第十九話「古代図書館の戦い③~こんな命がけのボーリングは嫌だ!!~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が描きあがりましたので、投稿いたします。第二章も佳境に入りました。
どうぞよろしくお願いいたします。
主要登場人物紹介に【ヴィルヘルミーナ・ワイズマン】の資料を追加しました!
エントランスホールを抜けて、僕たちは移動をしながら次の目的地を目指して早足で向かうことになった。
「地下2階にある、かつて魔導師たちが召喚魔法の演習や研究に使われていた【特別研究室】が怪しいんだ。あそこならスペースが広いし、ちょっとした大型の魔獣の復活の儀式にも使えるほどの広さはあるからな」
「たしか、300年前にも魔導師たちが勝手に禁書を書庫から持ち出して禁忌とされている魔獣の蘇生実験を行おうとして問題になったことがあるよね。それで地下二階はフロアごと封鎖されたんじゃなかったかい?」
「そうよ。でも、その研究室を管理者の権限で勝手に使用して、禁書に封印している魔獣を復活させようとしていることは間違いないわ。さっき、ハニーベルのディアドラ女王にその旨とバイロンたちの会話を動画付きで送ったら、何が何でもこの計画を阻止するようにと正式に依頼を受けたわ」
「なるほどねえ。魔獣が復活して大暴れしたらハニーベルどころかドランブイ大陸の危機だもんね。それじゃ、それを阻止するために強行突破したってことでビビちゃんの突撃は許してもらえるのかな?」
「結果を出さなかったらダメでしょう。神官と王女、そしてミヅキの首を差し出さなかったらディアドラ女王もそれを使ってカグラに抗議出来ないでしょうし。とにかく、もうこれ以上あの勇者モドキを野放しにはしておけないわ」
何とかここまでお膳立てしてくれたグリゼルダさんの思いに応えるためにも、ドランブイ大陸の平和を守るためにも、これ以上の好き勝手はさせるわけにはいかないってことだね。
「・・・それと腹ただしいことに、この図書館の書庫に収められているはずの禁書や貴重な魔導書が【レザン】の闇オークションに出品されていることが判明したわ。その魔導書を買い戻して、他所の手に渡らないように王宮に送り付けたことで調べてみたら、それをやっていたのが当時図書館に勤務していたカグラの神官たちだったことが判明したわ。もうこれだけでもカグラの悪事の十分な証拠にはなるわよ。全く、隣国の文化遺産から禁書をちょろまかして売りさばくなんて言語道断よ」
「誰が買い戻したんだ?」
「・・・クロスの風の勇者、あのサクラとかいう金髪の女の子だってさ」
「幕ノ内が!?」
「それで、カグラの悪事の証拠をつかんだということで、今回城内における武装の件においては、ミヅキを止めるために仕方なくとった緊急避難として認められて、クロスに対する厳重注意と賠償金で話がついたわ。まあ、ミヅキに関してはもう他国の王宮に殴り込みを仕掛けて死人まで出しているから完全にアウトだけどね」
相変わらず抜け目がないってことか。
そして、僕たちは地下に続く階段までたどり着いた。
そこで、ヴィルヘルミーナさんが僕たちを一旦止める。
「待ちたまえ。こういう時、改めてどこに罠が仕掛けてあるか分からないものさ。グリゼルダ君、この階段で何か仕掛けられている罠とかはないか分かるかな?調べてもらいたいのだが、いいかい?」
「分かったわ」
いつもはふざけてばかりだけど、ちゃんとやる時にはやる人なんだな。
「そういうことにはよく気が付くな、お前は」
「フッ、任務の時には常に最悪の展開を想定したうえで慎重に行動すること。それが任務をこなすための心構えというものさ」
カチッ(ヴィルヘルミーナさんの脚が床のボタンを踏んだ音)
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ほら、こんな風にね?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。
何だろう、奥からものすごく嫌な音が聞こえてきたんですけど。
後ろを振り返ると、僕たちの後ろにはらせん階段を転がり落ちてくる巨大な鉄球が迫ってきていた!
「・・・本当にお約束だな、お前というヤツは!!」
「へっ、あんな鉄球、オレの炎でブッ飛ばしてやるぜ!!」
レベッカさんの左手の甲に刻まれた紋章が光り出して、青色の光を放つ煉獄の炎を腕に纏うと、勢いよく突き出して巨大な火炎弾を鉄球めがけて放った。
鉄球全体が炎に飲み込まれて見る見る青い炎の塊になっていき・・・そのまま勢いが止まることなく、こっちに向かって迫ってきている!?
「・・・ヤベエ、効いてねえ!?」
「・・・・・・魔力で作られた特殊な鉄球、ちょっとやそっとの魔力じゃ破壊できない作りになっているみたい」
「ビビ、そういうことはもっと早く言ってくれる!?」
「逃げましょう!!」
だああああああーーーっ!!冗談じゃない!!マジでヤバい、これはヤバい、すごくヤバい!!
僕たちは階段を必死で駆けおりて、その後ろから無慈悲に炎に包まれた鉄球がものすごい勢いで転がって僕たちをマジで殺しにかかってきている!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!
一瞬でも足が止まったらこれ確実に死ぬ!!絶対に死ぬ!!階段の途中で転びそうになるけど、何とか必死で耐える!!僕たちはボーリングのピンじゃないんだぞ!?あんなバカでかい鉄球なんかで吹き飛ばされたらそのままペッチャンコにされちゃうわ!!
「・・・・・・グリゼルダ、あそこに緊急用のシャッターのスイッチがある。あのスイッチを矢で弾いて、シャッターを下ろしてもらえる?」
「シャッターが閉まる前に潜り抜けなければおしまいね。やってみるわ!!」
グリゼルダさんが影からクナイを数本取り出すと、スイッチを壊さないように刃の先を丸くして、走りながら狙いを定めて・・・投げ放った!!
ヒュッ・・・パチンッ!!
スイッチが作動して、シャッターの扉がゆっくりと音を立てており始めてきた!!
「急ぐぞ!!」
10!
「間に合って・・・!!」
9!!8!!
「・・・・・・急げ!」
7!!6!!5!!
「チクショウ!!間に合えぇぇぇっ!!」
4!!
「うわああああああーーーっ!!」
3!!
2!!
1!!
「飛び込めぇぇぇぇぇぇっ!!」
僕たちは全員床を滑り込むようにして、シャッターの隙間から入り込むと、シャッターは僕たちの目の前で下りた。その直後。
ズシーーーーーーン!!
耳をつんざく凄まじい音が階段に響き渡り、鉄球がシャッターにめり込んでいた。
ようやく・・・完全に動きが止まったようだ。
僕たちはそのまま座り込んで、胸の奥から安堵のため息を深く深くついた。
心臓がバクバクと飛び出しそうになるほど高鳴り、頭に血が上って、呼吸も息苦しい。
「・・・死ぬかと思った」
「いやあ、無事でよかったねえ。ボクたちを生かしてくれた幸運の女神様には感謝しなくて・・・ごふぁっ!?」
スッパーーーーーーン!!(アイリスお姉ちゃんとビビ姉のハリセンが同時にヴィルヘルミーナさんの後頭部をどついた音)
「お前のせいだろうが、この大バカ者!!私たちを殺す気か!!」
「・・・死ね、色ボケ王子、変態王子、クソ王子・・・!!」
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシ(倒れているヴィルヘルミーナさんをビビ姉が足蹴にしている音)
「あ、あ、ビビちゃんに足蹴にされている、踏まれているぅ・・・♥柔らかくていい匂いがする合法ロリ美少女のおみ足で踏まれてるぅ・・・♥」
「うっとりするんじゃないの、このドM王子は。ていうか、美少女ってこの子貴方よりも年上でしょうが」
何気にビビ姉がこの七人の中で最年長だったらしい。見た目だけなら一番幼い感じがするんだけどね。
「・・・あ、あの、ビビ姉、もうその辺で許してあげて。それ以上蹴ったら、ヴィルヘルミーナさんの足腰が立たなくなっちゃうから」
無表情で一心不乱に踏み続けているビビ姉を抑えつけて、何とか宥めてから僕たちはようやく地下二階のフロアにたどり着いた。地下二階の廊下は真っ暗で何も見えない闇で覆い尽くされていた。アイリスお姉ちゃんが指を鳴らすと光の玉が浮かび上がって、廊下を明るく照らしていく。
「・・・今のうちにここから脱出するルートを確保しておこう。あそこの階段から下りていくと、地下4階に魔導書や禁書を安全な場所に避難させるための物資輸送用の魔導列車がある。ビビ、お前はその列車をいつでも動かせるように整備を頼みたいのだが、やってもらえるか?」
「・・・・・・御意」
「私も同行するわ。団長たちはこのフロアにある研究室の調査を頼むわ」
そういって、グリゼルダさんとビビ姉が階段を下りて、脱出用の魔導列車の確保に向かった。
「・・・さてと、私たちはこの先にある研究室に向かうとするか」
「鬼が出るか蛇が出るか・・・ぞっとしないねえ」
「行こうぜ。この奥から魔力の気配がひどく匂ってきやがる。これは急がねえとヤバいかもしれねえぞ」
僕たちは足早に研究室に続く廊下を走り、研究室のある大きな扉の前にたどり着いた。しかし、どうしてこの研究室のあるフロアには衛兵がいなかったんだろう?こういう重要な部屋とかには侵入者が入らないように守りを固めて置くものだと思っていたけど?
「そりゃ、この魔力のせいだろうな。並大抵の魔物じゃ、こんな魔獣が放つ強力な魔力にあてられたら正気を失っちまうさ。オレたちはこの紋章の力で魔力を中和しているけど、ここにはあまり長居はしたくねえな。何だか、嫌な空気で満ち溢れていて気分が悪くなりそうだ」
「・・・僕は何ともありませんけど?」
「おそらくお前が作ったこのダウンジャケットに含まれている聖霊石が、魔獣の放つ魔力の効果を弱めてくれているのだろうな。紋章の力だけではこれほどの濃厚な魔力は中和できない。トーマの魔法裁縫師としての実力は紛れもなく本物というわけだ。お前のおかげで私たちも助かっている。礼を言うぞ」
むぎゅうううううう♥
あ、アイリスお姉ちゃん、そんな、僕のことをおっぱいに抑えつけて抱き着くのは恥ずかしいから勘弁してよ・・・。
「アイリス君だけずるいぞ!ボクだってトーマ君にハグしたい!チュッチュッしたい!!ベッドの上で手取り足取り腰取り教えて、イチャイチャしたい、ペロペロしたい、クンカクンカスーハースーハーしたい!」
「オレもチューしたいぞ!ハグしたいぞ!ずるいぞ、アイリスばかり!!」
「ふん、これはお姉ちゃんとしての弟の労をねぎらう当然の義務というものだ」
「あの、そろそろ乗り込みませんか!?」
そういって、何とか引きはがして研究室の中に入ろうとした時、僕たちは扉の隙間から部屋の中で何か声と物音が聞こえてきた。気になって、扉の隙間からこっそりと中を伺ってみる。
よかった、今のバカ騒ぎが聞こえていたら絶対に警戒されていた・・・!
どうやら防音性の扉のおかげで、僕たちのことは気づかれていないようだ。
部屋の中を見ると、そこには黒い神官服に身を包んでいる長身の男性がテラスの上から下に立っている誰かと向かい合っていた。
そして、その真下にいたのは・・・。
「・・・雁野!!」
顔や制服に返り血を浴びて、手には炎を纏った刀を持った雁野が猟奇的な笑みを浮かべていた・・・。
次回、第二章のボス&雁野との戦闘開始になります!
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします!!




