第十三話「真実③~彩虹の戦乙女、最終決戦⑬~」
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【斗真視点】
松本さんが、もうすでに死んでいるだって・・・!?
セルマの言葉に、僕は一体彼女が何を言っているのか分からなかった。
「・・・魂を食うことで、能力を自分のものとして取り込むことが出来るのが【能力捕食】の能力だけど、能力者よりも魔力が高かったり、精神力が強かったりした場合、取り込んだ能力者の意識に魂を侵食されて乗っ取られるっていうきわめてリスクが高いデメリットがあるんですわ・・・」
アレクシアがセルマを睨みつけながら、忌々しそうに話し出す。
「・・・セルマ、テメェ、その勇者の身体に取り込まれた時、逆にその勇者の魂を乗っ取って、自分の身体に取り込んだってわけか」
「ええ、ええ、ご名答だよぉ。あの勇者、私の魂を喰らって強くなろうとしたみたいだけど、元勇者であるこの私を取り込むことなんか出来るわけねェのになぁ。まあ、その前からアイツは自分の仲間を何人か襲って喰っていたから、それが上手くいったから、私が相手でもうまくいくだろうとタカをくくっていたんだろうけどね。昨日の今日に勇者になったばかりのガキに、私が負けるわけがねぇだろが」
バカなヤツ、とセルマは醜く笑いながら松本をなじる。
桜はセルマの言葉を聞いて、表情から血の気が引いて真っ青になっていた。いくら僕たちに散々ひどいことをしてきたとはいえ、桜にとっては生まれて初めて出来た彼女である松本がそんな悲惨な最期を遂げていたなんて、想像さえしていなかったことだろう。
「アイツの身体に取り込まれて、逆にアイツの魂を取り込んで支配していくうちに、どうしてあの女が世界を滅ぼそうとしているのか、その理由も分かったよ。アイツが世界を滅ぼしたいのは、世界を救済したいからなんかじゃない。自分が犯してしまった罪から逃げるためさ」
「・・・アイツが犯した罪?」
「サクラちゃんなら知ってるんだろう?アイツが子供のころ、自分の家族を手にかけちまったことを。病気で苦しんでいる祖母を助けたい一心で、彼女は”死ねば楽になれる”という言葉を真に受けて、祖母を苦しみから解放させるために、祖母を手にかけた。自分たちの行いが原因で不幸に苦しみ、自分自身を傷つけて、悩み苦しんでいる家族を救いたくて、家族を全員手にかけたことも」
セルマは、蔑むように暗い笑みを浮かべる。
「くっだらねぇよなぁぁぁっ!?彼女はそれしか分からなかったんだ!!自分で考えることをしようともしねぇし、一度自分が信じたこと以外の意見を聞こうともしねぇ!!でも、心のどこかでは自分が家族を手にかけてしまったということだけは現実として受け入れていた。それを必死で認めたくないばかりに、世界を滅ぼして全てをなかったことにしようと思っていたのさ!!」
ギャハハハ、とセルマが狂ったように笑い出した。この世で、ここまで悪意と負の感情に満ちた笑いを見たことはない。あまりにもおぞましくて、吐き気を催す。
「自分が一度でも間違っているなんて受け入れちまったら、家族を殺した人殺しになっちまうもんなァ!?それだけは絶対に嫌だったんだとよ。あくまでも自分は、人間や世界を悲しみや辛いことから救う英雄であり続けたいと思っていたんだと!!それ以外に縋り付くものがなかったんだとよ!!元カレのサクラちゃんよぉ、アンタじゃ結局彼女のことは救えなかったってことさ!!だって、アンタがいくら真剣に彼女のことを考えていたとしても、コイツはそんなこと、一切望んでいなかったんだからな!!」
世界を救いたい、その為に世界を破壊する。
その願いは、彼女が自分が犯してしまった罪から必死に逃げるために、自分自身の行動を正当化するために言い聞かせていたことだったのか。自分は間違っていない、間違っているわけがない。そうやって自分自身さえも誤魔化さなければ、彼女は自分の心を保つことさえも出来なかったというのか。
「・・・アンタのことを、このガキは疎ましいと思っていたみたいだぜェ。いつも自分に優しくしてくれたり、気にかけてくれたりされても、ただもしかしたら誰かとお付き合いでもすれば、もしかしたら自分のこの苦しみや悩みを打ち明けられるかもしれない、なんていうただの気まぐれ程度で付き合おうと思っただけなのにさぁ、アンタが思ったよりもずっと優しくしてくれるから、もうとにかくウザかったみたいねぇ。アンタが仲間を失った時も、わずかに残っていた魂の残骸が喜んでいるのを感じたわ。とんでもねぇクズよね」
桜の目が大きく見開かれる。
しかし、僕だけだろうか。桜の身体の震えが止まったような気がするんだけど。さっきまで感じていた動揺している様子が、少しだけ収まったような・・・。
「アンタが仲間を失った時に泣き崩れた姿、絶望に打ちひしがれた姿、このままくたばってくれねぇかなぁ、なんて期待していたんだけどさァ~。まあ、アンタも尻が軽いったらないわよねー。自分が殺そうとしていた相手に命を拾われて、あっさりと奴隷として仲間に加わるんだから!!クズの女にはお尻が軽いコウモリ野郎なクズがお似合いだと思っていたけど、そんなクズにさえフラれるんだから、アンタって、人間として生きる価値があるのかしらねぇ?」
はあ?
コイツ、今、桜のことをバカにした?
ああ、もう、これ以上話を聞いてやる理由なんてなかったわ。何、間抜けにコイツの胸糞悪い話を聞いているんだろうか、僕たちは。
僕が動こうとした時、僕の腕を誰かが掴んだ。
それはレベッカだった。
どうして!?あんなヤツ、もう生かしておくわけにはいかないのに!!1秒でも早くコイツの存在を無に還さなけりゃいけないのに!!
しかし、レベッカは真剣なまなざしで、必死で僕が飛び出すのを止めている。いつもなら彼女が我先に飛び出すはずなのに、どうして・・・!?
「なあ、お前、それならどうしてそいつの身体を乗っ取って、そいつのふりをしてこんなバカな計画たてやがったんだ?コイツの世界を滅ぼす理由には、お前が賛同する理由なんてねぇんだろうが。それとも、騒ぎを起こすことこそが、本当の理由ってことか?」
「・・・全く、これだからテメェのことは一番大嫌いだっただよ。普段は馬鹿なくせに、こういう時に人の心を覗いたかのように言い当てやがる。その血走った赤い瞳が、私を勇者と敬わない無礼な態度とか、昔から大嫌いだったわ」
「あっそ、オレもお前が大嫌いだったんだよなぁ。今じゃ、どうでもいいけどさ」
「どうでも、いい・・・?」
セルマが、呆気にとられたような顔になった。レベッカは髪の毛をかきあげて、気だるそうに答える。
「憎いとか、恨むとか、そういうのって自分が少なからずとも認めた相手に対してやることだろう?何て言うか、今のお前、ものすごくダッセーわ。なんかこう、冷めたっていうかさぁ。もうさっさとぶち殺すなり何なりして終わらせてぇわ。さっさとトーマとイチャイチャしてぇわ」
「・・・奇遇だな。私もなぜこのような下等で愚かなクズのことを恨んでいたのか、300年分の恨みつらみなどもはやどうでもよくなったぞ。堕ちるところまで堕ちた元勇者なんかのことなど頭の片隅に置いていた自分自身がアホみたいだ」
アイリスまで、呆れたように肩を大きくすくめる。
「ど、どういうことなの・・・?」
「トーマちゃんとサクラちゃんにはまだ分からないみたいですわね~。私たちは、まあ300年前にそれなりにお付き合いがあったから何となく分かってしまうんですけど、まさかこんなくだらないことのために、異世界を巻き込むなんて・・・全く300年前からやることが全く変わってねえな。マッチポンプしか芸がねえのかよ、このバカ勇者が」
どういうことなの!?
僕と桜は、レベッカたちが何を言っているのか分からず、顔を見合わせる。
その時だ。
ドオオオオオオオンッ!!!
「なっ!?」
セルマの足元の床に亀裂が生じて、床から何かが思い切り飛び出してきた。とっさにセルマが飛び避けて長槍を身構えると、そこから二人の影が飛び出して、目にも止まらない速さでセルマに向かっていく。
立ち込める土煙の中、飛び出してきたのは・・・!!
「「くたばれや、ゴルァァァァァァァッ!!!」」
「ミーナ!?」
「オリヴィアさん!?」
僕と桜が叫ぶと同時に、セルマの顔面にヴィルヘルミーナさんの蹴りと、オリヴィアさんが突き出した渾身の槍の突きがセルマの胸に深く突き刺さり、勢いよく吹き飛ばされていった!!
身体を何度もバウンドさせながら、セルマは崩れ落ちそうな城の壁に全身を叩きつけられて、出来の悪い壁画のような無残な姿を晒した。ヴィルヘルミーナさんはみつあみがほどけて、腰まで伸ばした紫色のロングヘアをなびかせていた。オリヴィアさんも縛っていた髪がほどけて、無造作に髪がばらついていて、着ていた服もボロボロになっていた。
「・・・・・・私もいるぞ!」
「全く、無茶しないでよ、本当に・・・」
「・・・・・・せめて一発目は私に譲ってほしかった」
さらに穴から出てきたのは、ボロボロになった二足歩行の魔法兵器に乗り込んだビビ姉とニナだった。二人も満身創痍・・・至る所に擦り傷や痛々しくはれ上がったところが目立つ状態になっていた。
「ビビ姉!!ニナ!!」
「・・・・・・トーマ、お姉ちゃんはがんばってきたぞ。一杯お仕事をしたぞ。このお礼は、今夜は一晩中寝かせないということでオッケー?」
「ノンブレスで訳の分からないことを言うのはやめて」
「・・・・・・簡潔にまとめて言うと、子づくモガモガ」」
「そんなことを言っている場合か、空気を読みなさい、このバカ」
ニナがビビ姉の口をふさいでくれた。ナイスだ、この緊迫感が一瞬でパーになるところだった。そして、ニナがセルマを冷たい瞳で見下ろしながら、両手を腰に当てて話しかける。まるで馬鹿にしているようにも見えた。
「久しぶりねェ。まさかそんな姿で会えるとは思っていなかったけど、アンタ、また私たちを利用して自分が英雄になろうと思ったんだろうけど・・・それももうおしまいよ」
「・・・え?」
ニナの言葉の意味が分からず呆然とつぶやくセルマに、ニナとビビ姉がこれ以上なく意地の悪い笑みを浮かべた。
「アンタの計画はもう全部おしまいだって言っているのよ」
世界を滅ぼしたいのは、自分の犯した罪から逃れるために・・・。
これが松本が世界を滅ぼそうとしていた理由です。現実逃避のために世界を滅ぼそうとしていた。
そして、そんな松本の思惑を利用してセルマが思いついた、今度の事件の目的が次回明らかになります。
そして次回からザマァパートが始まります!!




