは頭があるんだからな、アイツらは」
三つの首を持つ珍しいヒュドラ、か・・・。
「討伐しに行った冒険者たちがもう何人も返り討ちにされているんだろう?」
「ああ、もう犠牲者が何人も出ている。みんな、毒液を浴びて身体中の肉を溶かされて骨だけにされちまった。かなり強力な毒や炎を吐き出すヤバいヤツらしいぜ」
「・・・そういえば、その話を聞いてクロスからやってきたって言う勇者様が血相を変えて森の中に飛び込んでいったっけな。あの子もまさかやられちまってないよな?」
「ああ、あの金髪で青い目をしていた可愛らしい女の子の勇者だろう?いくら何でもたった一人であのヒュドラに挑むなんて無謀過ぎるぜ。もしかしたら、もうやられちまっているかもしれないな」
その話を聞いて、僕は雷に打たれたようなショックを感じた。
その勇者って、まさか、桜のこと!?
「その勇者って、いつ、森に向かったんですか!?」
「え?えーと、昨日だよ」
「冒険者ギルドで依頼を受けていたから、職員に聞けば教えてもらえるんじゃないかな?彼女からの連絡が来るか、彼女の遺体が見つかるまではその勇者が依頼を受けているってことだけど、まだ連絡は着てないな・・・」
そうか、つまりこの冒険者たちはそのクエストを受けたいけど、クエストを請け負った桜がまだ戻ってきていないから依頼を受けられなくて、冒険者ギルドで待っていたんだ。
「どうかしたのかい?トーマ君」
「・・・ヒュドラを退治するために、クロス王国の勇者の一人がたった一人で森の中に乗り込んでいったみたいなんです。その勇者が、あの幕ノ内桜かもしれないんです」
「サクラって、あの金髪で可愛い顔をした女の子の勇者のことかよ!?」
「たった一人であの森に乗り込むなど、無謀にも程があるぞ。まあ、トーマを追放したような勇者などどうなろうと知ったことではないがな」
「・・・・・・せいぜい野垂れ死にすればいい」
「・・・私もそいつがどうなろうが知ったことではないけど、サクラってトーマのことを何度も助けたことがあるのよね?追放しておいて、今更どうしてトーマのことを助けたりするのかしら?それがどうしても気になっていたのよね」
「確かにねえ。話を聞いていると、彼女の行動はどうも中途半端というか矛盾しているよねえ」
僕も正直桜が何を考えているのか、さっぱり分からない。
桜はあの時、仲間を助けたいから僕を裏切ったって言っていたけど、それが本当なのか僕にはわからない。誰かに脅されていたって言っていたけど、一体誰に脅されていたって言うんだ?
「・・・ひっひっひ・・・久しぶりだねえ・・・梶・・・ひっひっひ・・・」
後ろから不気味な笑い声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには・・・見慣れた僕たちの学校の制服の上から長い白衣を着込み、ボサボサの寝ぐせが付いたざんばらのショートヘア、目の下に濃いクマを浮かべて眼鏡をかけている少女が立っていた。
「・・・鬼島さん!?」
それは、僕たちと同じクラスメートだった【鬼島梨香】さんだった。
でも、どうして彼女がここにいるんだ!?彼女は確かクロス王国にいるはずなのに。
「彼女は?」
「僕と同じ世界から転送されてきたクラスメートだよ」
「・・・【彩虹の戦乙女】さん、アンタたちに仕事を一つ頼みたいのさあ。報酬は私の全財産・・・これを全てあげるよ」
そういって、金貨や銀貨が袋一杯に詰まった袋を差し出すと、鬼島さんが地べたに膝をつき、頭を地面にこすりつけるように下げながら、絞り出すような声で言った。
「・・・桜を、助けてください。このままじゃ、アイツ、松本に嵌められて、取り返しのつかないことになっちまう。私の・・・大事な友達を・・・どうか助けてください・・・!!」
鬼島梨香、クロスを裏切って桜を守るために斗真たちの前に現れました。
次回、彼女から桜が斗真を追放した理由が明らかになります。
そしてヒュドラの正体は・・・近々明らかになります。
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