第二十話「天雷の弓兵・ストリクスナイト~VSレギオン②~」
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温かいご感想やメッセージ、誤字の報告までしていただき、常日頃から皆様には助けてもらってばかりで本当に感謝しております。
新作が完成しましたので、投稿いたします。よろしくお願いいたします。
「よっしゃあ!派手に暴れるぜ!!お前らいいな?」
「フッ、いつでもいけるさ。グリゼルダ、準備はいいか?」
「全く300年ぶりに外の世界に出てこれたかと思ったらいきなり戦闘とはね。まあ、いいわ。リハビリには十分よ」
レベッカさんたちも飛び出してきて、素早く陣形が出来上がった。
「グリゼルダ!お前はトーマのサポートを頼む!オレは邪魔なスケルトンたちをブッ飛ばして、レギオンに続く道を作る!!」
「回復と後方支援は私に任せろ!」
「了解!」
「分かりました!!」
僕は素早くベルトを装着すると、懐から黄色の宝箱を取り出した。
これはついさっき完成したばかりのものだ。ぶっつけ本番で使うなんて正直不安だけど・・・。
「男は度胸!変身!!」
宝箱を窪みにはめ込んで、鍵を回し、宝箱の扉が開く。
窪みに宝箱を装填すると、鍵のギミックを回し、宝箱の蓋が開いた。
『闘衣召喚!!ストリクス!!』
バックルから相変わらずのイケボの電子音声が鳴ったかと思うと、僕の全身をバチバチバチッと迸る黄色の電撃がまとわりつき、そのまま闘衣へと変わっていく。
フクロウの鳥人【ストリクス】をイメージした、両腕に鋭い鉤爪が装着され、背中からは雷が実体化した6枚のウイングが生えた。アイリスさんの武器【霊弓エクレイア】と同じ形を象った弓矢が目の前に浮かび上がり、僕はそれを左手で掴み取った。
『天雷の弓兵!!ストリクス・ナイト・・・ドレスアップ!!』
「ちょっと・・・どうなっているのよ・・・!?」
「すっげえ!!今度は金髪になって、アイリスみたいにおっぱいが大きくなった!!」
うん?
レベッカさんがなんだかわけのわからないことを言い出したぞ?
グリゼルダさんも「私よりも大きい・・・妬ましい・・・」とか暗い顔をしてブツブツ言っているし。
「・・・か、梶っち・・・本当にアンタ梶っちなの・・・?」
近くで桜も信じられないと言ったように目を見開き、口をぽかんと開いて震えていた。
「・・・幕ノ内、鏡持ってる?」
「え?持ってるけど・・・」
「貸して」
「はい」
桜が差し出したコンパクトの鏡を開いて、僕は自分の顔を見る。
そこに映っていたのは、七三分けに分けた金髪のショートヘアーにモノクルをかけている、金色の瞳になった僕自身の姿だった。そして、胸を見てみると、アーマーがはじけそうになるほどの豊満なメロンに実ったおっぱいがあった。
あ~、確かレベッカさんの時にも赤髪ポニーテールの女の子の姿に変身したもんな。
おそらく、アイリスさんの魔力を含んだ魔石で変身すると、レベッカさんよりもわずかに大人びたクールな感じの巨乳の女の子の姿に変わるのか。
「・・・本物のおっぱいだ」
「いや、自分の胸を見てどうしてそんなやり切れない表情になって落ち込んでいるのよ?」
「そうだぞ。それに頼らなくても、お前ならそのうちおっぱいも大きくなって、ボンッ・キュッ・ボンのナイスバディになれると思うぞ?悲観することはあるまい」
「僕は男だぁぁぁっ!!なってたまるか、バカーーーーーー!!」
「そうだったか?ああ、そういえばそうだったな」
「でも、どっちでもいいじゃんか。だって可愛いのに変わりはねーもんな!ニャハハハ」
ぷっちん(僕の中の何かが切れた音)
アッハッハッハ、そうですかい、人の気持ちも知らんでそこまで言いやがりますかい。
冗談?知らない、聞く耳持たない、もう知らない♥
というか、こんなにもおちょくられて、恥ずかしい目に遭っているのも全部・・・レギオンのせいじゃないか。
腹いせ?もちろんそうですが、何か悪いですか?
人がプッツンした時に、目の前にいて、攻撃を仕掛けてきたお前らが悪い。
「レギオン、覚悟しろやぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」
「いや、それ、ただの八つ当たりじゃん!?」
うるせえ、黙ってろや勇者!!
もう僕は怒りを拳に込めて、一斉に襲い掛かってくるスケルトンをブッ飛ばすことしか頭にない!!
ゴシャッ!!
グシャッ!!
ガッシャアアアン!!
「・・・ねえ、あの子完全にキレちゃったけど、あとでどう謝るつもりよ?」
「・・・やっぱりこれって、オレたちのせいか?」
「ふむ、スケルトンを一撃で吹き飛ばす上に、武器を持っている相手の攻撃をかわしつつも身体を掴んで投げ飛ばすとは体術も相当の経験を積んでいるようだな。頼もしい限りだ」
「・・・アンタは一度自分が何を言っているのか、自覚することを覚えなさいよ。何冷静に分析しているのよ」
「往生しやがれぇぇぇぇぇぇっ!!」
弓矢を構えて糸を引くと、矢じりから電流が迸ると矢全体に電流を纏い、巨大な雷の矢に変わっていく。
僕が手を離すと、矢は何十本もの矢に分裂してスケルトンの身体に次々と突き刺さり、光を放って大爆発を起こしていく。
「雷霆万鈞・雷魔法・梟の怒り!!」
魔力を溜めて巨大な矢を作り出して打ち出すと、雷の矢は地面を削りながら飛び出し、レギオンの頭部や身体に刺さって全身を青白い光が包み込んで感電する。水の上にいたこともあり、電撃は船体の隅々にまで感電し、船体の至る所で爆発が起こった。
ーグオオオオオオオオ・・・ッ!!-
レギオンが天井に向かって大きく叫ぶと、お腹が思い切り膨らんでレギオンは上体を大きく反らしたままの姿で固まってしまった。そして、お腹の辺り(おそらくは)にはぶよんぶよんした赤いものがあった。
「・・・あれは・・・誰かが中にいる!?」
「タラスク族だ!そうか、行方不明になっていたタラスク族はコイツに取り込まれていたのか!」
赤く光るレギオンの一部に閉じ込められているタラスク族は苦しそうな表情を浮かべている。まだ生きているみたいだけど、顔色がすごく悪い。もしかすると、レギオンに体力を吸い取られているのかもしれない。
「アイリスさん、どうすればいいですか!?」
「あれはレギオンの非常食になる生贄を溜め込んでいる貯蔵庫のようなものだ。レギオンの魔力で出来ているから、魔力を帯びた攻撃で破るしかないが・・・下手に攻撃をすれば取り込まれているタラスク族まで巻き込んでしまう」
「ちょっと厄介ね。人質の命が惜しくないなら攻撃してみろとでも言いたそうね」
ゲス野郎、とグリゼルダさんが舌打ちする。
どうしよう、魔力を帯びている攻撃じゃなくちゃレギオンには触ることすら出来ないなんて。
でも、攻撃の力加減を間違えたらタラスク族の人たちも巻き込まれちゃうし・・・。
うん・・・?
ちょっと、待って?
今までは魔石・・・魔力の塊を糸に変えて、それを布に仕立ててきたんだよね?
もしかすると、この【魔法裁縫師】の力があれば・・・!!
「・・・レベッカさん、アイリスさん、グリゼルダさん、僕に一つだけ考えがある。これならタラスク族の人たちを助けられるうえに、レギオンの力を手に入れる事が出来るかもしれない」
「何!?」
「だから、これから僕はレギオンに取り込まれている人を助けに行きます!レベッカさんたちはスケルトンたちを倒して、レギオンの元に行けるように道を切り開いてもらえますか?」
これはもうイチかバチかの賭けに近い。
でも、目の前でレギオンに取り込まれて苦しんでいる人がいるんだ。
勇者じゃなくても、裁縫師だろうと、関係あるか!!
目の前で誰かが困っていたら、助けに行かないなんて出来ない!!
「・・・お前どうしようもねえ大バカ野郎だな。でも、そのバカさ加減は気に入ったぜ!!」
レベッカさんがバンと僕の背中を思い切り叩いて、満面の笑みを浮かべて喝を入れてくれた。
「よっしゃあ!!お前ら、トーマのサポートに全力を尽くせ!いいな?これは団長命令だ!!」
「了解だ」
「分かったわ!!」
レベッカさんとアイリスさん、グリゼルダさんが僕の前に立ってそれぞれ武器を構えると魔力を集中させていく。紅蓮の猛火が大剣に、金色の電撃が弓矢に、そして漆黒の闇がグリゼルダさんの武器である双剣に集まり出す。
「活火激発・炎魔法・・・!!」
「紫電一閃・雷魔法・・・!!」
「昏天黒地・影魔法・・・!!」
そして、一斉に大剣と、弓矢と、双剣から魔力を解放した。
「狼の斬撃!!」
「梟の聖弓!!」
「猫の双牙!!」
炎の刃がスケルトンを飲み込み、ドロドロに溶かして灰へと変えていく。
そこに巨大な雷の矢が飛び出して、塵一つ残さずに吹き飛ばしていく。
さらに黒い影の刃が縦横無尽に飛び回り、スケルトンの身体を粉々に打ち砕いていく。
レギオンが自分を守るように生み出していたスケルトンが吹き飛び、レギオンの本体に続く道が出来た。
「トーマ、イッキまぁぁぁぁぁぁすっ!!」
僕はスケルトンを弓矢の先端についている刃を振るって、ナギナタのようにスケルトンに刃を叩きつけて吹き飛ばしていく。
そして、レギオンの腹部にたどり着くと、魔石と同じ要領で魔力を手に集中させてから両手を押し付けた。
「・・・仕立てを始めます!!」
そして、タラスク族の人たちを閉じ込めている壁のようになっている赤い腹部に手をかざすと、腹部から赤い糸のような形になってほつれていき、僕がそれを織機で巻き取っていく!
「ま、まさかアイツ、レギオンの一部を糸に変えて、布に仕立て上げるつもりなの!?」
織機に巻き付いていく糸は赤色から徐々に霊力を帯びた透明度の高い白色の布へと変わっていく。魔力の影響か、時折緑色の光や青白い光を浮かび上がらせている綺麗な布だ。
へへーん、これならタラスク族の人たちを傷つけることなく、魔力だけを糸に変えて布に仕立ててこのバリアを消し去ることが出来るもんね。まさかレギオンも自分の身体の一部を糸に変えられて、布に仕立てられるとは夢にも思っていなかっただろう。
「待っててくださいね、もうすぐ助けますから!」
閉じ込められていた壁の部分の3分の1ほどがなくなっていき、あともう少しでタラスク族の人たちを引きずり出せると思った、その時だった。
「させるかよぉぉぉぉぉぉっ!!」
後ろから声が聞こえて、振り返ると桐人が鬼のような形相で双剣を振り上げながら僕に向かって猛然と走ってきた!!
目は完全に血走っていて完全に焦点が合っていない。
大きく開いた口からは唾を吐き散らしながら、メチャクチャに双剣を振り回して僕目掛けて突進してくる!!
「死ねよぉぉぉっ!!梶のくせに生意気なんだよぉぉぉっ!!」
ヤバい、魔力を集中させているから切り替えが間に合わない・・・!!
「ヒャハハハハハハハハハ!!お前のその力、俺に寄越せよぉぉぉっ!!」
無防備となった背中に容赦なく双剣で斬りつけようと、思い切り桐人が振りかぶった。
しかし、その時僕の目の前に大きな影が飛び込んできた。
ガキィィィィィィンッ!!
双剣は・・・振り下ろされることはなかった。
高い金属音が鳴り響き、ギリギリと音を立てながらも双剣の刃は・・・鉤爪の刃でふさがれていた。
「・・・幕ノ内!?」
僕を助けてくれたのは・・・。
僕を追放して殺そうとしていたはずの勇者の一人・・・。
幕ノ内桜だった・・・!!
「て、テメェッ!?」
桐人も想定外だったのか、血走った眼を見開いて動揺する。
桜はもはや感情を読み取らせない無表情を浮かべて、鉤爪で桐人の双剣を思い切り弾きとばした。
そして凍り付きそうな冷たいまなざしで睨みつけていた。
「・・・クズが・・・もう救えねえよ・・・!!」
ど・・・どういうことなの・・・!?
次回、最初の【ざまぁ!】な展開を書きます。
そして、斗真を守った桜の真意やいかに・・・?
次回もよろしくお願いいたします!!




