第五話「嫉妬と怠惰、最後の戦い①~彩虹の戦乙女、最終決戦⑤~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
今回は前編と後編の二回に分けて、斗真と桜、レベッカを除いた傭兵団のメンバーたちの最後の戦いを書いていきます!!どうぞよろしくお願いいたします!!
【三人称視点】
「・・・まさか、アンタと一緒に戦うことになるとはね」
「・・・・・・ニナと一緒に戦うのは、久しぶりな気がする」
ニナ・ナルカミとビビアナ・ブルックスが対峙しているのは、自分たちの頭上を覆い隠すほどの巨大な翼を広げて、我が物顔で、聞くに堪えない耳障りな咆哮をあげながら飛び回る巨大な鳥の姿をした”大量の死者”の集合体、松本が作り出した罪のない市民たちの骸を合体させた哀れな合成魔獣だ。
ヴィングニ。
ビビアナが大罪の紋章の力で測定した結果”天国”の名を冠する巨大な鳥の姿をした化け物は、雁野美月の魂の欠片を媒介にして2万人もの国民の死体を集めて作り出した魔法兵器だ。もう生前の記憶も意思もなく、ただ目に映るすべてのものを破壊するように命じられた殺りく兵器だ。
「・・・・・・あの3体の化け物には、クロスの国民の死体を取り込んで作られている。その数は一体につき、2万人といったところ」
「それって、単純計算したら一人当たり1万人分の相手をしろってことよね」
「・・・・・・本当に面倒くさいことをやってくれる、あのバカ勇者」
「往生際が悪いにもほどがあるでしょうが」
ニナの左太ももに刻まれた蛇の紋章が緑色の光を輝かせると、ビビアナの左肩に刻まれた熊の紋章が青い光を光り輝きだす。軽口を叩いていたが、その瞳には覚悟を決めた、歴戦の戦士のそれに変貌していた。
「・・・ビビアナ、アンタのそういった、正直何を考えているのかさっぱり分からないところとか、無表情なのに行動が人一倍自己主張し過ぎているところとか、いつも訳の分からない発明をしては爆発を起こして騒ぎを起こすところとか・・・まあ、そういうところ、私は嫌いじゃなかったわよ」
「・・・・・・私もお前のそういう真面目そうで実はそうでない、自意識過剰でポンコツで、何かにつけていつもひがんだり、妬んだりして面倒くさいところとか、食事を作らせたらみんなをしょっちゅうあの世一歩手前に送り付けるほどの酷い料理の腕前をいつまでも自覚できないヤバいところとか・・・まあ、私に被害が及ばないと考えれば、嫌いではない」
「そこまで言っておいて、嫌いではないなんて言っても説得力がないんですけど。喧嘩売ってるのか、この貧乳」
「・・・・・・やかましい、味覚オンチ」
憎まれ口をたたき合いながら、お互いに握りしめた拳を静かにぶつけ合わせる。
「死ぬんじゃないわよ」
「・・・・・・そっちこそ」
ニナとビビアナの身体から、同時に魔力を一気に開放し、ヴィングニも真下から感じる異様な量の魔力に反応して、敵意をむき出しにした叫びをあげた。衝撃波で近くにあった建物が粉々に吹き飛び、崩れ落ちる。
「大罪解放・嫉妬の大罪」
「大罪解放・怠惰の大罪」
「「最大出力!!」」
嫉妬の魔王【レヴィアタン】と怠惰の魔王【ベルフェゴール】。
魔界をかつて統治していた七大魔王の血を色濃く受け継ぐ選ばれた者たちの能力が、解放された。
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ーギシャアアアアアアッ!!-
ヴィングエがけたたましく吼えると、大きく広げた翼をまるで矢のように投げ放ってきた。風を切り、高速で飛んでくる羽の弾丸の先端には猛毒が染み込んでおり、獲物をしとめた瞬間、体内に毒液を流し込んで生命を奪う。
しかし、無数の羽手裏剣が飛んでいく先から、光を受けてキラキラと反射する冷気の霧が噴き出した。羽手裏剣が霧の中に飛び込むと、見る見る表面が真っ白になり、そのまま氷漬けになって地面に落下していく。
怠惰の魔王ベルフェゴール。
その【怠惰】は冷気となって、あらゆる生物の身体の動きを止めて、絶対零度の冷気で氷漬けにしてしまう。そして、永遠の怠惰・・・生命の停止を与えるといわれている。ビビアナの身体から放出される冷気を浴びて、羽手裏剣はもちろん、地面や建物をどんどん凍らせていく。
「・・・・・・ニナ、準備はいい?」
「ええ、いつでも行けるわよ」
「・・・・・・一気に行く!!」
「・・・高いところから見下しやがって。本当に妬ましいわ!!」
ニナの瞳が怪しく光り輝くと、彼女の足元から広い範囲で影が広がって、光さえも飲み込んでしまうような真っ暗な闇で地面が覆われていく。ボコボコと波打つ闇の中から、無数の蛇の形をした彼女の眷属が血走っているかのような赤く染まった瞳を光らせて、鋭い牙をむき出しにして、ヴィングエを睨みつける。
「そこから引きずり落としてやるわ!!行けっ!!」
ニナが作り出した闇から無数の蛇が飛び出して、大空を舞うヴィングニの翼、身体、頭部や両脚にまっすぐ飛んでいくと、鋭い牙を肉に食い込ませてかじりついた。蛇はやがて鎖へと姿を変えて、地面から飛び出した無数の鎖がヴィングニの巨体を縛り付けていく。
-ギシャアアアッ!!!-
しかし、ヴィングニも小癪なといわんばかりにけたたましく吼えて、大きく広げた翼から火炎弾を雨のように降らせた。翼をはばたかせて発生した暴風に乗って放たれる炎の矢はニナたちに降り注ぎ、二人の周りに発生させている魔力の障壁に触れるたびに、次々と爆発を起こしていく。
ニナは、歯を食いしばって魔力が尽きない様に耐える。
体力と魔力を激しく消耗する莫大な量の魔力の消費は、確実にニナたちの身体を痛めつけている。身体中から汗の玉を噴き出し、血管が太く浮かび上がり、一瞬でも気を抜いたら無数の炎の矢の爆風に飲み込まれてしまう。
バリンッ!!
一瞬の気を抜いた瞬間、爆風の風圧で鬼の面に無数のひびが入り、粉々に砕け散った。
ニナの額から赤黒い血液が一筋流れ落ちて、猫を彷彿させる美しい緑色の瞳を持つ素顔があらわになった。
「・・・私の嫉妬を・・・甘く見るなよ!!」
生まれて初めて心から好きになった人。
自分自身の存在を受け入れてくれて、居場所を作ってくれた仲間たち。
彼らがいるからこそ、今まで忌まわしいと思い続けていた大罪の力を受け入れることが出来るようになった。
ずっと自分は不幸だと思っていた。
自分には本当に欲しいものは何一つ手に入れられないと思っていた。
周りを妬んだ。
自らの幸せを、未来を、人生を自らの手で滅ぼさんとする嫉妬。
しかし、その嫉妬は今、自分にとって大切な仲間を救うための力となっている。
自らの弱さを受け入れて、逃げ出そうとする心に檄を飛ばして、何が何でも目の前の敵を倒すために喰らいつき続けるという執念へと変わっていく。
こんな自分が、今、心の底から笑って幸せだと言い切ることが出来る。
巨大な蛇の頭部を模した鎖が、ついにヴィングニの喉笛に喰らいついた。
鋭い牙が喉に食い込んで、ヴィングニが激痛のあまりに絶叫を上げる。
-オオオオオオオオオオンーーーッ!!-
抵抗しようとするが、もはや、魔法を発動するための喉笛は蛇の鋭い牙に喰いつかれて使うことが出来ない。ニナは薄れゆく意識の中で、ニタァと自分の唇の端が吊り上がっていくのを感じた。
妬め。羨め。そして憎め。
強大な力を持つ、傲り高ぶった獲物を絶望のどん底へと引きずり込め。
「ビビアナァァァーーーッ!!いっけぇぇぇーーーっ!!」
血の塊とともに、ニナが思い切り吼えた。
それと同時に無数の鎖が一気に地面の闇の中へと引きずり込まれていき、ヴィングニの巨体が地面に向かって急降下を始めた。抵抗しても、ヴィングニの全身を無数の鎖が縛り上げていて、引きはがそうとすると肉を食いちぎり、骨や内臓にまで達した鎖がズタズタに身体を内部から破壊していく。
そして、その巨体が空から落ちてくるのを確認したビビアナが、手に持っている巨大なハンマーを取り出して、獲物を捕らえた狩人のような目でじっと見つめていた。
ビビアナ、ニナ、覚悟を決めた最終決戦・・・!!
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次回もどうぞよろしくお願いいたします!!




