第三話「闇を祓う希望の光~彩虹の戦乙女、最終決戦③~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
どうぞよろしくお願いいたします。
【三人称視点】
どうして。
どうして、彼らは終焉を受け入れない?
どうして、彼らはまだ悪あがきを続けるのだろうか。
人間も魔族も、神でさえも、生きているものは必ず最後はみんな死ぬのに。
苦しみや悲しみ、生きていると辛いことばかり。
生まれ付いたときから、誰もがみんな罪を背負って生きている。
だから、みんな、苦しみながら生きていかなければならない。
その非情な運命から、皆を解放してあげたい。
それが、英雄である自分に課せられた使命なのに。
「・・・どうして梶くんも、桜くんも、分かってくれないのかな」
荒れ果てて、かつての栄華の面影が残っていない玉座の間で、千鶴は苛立ちの感情をあらわにしていた。その瞳には、殺意の光が宿り、獣のようにぎらついている。
まさか、魔神八傑衆を全員封印してしまうとは思わなかった。
仲間には甘い斗真が絶対に手が出せないように、幼なじみである寅若光と高橋つばさをあえて魔神の器に選んだというのに。
(私は間違ってなんていない。間違っているのは、こんな地獄のような世界で苦しみながらも生きようとする人たちの方だよ)
どうしてあがくのか。
どうして諦めないのか。
「・・・梶くんも、桜くんも、みんな何も分かっていないよ。あの傭兵団の連中に、変なことを吹き込まれたから、おかしくなっちゃったのかな?」
何が【彩虹の戦乙女】だ。何が魔王軍だ。千鶴は舌打ちして、表情を怒りで歪める。
(何も分かっていないくせに、どうして苦しいことしかない生きることを人にも強いるのかな?そんなの、ただの傲慢じゃないか。結局どうせ人は死ぬ。どんな善人だって悪人だって、どんなふうに生きてこようと、結局はみんな同じ風に死ぬんだよ。それなら、生きて何かを成し遂げる事なんて無駄でしかないじゃない)
ああ、どうせアイツらは何を言っても分からないだろう。
終焉というものが、本当に全ての生き者にとっての救済であることの受け入れようとはしない。
(・・・もういいわ。どうせみんな死ぬんだから)
その時だった。
「・・・!?」
右目にちくりと痛みがした。
そして、自分の身体の中に何かがにゅるりと入り込んでくるような得体乗れない感覚がした、ような気がした。
「え?何?」
右目から感じるわずかな違和感。
痛みはもう感じない。しかし、今の感覚は何なのだろうか?
身体の中に流れ込んできたような、あの感覚は?
「・・・気のせいかな」
千鶴は気づいていない。
もう彼女に残されている道は破滅でしかないということを。
彼女が感じた違和感が、もうすでに彼女の運命を大きく決める【断罪】という名の毒蛇が彼女の喉元にかみついた瞬間であったことも。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
全ての準備が整った。
魔砲列車は先頭車両を巨大な砲門を持つカノンモードに変形して、その銃口を目標であるクロス王国に向けている。動力炉では、カノン砲から放つ超強力な破壊力を持つビーム砲を生み出すための大型エンジンやエネルギー変換装置がフル回転している。
「・・・・・・目標補足、エネルギー、パワー、発射角度、オールグリーン!!」
ビビアナがコントロールパネルを操作して、いよいよ魔導キャノンの準備が整った。
世界の命運をかけて、反撃の狼煙を今、上げる。
「魔導キャノン、発射ァァァァァァーーーーーーッ!!!」
スイッチを押した。
キャノン砲の先端に極彩色の光を放つ魔力のエネルギーが集まり、見る見る大きく膨らんで、巨大なビーム砲となって撃ちだされた。オリハルコンによって違う属性の魔力の摩擦を完全にゼロにして、破壊力を一切損なうことなく、極限まで上乗せされた極太のビーム砲は、クロスの上空に向かって飛んでいく。
そして、クロスの上空に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
「決まってくれよ・・・!!」
その場にいた全員が、いや、魔王軍に全ての運命を託した魔界の魔族たちや、世界中の人々が必死で祈りを捧げる。
その時だった。
(斗真・・・!)
(斗真!)
斗真を呼ぶ声が聞こえた。
声がする方を見ると、そこには自分を見守るように微笑んでいる友の姿があった。
もう二度と会えることはない、最愛の友たち。
(私の風で、クロスに威力を損なうことなく、必ず送り届けてやる!)
「つばさ・・・!」
(最後まで自分と仲間を信じろ!!お前たちが今、この世界の希望の光なんだ!!)
「光・・・!!」
そして、二人の姿がやがて巨大な翼を持つ風の魔神と、鋭い牙と詰めを生やした雄々しき猛虎の姿に変わり、ビーム砲を導くように、ものすごい速さで駆けだしていった。
斗真の目には、確かに、あの二人が見守ってくれている姿が見えた。
(・・・そうだ、いつだってここに、光とつばさはいるんだ!)
斗真は自分の胸を軽く叩き、顔を上げて、クロスに浮かび上がった魔法陣をしっかりと見据えた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「・・・これは一体?」
千鶴は、クロスの上空に浮かび上がった巨大な魔法陣を見て、困惑した声を上げる。
これは違う、これまでに様々な国の魔導師と名乗る無能共が放ってきた破壊魔法とはまるで違う。クロスの全てを領域に捕らえたこの魔法は、ただの破壊魔法ではない。
そして、魔法陣から白い光が生み出されると、一直線に、ものすごい速さでクロスの結界に直撃する。そして、光の矢は結界にひびを入れると、そのまま結界を通り抜けて地面に着弾した。
落ちた部分から、千鶴が放っていた魔力が一気に消滅していく。
建物を破壊することなく、まぶしい光が瞬く間にクロスの中を照らしていく。まるで夜明けの太陽がもたらす希望の光であるかのように。
その光を浴びた、千鶴の術によって蘇ったかつての国民の成れの果てであるアンデッドが砂になって消滅していく。汚染されていた街の中が次々と降り注ぐ光の雨を浴びて、浄化されていくのだ。
(まさか、これはクロスを破壊するのではなく、私の魔力を街ごと浄化するつもり!?)
徐々に体が重くなっていく。
魔力のコントロールが上手くいかない。
千鶴は必死で魔力を振り絞るが、身体からどんどん力が失われていく。まるで小さな穴が空いた風船のように、空気が抜けていく。
「私の・・・魔力が関わるものだけを・・・全て消し去っている・・・!?梶くんの虚無の魔法なの!?」
千鶴は思わず柱を思い切り叩いた。
梶斗真。
やはり彼は生かしておくべき人間ではなかった。
彼が虚無の魔王オクタヴィアとして覚醒を果たした時、クロスから出てきて、確実に息の根を止めて置くべきだった。魔神八傑衆や邪眼王などという役立たずなんかに任せるべきではなかった。
「どうしても邪魔するんだね、梶くんは・・・!!」
魔力がどんどん失われていく。このままでは、全ての魔力を失い、一切魔法が使えなくなる。そして、彼女が自分の手を見ると、自分の腕にはまるで金色の鎖のようなまばゆい光を放つ紋様が浮かび上がっていた。
鎖で縛られた部分から、魔力が明らかに吸われて、消えていく。
「まさか、さっきの目の痛みは、これだったの!?」
ローブを脱ぎ捨てて、豊満な肢体をあらわにすると身体中に金色の鎖が彼女の全身を巻き付けようと少しずつ浮かび上がっている。この鎖は高森が千鶴に一矢報いるために放った呪い、魔力を失わせて完全に魔法を使えなくさせる「封印」の魔法だった。
「私の終焉は絶対に終わらせない!!私が世界を終わらせるんだ!!それが私の英雄としての宿命なんだから!!」
千鶴は狂ったように叫ぶと、吸われ続ける魔力を必死で振り絞り、手に持っていた杖に魔力を注ぎ込む。
「全ての命に終焉を!!永遠の安らぎを!!そして愚かな連中には裁きを!!私の全ての命をかけて、絶望に至る真の恐怖を・・・!!」
半狂乱になって叫び続ける千鶴の脳裏がやけに明るくなった。上を見上げると、巨大な光の柱がもう目の前まで迫ってきている。浄化の光ではなく、自身の身体を全て消し去る強力な破壊エネルギーの光が降り注いでくる。
「死を・・・!!滅びを・・・!!全てに救済を!!」
自身の肉が焦げて、激しい痛みを感じた刹那、彼女は魂から憎悪の込めた呪詛を吐き出し、やがて光の中へと消えていった。
そして、光の直撃を受けた王宮はまぶしい光に包まれてそのまま飲み込まれていった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「結界破壊、成功!!破壊葎90%・・・95%・・・99%!!」
ビビアナが珍しく興奮した声を上げると、全員がその場で飛び上がり、拳を上に突き出して喜びをあらわにした。
「よっしゃあ、このまま一気にクロスに乗り込むぜ!!」
「全員、戦闘準備を万全に整えろ!!出発するぞ!!」
『了解!!』
興奮が冷めやらぬまま、斗真たちは魔砲列車に乗り込んだ。
汽笛が鳴り、魔法によって生み出された線路の上を魔砲列車が走り出した。車輪が徐々の回転が徐々に速くなっていき、クロスに向かって魔砲列車が海の上を爆走する。
「・・・今度こそ、全部を終わらせる!」
光とつばさが遺した金色の装飾が施された宝箱を強く握りしめて、斗真はつぶやいた。
そして、桜も首にかけていた、仲間たちの遺品であるアクセサリーを握りしめた。
「・・・ああ、白黒つけようぜ!」
クロスとの最終決戦はまだまだ続きます!!
次回も頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!!




