第十八話「レギオン~グリゼルダ・グレンヴィル~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回は3人目のメンバー、グリゼルダをお披露目いたします!
どうぞよろしくお願いいたします。
「グリり~ん!!久しぶりだな~っ!!会いたかったぜ!!」
魔石から解放された3人目の【七人の獣乙女】、グリゼルダさんにレベッカさんが満面の笑顔で抱き着いて、グリゼルダさんをもみくちゃにしている。
そんなレベッカさんを鬱陶しそうに押しのけながら、グリゼルダさんがため息をついた。
「・・・相変わらずその能天気さは変わらないのね。実に妬ましいわ」
「ニャハハハ♥お前、相変わらず妬ましいの使い方、微妙に間違えてんのな」
「ふん、これは私の口癖よ。ああもう、そういう天真爛漫な所が妬ましいわ」
「久しぶりだな、グリゼルダ。無事に会えて本当に良かった」
「ええ、アイリスも無事で何よりよ。改めて【七人の獣乙女】の隠密【グリゼルダ・グレンヴィル】、無事戻りました。私のことを見つけ出してくれて、本当にありがとうございます」
グリゼルダさんは膝をついて、恭しくレベッカさんに一礼した。
クールというか、すごく真面目で落ち着いているというか・・・彼女・・・すごくまともだ・・・!!
レベッカさんがこの傭兵団にはまともな人は一人もいないって豪語していたから、もしまた変な人だったらどうしようかと思っていたけど、どうやらその心配は杞憂だったようだ。
「・・・私の封印を解いてくれたのは、貴方かしら?」
「あ、え、はい」
「ありがとう。貴方が封印を解いてくれなかったら団長たちとこうして再会することも出来なかったわ。ええっと、ところで貴方は誰?その服装からすると、メイド・・・かしら?」
え・・・?
メイド・・・?
僕はその時、自分がメイド服を着込んでいたことにようやく気付いた。
しかもちゃんと下着もアイリスさんが買いそろえてくれた、女物の紐パンを履いていました。
ていうか、僕、このまんまで一国の女王様とご対面してしまったじゃないかっ!?
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーっ!!」
バカ!バカ!僕のバカ!!
どこの世界に国で一番偉い女王様の前に、男性なのにメイド服を着て出ていくバカがいるんだっ!?
あっ、そのバカって僕のことだ!!
終わった、梶斗真の人生これにて終了だ・・・!!
一国の女王様の前で男性がメイド服を着た姿で出ていくなんて、これ、下手すれば不敬罪だ・・・。
アハハハ、僕、女王様の前で間違いとはいえ女装をやらかして不敬罪で処刑されちゃうのかぁ。なんてお間抜けな人生だったんだろうか・・・。
「て、落ち着けぇぇぇっ!?何があった、トーマ!?どうしていきなり梁にロープをかけて首を吊ろうとしているんだ!?」
「放してアイリスさん!!もう僕は世界一恥ずかしい理由で処刑されるしか道が残されていない、ただの変態だったんだ!!」
「やめんかぁぁぁっ!!何を言っているのか、さっぱり分からないのだが!?」
「・・・ね、ねえ、あの子ってもしかして、情緒不安定なのかしら・・・?」
「アハハハ、なかなか面白いヤツだろ?あれ、オレたちの弟分で新しい仲間なんだ!」
「え?弟分?仲間?・・・ちょっと待って、えーっと、その、説明をしてもらえるかしら?」
こうして僕はアイリスさんとレベッカさん、ヴァネッサ女王に取り押さえられて何とか落ち着かせてから、これまでに起こったことを整理してグリゼルダさんに説明した。
「・・・・・・なるほどね。ていうか、この子がこんなことになったのって、団長とアイリスのせいじゃない」
グリゼルダさんは頭痛をこらえるようにこめかみを押さえて、深くため息をついた。
「何で?」
「意味が分からんが」
「・・・・・・あー、もういいわ。貴方たちにそもそもまともな常識とか感性とか求める方が無理だったわね。本当に昔と変わらず破天荒というか、何を考えているのか分からないと言うか・・・」
「そんな褒めるなよ~、照れるじゃねえか」
「褒めてねーし」
そして、彼女は僕の方を振り向いて緑色の瞳で僕をまっすぐ見つめて話しかけてきた。
「貴方も嫌だったならちゃんと嫌だってはっきりと言いなさいよ。この連中は自分の欲望にとことん忠実なんだから。言われるがまま、流されるがままじゃ本当にろくでもないことに巻き込まれるわよ。今度からはちゃんと自分の言いたいことは言いなさい」
「・・・はい・・・ごめんなさい・・・」
おっしゃる通りでございます・・・。
僕がしょげていると、グリゼルダさんがやれやれといったようにため息をついた。
「・・・ちゃんと自分の意思を伝えることは相手に対しても敬意を表すのよ。自分も相手も大切にしてお互いに言いたいことを言い合って何が悪いのよ。貴方はもう私たちの家族であり、仲間でもあるんだから。何を遠慮する必要があるのよ・・・バカじゃないの・・・」
「あ・・・!!」
恥ずかしそうに頬を赤く染めて、そっぽを向きながらグリゼルダさんが突き放すように言った。
でも、その言葉はすごく暖かくて、僕の心にしみこんでくるような気がした。
グリゼルダさんって・・・すごくいい人だ・・・!!
それに、すごく常識的でまともで、ちゃんとした意見が言える人だ・・・!!
「・・・ううう・・・えぐっ・・・ぐすっ・・・」
「ちょ、ちょっと、泣くことないでしょ!?私、何かキツイこと言っちゃった?」
「・・・い、いえ、その、嬉しさや色々な思いで胸がいっぱいになりまして・・・ぐすっ・・・」
「・・・そ、そう、何て言うか、貴方わずかな間に相当色々な目に遭ってきたのね・・・」
ええ、まあ色々とありましてね・・・!!
グリゼルダさんの僕を気遣う言葉が胸にしみます・・・!!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ところで、ヴァネッサ王。ここから西の方に離れた入り江の洞窟から尋常ではないアンデッドや死霊系の魔物の気配が感じられるわ。この辺りで最近夜になるとアンデッド系の魔物が出没したり、死霊を目撃したという話は出ていないのかしら?」
グリゼルダさんが尋ねると、ヴァネッサ女王が目を見開いて驚いたような顔になる。
「ああ、コイツそういう魔物の匂いがスゲエ敏感に嗅ぎ取れるんだよ」
「ええ、実はその辺りの海域に夜な夜な幽霊船が出没するようになったの。この辺りを覆い尽くす不気味な霧と共にその海賊船は海域に現れては、通りかかった商船や客船を襲っているのよ。幽霊船の正体を探るために調査隊を送ったのだけれども、みんな帰ってこなかったわ・・・」
「・・・・・・なるほどね。これでだいたい分かったわ」
「おっ、何か分かったのか?」
「団長、昨日の夜にスケルトンが王都に入り込んできたって言っていたわよね?それはどっちの方角からだった?」
「えーっと、確か、西の方だったと思うぜ」
「なるほどね。それならまだスケルトンの魔力の残り香が残っているはず。それなら私の魔法で追跡してみるわ」
グリゼルダさんの目が緑色の光を輝きだすと、彼女の影がひとりでに動き出した。
影がまるで意思を持っているかのようにグネグネと曲がりくねって、犬のような形に変わっていく。
「こ、これは・・・!」
「ああ、そうだ。グリゼルダは自分の影を実体化させて自在に操る影魔法の使い手だ。影はグリゼルダの意のままに動き回って遠く離れている場所にも潜り込み、気配を感じ取られることなく情報を引き出すことが出来るのだ」
影を操って、相手に気づかれることなく情報を手に入れる事が出来るって・・・すごい!!
「無影無踪・影魔法・犬の追跡」
グリゼルダさんが呪文を唱えると、犬がとぷんと床の中に潜り込みものすごい速さで走り去っていった。
「影には昨日目撃されたスケルトンと同じ魔力の匂いを感じ取れる場所を探してもらっている。見つけ出したらその映像と音声を投影して映し出す」
「つまり、あの影は小型カメラがついたドローンのようなものなんですか?」
「・・・どろーん、とかいうのは分からないけど、まあ、探し当てた目的の情報に関わるものをみんなにも見る事が出来るように映し出すことは出来るわ」
そういって、グリゼルダさんは右手の掌から黒い玉のようなものを生み出して、空中に浮かべる。
指を鳴らすと、そこには海岸線に水平になるようにしてものすごい速さで走っている影の視点から見える映像が映し出された。
「もうすぐ入り江の洞窟に着くわ。・・・あら?」
「どうかしたのか?」
「入り江の洞窟に誰かが近づいているみたいだわ」
これは・・・幕ノ内桜と確か同じクラスメートの【和田仁美】さんに【神谷麗音】さん?どうして、あの人たちがこんなところにいるんだ?
「何かを話しているみたいね。声を聞いてみるわ」
『・・・なあ、リーダー。本当にこんなオバケが出てきそうな薄気味悪い洞窟の中に鳳のヤツが逃げ込んだのか?』
『間違いない。この洞窟から桐ちゃんの魔力を感じるんだ。それに、洞窟の入り口にこんなものが落ちていたよ』
『・・・これは、鳳のスマホか?』
『おそらくこの洞窟の中に逃げ込んだ時に落としたんだと思う。夜になる前に早く桐ちゃんを探し出してここから連れ出さないとまずいことになる。今日は満月だ。【レギオン】の魔力も最大に高まってこれまで以上のアンデッドやスケルトンを生み出すと思う。あのシスターがかなり丈夫な結界を張ってくれたけど、もし一斉に大量のスケルトンやアンデッドが攻め込んだらあの結界でも防ぎきれるかどうか分からない。そうなったら、ブラオベーレはマジでヤバいことになる・・・!!それだけは絶対に阻止しなくちゃいけない』
「レギオン、ですって!?あの入り江の洞窟にそんなヤバい奴がいるっていうの!?」
ヴァネッサ女王が思わず大声を上げた。
「おい、レギオンってまさかあのレギオンかよ?」
「・・・自然で生み出されたものとは考えにくいな。しかし、もし本当にあのレギオンだとすれば、急にこの辺りでアンデッド系や死霊系の魔物が夜な夜な急に現れるようになったのか説明はつくな」
「・・・レギオンって、確か、悪霊の集団のことでしたっけ?」
「お前の世界にもレギオンがいるのかよ?その通りさ」
「しかし、レギオンはかつて死者蘇生の秘術の研究から生み出された闇魔法や影魔法が魔導師たちの間に普及した際に、レギオンの討伐と封印の方法を突き止めた古代の魔導師によって封印されていたはずだぞ?」
「・・・霊魂や死体を吸収して自分の一部に取り込み、本能的な食欲しか知能が持ち合わせていない生ける屍・・・ゾンビやスケルトンと言った魔物を無尽蔵に生み出して人間を襲い、襲った人間の魂を食らって自分の身体の一部として取り込んで成長すると言われている厄介な奴よ。危険レベルもSクラスに認定されているわ」
「どうして勇者軍があの洞窟にレギオンがいることを突き止めたのかは分からんが、そんなものがいる以上、放っておくことは出来ないな」
「よっしゃあ!そうと決まったらあの勇者軍よりも先にレギオンを見つけてブッ飛ばそうぜ!!」
「・・・どうして勇者軍よりも先に倒すことにこだわっているのよ?向こうが勝手にやってくれるならこっちが行く手間が省けてよかったじゃない?」
「ヤダ!アイツらなんかに先を越されてたまるもんか!大体、アイツらのことなんか大嫌いだし、正直アイツらが何でレギオンのことを知っていて、倒そうとしているのかすごく気になるじゃん!何か悪企みでも考えているのかもしれないだろ?」
「・・・どうしてそこまで勇者軍を敵視するのよ?」
「トーマが邪魔だからという理由だけで殺そうとするような連中なんて大嫌いだからだ!!」
「ああ、それだけでもう十分だ。私の可愛い可愛いトーマの命を狙っているばかりか、私たちの命までも狙っているらしい。そしてあの勇者たちを動かしているのはあのセルマならばなおさらだ」
「・・・・・・へー・・・・・・あのクソロリガキ、まだ生きていたのね」
グリゼルダさんの目つきが変わり、口調も低くてドスの利いた声に変わっている。
口元の端を釣り上げて、歪な笑みを浮かべてはいるが目は笑ってなどいなかった。
「・・・・・・300年前の恨みつらみ・・・・・・忘れもしないわ・・・・・・あのガキの裏切りのせいで・・・・・・私たちは300年間も魔石の中に閉じ込められていたのよねぇ・・・・・・?上等じゃない、あのガキの関係者なら誰だろうと構わない。どいつもこいつも、全員地獄に叩き落してやるわ。私の八つ当たりを甘く見るんじゃないわよ・・・復讐よ・・・きひひひひひひ・・・!!」
あ、この人も色々とアカン人だった。
顏の上半分を仮面で隠している忍者で、口は悪いけど面倒見はよく、小柄でむっちり系のロリ巨乳系のキャラクターにしてみましたがいかがでしたか?顔を仮面で隠している理由はこの章の間に説明をいたします。「妬ましい」が口癖で嫉妬深くてヤキモチ焼きな一面がありますが、基本的には斗真を気遣う唯一の常識人であり、仲間たちの暴走にツッコミを入れるストッパー的存在でもあります。斗真の中では「唯一の常識人」「この人がいなかったらこの傭兵団が終わる」とまで思われるほど信頼されております。
斗真の不幸が止まりません。
追放系の主人公で、追放された後もここまでトラブルに巻き込まれたり、ヒロインの女の子たちが全員性格が破綻しているというのもなかなかいないのではないでしょうか。斗真の女難と不運はまだまだ続きます。そのうちいいことがきっとあるさと願っていただけると幸いです。
次回、第一章のボス・レギオンとの対決に乗り込みます。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




