第三話「憤怒の紋章~業火のレッドグレイブ~」
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これからも楽しく読んでいただけるような作品が描けるように、頑張ります!!
えーと、僕の身に今何が起こっているのだろう?
魔石に映っている自分自身の姿を見て、僕は何が起こっているのか分からず、混乱していた。
だってさ・・・。
さっきから魔石に映っていて、僕と同じ動きをしているのは・・・赤毛と赤い瞳を持つ、自分と同じ顔立ちをしている女の人だったからだ。
燃え上がる炎のような赤色の髪をポニーテールに縛り上げて、瞳の色も赤色をしており、皮膚の色が日焼けをしたかのように小麦色の肌になっていて、いつもと比べると少しだけ筋肉がついているようにも見える。
そんな僕が、さっき僕が作った狼の装飾が施されたバトルドレスを着込んで、女性の姿になっているのだ。
「おい、来るぞ!!」
「え?うひゃっ!?」
僕に向かって猛然と突進してくるキラーコングの豪腕が振りかぶり、僕はとっさにかわした。
僕の鼻先をかすめる勢いで振り下ろされた拳は、さっきまで僕がいた地面を思い切り殴りつける。
地面には拳がめり込んだ跡が残されていた。
あ、ヤバい。
これ、一発でも喰らったら僕お陀仏確定ですね。
「ど、どうしたら・・・!!」
近くに魔石の塊が落ちていたので、僕はとっさに手に取った。
これを思い切り投げつけて、脳天に当たれば多少はダメージを受けるはずだ!!
そう思った直後、僕の手の中の魔石が赤い光を放ち、見る見るその形を変えていく!!
「・・・え、ええーっ!?魔石が、剣になった!?」
赤色の魔石は僕の手の中で巨大な片刃の大剣に変わっていた。
炎を象った形の赤色の紋様が刻み込まれている大剣を握りしめると、見た目とは裏腹に、片手でも軽々と持ち上げる事が出来た。
-グオオオオオオーーーッ!!-
洞窟全体に響き渡るほどの雄たけびが聞こえた。
振り返ると、目の前には先ほどのキラーコングが拳を振り上げて迫ってきていた。
「う、うわああああああっ!!」
僕はとっさに大剣を力いっぱい振り上げた!!
ゴオオオオオオオオオーーーッ!!
大剣の刃から灼熱の炎が飛び出し、キラーコングの身体を瞬く間に飲み込んだ。
-ギャアアアアアアーーーッ!!-
キラーコングの表情は驚きで目が見開き、凄まじい絶叫を上げる。
全身を炎に包まれた状態で地面に転がり、じたばたとのたうち回り、必死で火を消そうとするが火の勢いはさらに強くなっていく。
そして、キラーコングの動きが鈍くなったかと思うと、ついに力尽きて動かなくなった。
「・・・・・・嘘?」
これをまさか、僕がやったっていうの?
魔法なんて使ったことも、見たこともない僕が?
「トーマ、なかなかやるじゃねえか!!」
レベッカさんが僕に抱き着いて、頭を撫でながらおっぱいに僕の頭を押し付けてくる。
うう、この柔らかい感触と、汗のにおいに入り混じった甘い香りは本当に緊張するから勘弁してよ!
「それでさ、この魔石でそれと同じ武器って作れるのか?」
「え?」
レベッカさんが差し出した赤色の魔石を僕が手に取ると、僕が作り出した大剣と同じものが出来上がった。
レベッカさんはその大剣を片手で軽々と持ち上げると、目を輝かせて、嬉しそうな表情になった。
「やっぱりな。オレの記憶や魔力が込められている魔石なら、オレが昔使っていた武器を再現できるかもしれないと思ったんだよ。やっぱりコイツがなくちゃ、今いち締まらねえからなぁ」
大剣を手に持ったまま、群れのボスのキラーコングに向かってレベッカさんは毅然とした態度で仁王立ちする。
そして、身の丈ほどもある大剣を軽々と振り回すと、切っ先をキラーコングの群れに向けて突き出した。
「久しぶりに暴れるか。かかってこいや!!」
地面を蹴り飛ばし、土煙を上げながらレベッカさんはキラーコングの一体に迫る!!
キラーコングが迎え撃とうと拳を振り上げた瞬間。
太い剛腕が一閃の下に斬り落とされて、傷口から勢いよく炎が燃え上がる。
「へへっ、生憎手加減とか出来ねえし、知らねえモンでな!!」
レベッカさんが大剣を軽々と振り回し、すれ違いざまに次々とキラーコングをなぎ倒していく。
レベッカさんの背の丈の3倍以上はある巨大なキラーコングが壁に叩きつけられ、天井に頭が突き刺さりそのままぶら下がっていき、炎を纏った一撃を受けたものは火だるまになって無慈悲に灰へと変わっていく。
「・・・す、すごい!!」
彼女の動きは全く無駄のないものだった。
超重量級の大剣を片手で軽々と持ち上げる、見た目の細腕からじゃ想像もつかない剛腕。
燃え盛る炎を自分の意のままに操り、キラーコングたちを次々と焼き尽くしていく。
紅蓮の猛火を纏いながら大剣を振るう猛々しい姿は、さながら鬼のような強さを感じた。
そして、それと同時に僕は彼女の猛々しくも美しい動きに、完全に釘付けになっていた。
「ぼ、僕もいきます!!」
「そうこなくっちゃな!!トーマ、お前の背中はオレに任せな!!」
背中合わせに立ち、レベッカさんの力強い言葉に、身体中が熱くなっていくような気がした。
さっきまでの、クラスメートに追い出されたことに対するドロドロとした黒い感情がいつの間にか薄れていく。
その代わりに、僕の心に投げ込まれた炎が、激しく燃え上がっていく!!
「・・・僕なら出来る、僕ならやれる、僕は僕を信じる!!」
「よく言ったァ!!それでこそ男だぜ、トーマァ!!」
黒い感情はまだ捨てきれていないけど、少なくとも絶望に暮れて落ち込むような気分にはもうならなかった。
今、生きているなら、この炎のように魂を燃やして、前に進むだけだ!!
洞窟の奥から再び数体のキラーコングが出てきても、不思議とさっきまで感じていた震えも、恐怖も、あまり感じなくなってきている。
手の震えが止まっていた。
その時だった。
「・・・あん?この気配は・・・まさか?」
「どうかしたんですか、レベッカさん?」
「一番奥にいるデカい、銀色の体毛のヤツ。アイツがこの群れを率いるリーダーみたいだけど、この匂いは間違いねえ・・・!」
レベッカさんの雰囲気が豹変する。
彼女の表情が今にも目の前のキラーコングに噛みつかんばかりの恐ろしい形相に変わり、唇の端を釣り上げて獰猛な笑みを浮かべたのだ。鋭い目を一層細めて、歯が割れそうな音を立てるほどに歯を食いしばって、彼女は笑っていたのだ。
「・・・アイツの気配だ。オレたちをハメた上に、離れ離れにしやがったあの女の魔力の気配だ。そうかい、アイツはまだ生きてやがったのか。嬉しいねえ、あの時の決着をつけるチャンスがこんなに早くやってくるなんてなあ」
「れ、レベッカさん?」
「トーマ、少し離れていてくれ。悪いけど、今のオレはマジで何をするか自分でも分からねえ」
彼女の身体から放たれる威圧に、キラーコングが本能で恐怖を感じ取ったのか後ずさりする。
「アイツに操られているってことは、きっと、今頃オレたちのことも見ているんだろう?」
彼女の左手の甲が赤く光り出す。
左手の甲には赤色の炎から飛び出さんとする【一角獣】の紋章が浮かび上がった。
「だったら派手に打ち上げてやろうじゃねえか。復活の花火をよ!!」
紅蓮の炎を纏い、天を貫く雄々しき角を額から生やした一角獣。
纏う炎は、触れては爆発し、燃え上がり、全てを焼き尽くす【怒り】。
彼女は大剣を構えて、固まってしまっているキラーコングに、凛然と言い放った。
「傭兵団【七人の獣騎士】の一人、”業火”のレッドグレイブ、ここに参上!!」
大剣の刃からこの世のものとは思えない、青白い炎が勢いよく噴き出して包み込んだ。
神秘的で思わず心を奪われそうになるほどの瑠璃色の炎は、あらゆるものを飲み込んで、焼き尽くさんと激しく燃え上がっていく。
「青い・・・炎?」
青い炎を全身に纏い、大剣を身構える彼女はついさっきまで僕を弄っていた人のよさそうなお姉さんではない。
生き死にをかけた修羅場を何度も潜り抜けてきた、歴戦の勇士としての威風堂々としたオーラを全身から放っていた。
キラーコングたちがしばらく恐怖で怯えていたが、もはや自暴自棄になったのか、野太い咆哮を上げて一斉に走り出した。
レベッカさんに、全員で一斉に襲い掛かるつもりだ!!
「レベッカさん、危ない!!」
「活火激発・炎魔法・狼の怒火!!」
言うが早いか、レベッカさんが地面を蹴り飛ばした瞬間。
彼女はものすごい速さでキラーコングの群れをすり抜けて、大剣を振り切った。
すると、キラーコングたちの身体から青い炎が灯ったかと思うと、瞬く間に巨体を飲み込んだ!!
「オレの炎は地獄の炎さ。触れたら最後、肉や骨を灰も残さずに焼き尽くし、その魂は・・・尽きることのない怒りに支配されて、怒り、壊し、そのまま狂い果てる。お前らにはもう永遠に安らぎは訪れねえよ」
ーグオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!-
キラーコングたちが炎に包まれて、絶叫を上げながら炎の中で崩れ去っていく。
その光景に、まるで月に向かって吼える狼のようなシルエットを浮かべると、塵一つ残さずに燃え上がった炎がまるで天に昇るように消えていった。
「よく覚えておきな。【魔】の勇者・ティアマット。オレたちは必ずもう一度復活を果たす。その時には、お前の命も、野望も、全て灰燼に帰してやるぜ」
レベッカさんは大剣を握りしめると、大剣が光に包まれて、彼女の掌の中へ飛び込んでいった。
「レベッカさん!大丈夫ですか!?」
僕が近づくと、レベッカさんは僕を見て優しく、それでいてどこかとても悲し気な笑みを浮かべた。
「・・・恐ろしいか?オレのことが」
「ちょっとだけ怖かったです。でも、レベッカさんの戦いは・・・すごく綺麗でした」
なぜだろう。
怒りに満ちて、暴れまわっている彼女は確かに怖かったはずなのに。
炎を全身に纏い、勇猛果敢に戦う彼女のことを僕は。
心の底から「綺麗」と思ってしまったのだ。
彼女の怒りも含めて、戦う覚悟も、命を燃やして戦う姿が目に焼き付いて離れない。
レベッカさんは面食らったように目を丸くすると、恥ずかしそうに顔を赤くして笑うと、僕のことを強く抱きしめた。
「へへへ・・・そっか」
豊満な胸に、僕のことを押し付けるようにして強く抱きしめてきたその手が、少しだけ震えていた。
「ありがとな」
恥ずかしそうに、か細い声で、彼女はそっぽを向いてつぶやいた。
わずかに見えた彼女の顔が、なぜか赤く染まっているように見えた。
梶 斗真 設定その1
赤色の宝箱(炎属性)を使用すると、髪の毛が赤くなってポニーテールになり、瞳の色が赤くなる。肌の色が日焼けしたような小麦色の肌になり、若干筋肉がつく。
後ほど登場する7種類の属性の宝箱を使用すると、それぞれの宝箱に合わせて、7種類の性転換をすることが出来ます。顔立ちだけがそのままで、7人の美少女の姿に変わる事が出来ます。
次回、第二の仲間が登場します!!
次回もよろしくお願いいたします。