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幕話②「300年前の因縁~風の勇者、暗躍する~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。

風邪やインフルエンザ、コロナが猛威を振るっておりますが、皆様のお体ご自愛下さいませ。

 『・・・おや?あれはクロス王国の旗じゃないか?』


 ヴィルヘルミーナが指さした方向には、確かにクロス王国聖騎士団の旗があった。しかもクロス王国を守護する5つの騎士団『聖斧の玄武(ラブリス)』、『聖剣の白虎(アロンダイト)』、『聖杖の麒麟(カドゥスケス)』、『聖弓の朱雀(ガーンデーヴァ)』、そしてこの騎士団をまとめ上げる『聖槍の青龍(ロンギヌス)』までいる。


 『・・・なあ、アイツら全員武装してない?』


 『そうだな。それに、この雰囲気は私たちを出迎えるといったものではないな』


 『・・・ちょっと冗談じゃないわよ!?まさか、王国の騎士団が総出で攻め込んでくるなんて!!』


 レベッカが迫る軍勢の前に立ち、勇猛果敢に怒鳴りつけた。


 『おい、どういうことだ!?まさかクロス王国ともあろうものが今更報酬を払うのが惜しくなったって言うんじゃねえだろうな!?』


 それに対して答えたのは、『聖杖の麒麟(カドゥスケス)』の団長を務めていた魔術師セルマ・ティアマットであった。


 『七人の獣騎士(プレイアデス)はあまりにも危険すぎる!我々クロス王国にいついかなる時に仇をなす脅威になるかもしれぬ。よってここで、お前たちを聖霊王ヴェルティナの名の下において処刑する!!』


 『まずいで!?どないすんねん、レベッカ!?』


 『お前ら逃げるぞ!!』


 レベッカの判断は素早かった。

 体力も魔力も底をついていた彼女たちでは、5000人もの聖騎士と、『神器』を授かり、聖騎士1000人分の働きを一人でこなす実力と魔力を持つ騎士団長が5人を相手にするのは無謀だった。


 『逃がさぬ!!全員、我が術によって魔石の中に封印してくれるわ!!一罰百戒・封印魔法・魔石封印(アポカリプス)!!』


 『皆さん!転移魔法で逃げますわよ!!』


 セルマが聖杖を掲げて魔法を発動したと同時に、アレクシアが詠唱なしで転移魔法を発動させる。

 しかし、レベッカたちは虹色の光に包み込まれ、自分の身体の下半身が宝石の中に閉じ込められていく光景を目の当たりにして、そのまま意識を失った。


 そして、アレクシアが唱えた転移魔法によってレベッカたちは離れ離れに飛び散り、そのまま300年間もの間眠り続けていたのだ・・・。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・300年間、セルマがオレたちを見つけられなかったのはアレクシアが転移魔法と同時にオレたちの魔力や気配を探知できないように魔力遮断の魔法をかけてくれたからなんだ。あの扉がその魔法さ。扉の中に封印されている間、時の流れが外とは異なる速さで流れていて、オレたちは最初は一ヶ月ぐらいしか閉じ込められている感覚しかなかったんだが、まさか300年も時間が流れていたとはな」


 「ビビアナが屋敷の手入れやメンテナンス、掃除が面倒だからという理由で、長い間離れていても屋敷の中の時間が外の時間と比べて非常に緩やかに流れる安全装置を作っておいてくれていたのが幸いだったな。もし何もしていなかったら、300年間も放置された屋敷に直面するところだった」


 「・・・間違いなく跡形もなくなっているでしょうね」


 現在、その安全装置は屋敷の中で1日しか過ごしていないのに、外に出たら1年以上の時が流れているというような事態になったら困るという理由でアイリスさんが切ってくれた。


 「・・・ちょっと待って、もしかして300年前に外なる神を倒し、世界に平和をもたらした伝説の5人の勇者ってまさか・・・!!」


 「そのまさかだ。こともあろうに私たちの手柄を横取りしたばかりか、世界の平和を救った英雄として世界中から讃えられて、現在の聖王国クロスという大国にまで発展を遂げたということになるな」


 「私たちの手柄を横取りして、自分たちは英雄として祭り上げられて、今ではレオノール大陸を支配する世界的大国にまで発展させた。聖王国クロスは彼女たちの活躍によって目覚ましい発展を遂げ、英雄の国として300年もの間人々の平和と憧れの象徴として語り継がれてきた。・・・ああ、妬まし過ぎて今すぐにでもあのロリババァをブチ殺してやりたいわ。妬ましい妬ましい妬ましい・・・!!」


 話を聞く限りだと、おそらくセルマ・・・あの一番小さくて子供みたいな感じで、すごく偉そうで生意気な感じの女性の王宮魔導師が当時の将軍たちと結託してレベッカさんたちを嵌めたという考えが多分正解だろうな。

 

 その理由が、一国に過ぎなかったクロス王国を大陸を支配するほどの強大な勢力を持つ大国にして、英雄の国として世界中から崇拝されるようになるためだとしたら、これって世界征服と何ら変わりないじゃないか。


 「・・・でも、それだけなのかな」


 「どういうことだよトーマ?」


 「・・・これはあくまでも僕の考えでしかないけど、クロスは今や世界的な大国として政治的にも経済的にも大きな影響を与える大国なんですよね?でも、そこまで大きくなったのに、どうして僕たちを召喚して、勇者を仕立てて魔王軍の討伐をさせようとしているんだろう。ただ魔王軍に唯一対抗出来る存在が勇者だからという理由だけじゃないような気がするんです」


 「・・・つまり、セルマはクロスが超大国に成長させることだけが目的ではないかもしれないということか?」


 「・・・僕はそんな気がするんです。それで、魔王軍討伐という名目で、この世界の魔族や亜人族の人たちを全て殲滅するように命令してきたこともきっと何か意味があるんじゃないかなって思うんです」


 「ケッ、あのロリババァが何を考えているのかなんて分からねえし、分かりたくもねえさ。ただ一つだけ確実なのは、アイツがオレたちやトーマに喧嘩を売ったって言うまぎれもない事実だけ。それがあれば、もうオレたちがやるべきことは一つだけじゃねえか」


 レベッカさんが拳を握りしめて、掌にパシンッと叩きつけた。


 「売られた喧嘩は買うぜ、そしてオレたちが絶対に勝つ!!オレたちを嵌めてくれたこと、トーマを殺そうとしたこと、ここまでやられたらクロス王国の王宮を攻め滅ぼすことぐらいでもしねえと気が済まねえな。アイリス、オレたちの流儀、分かっているよな?」


 「依頼金を踏み倒そうとする輩、約束を裏切った輩、私たちの命を狙ってくる輩、そして私たちの大切な仲間に手を出した輩には・・・1000倍返しで報復する、そいつが殺してくれと言っても報復の手は止めない。全てを奪い、壊し、生き地獄をたっぷりと味合わせる、だったな」


 「おうよ。もうこっちは完全に頭に来ちまってんだよなぁ。300年分の溜まりに溜まった恨みつらみ、1000倍返しできっちりと清算してもらおうじゃねえか」


 レベッカさんが獰猛な笑みを浮かべると、アイリスさんやグリゼルダさんも同じように怒りを孕んだ不気味な笑みを浮かべて笑いあっていた。


 え、何これ、ものすごく怖いんですけど。

 ホラー映画だってここまで怖くないよ。ヴァネッサ女王も引きつった笑みを浮かべて、顔から血の気が引いて震えているもんね・・・。


 終わった、これ、マジでクロス終わった・・・!!

 この世で一番喧嘩を売ってはいけないヤバい集団をここまで本気で怒らせるって、クロスはどれだけ愚かなのだろうか。まあ、その愚かさの代償はとんでもなく高くつくことになるだろうけど。


 (ていうか、トーマすごく冷静よね?)


 (・・・いえ、自分よりもはるかに怒っている人を見ると、不思議と冷静な気分になれるっていうか、ここで僕まで怒ったらもう収拾がつかなくなるんじゃないかって思いまして・・・)


 (・・・あ~、なるほどね。そりゃそうか、誰かがもうそろそろこの辺で落ち着きなさいって言ってくれるストッパーは必要よね)


 僕とヴァネッサ女王はアイキャッチだけで会話をすることが出来るようになっていた。そして、もうそろそろレベッカさんたちにまずは深呼吸をして落ち着いてもらうことにした。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、その頃クロス聖王国の王宮では。


 「どうですか?いくらあります?」


 「・・・ひゃ、100億ゴールド!!こんな大金をひと月足らずで稼ぎ出すなんて・・・!風の勇者様は資産運用と商売の天才でございますな!!」


 幕ノ内桜と財務大臣の【マーヴィン・マクスウェル】が財務大臣の執務室で、テーブルをはさんで話し合っていた。テーブルの上には書類や出納帳がいくつも置かれており、桜がこの世界に召喚されてからひと月足らずの間に稼ぎ出した莫大な金額の財産が記録されていた。


 「まあ、1000億ぐらいまでは稼ぎたかったけど、これだけあれば次の手を打つには十分だね」


 「え?次の手と言いますと?」


 「マーヴィン大臣、明後日までにあたしが稼ぎ出したお金のうち、10億ゴールドを用意してほしいんだけどいいかな?」


 「はあ?10分の1も手持ちにされるのですか?もし盗賊に聞き付けられたら大変なことになりますぞ?」


 「大丈夫、この1週間のうちにすぐに移動させるからさ。ああ、それともう一つお願いしたいんだけど」


 「ええ、何でしょう?」


 「闇のギルドに口利きして、あたしに裏家業を専門としているギルドの案内をしてもらえるように頼んでもらってもいいかな?口利き料として1000万ゴールドを支払うという条件でね」


 「や、闇のギルド?つまりそれは裏家業の仕事人をお雇いになられるおつもりですか?」


 桜がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


 「うん、暗殺者ギルドの一つを丸ごと買い取るんだヨ」


 「暗殺者ギルドを丸ごと一つ買い取るですって!?」


 マーヴィンが思わず狼狽えた。


 「これから先、セルマっちから頼まれている魔王軍の討伐や【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】の処分、そして梶斗真の身柄を捕獲してクロスに連れ戻すという役目を果たすためには、一般的なやり方だけじゃまず無理だと思う。そこで、裏の世界に精通していて、あたしが必要としているものをしっかりと手に入れたうえで、例え梶や【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】と出くわしても、戦闘においても腕が立ち、生き残るためならどんな手段も選ばないという条件を満たすとなると、もう暗殺者しかいないでしょう?」


 「ゆ、勇者が暗殺者と手を組むということですか!?」


 「まあそういうことだよね。これは今後の計画を立てる上で、どうしても必要なことなんだよ。そしてこれが今、ブラオベーレ王国との一件で世界中の国々から注目されているクロス聖王国を建て直すための作戦にも使えるんだわ」


 予想だにしていなかった話に、マーヴィンは呆気にとられた。

 そして桜はぺろりと下唇を艶めかしく舐めて、狩人のように眼光が鋭く光り出して不敵な笑みを浮かべた。


 「梶っち、あたしもそろそろ本気で行かせてもらうよ。桐ちゃんの二の舞はごめんだからね」

 

300年前の因縁を知り、改めてクロス聖王国に対する怒りで燃え上がるレベッカたち。クロスは最もこの世で喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を盛大に売ってしまいました。斗真とヴァネッサ女王も思わずドン引き。


そして、敵か味方か・・・。

幕ノ内桜も新たなる策略を張り巡らせて斗真を迎え撃つために虎視眈々と準備を進めております。

現実世界でもトレーダーや資産運用などで一日に数億以上も稼ぐこともあった超高校級のトレーダーとして活躍しておりました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  結局のところ、レベッカ達と斗真って"同類"なんですね。  彼女たちの方が自らの欲望に忠実な分、解りやすいというだけで。
[気になる点] >その当時、【七世界セブンズ・ヘブン】には最凶最悪の名を欲しいままにする、伝説の傭兵団が存在した。  一人、【~】の紋章を宿し、~(×7)          ↓      結果、ハメら…
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