第七話「色欲と強欲、最後の戦い①~彩虹の戦乙女、最終決戦⑦~」
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【三人称視点】
ヴィングニの巨体が真っ赤な炎に包まれて、どんどん黒ずんだ灰へと変えていく。
鼻を衝く、吐き気を催しそうな悪臭を放ちながら、巨大な死肉の塊へと変わっていく。
そして、ヴィングニから離れた場所に、二人の女性がボロボロの姿で横たわっていた。
ニナ・ナルカミは鬼の仮面が粉々に砕け散り、左耳の一部が千切れて、歪な形になっていた。忍び装束の至る所が破れて、身体中のあちこちに痛々しい傷が腫れあがっていた。
ビビアナ・ブルックスも愛用していたパワードスーツが完全に大破してしまい、着用しているボディースーツも所々が破けてしまっており、苦しそうに表情を歪めていた。
うっすらと瞳を開くと、全身が自分の身体とは思えないぐらいに言うことを聞かない。指一本を動かそうとしても、激しい激痛で意識が遠のきそうになる。ゲホゲホとむせるたびに、血液のどす黒い塊が飛び出す。
「・・・・・・ハァハァ・・・ニナ・・・・死んでる?」:
「・・・そこは・・・げほっ・・・・生きている、とか聞きなさいよ・・・」
「・・・・・・チッ、しぶといヤツ。ライバルが・・・一人減ったかと期待したのに」
「・・・それは・・・お互い様よ・・・アンタ・・・マジでイイ性格してるわ・・・」
再び視界がグラグラと揺れて、痛みや感覚が全然感じなくなり、暗い闇の中に吸い込まれてしまいそうになる。ビビアナは、ボロボロになった身体をズリズリと地面を這い、ニナの倒れているところまで、歯を食いしばって近づいていく。
「・・・・・・肋骨、何本かイッたかもしれない」
「・・・身体がバラバラになりそう・・・苦しい・・・」
「・・・・・・気をしっかりと持て。まだ死ねないだろうが」
「・・・分かってるわよ。傭兵団のツッコミ担当が・・・いなくなったら・・・誰がアイツらを止めるのよ・・・ていうか・・・アイツらより先に死ぬなんて・・・ごめんだわ」
「・・・・・・そういうこと」
ビビアナが口から唾と一緒に、折れた奥歯と血の塊を吐き出した。
今にも意識を失い、倒れてしまいそうになっても、彼女たちの瞳にはまだ闘志の光が宿っていた。灼熱色の瞳を何とか必死で絶やさないように、ビビアナとニナは思い切り拳を地面に叩きつけて、その痛みで意識を覚醒させる。
「・・・げほっ・・・ごほっ・・・まだだれか死んでないわよね?」
「・・・・・・死んでいたら、全裸に剥いて放置プレイにしてやる」
「・・・ごほっ・・・ちゃんと・・・大事な場所は隠しなさいよ」
「・・・・・・面倒くせーから、ヤダ」
軽口を言い合いながらも、二人は残りのメンバーの無事を強く願った。
「・・・絶対に死ぬかよ。負けるの、私、大嫌い」
「・・・・・・私も、だ」
そして、同時にニナとビビアナがその場に倒れこみ、意識を失った・・・。
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「ちっ!」
高い金属音と同時に、ヴィルヘルミーナが珍しく舌打ちする、普段の彼女なら、戦闘においても飄々としていて、苛立ちをあまり露わにしない。しかし、彼女が握りしめている幅広のカットラスの刃から伝わってくるしびれに、動揺と苛立ちを抑えきれないほどに動揺していたのだ。
「おいおい、コイツ、どんだけ固いねん!!?ウチの槍がビクともせえへんなんてな」
「やれやれ、これはちょっとヤバいかもねえ」
オリヴィアも鋭い眼光を放つ三白眼で、目の前にそびえ立つ山のような巨大な体躯を持つ、全身を真っ黒な甲殻の鎧で覆っている巨大な蟲の姿をした化け物【クジム】を睨みつける。かつての雷の勇者【鳳桐人】の変わり果てた姿の異形は全身から鼻が利かなくなりそうな耐えがたい腐臭を放っている。
2万人以上もの市民の亡骸を喰らい尽くして、死肉と墓土で出来上がった身体を鈍重に揺らしながら、頭部に生えている巨大な角から電撃を放ってきた。大地を揺らすほどの衝撃から、その破壊力が尋常ではないことが伺える。
『梶ィィィィィィ!!どこだぁぁぁぁぁぁっ!!殺してやるぅぅぅ!!ウオオオオオオオオオオッ!!』
鳳がもはや人間のものとは思えない、恨みと憎しみに満ちた咆哮を上げる。
もはや斗真に対する憎しみは彼の逆恨みでしかないのだが、元々彼には自身の悪事を省みる道徳的な心は存在しない。理性を完全に失い、怒りのままに暴れ狂う哀れな怪物だ。
『お前らも殺すゥゥゥゥゥゥ!!あの世で梶と幕ノ内を待ってやがれ!!』
「ケッ、死ぬときは桜の膝枕の上がよかったんやけどなぁ」
「ボクもせめて、ビビアナちゃんやサクラ、世界中の可愛い女の子たちを侍らせたハーレム御殿を作りたかったんだけどねぇ」
「アホなことばかり言うてからに。お前、ホンマに死ぬつもりないやろ」
「相棒だってそうだろう?」
「当たり前や。サクラとの結婚式の会場を自腹を切って予約しとるのに、ここで死んだら全部パーやないか。それだけは絶対に嫌や!!」
『死ねよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!俺が気に入らないヤツはみんな死ねぇぇぇぇぇぇっ!!』
ブオンッと、太い前脚をゆらりと持ち上げて、一気に二人目掛けて振り下ろしてきた。オリヴィアとヴィルヘルミーナがすぐさま交わすが、超重量級の前脚で思い切り踏みつけた地面が揺れ出す。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
角の間に放電が生じて、辺り一面にメチャクチャに雷を解き放った。目に映るものを片っ端から吹き飛ばし、蹂躙し、破壊していく。ヴィルヘルミーナとオリヴィアは電撃を次々とかわしながら、何とかして攻撃の機会をうかがう。
「・・・さっきからギャンギャンうるさいっちゅうねん!!」
オリヴィアが槍を突き出し、無数の尖った岩石の刃が飛び出して、次々とクジムの身体にぶつかっていく。頑強なうろこを持つドラゴンの身体をも刺し貫く破壊力がある岩石の刃を、クジムはものともせずに乱暴に振り払った。
電撃がわずかに肌をかすめるだけで、全身がしびれて動けなくなりそうな鋭い痛みを感じる。地面に直撃するたびに土煙が舞い上がり、無数の瓦礫の破片が飛んでくる。ヴィルヘルミーナの頬に瓦礫の破片の刃がかすめると、真っ赤な筋が一本生まれて、たらりと血を垂らした。
「・・・あんまり調子に乗るんじゃねえよ」
ヴィルヘルミーナがドスの低い唸り声を吐き出して、巨大な蟲を目掛けてカットラスを振るうと、無数の真空の刃が飛び出していった。鋭い切れ味を誇る刃が容赦なく襲い掛かるが、全身を覆う重厚な甲冑に弾かれてビクともしない。
「あの邪魔な装甲を何とかせえへんと、攻撃が全然効いとらんようやな」
「そうなると、やっぱり頭部にあるあの勇者を仕留めないと倒せないってことか」
頭上から、狂ったように笑い、聞くに堪えない罵詈雑言を口汚くまくし立てる鳳の姿を見ると、二人は顔を見合わせて、頷いた。
「こうなったら、あれをやるしかないか」
「せやな」
ヴィルヘルミーナの全身から紫色の風が吹き出し、彼女の胸元に刻まれた【山羊】の紋章が紫色の光を放ち、輝きだした。そしてオリヴィアの左腹部に刻まれている【狐】の紋章が藍色の光を輝きだすと、二人の魔力が一気に膨れ上がり、魔力の奔流によって二人の表情がどんどん険しくなっていく。
「ほな、いっちょやるか!!」
「・・・ああ!!」
それはまさに好戦的な野獣が、獲物を標的に捕らえた時のような残忍で野蛮な笑み。
美しき野獣が二匹、牙をむいて、目の前にそびえ立つ巨大な蟲を狩るという強い意志の表れだった。
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