第三話「ダンタリオン家からの依頼~古代図書館ロニセラ~」
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「事の起こりは2週間ほど前のことよ。ダンタリオン家は【書庫の国ハニーベル】を治めている家でね、1年に3回、ダンタリオン家に管理を任されている【古代図書館ロニセラ】の監査を行っているの。ところが、今回の監査をしようとしていた矢先にロニセラの周囲には猛吹雪が毎日発生するようになって、ロニセラに近づくことすらも出来なくなったのよ」
「ロニセラと言えば世界中で発見された禁書や魔導書を封印している施設ではありませんか。そこに入れなくなったということは、何者かがロニセラに誰も近づけさせないようにしているということですか?」
「うえ~っ、図書館ってことは本がたくさんある場所じゃねえか。オレ、本とかダメなんだよな。何て言うか、文章とか見ていると頭が痛くなってきちまって、気が付いたらぐっすりと寝ちまっているし」
「魔導書など見せたら1秒立たないうちに爆睡しているからな」
「この間なんて引き受けた仕事の契約書の整理をさせたら口から魂が抜けていたわよ」
どれだけダメなんだよ。リーダーですよね、レベッカさん。
「まあ、とにかくダンタリオン家の使者が図書館に近づこうとしても吹雪いて危険だから近づけない上に、その付近の魔物たちが凶暴化して襲い掛かってくるものだから、その辺りの街道を一時的に封鎖するしかなくってね。冒険者ギルドに原因の究明の依頼を出したんだけどみんな失敗してしまったみたいでね」
「・・・つまり自然に発生した吹雪ではなく、誰かが意図的に起こした吹雪で図書館に誰も近づけさせないようにしているということですか?それに魔物たちも誰かに操られているかのように身体能力などが強化されていたことから、相当の魔力がある人物が今度の事件を引き起こしたのではないかと?」
「トーマちゃんは賢いわねぇ♥その通りよ。元々ロニセラには盗賊が入れないように、ダンタリオン家の血族の証である魔力で生み出される【印】がないと入れないように結界が張られていてね、さらに吹雪を発生させて近づけさせないようにしているんだけど、今回被害に遭ったのはダンタリオン家の使者なのよ。【印】があるのに図書館に近づけないなんておかしいでしょう?」
「・・・う~っ、つまりどういうことだ!?」
レベッカさんが頭から煙を上げて、大声を上げた。
「つまり、今度の犯人はダンタリオン家の関係者か、もしくは【印】を偽造することが出来るほどの強力な魔法を使うことが出来るという条件を満たしている人が犯人じゃないかということですよ」
あくまでもこれは想像でしかないけど、もしそうだったとしたらこれはかなりシャレにならない話なのだ。何せ一国を治めている国の王族の血縁にしかロニセラに近づくための【印】が作れないらしいのだから、王族の誰かが王家の役目でもある図書館の監査を邪魔するということは、よほどの事情がある。
「とにかく犯人は絶対にロニセラに近づけさせたくないっていう感じですね」
「ええ。ロニセラの中には大昔にバカな魔術師が作り出した【魔獣】や【邪神】といったヤバい類の化け物が封印されている禁書もあってね、禁書に封じ込められている魔獣たちを解放して悪事に利用しようとした輩も過去に何人もいたのよ。もし今度の場合も、そんなヤツが図書館に立てこもって禁書を悪用しようとしているなら、全力で止めなくちゃいけないわ」
「それ、姐さんが直々に出て行って解決できねえのかよ?」
「生憎ね、お姉さんはこれ以外にも山ほど仕事を抱えているのよ。それに、最高責任者が城を空けて現場に調査に行こうとすると、もう幹部たちからネチネチネチネチ小言を言われまくるのよ。動きたくても好きなように動けないのよ。まあ、今日も連中から止められたけど、とりあえずロケットランチャーを2、30発ぶっ放して必死で説得してきているんだから」
それは説得じゃなくて強行突破といいます。
「とにかくまずはダンタリオン家が治めている【書庫の国ハニーベル】に行って、事情を聴いてみるしかないわね。ロニセラに近づくための許可証ももらわなくちゃいけないし、どういう状況になっているのか話を聞きたいわ。私の影を操る術なら、もしかすると吹雪に関係なく情報を手に入れる事が出来るかもしれない」
「グリゼルダ、頼まれてくれるか?」
「結界で塞がれたらお手上げだけど、とにかくまずはやってみないことには分からないわね」
「よっしゃあ!!それじゃ、さっそくハニーベルに行って、情報収集を始めようぜ!!」
「頼んだわよ、貴方たち。そして、十分に気を付けてね」
「おうっ!!」
「それと、もし暴れるようなことがあったらその時は・・・バレない様にやりなさい。証拠隠滅は徹底的にやること。いいわね?」
「いや、それ、おかしい!!止めないんですか!?」
「・・・・・・昔は散々注意したけど、コイツらにそんな忠告が理解できると思う?」
ああ、もうとっくの昔にこの人たちに大人しく仕事をこなすことは無理だと諦めたんですね。それに、こういうことを言ってくるということは犯人がろくでもない計画を企んでいるから、絶対に阻止しろという意味も含めているのかもしれない。まあ、そうなると古代図書館が半壊は免れないとしても、多分全壊するようなことになったらバレない様にバックレてこいということなのだろうか。
とにかく、もうこうなったら僕も腹を括ってやるしかない。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・これ、かなりヤバくね・・・?」
同じころ、クロス王国では桜がタブレットを開いて、ひきつった笑みを浮かべてつぶやいた。
「どうかしたの?桜くん?」
「・・・あのさー、とりあえずいい知らせと悪い知らせがあるんだけど、どっちから聞きたい?」
「どういうことだ?・・・とりあえずいい知らせから聞こうか」
桜の問いかけに、花桜梨が答えた。彼女は桐人の後任である【緑の雷騎士】のリーダーである緑色の軍服に身を包んでいた。さながら男装の麗人といった装いをしている。
「・・・まず、青の大陸ドランブイにある港町【クロミノ】で、雁野さんが見つかった。どうやらそこで梶っちの行方を探していたみたいだね」
「ふん、あの女狐め、随分と勝手な行動をしているようだな。勇者を名乗る資格などアイツにもありはしない。いっそのこと、桐人と同じように処刑でもしてしまえばいいのだ。邪魔な女はいない方が清々するからな」
椅子にふんぞり返って、腕を組みながら柳太郎がぶぜんとした様子で吐き捨てた。そんな柳太郎のことを桜たちは表情をしかめて、聞き流すように話を続ける。
「それで、悪い知らせって・・・?」
「・・・ドランブイで一番の領土を持つ大国の【雪原の国カグラ】に、クロスの第3王女の【イレーヌ・フォン・イステル】様がクロスとの友好を結ぶために第2王子と婚約したんだけどね・・・。そのイレーヌ王女が【古代図書館】を管理しているダンタリオン家の遠縁にあたる神官と駆け落ちして、行方不明になったって」
「・・・え?」
千鶴の表情が凍り付いた。花桜梨と柳太郎は首をかしげている。
「ふん、そんな話のどこが悪い話なのだ。所詮ただの駆け落ちではないか」
「頭の悪い人は黙っていてよ。・・・いい加減にしてね、雨野くん」
柳太郎が思わず凍り付くほどの冷たくて低い声、そして感情を感じさせない、光の消えた瞳で千鶴が睨みつけてきた。その視線からは明らかに殺意の色が浮かんでいる。柳太郎も思わず身体中が震えあがり、バツが悪そうにそっぽを向いた。
「・・・ふ、ふん。何を偉そうに・・・」
「まず過ぎるでしょ、国と国の友好を結ぶための婚約っていうのはいわば政策の一つなわけだし。それを駆け落ちしてご破算にしたってことは、クロスとの友好も破棄される可能性があるってことだよ。ただでさえブラオベーレの一件で世界中から警戒されている状態だっていうのに、これで今度は北の大国との友好が破棄されたら、そのままどんどん他国が離れていくことになるよ」
「・・・うん、このままじゃクロスが孤立する恐れがあるよね。どうするの?」
「・・・多分セルマっちからこの一件についての調査を頼まれることになると思うよ。はぁ~っ、勇者ってクロス王国のトラブルシューターかっての・・・」
その30分後、血相を変えたセルマが部屋に飛び込んできて、事情を打ち明けられた。
そして、話し合いの結果【緑の雷騎士】(実質花桜梨しかいないが)、【黄の風騎士】、【水の蒼騎士】の騎士団長の花桜梨、桜、千鶴が向かうことになったのである。柳太郎は初陣を自分が飾ろうと意気込んでいたが、柳太郎の魔力属性である【地】はドランブイでは鬼門とも言われるほどに相性が最悪で、戦うことになっても実力の半分も出せないことから今回は待機となった。
「・・・ひっひっひ。どうやら出ていく前に間に合ったみたいだねえ」
準備をしている桜の所に、鬼島がジュラルミンケースを持ってやってきた。
「鬼島ちゃん!もしかして、あれが完成したの?」
「ひっひっひ・・・、ああ、ようやく完成したよ。私も桜や千鶴のために力になりたいからねぇ・・・」
ジュラルミンケースを開くと、そこには燃え上がる炎のような赤色の【ワシ】を象った鎧が治められているケースとジオチェンジャーが入っていた。
「これが雁野のジオチェンジャーさぁ。ひっひっひ・・・、早く行って渡して上げな」
「・・・いつも本当にありがとう。今度何かおごるわ!」
「ひっひっひ・・・、それならアンタのおすすめのスイーツやジュースがいいねえ」
桜が鬼島の労をねぎらうと、鬼島の頬が少しだけ赤くなった。すぐさま不気味な笑みを浮かべて「さっさと行きな。ひっひっひ・・・」と言って、部屋を出て行った。
・・・しかし、この時桜たちは気づいていなかった。
このアイテムが、まさか自分たちやクロス王国にとっても脅威となる【最狂】の戦士を生み出すことになろうとは。
もはや古代図書館の半壊は免れないと予想しているベリス姐さんの考えに、斗真も納得した様子。それでもできるだけ被害は出さないようにどうしようか、頭を悩ませております。
そして、近々登場する第3の勇者【炎の騎士】は、斗真たちにとっても、クロス王国にとっても脅威となる「史上最凶」「狂気」をイメージした騎士として登場します。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。




