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第二十一話「軽挙妄動の勇者への報復~VSレギオン③~」

本日二回目の投稿をいたします。

評価をしていただき、本当にうれしいです。これを励みにして、いい作品が描けるように頑張ります!!

 「・・・桐ちゃんさぁ、クロス国王から下った命令をもう忘れたの?国王とセルマっちは梶っちを生きて連れて帰ってこいって言ったんだよ?それなのに、どうして梶っちを殺そうとするのかな?」


 「ひっ・・・!!そ、そ、それがどうしたんだよ!!お、お、俺は勇者様なんだぞ!?分かるか!?偉いんだよ!!何せ国王と王宮魔導師にわざわざ選ばれて、人類の平和を守るために魔王軍と戦う勇者様なんだからさぁっ!!国王が何て言おうと、俺様さえいればそんなヤツなんか連れて帰っても大した戦力になんてならねえだろうが!!」


 桜が桐人の言い分に、頭痛をこらえるようにこめかみを押さえてため息をついた。


 「お、俺がいらねえと思った人間なんざこの世に生きている価値なんてねぇんだよ!!だから殺してもいいんだよ!!そ、そ、そうさ、勇者様に逆らうヤツはみんな死んじまえばいいんだ!!何せ俺様は勇者なんだからなあっ!!世界を救う唯一の希望なんだぞっ!?つまり、国王や王宮魔導師なんかよりもずっと偉いんだよ!!そうだ、俺様はまさに神のような存在なんだよ!!国王だって、王宮魔導師だって、俺に命令するなんてそもそもおかしいんだよ!!俺のことを神様として崇め奉るのが当然じゃねえのか!?」


 「・・・アイツ、マジで頭がおかしいのか?」


 「あんなバカを勇者に選ぶなんて、セルマのヤツも耄碌したのかしらね?」


 「下らん。あまりにも愚か過ぎて、呆れてものも言えん」


 「だから、俺様の邪魔をするんじゃねえよぉぉぉっ!!」


 桐人が双剣を振り上げて襲い掛かろうとした時、桜が桐人の懐に潜り込むと桐人の懐に向かって強烈な勢いで拳を突き出した。


 ズムンッ・・・!!


 みぞおちにめり込むほどの強烈なパンチを受けて、桐人は思わずえずき、もんどりうつ。


 「お・・・おげぇ・・・っ・・・!?」


 「・・・はい、雑魚確定!」


 ぐしゃっ・・・!!


 メキメキメキッ・・・!!

 

 「あびょ・・・おほ・・・っ!?」


 さらに桐人の右頬目掛けて、桜は渾身の蹴りを繰り出した。


 ばねのように筋肉が引き締まっている強靭な脚で繰り出される蹴りの威力はすさまじいものだった。

 桐人の目が飛び出しそうなほど見開かれて、歯を数本折れて吹き飛び、そのまま身体が浮き上がる。

 さらに岩場の上を土煙を上げながら桐人は地面に転がっている岩や瓦礫に何度も身体を叩きつけられて、バウンドしながら倒れこんだ。

 

 強い・・・!!

 かなり喧嘩慣れしている動きだ、相手の急所に強烈な一撃を叩きこむことで出来るだけ体力に負担をかけないようにして倒している。


 「・・・梶っちさあ、()()()()()を助けたいんでしょう?こっちは何とか押さえておくから、早くしなよ」


 「・・・どういうつもり?」


 桜の言葉の真意が分からない。

 どうして僕の命を狙っておきながら、今度は僕のことを助けてくれるんだよ?


 すると、桜は頭をガシガシとかきながら乱暴な口調で言い放った。






 「ゴチャゴチャうるさいんだよ。梶っちは目の前の人たちを助けたいんでしょ!?だったら、その人たちを助ける事だけに集中すればいいんだよ!!レギオンがまた動き出したらチャンスなんていつ来るか分からないんだから!!」


 「で、でも、どうして」


 「誰かを助けたいなら、そいつを絶対に助けるということ以外考えるんじゃねえよ!!”斗真”!!一度助けると決めた命を助けること以上に大事なものなんざあるわけねえだろうが!!」






 その言葉を聞いて、僕は思い切り頭を殴られたような気がした。


 そうだ、僕がやらなくちゃいけないことは、タラスク族の人たちを助け出すことだ!!


 そして、次の瞬間僕はレギオンに近づいて、中断していた作業を再開する。


 レギオンの身体がマヒして動けなくなっているうちに、僕はタラスク族の人たちを閉じ込めていた外殻を全て織り上げて反物に仕立て上げた。レギオンの体内からぬるりとした粘液まみれになったタラスク族の人たちが這い出てきた。


 よかった・・・!!

 まだ食われていなかったみたいだ!!


 「よくやったぜ、トーマァ!!タラスク族を安全な場所に避難させるぜ!!」


 「よし、仕上げだ。グリゼルダ、頼めるか?」


 「いつでもいいわよ」


 グリゼルダさんの瞳が緑色に光ると、左首筋の蛇の紋章が緑色の光を放ち出した。


 掌を開いて、レギオンに向かってかざすと彼女の全身から黒い影・・・のようなものが湧き上がり、まるで不気味なスライムのようにうねうねと動く不気味な黒い物体をグリゼルダさんが従えている。


 「いいか、今から絶対にグリゼルダの前には立つなよ」


 「ああ、あれが発動している間は絶対に近づいてはならん。過去にレベッカが近づいて危うく死にかけたからな」


 そういって、レベッカさんが僕を岩場に引き込んだ。

 そして、なぜかアイリスさんが桜とボッコボコにされて気を失っている桐人を岩場に投げ込んだ。


 「光が一切差さない暗闇に恐れおののけ、嫉妬に身を焦がし、嫉妬に狂い、永遠に覚めることのない無限の地獄で踊り狂い果てるがいい」


 そして、魔力を掌に集中させると彼女の前に、空間の裂け目のように黒い穴が空いた。

 後ろからわずかに見えたけど、その穴の中には無数の緑色の【目】【目】【目】が浮かんでいる不気味な世界が広がっていた。






 「影駭響震えいがいきょうしん・闇魔法・蛇の黒洞(スネーク・ホール)






 そして、勢いよくレギオンや辺り一面に散らばっていたスケルトンの残骸を吸い込み始めた。


 レギオンは必死で抵抗しようとするが、スケルトンや巨大な岩が軽々と浮き上がってブラックホールのような裂けめの中へと飲み込まれていき、レギオンが憑依していた船の船体が強力な引力で板がひっぺがされていき、マストや柱、船全体が徐々に崩れ出して残骸が吸い込まれていく。


 ーギャアアアアアアアアア・・・!!-


 「・・・でかい図体で人のことをずっと見下してきてくれたわよねえ?私たちのことをバカにしてくれたわよねえ?ああ、いい気味よ。妬ましいわ、妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい・・・!!」


 そして、とうとうレギオンの身体となっていた海賊船の船体がバラバラになって、レギオンの本体らしき白い竜のような生き物も必死で逃げ出そうとするが、悲鳴のような情けない声を上げて、口から桃色の光を放つ小さな球状の物体を吐き出して、穴の中へと消えていった。


 黒い穴が消えると、グリゼルダさんが疲れ切った様子で座り込んだ。


 「グリゼルダさん!!大丈夫ですか?」


 「・・・ええ・・・このぐらいどうってことないわよ。それよりも、タラスク族の人たちは・・・?」


 「ええ、全員無事です!!長い間ずっとレギオンの体内に閉じ込められていて体力をかなり消費していましたが、みんな息があります!!急いで王国の病院に連れて行かないと!!」


 「そうだな。これで、タラスク族の行方不明になった連中を見つけ出すことが出来たってわけだよな!」


 「ああ、これでとりあえずは依頼は無事完了ということになるな」


 よかった・・・。


 さてと、僕にはまだ残っている仕事が一つあるんだよね・・・。


 僕は岩場の陰で倒れこんでいる桐人に近づくと、先ほどレギオンの魔力を実体化させて生み出した反物を取り出した。反物にはレギオンの記憶や魔力が宿っており、反物自体が真っ白な幻想的な光をぼうっと儚く輝きを放っていた。


 「桜、桐人に僕から一つだけ報復をしてもいい?」


 「殺す?まあ、それでもいいけどさ」


 「いや、殺したらそこでおしまいじゃん。僕はね、やられたことは1000倍返しで報復しないと気が済まない性質なんだよね。喧嘩もそうだけど、もう二度と挑んでこないように一度きりで相手の戦意を喪失させるまで徹底的にやることは必要でしょう?」


 復讐って言うのは、相手が死なせてくれと願ってもすぐには殺さずに、じわじわと苦しめてナンボじゃありませんか・・・!もしうっかり死んでも蘇生させてもう一回殺す程度ぐらいまではやるつもりでないじゃないと面白みがありませんって。


 「・・・あ~、中学時代のアンタって確かそういう感じだったもんなあ・・・」


 桜が何かぼやいていたようだけど、別に気にしない。


 僕は反物を広げると、気絶している桐人の身体のサイズを目視で確認して、イメージを思い浮かべながらさっそく裁縫を始めた。反物を切り、型紙で型を取り、縫い上げていく。


 10分ほど経った頃、ようやく完成しました。


 「これを鳳に着せてあげてほしいの。おそらくここまでのことをやらかしたわけだから死罪は免れないかもしれないけど、これがあれば処刑をしても鳳はずっと苦しみ続けることになると思うよ」


 「・・・え゛っ?」


 「これを着たまま死んでも、魂がこれに宿っているレギオンに取り込まれて、レギオンの記憶が見せる幻覚の世界に取り込まれてずっと苦しみ続けることになると思うよ。成仏なんてさせるわけないじゃん。地獄に落ちて閻魔様に罰を任せるって言うのも許せない。散々人に迷惑をかけまくってきたんだから、その分はこの手でちゃんと報復しないと気が済まないでしょ?」


 「アンタ・・・可愛い顔をしているけど、性格はマジで外道だね」


 「僕のことを殺そうとするからでしょ?この程度で済めばいい方だと思うけど」


 「・・・よくそういうことを思いつくよね。それ、ひょっとしてあのレベッカとか言う人たちの前でもやったりするの?」


 「やるわけないでしょ。彼女たちは僕の命を救ってくれて、居場所までくれたんだから。それに、君たちはそんな僕の大切な人たちの命まで狙ったんだ。君だってこれ以上チョッカイを仕掛けてくるなら、鳳の二の舞になるかもしれないんだからね?」

 

 味方には恩返しを、敵には倍返しを!

 これ、当たり前のことじゃん。僕、小学生の時から知っているよ?


 「そんな殺伐とした小学生がいるか!?」


 「ここにいるよ。結構自慢じゃないけど、修羅場という修羅場は何度か体験してきたし」


 「どういう人生を送ってきたのよ、梶っちは・・・。はぁ、まあいいか。それじゃ、桐ちゃんは回収させてもらうわよ。梶っちの言うとおり、もう死罪も免れないし、死ぬ前にせめて首だけ差し出してクロスとブラオベーレの友好が破棄されないように手も打たなくちゃいけない。梶っちたちだってクロスとブラオベーレが戦争になったらまずいんでしょう?ブラオベーレにクロスの友好国がいくつも連合を組んで攻め込んで来たら・・・どうなるのか、分かるよね?」


 「・・・そっちこそ随分ずるいっていうか、狡猾だよね」


 「まあね」


 そういって、桜が桐人の服を脱がして、僕が仕立て上げたばかりの【拘束衣】を着せてベルトで固定して身動きが取れないようにする。


 「それじゃ、またねー。梶っち♥」


 桜は投げキッスをして微笑むと、紐で縛り上げた桐人をズリズリと引きずりながら洞窟を出て行った。


 「おーい、トーマ!どうかしたのか?」


 向こうからレベッカさんが呼ぶ声が聞こえてきた。

 僕ももうこんなところには長居は無用だな。


 こうして、僕たちの初めての依頼は見事達成することが出来たのでした。


 そして、勇者の一人【鳳桐人】に対する報復も無事完了したのである。


 ただ一つ気になるのは・・・桜が一体何を考えているのか、それだけがどうしても胸に引っかかったままだった。


斗真、レベッカたちに負けず劣らずヤバい性格だった(笑)

味方には心を開き、とことん尽くすタイプですが、鳳たちのような命まで狙ってくるような相手のことは敵とみなして、徹底的に報復するタイプです。良くも悪くも感情のふり幅が極端です。


次回、鳳への報復が行われて、後日談を書いて第一章を完結させる予定です。


次回もよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  結局のところ斗真って、レベッカ達と"類友"なんじゃないの?(笑)
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