最終回「魔法裁縫師の反逆譚~最凶最悪の傭兵団のお姉さんたちに雇われたので、世界を支配しようとする勇者軍に1000倍返しで報復します!!~」
最終回、投稿しました!
約2年間、筆が進まなかった時もありましたが、最終回まで無事書き上げることが出来ました。
これまでずっと読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!!
魔法裁縫師の反逆譚~最凶最悪の傭兵団のお姉さんたちに雇われたので、世界を支配しようとする勇者軍に1000倍返しで報復します!!~の本編、これで最終回です!!
【斗真視点】
ものすごい音と、城全体が揺れる衝撃を感じて、慌てて音がした玉座の間の方向に向かうと、玉座の間ではレベッカがボッコボコにされていました。
うん、訳が分からないからもう一度言う。レベッカがボッコボコにされていました。
どれだけ派手に暴れまくったのだろうか、壁にはそこら中に穴が空きまくっているし、貴族たちは早々に安全な場所に隠れて、玉座の間で繰り広げられているデスマッチを戦々恐々とした様子で物陰から見て、震えている。
どうなっているんだ、この地獄。
「だーかーらーっ、落ち着いて話を聞けって言ってんだろうがぁぁぁっ!!解散と言っても、一区切りつけようってことだよ!!姐さんから一つ仕事の話があるから、その前に、お前たちの話を聞いておこうと思っただけだってばぁっ!!」
「なるほど~、解散なんてふざけた話を思いついたのは陛下でしたのね~。それでしたら、陛下共々ここでバカなことを言った罰として、二人とも地獄に落ちてもらいましょうか」
「お前たち、これ、マジで反逆罪とか謀反とか言われてもおかしくないのだが、自分たちが何をやっているのか分かっておるのか!?」
「陛下、いくら何でも私たちに解散を命じるなんてお茶目が過ぎると思うんですけど?」
「今までだって雇用主がふざけたことを言ってきたら、全員血祭りにあげてきたウチらの常識のなさは陛下もご存知やろうが」
「どうしよう、コイツらいっぺんマジで眉間に鉛玉でもブチこまないと、話を聞こうとしねぇな」
「姐さんもやめてくれや!鉛玉を眉間にブチこまれたら話を聞く前に死んじまう!!」
うん、とりあえずどうしてこんなことになったのかは分からないけど、やるべきことは分かったよ。
「オクタヴィア、ハリセン」
「あいよ」
まずは暴走しているこのバカ6人を止めることだろう。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・ったく、毎度毎度テメェらと来た日には、今度こそ反逆罪で処刑にしようかと思ったぞ。トーマちゃんとサクラちゃんが土下座をして謝ってきたから不問にしておいてやるけどさ」
魔法で玉座の間を元通りにした後に、頭にデカいタンコブをこしらえたアイリス、ニナ、ビビ姉、オリヴィアさん、アレクシア、そしてヴィルヘルミーナさんが正座をして、しょぼんと落ち込んでいる。
どうやら話を聞いてみると、ベアト姉さまが僕たちに新しい仕事を任せたいらしく、その前に、僕たちにこれからどうするのか、改めて自分たちの考えを聞きたいという意味でレベッカは傭兵団の解散を宣言したらしい。
一度傭兵団を解散する理由としては、まず、その依頼がこれまでのものとは違って、かなり長期的な時間をかけたものになるから、ここからは傭兵団という枠で縛りつけるのではなく、各々の意思でこれからどうするのか決めてほしいというものだった。
「他にも傭兵団を解体する理由としては、これまでの体制を根本から変えていく必要があると思ったからだよ」
「それを説明しようとしたら、いきなりアレクシアが杖で殴りかかって来るし、ビビアナがハンマーで殴りかかって来るしで、話にならなかったというわけね」
「「面目ねぇ」」
「いや、そらいきなりあんなことを、神妙な顔つきで言われたらそうなるやろ」
「まあ、頭に血が上っていきなり問い詰めようとしたボクたちも問題だったけどね」
「あの、もう、本当に勘弁してください。下手したら反逆罪で全員の首が飛んでもおかしくないようなことをやったんだから、本気で反省してください」
頭が痛い・・・!!
どうして復活して早々にこの連中はやらかしやがるのか。
いつものこととはいえ、僕はまだこの人たちの非常識さというものを甘く見ていたようだ。
「それで、次の仕事って何ですか?」
「・・・ああ、まずはそれから説明をしようか」
そう言って、ベアト姉さまは非常に疲れ切った顔で、指を鳴らした。すると、僕たちの目の前に巨大な光の壁のようなものが現れて、そこには山と海に囲まれた小さな港町が映し出された。
木組みの家が建ち並ぶ美しい集落、重厚な石造りの橋、重量感のある外観の古城が丘の上にそびえ立っている。しかし、どの建物も真新しい感じで、人が住んでいる気配がない。もしかして、これ、新しく作られたばかりの村なのだろうか。
「そこは妾の持っている領土の外れに作った小さな港町だ。いつかクロス王国の問題が解決した暁には、お前たちに報酬としてこの村を任せようと思ってな」
「村一つ丸ごとくれるっていうのか!?」
「ああ、そして、この村を任せるにあたって、お前たちに頼みたいことがある。それは、お前たち”彩虹の戦乙女”の戦力の強化、および、この度のクロス王国の邪知暴虐なふるまいによって国を追われた魔族たちを受け入れるための居場所を作ってほしいという」
今回、クロス王国はハッキリ言ってやり過ぎた。世界を滅亡寸前にまで追い込んだんだからね。その騒ぎに巻き込まれて、家族や居場所を失った人たちの数は計り知れない。クロス王国に対して報復を考えていたものもかなりいたらしい。しかし、クロス王国が自滅という形で滅亡したため、そのやり場のない怒りや悲しみが、今後、新たなる災厄を引き起こす可能性があると、姉さまは考えたそうだ。
「・・・クロス王国になり代わって世界の覇権を手にしようと、世界中の国々がいさかいを引き起こそうとする動きがみられる。このまま放っておけば第二、第三のクロス王国が出てくるかもしれない。そんな輩が力をつける前に、私たちは彼らに対抗出来る戦力を準備しておく必要があると思った。それが今回の村をお前たちに任せるという提案だ」
「姐さんはその村をオレたちに任せて、オレたちの話を聞きつけてサマリアにやってきた魔族たちを受け入れてほしいってことか。そして、彩虹の戦乙女の団員として入団させて、また世界征服をやろうとしている馬鹿な奴らが出てきたら、その計画を阻止しようとしているってわけさ」
「サマリアの魔王軍とは別個の組織を作り、それを私たちに任せるというわけですか?」
「ああ、こんな任務、昔から気心が知れていることと、今度の一件で、クロスを追い込んだ驚異的な戦力として世界中が注目していて、血眼になって探しているお前たちにしか任せられん。サマリアに所属している組織となれば、他国の連中も手は出せないだろう」
「だけど、これまでずっと戦い、戦い、戦いだっただろう?今まではオレがお前たちをずっと引っ張り回してきたけど、お前たちはどう思っているのか、どうしたいと思っているのか、団という枠で縛り付けていたら本当の気持ちが聞けないと思ってよ。一旦、傭兵団は解散という形にしたんだわ」
「・・・・・・そういうことね」
「それで、お前たちの答えは・・・どうだろうか?まあ、こんな話を聞かされてすぐに答えなど出ないだろうから、猶予も与えてやるが・・・」
猶予?
僕の答えなんて、もう決まっている。
「ベアトリクス陛下、ご意見、よろしいでしょうか?」
そう言って、僕が手を挙げると、ベアト姉さまが「よろしい」と許可をくれた。
「ぼ・・・」
「アイリス・アーヴィング・ルシファーは、その提案に賛成する」
「同じくニナ・ナルカミ・レヴィアタンもその計画に協力させていただきます」
「・・・・・・ビビアナ・ブルックス・ベルフェゴール、その話、乗った」
「アレクシア・アッシュクロフト・ベルゼバブ、そのお話、お受けいたしますわ」
「僕の話はぁっ!?」
あんまりだ!!僕が先に挙手をしたのに、どうしてみんな先に言うんだよぅ!
「僕も」
「同じくオリヴィア・オズボーン・マモンもやらせていただきまっせ」
「フッ、ヴィルヘルミーナ・ワイズマン・アスモデウス、お受けいたします」
「幕ノ内桜、そのお話、お受けいたします」
「桜まで!?ねえ、僕を飛ばさないで!!」
いじめか?いじめなのか、この野郎!?
手を挙げたまま、僕は思わず叫んでいた。チクショウ、どうしてこういうときに、みんな自分勝手に振る舞うんだ!?
「元虚無の魔王オクタヴィア、その話、我もいち魔族としてお受けしたい」
「半身ーーー!!僕のことを無視しないで!!」
「それならさっさと言えばいいではないか。トーマもやりたいそうだが、いいか?」
「扱いが雑だぁぁぁっ!!」
もう本気でグレてやろうか。みんなが僕のことを見て、まるで子供を見るような優しい目になって、泣きじゃくっている僕の背中をさすったりしてあやしてくる。
「じょ、冗談やって。そないに泣かんでも・・・」
「どうせ僕の話なんて、誰も聞いてくれないんだ・・・」
「兄弟イジけないでくれよ。小学生じゃねえんだから」
「いいもん、いいもん、どうせ僕なんて・・・」
「そんなに落ち込まないでくれよ。悪かったって。ったく、二代目の団長になるヤツをそんなにイジメないでやってくれよ。なあ?」
そうだよ、二代目の団長になったんだから、もうそんな風に人のことをからかってくるのは少し控えてほしいよ。あー、でも、別に団長になったからって言っても、アイリスさんたちが僕のことをからかってこないというわけじゃない。レベッカがいい例だもんな。団長なのに、みんな遠慮なくバカバカって言いまくっているし・・・。
あれ?
ちょっと待って?
今、レベッカは何て言いました?
「レベッカ?今、何て言った?」
「え?二代目の団長になるヤツをそんなにイジメないでやってくれよって」
「誰が二代目?」
「お前」
「だから、誰?」
「お前だよ、トーマ」
はい?
ちょっと待ってください、どうしてそんなことになるのですか?
頭が真っ白になり、思考回路が完全にショートしまくっているんですけど。
「これ、姐さんが推薦したんだよ。もしお前がこれからもオレたちに付き合ってくれることになったら、お前を新しいリーダーに任命したいってさ」
「だってレベッカ、バカだもんよ。これから村の運営をやらせようとしたら、基礎的な事務作業とか、コイツに任せられると思うか?まあ、コイツには村に入りたいっていう魔族や異種族たちとの交渉を任せたいと思っているんだ」
「交渉って何だ?」
「スカウトやどういう条件で入団したいか、そういうことを聞いたりすることだ、バカ」
「あー、そういうことね!」
「村長という最高責任者についたら、これまでのように好き勝手に動き回るわけには行かない。しかし、コイツに大人しくしていろと言うのは無理だ。現場における指導役としてなら最適だがな」
「それで、アイリスよりもレベッカを陰で支えて、サポートが出来るトーマちゃんこそが次代の傭兵団のリーダーにふさわしいと思ったわけだ。お前たちはどう思う?」
「私は賛成だ。安心しろ、初めてのリーダーで不安なことがあっても、お姉ちゃんがしっかりとサポートをしてやるぞ。手取り足取り腰取り支えてやろう、うへへへへ」
「下心が隠せてないでしょうが、このショタコンが。まあ、私もツッコミ役としてついているから安心しなさい」
「お前の場合は激マズな料理とか食わせたりするからアカンやろうが。暗殺沙汰とか起こしたらあかんで?まあ、ウチはサクラに一生ついていくさかいな。サクラのそばにいれば、毎日が面白くてたまらんやろうしな」
「フッ、ボクはこう見えても一途な乙女なんだよ?サクラ、君のことは一生の伴侶として心から認めているんだ。君のそばから離れることなどありえないさ」
「・・・・・・トーマのそばから私が離れることなど、世界の滅亡があってもありえない。私は死ぬまで、いいや、死んだ後も悪霊となってトーマの身体に憑りついて永久に離れない。二人の愛は死であっても断つことは出来ない」
「そこは守護霊と言ってくれ」
「私ももちろんご協力させていただきますわ~。この連中を放っておいたら、何をやらかすか分かったものではありませんし、怪我の治療や病気になった時の看病は私がいなかったら誰がやるというのですか~?」
「ということで、トーマちゃん、満場一致で・・・決定だな」
なんてこった。
僕が二代目の傭兵団のリーダー?
そんな大役が僕に務まるのだろうか。不安で心臓が握りつぶされそうになっている。
その時だった。
僕の肩を誰かが叩いている。振り返ると、僕のほっぺたに人差し指がプスリと刺さる。
そこには、桜が苦笑していた。
「やれやれ、そんなに難しく考えるなよ。お前って、顔にすぐ出るから分かりやすいよな。俺たちが一緒にいるなら、やることはいつもと変わらないさ。楽しくやろうぜ?」
「・・・さくらぁ」
「それに、またクロス王国みたいなバカが出ないように、俺たちに出来ることが何か一つでもあれば、それを全力でやる。一人で抱え込むんじゃなくて、俺たち全員でやればいい。そうやって今までだってやってきたんだろうが」
ああ、そうだ。
桜の言葉で、あらためて気づいた。
もう僕は・・・
『お前はもう、孤独じゃない』
『私たちの分も、強く、生きて』
つばさ・・・?
光・・・?
ポケットの中に入れていた、二枚の霊符から光たちの声が聞こえたような気がした。
ずっと独りで、歯を食いしばって、戦ってきた。
そうしているうちに、誰かに頼ることが出来なくなっていた。
頼り方が分からない。
嫌われるのが怖い。
足を引っ張るぐらいなら、一人の方がまし。
この世界に来るまでの僕は、そんなことばかりを考えていた。
何のために強くなればいいのか分からなかった。
どうすれば楽しく生きることが出来るのか、分からなかった。
悩んでも、答えなんてずっと出なかった。
ずっとこの暗闇が続くと思っていた。
光なんて差すことなどないと思っていた。
でも。
あの時、レベッカが僕の手を取ってくれた時から。
僕は本当に欲しかったものは、もう自分のそばにあったんだ。
「・・・そうだね」
今、僕はきっと心の底から笑っているのだろう。
共に生きていきたいと願える、大切な”仲間”、そして”家族”がいるのだから。
肩を並べて歩いて行ける仲間がいる。
支え合える家族がいる。
そんな大切なものを守りたいと、強くなろうとする自分がいる。
きっとそれが、僕が欲しかったもの。
「・・・みんな、これからもよろしくお願いします!!」
『よっしゃあーーーーーーっ!!!』
レベッカ。
アイリス。
ニナ。
ヴィルヘルミーナさん。
ビビ姉。
オリヴィアさん。
アレクシア。
ユキちゃん、テフヌト様、ホルス様、ベアト姉さま・・・。
そして僕の半身のオクタヴィア。
僕の人生はまだまだお祭り騒ぎが続きそうだ。
「それで、オレが裏の黒幕的存在って言うことでトーマたちをまとめあげるっていう感じでどうかな!?」
「それでは前と変わらないだろうが、大バカ者が!」
もみくちゃになって、しわくちゃになって笑って、バカなことを言い合ってー。
玉座の間から広がる青空は、どこまでも晴れ渡っていて、青くて、綺麗だった。
きっとこれから先、どんな苦難が待ち受けていても、きっと今日見た青空を思い出せば何度でも乗り越えていける。
「トーマ、これから飲みに行こうぜー!!姐さんのおごりで!!」
「女王にたかるとはいい根性だな、お前ら、今すぐに処刑したろか」
「ストップ、ストーップ!!」
「みんな逃げるでー!」
「トーマ、ほら、いくわよ!!」
「はい、今行きます!!」
そう、きっと大丈夫。
魔法裁縫師の反逆譚~最凶最悪の傭兵団のお姉さんたちに雇われたので、世界を支配しようとする勇者軍に1000倍返しで報復します!!~
~完結~
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!!
本編はこれで最終回を迎えましたが、この後、もう1話だけ投稿したいと思っております。
村づくりを新たに始めることになった斗真たちの10年後の物語を予定しております。
約2年間、本当にお付き合いいただきありがとうございます!!
そして今後ともよろしくお願いいたします!!




