第十七話「吉報と凶報~3人目・グリゼルダ登場~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が完成しましたので、投稿いたします。
今回、3人目のヒロイン【グリゼルダ】が登場します!!
コンコン。
「失礼いたします。女王陛下、入室してもよろしいでしょうか」
「セリアか。入れ」
ドアが開いて部屋に入ってきたのは、漆黒の宮廷服を身に纏い、眼鏡をかけた知性的な雰囲気の綺麗なお姉さんだった。中性的な美貌を持つ長身の麗人といった感じの女性は礼儀正しく一礼をして、ヴァネッサ女王の所に歩み寄る。
「紹介するわ。彼女はセリア・ルサルカ。この国の宰相を務めている。私が最も信頼している女性よ」
「お初にお目にかかりますわ、彩虹の戦乙女の皆様。わたくしはこのブラオベーレ王国の宰相を務めておりますセリア・ルサルカでございます。女王陛下よりお話は伺っております。この度はガラパゴの村を危機から救っていただき、ありがとうございます。私からもお礼の言葉を申し上げます」
「それで、どうかしたのか?」
「はい、先日女王陛下に申し上げました洞窟の奥で発見されました巨大な魔石の件なのですが、先ほど無事採掘に成功して王宮魔導師と学者たちの研究塔に運び入れました。これより、魔石の調査に取り掛かります」
「そうか、連絡ごくろうであった」
巨大な魔石・・・?
その話を聞いたとき、僕の頭の中にある一つの可能性が思い浮かんだ。
そしてそれはレベッカさんたちも何かに気づいたらしく、レベッカさんが最初に口を開いた。
「なあ、ヴァネッサ。その巨大な魔石って何の話だ?」
「実は1週間ほど前に、この近くの海岸沿いにある洞窟の奥に巨大な魔石があるという報告があってね。自然に出来上がったものではないということが分かったから王宮魔導師や学者たちを集めてこの魔石がどういうものなのかを調べてもらうことになっていたのよ」
「もしかすると、その魔石には女の子が中に閉じ込められていましたか?」
「どうしてそのことをご存知なのですか?ええ、確かにその魔石の中には獣人らしき女性が閉じ込められているのが確認されましたが・・・」
「その魔石、どこにあるんだっ!?」
レベッカさんが興奮した様子でセリアさんに食いついた。
セリアさんがレベッカさんに問い詰められて、眼鏡がずり落ち、困惑している。
しかし、その話が本当ならその魔石の中に閉じ込められているのは・・・!!
「お、王宮図書館の研究室ですが・・・」
「よっしゃあ!ヴァネッサ、王宮図書館ってどこだ!?」
「この部屋を出て廊下を右に出て、突き当たりの階段を下りて、渡り廊下を渡ったところにあるわよ」
「よーっし、右だな!!先に行かせてもらうぜ!!待ってろよ、グリゼルダーーーッ!!」
ドドドドドドドドドッ!!(レベッカさんが全速力で廊下を左側の方向に向かって走っていった音)
「・・・右だと言っているのに、左に行ってどうするのだあのバカは」
「あ、相変わらず方向オンチなのね・・・」
「ああ、アイツのバカと方向オンチはもはや不治の病だと思って諦めている」
レベッカさんは方向オンチだったの!?ていうか、右に行けって言われているのに左に行っちゃうとか、もはやそれは方向オンチというレベルでは済まないのではないだろうか。
アイリスさんは「放っておこう。どうせ、私たちの匂いを頼りにすれば後からついてくるだろう。というか、探すのが面倒くさい」と投げやりに言い放ち、ヴァネッサさんも苦笑しつつ、僕たちは王宮図書館に向かうことにした。
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そして、僕たちはヴァネッサ女王の案内で王宮図書館にやってきた。
王宮図書館の中はクラシックな内装で、ドーム状の壮大な空間の壁に敷き詰められた本棚には無数の本が隙間なく収められていて、本の匂いが部屋中に充満していた。どんな本がここに収められているのかと思うとすごく胸がドキドキする。
「ヴァネッサー!!何が右に行けば階段があるって!?どこにも階段なんてねえし、城の中がまるで迷路みたいになっていて迷いまくったぞ!?」
レベッカさんが僕たちの匂いを嗅ぎつけて図書館にやってくると、ほっぺたを膨らませてヴァネッサさんに抗議する。しかし、アイリスさんがため息をついて、じとっとした視線でレベッカさんに近づくと・・・。
スッパーーーン!!(アイリスさんがハリセンでレベッカさんの脳天をひっぱたいた音)
「大バカ者、お前が勝手に間違えて左に行ったから迷っただけだろうが。ヴァネッサには何の責任もない」
「いっでぇぇぇ~~~・・・!!」
どこから取り出したのか分からないが、ハリセンでレベッカさんの頭をひっぱたいた。
「ア、アハハハ・・・300年前と本当に変わらないなぁ、レベッカたちは」
「あの、図書館の中は静かにしないと皆さんにご迷惑をかけてしまいますから、もうその辺にしておきましょうよ。静かにしないとダメですよ」
「確かにそうだな。トーマはいい子だな。私はお前の姉であることを誇りに思うよ」
むにゅうううっ♥(アイリスさんが僕を抱きしめる音)
ううう・・・!!
アイリスさん、そんな豊満でいい匂いがするメロンを僕の顔に押し付けちゃらめぇぇぇっ!!
理性とか色々と吹き飛んでいってしまいそうになるからぁっ!!
「こちらでございます」
セリアさんに案内されて図書館の奥にある研究用スペースに入ると、部屋の中には3メートルはある巨大な六角柱型の緑色の宝石が置かれていた。
その宝石の中に、一人の女性が静かに瞳を閉じて眠っているように見えた。
黒髪のミディアムボブに、猫の耳のようなものが生えている女性だった。
彼女の左の首筋には緑色の【大蛇】の紋章が刻まれていた。
顔の上半分を鬼を模した仮面で隠しており素顔は分からなかったが、忍者を想像させるような黒色の忍び装束を身に纏い、ミニスカートのようになっている上衣からはむっちりとした白くて艶めかしい太ももが露わになっており、程よく肉付きのいいスタイルが抜群な肉体に直接鎖帷子を着込んでおり、鎖帷子ごしでも胸の谷間が目立つほどの豊満なおっぱいを持っていた。
そして、丸みを帯びたお尻からは猫の尻尾のようにも見える黒い毛並みに覆われた尻尾を生やしていた。
「間違いねえ、グリゼルダだ!トーマ、頼むぜ!!」
「は、はい!!」
僕は魔石に両手を触れて、精神を集中させる。
そして、意識がどこかに吸い込まれていくような感じがしたかと思うと、僕の頭の中には無数の緑色の帯が張り巡らされている、右も左も天井も床も全てが緑色に染まった世界が広がっていた。
『・・・ここだ』
緑色の空間を歩いていくと、僕の目の前には緑色の鎖が絡みついている大きな扉が飛び込んできた。
『・・・誰?』
扉の中から、警戒しているような感じの声が聞こえてくる。
『グリゼルダさんですか?初めまして、僕は梶斗真といいます。七人の獣騎士のレベッカさんとアイリスさんに言われて、貴方を迎えに来ました』
『・・・団長とアイリスが私のことを?』
『はい』
『・・・そう・・・私のことなんて忘れていると思っていたのに、まさか本当に迎えに来てくれるなんて・・・あの時私たちがどこにいても必ず見つけ出してやるって言っていたのは・・・嘘ではなかった・・・私のことなんかを本当に探し出してくれるなんて・・・そういうところが本当に・・・妬ましいわ』
妬ましい、と言いつつも彼女はどこか嬉しそうだった。
僕は鎖を手に取って、錠前を外すと掌の上で崩れて消えていった。
そして、扉が静かに開かれた。
『さあ、行きましょう。僕が案内いたします』
『・・・ああ、久しぶりの外の世界・・・まぶしい太陽の光が妬ましい、流れる暖かくて優しい風も妬ましい、そして何よりも私のことなんかを探し続けていてくれた団長とアイリスのことも妬ましい』
扉の奥から、顔の上半分を仮面で隠している忍び装束を着込んだ、猫耳と尻尾が特徴的な美少女が緑色の瞳を向けて、僕の前に姿を見せた。
これが僕と、七人の獣騎士の隠密【グリゼルダ・グレンヴィル】との初対面だった。
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一方、その頃・・・。
「・・・ねえ、梨香。その話ってマジなの・・・?」
隠れるようにして、小声でスマホで会話をしていた桜の表情が見る見る強張り、血の気が引いて真っ青になっていく。電話の向こう側にいる【鬼島梨香】もいつになく険しい表情を浮かべて、低いトーンで話を続ける。その様子を、千鶴が不安そうに見ていた。
『ひっひっひ・・・どうやらマジらしいねぇ。こっちで捕らえた第三王子のアイザックの証言もあるし、王宮魔導師の研究資料の一部が改ざんされた跡も見つかったからねぇ。しかし、さすがにこれはヤバいかもしれないねぇ。第三王子の首をブラオベーレに差し出したとしても、それで片が付くとは思えないからねぇ・・・』
「・・・やってくれたね、あのバカ王子といい、無能な王宮魔導師といいさぁ、どうしてこうも次々とトラブルを起こさないといられないんだろうね?」
『ひっひっひ・・・それでセルマからの命令は次の通りさぁ。まず、ブラオベーレとの手打ちの条件として【雷の勇者・鳳桐人と第三王子アイザックの身柄をブラオベーレに引き渡す】こと、そして、もう一つは【ブラオベーレ】や【七人の獣騎士】に気づかれないうちに【マリブの海域で暴れまわっている例の幽霊船を見つけ出して極秘裏に処分すること】だとねぇ。桜と千鶴には申し訳ないけど、もうちょっと頑張ってもらうことになりそうだねぇ。あたしも引き続き、鳳の行方を追うよぉ・・・何か分かったら連絡をするよ』
そういって、梨香からの連絡が切れた。
「・・・どいつもこいつも!!」
桜は思わず怒鳴って、近くの岩を鉤爪で乱暴に吹き飛ばした。
千鶴は桜の怒りと苛立ちに驚いて、目を見開く。
「さ、桜くん?どうかしたの?鬼島さん、何だって?」
「・・・千鶴、まずいことになった。説明をだいぶ端折るけど、結論から言うと・・・桐ちゃんを捕まえる仕事に、もう一つやらなくちゃいけないことが出来た。それは、このマリブの海域に夜な夜な現れる幽霊船をブラオベーレ王国の騎士団や他の連中に見つかって仕留められる前に、あたしたちで見つけ出して幽霊船の確認したのちに、その幽霊船を・・・処分しろ、だってさ」
「幽霊船って、たしかこの辺りの海域に現れては商船や客船を襲っていると言われているあの幽霊船のこと?でも、どうして今のタイミングでそんなことを言い出したの?」
「あのクロスの第三王子が見事にやらかした。自分のお抱えの王宮魔導師が禁忌の魔法生物を蘇生させる実験の最中に危険な魔法生物の幼生体をうっかり逃がしてしまっただけではなくて、その事実をセルマっちに知られれば自分の監督不行き届きの責任も追及されることを恐れて、報告書の偽造や改ざんに手を貸していたらしい」
「危険な魔法生物を逃がしたって・・・どういうこと?」
「・・・その魔法生物っていうのがさ、大昔に封印された凶暴な魔物でさ、死体や魂を取り込んでゾンビやスケルトンに作り変えて、自分の意のままに操る事が出来るアンデッド系モンスターで種族名は【レギオン】っていうんだ」
「レギオン・・・。あれ、ちょっと待って。死体や魂をスケルトンやゾンビに変えて操る事が出来るって、まさか・・・!!」
千鶴も嫌な予感が頭の中をよぎったのか、顔色が悪くなる。
桜は無情にも肩をすくめて、やさぐれた笑みを浮かべて吐き捨てるように言った。
「そう、今度の幽霊船の正体は王宮魔導師が逃がして、第三王子がなかったことにして隠そうとしていた魔法生物【レギオン】の可能性が高いってさ!そのために、桐ちゃんを侍女を使って誘惑させてやる気にさせて、ブラオベーレに乗り込ませるように仕向けたってあのバカ王子が白状したってさ。つまり桐ちゃんもオレたちもバカ王子のやらかしたミスの尻ぬぐいをするために利用されていたってこと」
「そ、そんな・・・」
第三王子アイザック。
何という愚かで浅はかで、救いようのない下等な人間なのだろうか。
アイザックに対する憎悪、怒り、殺意、そして狂気。
負の感情と激情が混じり合い、恐ろしいほどに冷たい眼光を放ち、感情を一切感じさせない機械的な無表情に豹変した桜が深く息を吸って、吐きだした。
「・・・これで十分に気合が入ったよ。桐ちゃんのことを何が何でも絶対に見つけ出す。そして、必ず見つけ出して・・・要望通りブラオベーレ王国にその首を差し出してやる」
そして、桜は思わず空気が凍り付きそうなほどの冷たく低い声で言った。
「・・・もし抵抗するようなら・・・オレの手で・・・絶対に”殺ス”」
グリゼルダは一見素直ではないけど、口では何だかんだキツいことを言いつつもトーマのことを甲斐甲斐しう可愛がり、世話を焼き、一人前の男性として鍛え上げるツンデレ系のお姉ちゃんキャラとして出してみましたがいかがでしたか?彼女の口癖でもある【妬ましい】は彼女なりの賞賛や褒め言葉として使われています。次回はグリゼルダとレベッカたちの再会、そして斗真を交えての対話シーンを描きます。
グリゼルダが復活して盛り上がっている半面、桜たち勇者軍は第三王子アイザックの新たなる不祥事を聞かされてついに桜の怒りが爆発しました。今度の騒ぎを引き起こした桐人も、元凶であるアイザックもまとめて片付けるつもりでいます。絶対に事を穏便で済ますつもりはありません。ちなみにアイザックはクロス王国軍によってとらえられて、国王からの沙汰を待たされている状態です。
次回もよろしくお願いいたします!!ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!




