第十話「傲慢と暴食、最後の戦い②~彩虹の戦乙女、最終決戦⑩~」
新作を書き上げるのに、遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
遅くなってしまいましたが、書き上げることが出来ました。
どうぞよろしくお願いいたします!!
【三人称視点】
(何かが、おかしい)
一度感じた、小さな違和感が胸の中でどんどん大きくなっていき、不安に変わっていく。こうした違和感を一度感じ始めてしまうと、焦りとなって、それが命取りになってしまうことなど、十分分かっている。
それでも、この違和感はどうしても消えない。
しかし、それはあまりにも間抜けすぎる、何をいまさら言っているのかと思えてしまうものだ。他の仲間がこんなことを言い出したら、すかさずツッコミを入れているところだ。
傭兵団の中でも唯一の常識人であることを自認している(実際はあまりそうでもない)アイリスも、自分自身の考えに戸惑っている。
(私は一体、何と戦っている?)
(一体コイツは誰だ?)
空を泳ぎ回りながら、電撃を放ち、自分自身を躍起になって追いかけてくる異形の化身、かつて自分たちを罠に嵌めて、300年間の封印という素晴らしいプレゼントをくれやがった憎き仇敵の姿をした、それにアイリスは疑問を感じていた。
(本当にコイツは、あのセルマなのだろうか?)
(見た目は確かにセルマだが、魔力の量も、質も、いささか劣化しているような気がする。いや、コイツからは、自分たちが知っているあの底意地の悪さや悪意に満ちた魔力のオーラというものが、まるで感じられん)
(まるで、アイツの魔力を切り捨てただけの、取るに足らない、人形のような存在にしか感じられん)
セルマにしては、あまりにも弱すぎるのだ。
自分たちをかつて追い詰めることに成功した、外なる神と呼ばれる侵略者を倒し、世界に平和をもたらすことに成功した伝説の勇者の一人は、自分が知っている人間の中でも最も狡猾で残忍で冷酷で、身勝手で自分本位などうしようもないヤツだが、膨大な魔力と豊富な知識、魔法を扱う技術だけは本物と認めざるを得ない存在だった。
それが今、目の前にいるはずなのに、まるで違う他人を見ているような気分だ。
(まあ、とりあえずは、あのデカブツをどうにかしなければ話にならないか)
左目の眼球に魔力を集中させると、眼球がフクロウを模した紋章に変わり、魔力を一気に解放する。全身から黄金の光を放つ電流を解き放つと、上空に目掛けて無数の電撃を放った。
「傲慢の魔王と呼ばれる所以を、今から教えてやろう」
ニィっと冷たく唇の端を釣り上げると、徐々に城に暗い影が差し込んできた。
クロス城の上空には分厚い漆黒の雲が現れると、太陽の光を遮り、辺りが夜のように真っ暗になる。
そして、まぶしい光が一閃、迸る。
「私たちに歯向かうことがどれだけ愚かなことか、身をもって思い知るがいい」
アイリスが背中から翼を広げて、真下に群がる死者たちの行進を見下して嘲り笑う。彼女の背負う大罪を現すかのように、彼女には彼らの存在などまとわりついてくる邪魔な虫程度の存在としてしか認識しなくなっていた。
傲慢の大罪が最高潮に達した時、クロス城の上空には巨大な物体が雲をかき分けて現れた。
それは、まるで空に浮かぶ巨大な”塔”のような荘厳なものだった。
その塔らしきものは、周りについている巨大な孔雀の羽のようなプロペラが回転しており、それで上空に浮かんでいた。まるで、下界を見下ろす傲慢な支配者であるかのように君臨している。
羽の紋様がまるで自分以外の全ての存在を見下すような目にも見えた。
そして、アイリスが両手を合わせて、両膝を地面に跪くと、静かに瞳を閉じた。
それはまるで祈りを捧げるかのような、敬遠なシスターそのものだった。
「お前たちの命、悪しき闇の束縛から解放してやろう。そして、この地に住みつく全ての事件の黒幕に、大罪の魔王から直々に裁きを下してやる。だから、大人しく眠りに着くといい」
羽に電流が集まり出し、バチバチバチっと電撃が迸り出す。
そして、勢いよく回転し、塔全体が青白く幻想的な光を放ち、輝きだした。
”魔法植物・断罪のダリア”。
アレクシアが魔法で生み出した巨大な塔のような形をした魔法植物型の魔法兵器は、アイリスの電撃の力を得ることによって真の能力を発揮する。アレクシアが生み出した魔法植物は光や雷の力を吸収して、強烈な破壊エネルギーに変えて、羽の紋様から無数の光線へと変換して解放される。
上空から放たれる無数の光線は、容赦なく地上にいるものたちを容赦なく焼きはらい、善悪関係なしに消滅させていく。慈悲など一切ない、傲慢と暴食の大罪に値する魔法兵器だ。
「行くぞ、ルシア!!」
『巻き込まれるんじゃねえぞ、副団長!!』
「『傲慢と暴食の雷光竜樹!!』」
アイリスとアレクシアの掛け声と同時に、羽がさらに勢いよく回転し、無数の電撃が地上に向かって解き放たれた。
建物を、地面を、人を、容赦なく降り注ぐ電撃の矢はあらゆるものを撃ち抜き、炎に包み込み、灰へと還していく。悲鳴を上げる間もなく、慈悲を乞う間も与えずに、死者たちは怨嗟の叫びを上げながら炎に焼かれて、冥府へと還っていく。
そして、無数の電撃の矢が上空を泳ぎ回っていたアヘリの身体を捕らえた。
頭部に、胴体に、次々と突き刺さっては爆発を起こして、アヘリが大きく裂けた口を開き、断末魔の絶叫を上げた。空気がビリビリと震えるような雄たけびも、雷の轟音にかき消されていく。
やがて、アヘリの全身が炎に包まれると、ついに力尽きたのか、空中で動きを止めた。そして、そのまま地面に向かって落下すると、ぐしゃりと鈍く嫌な音を立てて、地面が揺れた。
「・・・派手にやりやがったな、さすがは副団長様ってか」
目の前で、電撃の矢に撃ち抜かれて炎に包まれていく死者たちの姿を見て、アレクシアは感嘆する。
そして、アレクシアが電撃の矢の射程範囲外に移動すると、そこにアイリスが飛び込んできた。
「ルシア、無事だったか!」
「ええ、大丈夫ですわよ~。私に当てていたら、副団長の座を譲り渡してもらおうかと思っておりましたわ~」
「ああ、それなら一発ぐらいはお前に当ててやろうか。そうすれば、その腹黒い性格が少しは矯正されるかもしれないからな」
「ぶち殺されてぇのか、大バカ野郎」
さて、と一息ついてから、アイリスはアレクシアを暗がりに呼び込んで、真剣な表情で耳打ちをする。
「・・・今から私が話す話は、あくまでも私の想像に過ぎない。しかし、あの化け物が死んだ今でも、まだアイツの魔力の気配が消えない以上、考える限り最悪な状況が起きていると思われる」
「あらあら、随分と自信がなさそうですわね」
「私だってまさか、こんなことを口にしていることが信じられないさ。でも、あの化け物がセルマではないということだけは確かだ。正確に言えば、セルマの魔力の一部を切り取って作られた魔法生物兵器というところまでは、確かだ」
「副団長も感じていたんですのね、この違和感を」
「ああ、それを感じてから、これまでに起きてきたことを一度振り返ってみたんだがな、ある一つの仮説が頭の中に思い浮かんでしまった。これは明らかにバカげている、今までに起きてきたこと、私たちが倒すべき相手や、黒幕の本当の狙い、私たちが知っていることが全部ひっくり返るような話だからな」
一度感じてしまった違和感。
そして、遠い記憶を思い返し、これまでに起きた出来事を走馬灯のように流れていき、その中から不自然な点をいくつか見つけ出し、一度抱いてしまった違和感が間違いではないという思いが強くなっていく。
「結論から言うぞ」
-この事件の真の黒幕は、セルマだ。-
アイリスの衝撃的な発言、その真意は?
そして次回、傭兵団に激震が走る!?
次回もどうぞよろしくお願いいたします!!




