第八話「色欲と強欲、最後の戦い②~彩虹の戦乙女、最終決戦⑧~」
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【三人称視点】
ドーーーーーーン!!!
「うわあっ!?」
「な、なんだっ!?」
強烈な音と振動が列車全体を揺らし、斗真たちは思わずバランスを崩して倒れそうになったが、とっさに手すりなどを掴んで何とか態勢を整える。そして、振動と共に反響音が頭の中に飛び込んでガンガンと殴りつけてくる。
「ちっ、上からか!?」
「まずい、コントロールが利かねえ!!脱線するぞ!!」
超硬質の硬度を誇るオリハルコンで作られたボディにこれほどの強烈なダメージを与える事態など、完全に異常事態だ。さらに動力室に強烈なダメージを与えられたせいで、コントロールパネルは警告音を悲鳴のように上げて、点滅を繰り返している。桜が必死でハンドルや緊急停止装置を操作するが、もはや列車はパニックを起こしたかのように、言うことを聞かない。
このままでは脱線は時間の問題だ。
「ドアから脱出しよう!!」
一番先に動いたのはレベッカだった。
近くにあったドアを手動で開き、素早く飛び出すとそれに桜と斗真も続いた。
その後、コントロールを完全に失った魔砲列車は車輪から大量の火花をまき散らしながら、家や建物を軒並み吹き飛ばし、右に左に激しく揺れながら暴走し、ついには車両全体が横倒しになりながら稲妻のような衝撃音と火花を上げながら、王宮に向かって突っ込んでいき、外壁に突っ込んで破壊し、そのまま完全に動きを止めた。
列車の屋根には巨大な氷の塊がいくつも突き刺さっており、一番大きい塊は全長5メートル近くはあるだろうか。その氷柱がエンジンルームの分厚い装甲に深々と突き刺さっていた。これが魔砲列車に致命傷を与えたらしい。
静かだった。
かつては世界を救った英雄を生み出した国として、世界中から賞賛と羨望のまなざしを一身に受けてきた大国の末路は、あまりにもあっけなかった。肌寒い風と、人ひとり生きている気配のない、静寂に支配されてしまった王宮を斗真は見上げて、やり切れない思いに駆られる。
しかし、そこで、斗真が不意に笑みを浮かべた。
「桜、僕たちどうやらついているみたいだよ」
「え、それって一体」
どういうことだ、と言いかけて斗真の視線の先を見た瞬間、桜の表情が強張った。
そこにいたのは、長槍を手に、感情を感じさせない不気味な無表情の仮面を張り付けたような女性、この国を、いや、この世界そのものを地獄に変えようとしている死神”松本千鶴”の姿があった。その瞳には見る者の心を凍り付かせてしまうような憎悪と殺意、そして暗い怒りで渦巻いている。
「久しぶりだね、松本さん」
「・・・梶君、桜君、どうしても私の邪魔をしないと気が済まないのかな?」
千鶴は感情を読み取らせない無表情のまま、ぼそりとつぶやく。
しかし、その言葉からは明らかに斗真たちに対する底なしの憎悪と怒り、怨嗟に満ちていた。
「・・・まあね。この世界を君の勝手で滅亡なんてさせるわけにいかない。それに、君には散々ひどい目に遭っているからね。この下らない英雄ごっこを終わりにしてやろうじゃないか・・・1000倍返しでね」
「・・・千鶴、覚悟はいいか?俺のことを、恨んでくれても構わない。これが俺にとってもきちんとケリをつけなくちゃいけないケジメだ。しっかりとケジメをとらせてもらうぜ」
「どうしてわからないのかな!?生きていたっていいことなんて何一つないよ。みんな、生まれてから死ぬまでずっと独りきりで、苦しみ続けなくちゃいけないんだよ。それが運命なんだよ。そんな運命が間違っているから、間違っている世界を全部終わりにすることが、英雄として正しいことなのに!!」
「お前にいちいちそんなことを言われる筋合いなんてねえんだよ!!生まれてからずっと独り?死ぬまで苦しみ続けなくちゃいけない?へっ、生憎オレたちはそんな世界を毎日バカやって楽しみながら生きてンだよ。お前の価値観だけで、オレたちの生き方を勝手に決めつけて、終わりにする権利なんざねぇぜ!!」
レベッカが中指を立てて、千鶴を罵る。その瞳には激しい怒りの炎が燃え上がっていた。しかし、千鶴にはレベッカの声は届かなかった。
「・・・もういいよ、私は絶対に英雄にならなくちゃいけないから。みんなをここで殺してあげる。そして、私は絶対にこの世界を滅ぼして、真の英雄にならなきゃいけないから」
千鶴は水柱を噴き出してその場から姿を消すと、彼女の後ろにある扉が勝手に開いた。
「あの部屋は確か・・・」
「ああ、玉座の間の扉だ。あそこで、決着を着けようってことだな」
「よっしゃあ、行くぜ!!」
斗真たちは壁や瓦礫を飛び移って、玉座の間に繋がっている扉に向かった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「それじゃあ、手筈はいいかい?」
「ああ、いつでも行けるで!!」
オリヴィアとヴィルヘルミーナはまるでいつものように、飲みにいくような感じで笑みを浮かべながら、お互いに握りしめた拳を突き合わせた。
「死ぬなよ」
「そっちこそな」
ヴィルヘルミーナがカットラスを構えて、全身から紫色の魔力を帯びた風が吹き出す。そして、全身から膨大な量の魔力を一気に解放させると、彼女の身体から発する風はすさまじく吹き荒れる暴風と化す。
『何だぁ!?』
「・・・君に、遥かなる眠りの旅路を捧げるために、一曲弾かせてもらおうか。とっておきの葬送曲を!!」
鋭い切れ味を持つ真空の刃と化した暴風の渦がクジムの全身を飲み込み、縦横無尽から強固な装甲を斬りつけていく。普通ならば飲み込まれた瞬間、肉を切り裂き、骨を砕き、跡形もなく消し去る嵐に飲み込まれて、クジムは身動きが取れなくなる。
『グオオオオオオオオオオオオッ!!』
「いくら頑丈な装甲だって、同じ場所に何度も攻撃を加え続けていれば、もろくなるってもんさ!」
「そういうこっちゃ!!覚悟せぇよ、このドアホ!!」
オリヴィアが霊槍を構えて、身体中から藍色の光を放つ魔力を一気に解放する。すると、彼女の周りには大地から浮かび上がった無数の岩が鋭い切っ先を持つ刃へと変わって、クジムへと向けられる。
「赤字覚悟の大盤振る舞いじゃーーーーーーっ!!」
前方に浮かび上がった魔法陣に向かって飛んでいく岩が、魔法陣を潜り抜けると、美しく透き通る水晶の刃へと変わっていった。超硬度の水晶の刃が暴風に上手く乗って、装甲と装甲の間の隙間に上手く入り込み、肉を切り裂き、骨を砕いていく。
『な、な、何だとぉぉぉぉぉぉっ!!?』
さらに、風の刃で切りつけた部分に深々と水晶の刃が突き刺さると、幾重ものダメージを受け続けて負傷していた装甲に無数のひびが入った。そして、そこにさらに追い打ちで水晶の刃が突き刺さり、ついにクジムの頑丈で重厚なボディの崩壊が始まった。
関節を砕かれて、もはや立つことも出来なくなったクジムは崩れ落ち、休む間もなく繰り出される暴風と水晶の刃の猛攻を浴び続けていた。抵抗しようと電撃を発しようとしても、電撃を水晶の刃が避雷針のように受け止めて、電気を帯びた水晶の刃がクジムに突き刺さるたびに、猛毒のような激痛が全身を駆け巡る。
角に無数のひびが入って砕け散り、分厚い装甲からはいくつも煙が上り出した。
『バ・・・バカなぁぁぁっ!!俺様は・・・無敵の・・・勇者様だぞぉぉぉっ!?どうして、こんなメスどもに・・・!?ありえねぇっ、ありえねぇぇぇぇぇぇっ!!』
鳳が狂ったように叫び出す。自分に与えられた、あらゆる攻撃を受け付けない頑強な甲冑が破られた現実を受け入れることが出来ないのか、必死で風を振り払おうと身を捩らせて暴れるが、ますます甲冑の崩壊を進めるだけだった。
「アホ、ギャンブルっちゅうんは勝つヤツがおるから、負けるヤツもおる。引き分けなんぞない、そういうゲームやったら、自分が負けるなんてあり得ないなんてこと、あり得ないやろ」
「他人から与えられた力だけで満足しているようなヤツに、死に物狂いで修羅場を乗り越えてきたボクたちが負けたらカッコ悪いでしょ?」
オリヴィアが手をかざすと、無数の水晶が集まって巨大な槍を作り出した。その切っ先は、もはや起き上がる力さえ残っておらず、胸部にぽっかりと大きな穴が空き、むき出しになった急所ー腐った肉が集められて作り出された毒々しい紫色の心臓へと向けられていた。
『やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!俺様は、勇者だぞぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
「行くでぇっ!!」
「・・・チェックメイト!!」
「「色欲と強欲の水晶烈槍!!」」
オリヴィアとヴィルヘルミーナの魔力の合体によって生み出された槍は、光のごとき速さで飛び出し、クジムの心臓を刺し貫いた。巨体の分厚い筋肉や甲冑の鎧をものともせずに粉砕し、クジムの胸には巨大な穴が空いていた。
『グ・・・グゾォォォ・・・・ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
その瞬間、クジムの身体がまるで風船のように大きく膨らんでいき、全身から真っ白な光を放ちだした。
「アカン!!」
「伏せろ!!」
オリヴィアとヴィルヘルミーナが武器を構えて身体を地面に伏せると同時に、クジムの巨体が限界を超えて、真っ白な光と共に爆発した。光に包まれていき、次第に視界が何も見えなくなる。
「・・・絶対に死ぬなや、相棒」
「・・・フッ、そっちこそ」
光に包まれて何も見えなくなるまで、オリヴィアとヴィルヘルミーナは穏やかな笑みを浮かべていた。
そして、辺り一面が真っ白な光と共に爆風と高温の光に包まれて、全てが吹き飛ばされた・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・まただ!!」
レベッカの足が止まり、彼女は後ろを振り返る。それと同時に外からまぶしい光とともに、城全体が揺れるほどの振動が伝わってきた。桜たちは近くにあった手すりにつかまって揺れに何とか耐える。
「レベッカ・・・!?」
「・・・今度は、ミーナとオリヴィアの匂いが、消えた・・・!」
「・・・なっ・・・?」
レベッカの言葉に、桜は手に持っていた竜刀をガシャンと、地面に落としていた。
そして、外を見て、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがて再び向き直って歩き出した。
「・・・さ、桜」
「・・・行くぞ」
でも、と言いかけて、斗真は言葉を止めた。
桜の身体が震えていた。
再び刀を拾い上げて、今にも倒れてしまいそうな桜の後姿はとても痛々しかった。それでも彼は歩むことを止めない。例え、どんな結末が待ち受けているとしても、今、自分がやるべきことをやり遂げようとしている。
どんなに心が押しつぶされそうになっても。
「絶対に、アイツを止める。アイツらがそう簡単にくたばるかよ・・・!」
桜の覚悟を感じ取り、斗真とレベッカも頷き合って、再び桜に続いて走り出した。
ヴィルヘルミーナ、オリヴィア、クジムを撃破・・・!
次回、アイリスとアレクシア組VSセルマ、そして松本千鶴との戦闘に入ります!!
次回もどうぞよろしくお願いいたします!!




