第三十二話「託す光」
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【寅若光視点】
これでよかったんだ。
こうすればよかったんだ。
私が本当は何がやりたかったのか、今なら分かったような気がする。
私はずっと・・・つまらない意地を張っていただけなんだ。
私が斗真の言うことに耳を貸していれば・・・明は死ぬことはなかった。
身に降りかかる火の粉を払ってきた。危害を加えられるのは自分だけだと思っていた。
向こうからかかってくるなら、全員叩き潰せばいい・・・その考えが甘かった。
私は自分が誰にも負けないなんて、とんでもない勘違いをしていたんだ。
力だけなら誰にも負けなかった。だから、何があってもこの力で大事な家族や友達を守ることが出来ると思っていた。ましてや、自分には敵なんて誰もいない。天狗になっていたんだ。
その驕りのせいで、大切な家族が狙われることなんて、思いもしなかった。
もっと周りをよく見て、うぬぼれて目が曇っていなければこんなことにはならなかった。
逃げていたのは斗真じゃない。
私だったんだ・・・。
「光ーーーーーーっ!!」
斗真・・・?
ああ、暖かい・・・。
私の身体を・・・斗真が抱き上げてくれていた。
全く、本当に泣き虫だな。さっきまでの威勢のよさはどうしたんだ。涙をボロボロと流して、本当に締まらないヤツだな。
まあ、お前のそういうところが・・・昔から・・・好きだった。
「・・・おい、何が大したことないだよ。大怪我してるじゃねえか!!アレクシア、急いで回復魔法をかけて!!」
「・・・無駄だ。もう、身体の崩壊が始まっている。以前から、身体の様子がおかしかった。どうやら、私の身体では魔神の器になることは出来なかったようだな」
身体が粒子化し、消滅していく。
痛みを感じることなく、この世から自分の身体が消えていくのを見るのは、不思議な感覚だ。
ああ、死ぬのか。
自分自身がもう自分の死を受け入れている。
私はとっくの昔に死んでいる。
クロスに召喚されて、魔族の力を注ぎ込まれて魔物に改造された時から。
自分の自我や記憶は残っているのに、身体はもう人間じゃない。
心臓の鼓動も、人間だった時のものとは違っていて、視力や聴力が今までに味わったことがないまでに研ぎ澄まされていた。その代わり、自分にとって「敵」を倒し、葬り去る行為に何の違和感も抵抗も感じなくなっていた。
魔物をどれだけ殺しても、罪悪感というものが湧かない。
自分の領域に足を踏み込んだ害虫を倒したという程度の感覚しか感じない。
超人的な力と引き換えに、人間らしい心を失っていた。
だから、斗真を手にかける事も出来た。
私はもうとっくの昔に人の心を捨てた・・・化け物だったんだ。
「・・・そんなことねえよ・・・!お前が僕のことを恨むのも、憎むのも、仕方がないと思っていた。でもそれは、明のことを本当に大切な家族だと思っていたから。だからだろう?家族のことを誰よりも大切に思いやる優しい心をお前は失っていなかった!!」
斗真・・・?
「・・・お前は化け物なんかじゃない!!僕の大切な親友で、大事なことを教えてくれたリーダーだ」
リーダー・・・。
ああ、お前は昔は私のことをそう言って、いつも後ろからくっついて来ていたな。
あの時のお前はいつも泣き虫で、それなのに負けず嫌いで、自分よりも大きい相手にも勇敢に挑んでいくヤツだった。何度ボロボロになっても諦めない、仲間のためならいくらでも身体を張る、最後まで絶対に諦めない・・・そんなヤツだった。
それがいつの間にか、私のことを追い越して、どんどん前に向かって進んでいった。
お前が私のことを置いていくのが、嫌だったんだ。
お前が私の手が届かない、遠い場所に行ってしまうような気がして、不安だった。
お前にとって、いつまでも頼りになる存在のままでいたかったんだな。
だから、お前が私のことを考えて止めようとしてくれていたのに、私は耳を貸そうとしなかった。
そんなどうしようもない私のことを・・・お前ってヤツは・・・。
「・・・斗真・・・。お前に、最後に一つだけ、教えてやる・・・!」
「・・・光?」
「お前は・・・覚えているか・・・?本当に強いヤツって言うのは、どういうヤツなのか」
これは私たちがまだ小学生だった頃。
偶々読んだ、少年漫画に載っていたお気に入りの作品の主人公と敵対する悪役が言っていた言葉。
私の胸に深く突き刺さった、あの言葉。
私も、つばさも、そして斗真もそれを読んで、クソのような人生がひっくり返るような衝撃を感じた。
「・・・本当に強いヤツとは・・・力が強いことでも、頭が良いことでも、金があることでもない」
「・・・どんな時でも、最後まで自分自身の覚悟を・・・貫き通すヤツ、だよね?」
ああ・・・。
覚えていたか・・・。
「・・・そうだ。どんなに辛い目に遭っても、希望が見えないどん底まで落ちてしまったとしても、覚悟を忘れない限りは・・・何度でも這い上がることが出来る」
「・・・どんなことになっても、自分の決めた覚悟を投げ出さない。歯を食いしばって、立ち上がって、何度でも挑んでいく・・・それが本当に強いヤツだったよね?」
斗真・・・。
お前はまさに、私が憧れていた強いヤツになったよ。
一度死んでも復活して、何度でも立ち向かっていく、本当の強さを手に入れた。
私のように怒りにとらわれた強さではなく、誰かを守るために戦うための強さを手に入れた。
「・・・斗真、お前は誰かを守るために戦うことが出来るヤツだ。大事な仲間のために、全力で身体を張って守ろうとするお前のその優しさ、腹に括った覚悟・・・絶対に忘れるな」
お前はあの時のままでよかった。
臆病だけど、仲間のことを誰よりも大切に思っていて、優しかったお前のことをずっと根性がないと思っていたけど、本当は誰よりも強かったんだな。
どうして、信じてやれなかったんだろう。
どうして、斗真の強さを認めてやることが出来なかったんだろうな・・・。
「・・・ごめんな、斗真」
親友とか言っておきながら、お前のことを信じてやれなくてごめん。
お前のことを弱いと思っていて、ごめん。
ずっと、意地を張っていて、ごめん。
「・・・許すよ。全部許すよ、だから、消えるなよ・・・!」
どうして許せるんだろう。
こんな私のことを、どうして許せるんだ?
お前の命を一回奪ったのに、どうして許せるんだ?
全く・・・本当にお前っていうヤツは・・・。
「・・・斗真、これ、もらって」
私は手に着けている指ぬきグローブを外し、首にかけている十字架の首飾りを外すと、斗真に手渡した。
「・・・指ぬきのグローブは・・・明からもらった。十字架は・・・つばさがくれた。私の宝物だ・・・」
何があっても手放すことはなかった。
でも、今、私は私の覚悟共に、これを斗真に・・・。
「・・・お前に私たちの希望と光を託す・・・」
「・・・光・・・!」
「・・・松本の思い通りにさせるな。この世界を、この世界で生きるお前の大切な仲間を、そして、彼らと共に生きていくと決めた・・・・お前自身の願いを・・・かなえるために・・・今度は私がお前の力になる・・・!」
今度はお前のために・・・。
私の全ての力を、思いを、お前の力に・・・!
ああ・・・。
もうダメだ、眠くなってきた。
最後に・・・。
お前の顔をもう一度、よく見せてくれ・・・。
「・・・斗真・・・カッコよくなったね。本当に強くなった」
「・・・光・・・!!」
涙を必死でこらえて、無理矢理笑顔を浮かべる斗真がおかしくて、愛おしい。
ああ、コイツは本当に小学生の時のまま、ずっと純粋で優しい心を持ち続けていたんだ。
どうか、その心をこれからも、忘れないで。
ー斗真・・・ありがとう・・・。-
ー・・・さようなら・・・。-
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
全員がその場で座り込み、言葉を失っていた。
斗真の手元にはすでに光の姿はなく、代わりに、光の魔神ラディウスの柄が描かれたカードがあった。
魔神八傑衆の全てが封印されて、その力は斗真の手元に集まっていた。
しかし、その代償はあまりにも大きすぎた
高橋つばさ。寅若光。
無二の親友たちの消滅。
やがて、斗真がゆらりと起き上がった。
「・・・行こう。僕たちにはまだやらなけりゃいけないことがある」
「・・・斗真」
桜が斗真に近寄ると、斗真は覚悟を決めたように、鬼気迫る表情で遠くを見据えていた。
その先にあるのは、クロス王国を死の街に変えた悪魔の心を持つ勇者。
「これで終わりにしてやるよ。クロスも、松本も、全部ぶっ潰す。アイツの計画を全て止めてみせる」
斗真は涙を乱暴にぬぐい、語気を強めて言った。
「彩虹の戦乙女の名にかけて!!」
最終決戦の火ぶたが、切って落とされた。
もう誰も、彼らを止めることは出来ない。
寅若光、消滅・・・。
魔神八傑衆の全員を封印し、次回から最終章に突入します。
最終章は最初から黒幕に対する報復を、全力で書いていきたいと思っております!!
次回から最終章になります!!
最後まで、どうぞよろしくお願いいたします。




