第十二話「真実➁~彩虹の戦乙女、最終決戦⑫~」
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【斗真視点】
頭の中が不思議なくらいに落ち着いている。
ステップを踏みながら、脚全体に魔力を溜めていつでも飛び出せるように呼吸を整えて、狙いを定める。
首の骨が変な方向に俺て、こっちのことを呆然と見ている”敵”に対する感情なんて、もうない。
「・・・貴方とは、この異世界に召喚されたときに、少しだけ会ったばかりですけど、まさかここまでひどい目に遭わされるなんて思いもしていなかったよ」
「・・・え?」
僕は、そいつが僕の言葉を聞いた瞬間、一瞬だけ驚いた表情になったのを見逃さなかった。そして、唇の端がゆっくりと吊り上がり、得体のしれない不気味な笑みを浮かべていくのを見て、確信した。
僕の直感が間違っていなかったことを。
「どこかで感じたことのある魔力だって、不思議に思っていた」
それは、アイツと対峙した時に感じたものではなかった。
その魔力を感じたのは、この世界に召喚されたときに感じたものだ。
全身の鳥肌が立つような、異様な怖気にも似た気持ち悪い感じの何か。
「松本さんの能力を知った時、どういう魔法なのか、調べていた。その魔法には、一つだけ、大きな欠点があるってことに気づいたんだ」
松本の魔法能力【能力捕食】。
魔法能力者を取り込み、自分の能力として使用することが出来る禁忌の魔法。
その能力には、一つだけ欠点があった。
自分よりも魔力や精神力が高い存在を取り込むと、反対に乗っ取られるというものだ。過去にこの能力を使用して、逆に取り込んだ相手に意識を乗っ取られて破滅した能力者もいるらしい。
「本来、アンタにとっては松本さんが反乱を起こすなんて想定外の事態だっただろうし、松本さんに取り込まれるなんてこと、予想していなかったんだろうな。でも、アンタは松本さんに取り込まれた後でも、ずっと松本さんの中で消えずに済んだんだ。そして、アンタはある考えを思いついたんだ」
僕がこれまでに、アイツのことを考察し、レベッカたちから聞いていたアイツの話を掛け合わせて、どういう人物像なのか、松本の力を利用して何をやろうとしているのか、自分なりに考えてみた。
「・・・アンタは、この事件を引き起こして、もう一度英雄として世界中にその名を知らしめたかった。かつて、クロス王国を壊滅させようとしていたという濡れ衣を着せて、レベッカたちを罪人として封印した時のようにね」
アイツの表情が、わずかに動いた。
「・・・世界を破滅させるつもりなんて言ったら、確実に僕たちが邪魔をしに来るだろうと踏んでいただろうね。ましてや、僕を殺した後だったら、レベッカたちが報復をしないわけがない。そこで、僕が虚無の魔王として復活して、魔神を全員封印したことで、アンタにとっては予想外の反撃が続いた。でも、アンタは頭の切り替えが早いというか、それを利用することを思いついた」
彼女は動じない。
しかし、口元に笑みをわずかに浮かべていた。
大当たりだったようだ。
「アンタは今度は、僕を取り込もうとしている。そして、虚無の魔王の力も取り込もうとしている。そのために、世界を消滅させるための魔法を発動させようとしている。そんな魔法を止めるためには、こっちもかなりの量の魔力を消費することを予想してね」
そう、現在の状況は彼女にとっては追い込まれているようで、実は一番ついている状況と言っても過言ではない。
自分の計画を邪魔する相手は、僕たちが倒すか、もしくは自滅し合っていなくなった。
虚無の魔王として復活し、七大魔王の全ての力を司る僕という存在が現れた。
そして、先ほど彼女が差し向けた敵との戦いで、僕たちは体力も魔力もかなり消費している。
松本が行っていた儀式の本当の狙いは、世界を消滅させるためなどではなくて。
「・・・おい、それって・・・!?」
「・・・まさか、アイツは・・・!?」
その時だった。
後ろから、誰かが歩いてくる足音が聞こえた。
「・・・その通りだ、トーマ。私のこの【眼】でコイツの正体がやっと見えた」
振り返ると、そこにはボロボロになったシスター服を身に纏い、アレクシアさんに肩を預けながら歩いてきた、アイリスの姿があった。アレクシアさんも杖を突きながら、同じくボロボロになった白衣を身に纏っている
「ルシア!アイリス!!」
「ったく、団長よぉ。こういう時に、テメェのいつもよく利く鼻が真っ先に気づいて欲しかったぜ。まあ、周りがこんなにもむせ返る胸糞悪い匂いで満ちているから、仕方がありませんけどね」
「・・・レベッカ、喜ぶといい。コイツは、私たちにとっても絶対に許しがたい、一発ぶち込んでやりたいと思っていたヤツだ」
「生き返らせてもう一度殺してやりたいと思っていましたけど、まさかこんな形で生き延びているとは夢にも思いませんでしたわ~」
「・・・なるほど、全ての事象や魔力の正体を見通す傲慢の魔王【ルシファー】の魔眼ですか。そこまでの力を持っていたとはね」
そして、アイリスがその人物の名前を口にした。
「久しぶりだな、”セルマ”」
「・・・ええ、お久しぶりです。目障りな虫けらたち」
300年ぶりの再会。
かつて、レベッカたちを封印して、300年間も閉じ込めてきたかつて世界を救った英雄の一人。
【魔】の勇者こと【セルマ・ティアマット】が松本の姿で、ニィっと狂気に満ちた美しい笑みを浮かべていた。その声色は間違いなく松本のものじゃない。
「・・・まさか、そこまで見破っていたなんてね。カジ・トーマ。貴方のことを正直見くびっていましたわ。貴方こそが私にとっての最大の敵であり、新たなる最高の依り代となるにふさわしい人物だったなんて、召喚した時には夢にも思っていなかった。ただの根暗な子供でしかないと思っていたのに」
セルマは、クックッと顔を掌で覆って笑い出した。
「・・・ああ・・・こうして思い出すだけで・・・おかしくておかしくておかしくておかしくておかしくて、私が私じゃなくなりそう。貴方のせいで、長年仕えていた国王にはゴミでも見るような目で見下されて、地下牢に入れられて、こんなクズ女に魂を食われて・・・それもこれもどれも全部、全部ぜんぶゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブ・・・」
そして、いったんピタッと動きが止まると、彼女はゆっくりと顔を上げた。
「ゼンブ、テメェの、せいだァァァァァァァァァァァッ!!!」
目がこぼれ落ちそうなほどに見開き、血走った瞳で睨みつけながら、セルマが悪鬼のような醜い表情で吼えた。ありとあらゆる負の感情のみをごちゃ混ぜにしたような、理性を一切感じさせないバキバキにキマった顔は、人間であることさえも疑わしかった。
「ああ・・・痒い、かゆい、カユイ、かゆい、カユイ、痒い・・・。虫が、私の身体の中を這いずり回っている。早く、貴方を殺して、魂を食わないとこのかゆみが収まらないわ・・・!!私は魔の勇者セルマ・ティアマット。勇者に歯向かう愚かなクズには制裁、せいざい、セイザイしなくちゃ・・・!!」
「・・・おい、コイツ、マジでぶっ壊れてねーか?」
「はっ、かつての勇者も随分と落ちぶれたものだな」
「・・・ちょっと待てよ?」
そこで、桜が真っ青な顔で、セルマに話しかける。
「・・・千鶴は・・・・アイツは一体どうなったんだ・・・?」
桜の声は震えていた。
かつての恋人だった桜にとっては、一番考えたくない最悪の答えが思い浮かんでいるのだろう。
そして、セルマはぴたりと身体の震えを止めると、感情を感じさせない虚無の表情になって、どうでもよさそうに答えた。
「ああ、チヅル・マツモトですか?彼女は・・・もうとっくに死んでいますよ」
次回、セルマの口から語られる残酷な真実に、桜は・・・?
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