第四話「魔法裁縫師の出番~防寒着を作ります!~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
本日二回目の投稿となります。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、ドランブイに調査に向かうことが決まったわけだし、さっそく準備をしないとね。
僕は以前ヴァネッサ女王に頼んでお取り寄せしてもらった【炎の聖霊石】と【風の聖霊石】を用意して、さっそく準備に取り掛かる。今まで忘れかけていたけど、僕のスキルって魔法裁縫師だったんだよね。
「何を作るつもりなんだ?」
「ドランブイのことを調べてみたんですけど、あそこって一年中雪と氷に覆われているからすごく寒いんですよね?ですから、吹雪や寒さにも耐える事が出来る防寒着のセットを作ろうと思いましてね」
「そんなものまで作れるのかよ!?」
「はい、僕の世界にあった防寒着を参考にして作ってみますね」
「ほう、私にも是非見せて欲しいわね。異世界の衣類がどんな技術を持っているのか気になるわ」
僕は火の聖霊石と風の聖霊石を触れると、聖霊石が糸のようにほつれだした。
その糸を紡いで、バランスよく紡ぎ合わせて布に仕立て上げていく。
防寒着に求められるのは携帯性と保温性だ。
保温性を失うことなく、動きやすいように軽量化させるイメージを強く持ちながら一つ一つ丁寧に布を集めて織り上げていく。
極寒の環境下においても冷気から身体を守る事が出来て、浸水を防ぐ撥水効果も備えた【ダウンパンツ】。心地よい肌触りで保温性も高い【靴下】は彼女たちの足のサイズに合わせて織り上げていく。程よい弾力性もあるので、履き心地にも注意を払おう。
「・・・聖霊石を糸に変えて、靴下や衣類に加工するなど聞いたことがないわ。しかも、これほどなまでに美しくて実用性のあるものを作れるなんて・・・!!」
「うおおおおおおっ!この靴下、オレの脚の爪の形に合わせて形が変わっていくぞ?すげえ!!」
「・・・闇の聖霊石も含めているのね。足にかかる衝撃や負担を軽減してくれている」
柔らかい風合いで肌触りが良く、保温性の高い厚手の手袋も作ろう。戦闘時にはグローブの代わりになるほどの頑丈な作りに変わって、このまま強烈なパンチを放っても破けることはない。
そして防寒パンツとセットになるような、保温性が高く、冷気を通さない丈夫で着心地のいい【防寒ジャケット】も作らなくちゃね。アイリスさんは背中に翼が生えているから、空を飛ぶときに翼が引っかからないように、翼を出し入れできるように魔法で翼の部分だけ外に出せるように作る。軽量かつ丈夫で、さらに気温の変化に合わせて体温の調節を自動で出来るように風の聖霊石と炎の聖霊石を組み合わせた特殊な布地を裏側に縫い込むことで、エアコンのように適温に調節できるようにする。
「雪山で急激な温度の変化が起こっても、身体に影響を及ぼさないように温度が調節できるようにしました」
「私は寒いところが苦手だからこういうのがあると、助かるわね。こういうものが作れるなんて、妬ましいを通り越して感心さえするわ。見事な腕前よ」
グリゼルダさんが防寒着を見ながら、笑みを浮かべて絶賛してくれた。
「ワハハハハハ!オレの尻尾もズボンからすり抜けて出すことが出来るぞ!すげえ!面白いなこれ!」
「子供みたいにはしゃぐな。しかし、こんなに軽いのに冷気を全て遮り、保温性が高いというのはすごいな。さすがは私の弟だ。このような優れたものを作れるとは、姉としても鼻が高い。どれ、お姉ちゃんがご褒美を上げよう」
むぎゅううう~~~っ!(アイリスさんがおっぱいに僕の頭を押し付けるように抱きしめる音)
だ、弾力性のある柔らかいおっぱいが頭を挟み込んでくる・・・!!
顔を上げれば、すぐ目の前にアイリスさんの顔がくっつきそうになっている!!
「ひゃうううっ!?あ、あ、アイリスさん、その、何をするんですか!?恥ずかしいですってばあ!!」
「何を恥ずかしがる必要がある。お姉ちゃんとは弟を甘やかし、弟を愛でるために存在するのだ。私は姉として、このような優れたものを作り出した弟の見事な腕前に対して感謝の思いを込めて全力でハグをしているだけだ。そうだ、今夜は私と一緒にお風呂に入ろう。これは姉としての義務だ。そうだ、何もいやらしいことなどない。姉弟なのだ。裸と裸の付き合いをしても何ら非難されるようないわれはないだろう」
「ちょっと待ちなさい!!アンタ、トーマのことになるとマジで頭がパッパラパーになってない!?トーマがすごく恥ずかしがっているでしょうが!!離してあげなさいってば!!」
「パッパラパーで何が悪い。私はトーマを弟として心から愛しているのだ。トーマとだったら姉弟の一線を越えた禁断の関係を結ぼうとも構わん!これが壊れていると言うなら私はとことん壊れても構わない。トーマのことを考えるとそれだけで姉として、女として、雌としての本能が刺激されてもはや止めることなど出来ん!!トーマのためなら私は理性を捨てて一匹の雌に喜んで堕ちよう!!」
「落ち着いてください!!アイリスさんがぶっ壊れたーーーっ!?」
「ずるいぞ、アイリス!!オレもトーマと一線超えてやるぅぅぅっ!!オレもハグするぞ!!」
「アンタたちはそろいもそろってバカなの!?」
レベッカさんとアイリスさんが僕の顔を見事なおっぱいで挟み込むようにして抱きしめてくる。
弾力性のある大きなおっぱいで頭を挟み込まれて、抵抗しても二人ともビクともしない。これは僕のことを本気で離さないように服を強く掴んでいるな!?グリゼルダさんが必死で止めても、二人とも聞く耳を持っていやしねえ!!
「むぐぅーっ!!い、いきが、できな・・・!!」
ああ、息が出来ない・・・苦しい・・・。
崖から突き落とされて助かったと思いきや、まさかここで二人の美女のおっぱいに挟まれて死ぬことになるなんて・・・嫌だ、そんな最期は嫌すぎる!!
「お前らいい加減にしろぉぉぉぉぉぉっ!!二人まとめて地獄に落ちろやぁぁぁっ!!」
あれ、遠くからベリス姉さま(そういう風に呼んで欲しいと言われたので、今度からそう呼ぶことになった)のカミナリが落ちたような気がした・・・。
そして、おっぱいの隙間から見ると、そこには鬼のような形相でロケットランチャーをこっちに向けて構えているベリス姉さまの姿があった。
ちょっと待って!?
「ちょっ、やめっ、トーマもあそこにいるんですけどっ!?」
「死にさらせやぁぁぁぁぁぁっ!!」
遅かった。
僕たちに向かって飛んでくるロケット弾が目に飛び込んだかと思った瞬間、目の前が真っ白になり、気が付くとものすごい音と共に壁が吹き飛び、巨大な穴が空いていた。どうやらギリギリでかわせたようだ。
そして、レベッカさんとアイリスさんの表情が見る見る真っ青になっていき、汗の玉が全身から噴き出した。その視線の先にいるのは・・・もはや悪鬼羅刹と化したベリス姉さまであるのは言うまでもないだろう。
「うわあああっ!!これヤバい、マジでヤバい!!姐さんがキレたっ!!」
「戦略的撤退だ!!」
「もう許さん!!今度という今度は絶対に許さん!!お前ら、夜空に歴然と輝く「バカ犬座」と「エロフクロウ座」に変えてくれるわぁぁぁっ!!」
その後、穴から外に飛び出していったレベッカさんたちを追いかけて、ロケットランチャーを乱射しながら鬼のような形相を浮かべてベリス姉さまが飛び出していった。
遠くから二人の絶叫と何かが大爆発するような音が聞こえてきたような気がした・・・。
「・・・屋敷、穴だらけになっちゃいましたね」
「・・・ビビアナの修復魔法で1日も経てば元通りになるんだけど、一体何度屋敷を吹き飛ばせば気が済むのよ、あの連中は」
「・・・もしかして、前にもこんなことがあったんですか?」
「300年前にはしょっちゅう屋敷が吹き飛んでいたわよ。だからビビアナもいちいち修理していたらキリがないって言い出して、屋敷が自動的に修復できるように高度な魔法の術式をかけていったんだから」
グリゼルダさんが当時のことを思い出して、遠い目になっていた。
うん、かなり苦労しまくっていたんだね・・・。
「・・・とりあえず、お茶でも飲んで一休みしましょうか」
「・・・そうね。これ以上考えると気が滅入るからね」
僕とグリゼルダさんは深く深くため息をつくのであった。
本当に上手くいくのかな、今度の依頼・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
一方、その頃。
【青の大陸ドランブイ】の雪原地帯にある小さな村【グミの村】の酒場で、ひときわ大きな声を上げて騒いでいる一団がいた。聞くに堪えないバカ騒ぎの大音声に周囲の人間はしかめっ面を浮かべているが、相手にしないように遠巻きに見ていたり、ひそひそと彼らのことで話すだけで彼らに注意をしようとするものはいない。
「・・・おい、誰だよ、あの連中。酒場のマナーとか分かってねえのか?」
「それがさ、どうも魔王討伐を命じられた他の大陸の勇者様とその仲間たちらしいぜ」
「おい、マジかよ?あれで勇者かよ?」
「それで魔王軍を討伐する英雄様なんだから、好き勝手に飲ませろとか言い出して、店中の酒を全部持って来いと脅しつけたんだよ。そのうえ、給仕の女の子や踊り子たちを全員自分たちの所に集めてさ・・・」
よく見ると、愛想笑いを浮かべているが口元が引きつっている派手な衣装に身を包んだ踊り子や、今にも泣きだしそうな顔でお酒を注いでいる給仕の女の子が下卑た笑みを浮かべている自称勇者と仲間たちを名乗る集団に身体を触られたり、お尻を撫でられたりしている。
「おいおい、ここの酒は随分と不味いものを出すなあ。こんなものを勇者様に差し出すなんざ、こんなボロい酒場なんて焼き払ってやってもいいんだぜぇ?それにもっと可愛い女の子を用意しろや!!」
そういって、お酒を注いで回っていた給仕の女の子を突き飛ばした。そばかすがある純朴そうな女の子は目に涙を浮かべて起き上がろうとするが、その頭の上に甲冑を着込んでいる大柄な男が彼女の身体を容赦なくズシンと踏みつけた。必死でもがくが、戦士は見下すように笑いながら女の子が苦しんでいる姿を見て楽しんでいる。
「ううっ・・・!!」
「けひひひ、ブスな女を痛めつけるのはたまらねえな。こんな顔でよくもまあ俺たちの酒を注ごうとしたもんだ。ええ?もっと上等な女を用意しろよ、なあ?」
「ちょっと、お客様・・・!」
「ああん?俺たちは選ばれた勇者様だぜ!?お前らのために、魔王討伐をしてやろうっていう英雄様にその口の利き方はなんだよ、コラ?俺たちは選ばれた人間なんだよ!!お前ら虫けらを守るために戦ってやっているんだろうが!?」
一触即発の空気が酒場の中に張り詰めていく。
すでに勇者と名乗る男は剣を抜いて、踊り子の女性を無理矢理抱き上げると彼女の首元に刃を突き付けた。
「そういう顔をしていると、この女から見せしめに殺してやろうかなぁ?勇者様に楯突いたらどうなるのか、教えてやるぜ!!ギヒヒヒヒヒ!!」
狂ったように笑い、目を見開いて怯えている踊り子を舐めまわすように覗き込む勇者の姿は醜悪そのものだった。マスターや酒場にいた客が飛び掛かろうとするが、女性が人質にとられているため、歯を食いしばり、拳を震わせて耐えていた。
その時だった。
「・・・ねえ、酒を飲むときぐらい静かに飲めないのかしら?」
「あん?」
勇者が振り返ろうとした次の瞬間、勇者の顔面に白くて細い指を生やした手が彼の顔を覆った。
ボウウウッ!!
その瞬間、掌から赤い炎が噴き出して、勇者の男の全身をあっという間に飲み込んだ。
「え・・・え・・・ギャアアアアアアアアアッ!?あ、あ、熱いっ!?あづいいいいいいっ!!」
男は瞬く間に火だるまになって、必死で助けを求めるが全身を炎で包まれた男の姿を恐れて、その場にいた踊り子や客たちは叫び声を上げて、我先にと店を飛び出していく。
「ぐあああ・・・ど・・・う・・・じ・・・で・・・」
身体中の肉が黒ずむまで焼き尽くされて、水分を失い息も絶え絶えになりながら男は目の前にいる人物に、どうしてこんな目に遭わせるのか、口をパクパクさせて声にならない声を上げる。
「イライラするのよ。貴方たちがあまりにもうるさくてね。だったら、殺すしかないでしょう?」
「ぞ・・・ぞ・・・ん・・・な・・・」
うるさい。
そんな理由で自分を火だるまにしたというのか。
もう自分には興味がないと言ったように冷たい目で見下ろす、長い黒髪の女性に対して抗議をしようとするが、力尽きた男はそのまま倒れこんで動かなくなった。
「・・・おい、そこの女!!いきなり何てことをしやがる!!」
「あたしたちは勇者パーティーよ!!魔王軍を討伐するために旅をしているのよ!!その勇者様を手にかけるなんて、貴方はもはや極刑に値するわ!!」
「逃がすな!!この女、ここでブチ殺してやる!!」
怒り狂った屈強な戦士、魔法使いの女性、チャラチャラした雰囲気の盗賊が憤怒の形相を浮かべて、それぞれ武器を身構えると女性を取り囲んだ。
戦斧の刃を突き出されて、鋭い切れ味のナイフを構えて、そして魔法使いは杖の先に燃え上がる炎の玉をすでに浮かび上がらせていつでも彼女目掛けて発射できるように突き出す。
「・・・殺してやる、ねえ。いいわ、もうこれで貴方たちを殺しても、構わないのよね?」
しかし、女性はひるむどころか・・・口元を歪ませてニヤリと美しく、狂気さえ感じる笑みを浮かべていた。
鋭い切れ長の瞳には湧き上がる怒りと殺意、そして獲物に狙いを定めた狩人のような鋭い光が宿っていた。
「・・・私はねえ、梶くんが見つからなくてイライラしているのよ。貴方たちのような雑魚でも叩き潰せば、少しは満足できるかもしれないわ。早く見つけ出して殺したいのに、見つからないから殺意が膨れ上がって今にも爆発しそう・・・」
そして、彼女はスラァっと燃え上がる炎のような赤い紋様が刻まれた細身の刀剣を抜いて身構えた。
たった一人に対して3人の武装した集団が襲い掛かろうとしているのに、彼女はひるむどころか、嬉々とした笑みを浮かべて目をぎらつかせている。
「ひっ・・・、こ、この女、狂ってやがる!!」
「やっちまえ!!」
「・・・私のことを楽しませてみせなさいよぉぉぉぉぉぉっ!!」
刀剣の刃に灼熱の炎を纏い、黒髪を雪交じりの風になびかせながら【雁野美月】は狂気に満ちた叫びをあげて、勇者パーティーに斬りかかっていった・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(イライラするわ、どいつもこいつも弱いくせに口だけの腰抜けばかり)
(殺しても、殺しても、この殺意が収まることはない)
(やっぱり、私の心の渇きを満たしてくれるのは、梶くんだけなのよね)
(ああ・・・梶くん、今、どこにいるのかしら?早く会いたいわ)
(そして、早く・・・早く・・・殺し合いたい・・・!)
美月は音も立てずに、静かに村を出て行った。
そして、酒場の前には黒焦げになった勇者パーティーだった炭の塊が3つ無残に転がっていた・・・。
主人公たちは相変わらずの暴走っぷり。これが彼らの通常運転の光景・・・斗真とグリゼルダは頭痛薬くと胃薬が手放せなくなりそうです。ボスであるはずのベリス姐さんも斗真が絡むと大暴走しまくりです。屋敷が吹き飛んでもさほど驚かない辺りがもうこの異常な環境に慣れつつあるようです。次回、ドランブイに斗真たちが上陸します。
しかし、その先には勇者軍で最も危険な【雁野美月】が待ち受けています。
梶斗真以外の人間や世界におけるすべてのものに無関心、もしくは憎悪や殺意を抱き、それらを叩き潰すことでしか精神の安定を図る事が出来ない美女の皮を被った野獣ともいえるのが彼女です。無限の憎悪と殺意、そして斗真に対する歪んだ愛情をパワーに変える彼女が第二章における斗真の報復対象となっております。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします!




