第十五話「最終決戦・VSセルマ①」~彩虹の戦乙女、最後の戦い⑮~
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【三人称視点】
玉座の間に現れた、白金色の光を輝き放つ甲冑に全身を包んだ騎士に、レベッカたちやセルマは口をぽかんと開いたまま、唖然としていた。
顔を仮面で覆い、左目の赤色の瞳と右目の青色の瞳、そして神秘的なまでに美しい金髪をなびかせているこの騎士は、斗真と桜が合体した姿だった。
左手には巨大な大剣と化した霊剣テフヌトが握られて、右腕には巨大な砲門がついた霊盾ホルスを装着している。そして、騎士の身体が光り出すと、彼の背中から極彩色の光を輝き放つ七対の翼が大きく広がった。
「・・・ジークフリート・・・ですってぇ・・・?」
『そうだ。貴様も魔術師の端くれなら耳にしたことはあるだろう。勇者の持つ聖なる力と、魔王の闇の力、二つの相対している力を司る伝説の騎士の名前をな』
『この世界が滅亡の危機を迎えた時、聖なる力と闇の力、二つの力を一つにして、悪しき存在を消し去り、再び世界に光を照らす使命を持つ気高き騎士。勇者サクラと、魔王トウマは、その資格を得た。そして、貴方をこの世から永遠に消し去るために、覚醒したのです』
テフヌトとホルスがセルマに説明すると、セルマの表情がどんどん驚愕で強張っていく。血の気が引いて真っ青になり、身体中が震えだし、冷や汗の玉が身体中から噴き出す。
「・・・世界の均衡と平和を守るために作られた、光と闇の力を司る伝説の騎士・・・それがあの二人だった・・・ですって!?」
『魔法闘衣を作り出すことが出来ることが何よりの証拠じゃ』
『ええ、魔法闘衣は着た者に魔法能力を授けることが出来る強力な魔法兵器。しかし、その魔法闘衣を作り出すことが出来るのは、裁縫魔法を極めた裁縫師であっても1億人に一人出るか出ないかとも言われているのです』
『そして、七大魔王の力を完全に引き出すことが出来るほどの強い魔力を宿した魔法闘衣を作ることが出来るという時点で、この二人こそがジークフリートの魂を現世に降臨させるために必要な媒介となる『魔法闘衣』を作り出すことが出来る、選ばれし存在だったというわけじゃ』
『トウマ様とサクラ様、彼らこそが新しく選ばれたジークフリートの魂を受け継ぐにふさわしい魔法裁縫師なのですよ』
「・・・えーと、つまりそれって、とにかくスゲーってことか!?」
「頭の悪いお前らには、それだけで十分だろうな。そして、あのセルマを思い切りブッ飛ばすことが出来るのも、アイツらだけというわけさ」
「・・・・・・そこまですごい能力を持っているトーマを追放するとか、マジでバカだろう」
「まあ、クロス王国の手に落ちんかっただけ、まだ良かったんとちゃうか?結果オーライや」
「つくづく、クロス王国の人を見る目のなさやバカさ加減には感謝しないといけませんわね~」
周囲から自分を含めた、クロス王国のあまりにも愚かな所業を責められて、セルマの頭に一気に血が上った。
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!そんなものなど、所詮は伝説の存在!!お前たちを倒してしまえば、私が世界を救った英雄になれる!!私がなるんだ!!そして、世界で最も優れている英雄になるのは、この私だ!!」
『うるさい』
セルマが悪鬼のような表情になって怒鳴り散らしていると、いつの間にか目の前までやってきていた白金の騎士がセルマを殴り飛ばした。杖で防ぐ間もなく、強烈なパンチをもろに喰らったセルマの身体が吹き飛び、壁に思い切り叩きつけられた。
「・・・ごがっ・・・この・・・クソガキがぁ・・・!!」
折れ曲がった鼻から大量の鼻血を垂らしながら、怨嗟に満ちた声を上げて、セルマが杖をかざすと無数の火炎弾が現れた。そして、一気に白金の騎士目掛けて放つ。
しかし、四方八方から飛んできた火炎弾を、白金の騎士は右手の盾で防いだ。
『この程度?』
そういうと、大剣の刃に激しく燃え盛る火炎が現れた。
『憤怒の火炎!!』
大剣を振るうと、セルマが放った火炎弾の倍以上はある大きさの火炎弾がセルマに向かって放たれた。セルマが杖をかざして防壁を発生させる魔法を発動するが、憤怒の大罪の力を宿した火炎は防壁では防ぎきることは出来なかった。斗真と桜の怒りを実体化させたような真っ赤な炎は、セルマの全身を飲み込んで、一気に爆発した。
玉座の間どころか、城全体が震えるほどの衝撃。
セルマは魔法で防ぎきれずに、身体中が真っ黒に焼かれた姿で地面に転がっていた。
「・・・がはっ・・・ごほっ・・・!?」
「マジかよ!?オレの火炎魔法も効かなかったはずなのに!!」
「なるほどな、この力が伝説とまで謳われた騎士の実力というわけか」
『・・・英雄になりたい?だから事件を起こして、自分たちで解決したように見せて、世界中から認めてもらおうとしたの?そんなの、絶対に間違っているよ』
斗真と桜の声が重なり合っているような中性的な声で、セルマの愚かさを説く。
『自分が起こした事件を自分で解決して、自分以外の人間を排除して、自分にとって都合のいい世界を作り出そうとしても、所詮はただのごっこ遊びでしかないね』
「・・・ごっこ遊び・・・ですってぇ・・・?」
『幼稚過ぎるんだよ、お前の遊びは』
『自分一人だけが楽しければそれでいい。そのためなら平気で事件を起こして、人の命や人生を奪って、世界中の人たちを騙して、何が英雄だよ。そんなのが英雄なんて、僕は絶対に認めない」
『ガキそのものだぜ。いや、ガキの方がまだマシか?自分がやっていることに対して、責任っていうものがまるでないんだからな。年ばかり食って、人間としての心や道徳っていうものを忘れちまったか?』
「・・・ううう・・・黙れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
セルマが吼えて、再び杖をかざすと無茶苦茶に電撃を放ちまくった。部屋の中で縦横無尽に飛び交う電撃は狙いを定めなかったせいで、壁や天井を破壊しまくる。
「アレクシア、結界を頼む!!」
「ええ!!」
アレクシアが結界を展開するのを確認すると、白金の騎士は背面を蹴り飛ばして、セルマに向かって猛然と駆け出した。襲い掛かる電流をかわしながら、セルマを射程範囲に捕らえる。
「ひぃっ・・・!!」
そして、大剣を素早く振りかぶりー。
『これで終わりだ!!』
セルマの身体を思い切り袈裟懸けに切り結んだ。
「ごはっ・・・がはっ・・あああ・・・!!」
松本千鶴だった女性の表情が激しく歪み、口からごぼごぼと大量の血液を吐き出しながら、上半身と下半身が切り離された。地面に倒れこみ、彼女の身体が見る見る真っ白な石像を思わせるような姿へと変わっていく。
「こ・・・これで・・・終わりだと・・・思うなァァァ・・・!!」
そう言って、松本千鶴だったモノは完全に生命活動を停止させた。
真っ白になった千鶴の身体が粉々に砕け散り、粒子となって風に吹かれて消えていった。
「・・・これでやったのか?」
『・・・いや、まだだ。足元から、ものすごい強い魔力の気配を感じる!』
「避難するよ!!」
ヴィルヘルミーナが取り出した転移魔法陣で全員の姿が消えた瞬間、ついに限界を迎えた玉座の間が崩壊した。大量の瓦礫が降り注ぎ、耐え切れなくなった城の城壁の一部が崩壊すると、次々と城が崩れ落ちていく。
かつては世界中から英雄の国と謳われていたクロスのシンボルが、見る影も形もなくなった。
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ヴィルヘルミーナが移動したのは、高台の上にそびえ立っていたクロス城の麓にある国民広場だった場所だ。ここは奇跡的に被害が少なかったようだ。アンデッド化した市民の姿もない。
「・・・城がなくなっちまったな」
「だが、この揺れはさっきから何だというのだ?」
さっきから、地面が、王都全体が激しく揺れているのだ。
その揺れの正体が、崩れ落ちたクロス城から感じられる得体のしれない気配が元凶だと、白金の騎士が言った。
『本体の心臓は潰した。千鶴の肉体も消滅した今、依り代になる身体はもうないはずだけど』
「・・・いいえ!!まだありますわ!!町中にあるアンデッドになった市民たちの身体を利用すれば、セルマは何度でも復活する!!」
「でもよ、アンデッドならすぐに倒せるんじゃねえのか?」
『一体や二体、ならね』
その時だ。
突然クロス城があった場所から、思わず吐き出しそうになる悪臭が風に乗って流れてきた。
そして、クロス城があった場所から、クロス城よりも遥かに大きい、黒い物体がいつの間にかあった。
その物体は、まるで巨大な何かの塊のようにも見えた。
「うっげ、何だよ、この匂いは!?」
「これは、腐った肉の匂い・・・!!」
「・・・・・・まさかアイツ、苦し紛れに町中のアンデッドの肉を吸収して、自分の肉体にしたのか!?」
『・・・どうやらこれからが本当のクライマックスのようだね』
肉の塊は見る見る巨大な脚をいくつも生やした、見るもおぞましい醜悪な化け物の姿へと変貌を始めた。
無数の人間の死体を無理矢理混ぜ込んだような不気味な肉の塊の腹の部分からは、巨大な口が現れた。無数の牙を生やし、おびただしい量の涎を垂らしながら、目につく城の瓦礫を貪り食らっている。
そして、チョウチンアンコウの触角を思わせるようなものが飛び出すと、その先端にはセルマの身体が飛び出した。生前のセルマの面影を残した彼女の本体は、全身が真っ白な彫刻のような皮膚へと変貌し、血のように赤い瞳を爛々と輝かせて、視線はこの世の全てのものを見下すような傲慢さに満ちていた。
『・・・セルマ・ティアマット。アンタをこの世界から排除する』
そう言って、白金の騎士が目にも止まらない速さで駆け出していった。
次回、セルマとの最終決戦を迎えます。
最終回まで残りあと3回・・・頑張ります!!




