第二話「異世界ネットワーク~勇者軍side⑥~」
いつも拙作を読んでいただき、ありがとうございます!!
本日二回目の投稿をいたします。勇者軍にわずかな変化が・・・?
「・・・これが、世界中の主要都市や大陸の情報を簡単に見る事が出来る魔道具ですって!?」
「そう、暗殺者ギルドの人たちすごくいい仕事をしてくれたよ」
クロスの王宮魔導師たちが日夜魔道具の研究を行っている工房で、桜がセルマたちにお披露目していたのはタブレット端末型の魔道具だった。桜がタブレットを操作すると、スクリーンが映し出されてセブンズヘブンの世界を上空から撮影されたものを地図に変換したものが映し出された。
「まあ・・・!これが、セブンズヘブンの全体の絵なのですか!?」
「その通り。この端末を操作することで、主要都市の重要な施設や王宮の内部に仕掛けた小型端末から情報を収集して、この端末に集まるようになっているんだよ。例えば王宮内における重要な秘密や王族、貴族の良からぬたくらみやうわさ話とかね。もしその中に、クロスを言葉巧みに取り込んで悪いことに利用しようとしている国がいたら、先手を打って相手の動きを封じることも出来るでしょう?」
「なるほど、つまりこれがあればどこの国が良からぬことを企んでいるかが分かるというわけですか?」
「そのほかにも、世間を騒がしている犯罪者とかも特定することが出来るから、その情報を流して捜査に協力をするように申し込めば世界中の賞金首ギルドが重宝したがることは間違いないし、クロスも魔王討伐に向けて、どんな悪党でも見逃さないという姿勢をアピールできるチャンスなんじゃないかな?」
ましてや異世界の技術を取り込んだ画期的な魔道具を所有しているということだけでも、この世界では多くの羨望や興味の視線を集めるステータスとなっているのだ。世界中の情報を集めてそれを自由に見る事が出来、さらに魔力を使わなくても使用できるとなれば、これまでに情報屋ギルドに莫大な調査費用をかけて他国の情報を調べてもらっていた手間と費用が必要なくなるのだ。
世界中の情報を知る事が出来る。
情報屋ギルドにかかっていた調査費用をもう払う必要などないから、他の費用に充てる事が出来る。
端末から取り込んだ情報は全て端末が見て、聞いたものをそのまま流してくれるため、誤情報やデマの心配もない。大金を払って、デマ情報を掴まされることも少なからずともある情報屋ギルドを頼る必要がない。
「これは実に画期的だわ!!サクラよ、よくやりました!!これを国王陛下にお伝えすれば、クロスは世界中の国々の動きを抑えこみ、世界一の先進国として発展することは間違いない!!見事です!!」
「気に入ってもらえたならこっちも命がけで交渉をした甲斐があったよ」
セルマはまるで子供のように目を輝かせて、鼻息を荒くして端末を操作して情報を見ている。
そんな彼女の様子を後ろで見ながら、桜はニヤリと何かを企んでいるような笑みを浮かべていた。
(これで情報屋ギルドはいらないってことになって、国で雇っていた連中を解雇するのは間違いなさそうだね。・・・つまり、最も確かな情報源を失うことになる。そうなったらこの端末を頼りにするしかないけど・・・セルマっち知っている?情報っていうものは簡単に操作することが出来るんだぜ?)
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ひっひっひ・・・その様子だと上手くいったみたいだねえ」
「お疲れ~。セルマっちは早速国王陛下にこの魔道具を見せて、今後の情報はこのタブレットで引き出した情報を頼りにするみたいだよ。まあ、そのタブレットで見た情報が全て本物かどうかについては、信じるか信じないかはセルマっち次第だけどね」
鬼島の部屋にやってきた桜と千鶴はセルマに授けたタブレットと同じものを取り出して、操作するとスクリーンが映し出されて自動的に次々と映像が映し出されていく。
これは現在セルマがイグナーツ国王に見せながら熱心にタブレットのプレゼンテーションを行っているものと同じ画面である。
「しかし、アンタも悪だねぇ。セルマに与えた端末に流れていく情報をこっちの端末で情報を操作して流せるように仕向けるなんてさあ。つまりはこれはクロス王国にとってではなく、桜たちにとって都合のいい様に情報を書き換えて流すことが出来るってわけだからねえ」
「でも、どうしてそんなことをする必要があったの?」
「一つは世界中の情報を引き出せるなんて言う画期的な魔道具を作り出したということで、こんな異世界の技術の最先端ともいえる品物を持っているのは自分たちだけというクロスの満足心を満たすこと。そうすることで、この端末を作り出したあたしや千鶴の【水の蒼騎士】の研究者たちをそう簡単に切り離すことは出来なくなった。つまり、うちらを捨て駒として利用することが出来なくなったってことよ」
定期的なメンテナンスや使用方法、不測のトラブルに対する対処法について知っているのは桜と千鶴、【水の蒼騎士】の研究者たちだけなのだ。これによって彼女たちは自分の身柄の安全と保障を手に入れた。つまり、このシステムの開発によって桜は鬼島たちを国が守ってくれるように手はずを整えたのだ。
「・・・ひっひっひ・・・戦闘に不向きな私たちを守ってくれるための保険ってヤツかい・・・ひっひっひ・・・桜にはいつも世話になっているねえ」
「そしてもう一つは、これは千鶴と梨香にしか言わないけど・・・これがあればクロスを世界中から孤立させることが出来る。手に入れた情報を一旦あたしたちの端末で操作、編集してセルマっちのタブレットに流すことで、あくまでもクロスにとって都合のいい情報だけが流れるように仕向ける。編集するのはごくわずかな情報だけ。でも、そのわずかな違いが大きな変化になるんだよ。情報を鵜呑みにして見たものをすべて真実と錯覚して行動すると・・・痛いしっぺ返しを食らうことになるからね?」
「桜くん・・・それじゃ・・・あの話は本気だったの?」
千鶴が目を見開いて、驚いた様子で聞くと桜の雰囲気が豹変して、真剣な表情で頷いた。
「ああ、オレはこのクロスをぶっ潰す。アイツらが魔王軍を討伐したとしても、オレたちのことを元の世界に帰してくれることはまずない。なぜなら、魔王軍と戦うことでオレたちは否が応でも知ることになるからな。クロス王国の裏の顏にな。そんなオレたちをアイツらが大人しく解放するとは思えない」
桜が口にしたのは、明らかにクロス王国に対する反旗ともとれる発言だった。
「・・・このまま利用されてやるなんて冗談じゃねえからな・・・」
桜の眉間にしわが深く刻まれ、拳を強く握りしめていた。
爪が掌に食い込んで、血がにじみ出した。それを見て、鬼島が桜の手を挙げて窘めるように睨みつけた。
「鬼島ちゃん・・・」
「ひっひっひ・・・ダメだよ・・・アンタはいつもストレスを感じるとそうやって自分自身の掌を傷つけるからねえ・・・掌が傷だらけじゃないか・・・ひっひっひ・・・」
桜が掌を広げると、そこには無数の傷が刻み込まれていた。
爪が食い込み、血がにじむほどに握りしめてきた傷が桜の精神的な疲労と苛立ちを表している。
「・・・・・・やっぱり、ずっと気に病んでいるんだろう?梶をあんな目に遭わせてしまったことに」
「鬼島ちゃん、そういうことはいいっこなしよ。あたしはあくまでもゲームとしてこの勇者ごっこを楽しむだけさ。まあ、クロスがどう考えてもあたしたちのことを騙して利用しようとしている感じだったから、調子に乗ったらちょっと痛い目に遭わせてやるつもりでこれを作ったに過ぎないっての」
「桜・・・」
「それじゃ、ちょっと部屋で休んでくるよ」
「あっ、待ってよ桜くん・・・」
そう言って、桜はいつものように小憎たらしい笑みを浮かべて部屋を出て行った。そんな彼の後姿を千鶴が追いかけていき、一人残された鬼島は椅子に座り、深くため息をついた。
「・・・無理しちゃってさ・・・梶を手にかけたことをずっと悔やみ続けているから、あんなに自分で自分を傷つけているっていうのに・・・」
小悪魔的な笑みを浮かべて、余裕綽綽な態度で人を小馬鹿にしたような態度を取っている策士気取りで戦いをゲームとして楽しむ幼稚的な振る舞いを見せる彼は、本当はずっと苦しみ続けている。
自分でも気づいていないのだろうか。
梶を手にかけた時から、ろくに睡眠をとらずにいるせいか、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいることも。
掌の傷が日に日に増え続けていることにも。
「・・・誰か、桜を助けてくれよ。アイツは、あたしたちのせいでこんなことになっちまったんだ。本当は梶のことを殺そうとしたことを、ずっと悔やんでいるんだ」
このままでは取り返しのつかないことになってしまう。
鬼島はいつになく泣き出しそうな感情を必死で抑えて、両手を合わせてどこにいるか分からない神に祈りを捧げていた。
あたしたちが魔人なんかに改造されたりしなければ。
あたしたちの命が人質に捕らわれてさえしていなければ。
「・・・神様、桜を助けてよ。アイツは本当はこんなことが出来るようなヤツじゃないんだよ。このままじゃ・・・桜が壊れちまう!!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(許されるつもりなんてない)
(どんな理由があろうと、オレは斗真を殺そうとした)
(その事実だけが確かなんだ)
(アイツがオレに対して報復をするつもりなら、オレは逃げも隠れもしない)
(その前にどうしてもやらなくちゃいけないことがある)
(それを果たすまでは、まだ死ぬわけにはいかない)
「サクラ様。ドランブイの【カグラ王国】にて、騒ぎが起こりました」
【冥界の猟犬】の一人【ラムア】の声が静かに部屋に響き渡った。
「・・・了解、今分かることでいいから教えてもらってもいい?」
(斗真・・・本当にごめん)
(でも、もうオレも腹をくくったよ。やらなくちゃいけないことを果たすまでは何が何でも死ぬわけにはいかない)
(だから、そっちが来るなら・・・本気で・・・ぶっ潰す・・・!!)
クロス王国に恩を売り、媚びを売って、取り入られようと奮闘する桜。
その真の目的は、クロス王国をぶっ潰すこと・・・。
桜が必死になって戦う理由は追々明らかにしていきます。しかし、斗真は現在美女ばかりに囲まれて毎日女装をさせられるわ、セクハラをされまくるわといった現状を知ったら・・・多分桜の罪悪感は半端ないことになりそうです。




