第二十六話「地下霊廟の戦い!②~ヴィナグラート魔城攻略戦⑳~」
いつも大変お世話になっております。
長らく執筆が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
【斗真視点】
「・・・梶、これを受け取ってくれ」
高森くんが懐から取り出したのは、小さなプラスチックのケース・・・メモリースティックに似ているものだった。
「・・・これは?」
「それには、これまでお主が戦ってきた魔神八傑衆との戦闘データを全て記録しておる。お主たちが所有している魔砲列車に組み込まれている大型魔法兵器にこのデータを読み込ませることで、松本がクロスに張っている結界を破壊することが出来るようになる。松本も、ワシがこのようなものを作っていることには気づいていないはずじゃ」
もし、そんなものを持っていると知れば、松本は確実に自分のことを排除して、データを破棄するはずだからと高森くんは言った。
魔砲列車に組み込まれている魔導キャノン(僕が命名した。ネーミングセンスに関しては質問は受け付けません)にこのデータを組み込むことで、マギ・エンジンで生み出す魔力の質を変化させて、松本の魔力を無効化し、破壊することが出来るエネルギーを生み出すことが出来るという。
「ワシらが修学旅行の時に、この世界に召喚されて間もなく、ワシはクロスの国王と神官、そして松本たちとの会話を偶然聞いてしまった。クロスは元々、この世界を自分たちが支配するために、魔王が世界を支配しようとしているなどというでっちあげて、ワシらを利用していたのじゃ」
「それじゃ、最初から松本たちはこんな計画を考えていたって言うのか!?」
「ああ。じゃが、雁野はお主を倒すことしか興味がないし、鳳や雨野では実力が不足していて、この計画を成功させることは難しい。さらに、幕ノ内だけがこの事実を知らされていなかった。松本が幕ノ内こそが真の勇者のスキルを持っている能力者であることをなぜか見抜いていて、それを利用して、自分の野望を果たそうとしていたのじゃ」
「・・・仲間を人質にされて、桜は半ば無理矢理計画に加担させられていたわけだけど、それも松本が最初から仕組んでいたって言うのか」
「・・・そもそも、桜の仲間である和田たちを利用しようと言い出したのは他でもない松本だった。この時、幕ノ内も自分たちの陣営に咥えていれば、この計画はもっと早く順調に進んでいたのだろうが、松本はあえて幕ノ内の勇者としての真の実力を引き出すために、幕ノ内を裏切り、仲間たちを魔物に変えて始末した」
仲間たちを失い、これ以上のない絶望を味合わせることによって、桜がこの世界の全てを憎むように仕向けることで、怒りで桜が勇者としての真の力を引き出せるように仕掛けた。しかし、桜は僕たちの仲間になった。
松本の思惑は失敗したかと思った。
「・・・しかし、それは松本にとっては些細な誤算でしかない。なぜなら、松本はこの世界の全てを無に還そうとしておる。ワシらやお主たちを倒した後に、自分も含めてすべての世界を滅ぼそうとしていた。魔神八傑衆を利用したのは、元々この世界を崩壊させるために準備をしていた計画を前倒しにしただけに過ぎん」
「・・・桜が松本達を裏切ったとしても、魔神の力を使って僕たちを倒してしまえばいいって思ったわけだね?」
「ああ、さらに邪眼王たちを利用して、自分の手駒として操り、世界中で争いを引き起こそうとしていた。しかし、それは自分がこの世界を滅ぼす計画を誰にも悟らせない様に隠すためのカムフラージュでしかない。松本はこの世界に召喚された時から、ずっとこの世界を滅ぼそうとしていたのじゃ」
全てのものは終わりを迎えることによって完成される。
世界中の人間、魔物を一人残らず滅ぼし、世界を終わらせることが彼女にとっては世界から争いをなくす英雄的行為なのだ。
あれ?
でもおかしくないか?
どうして、高森くんが魔砲列車のことを知っているんだろうか?
だってあれは、僕たちが設計図を大浦くんから手に入れて開発したものだ。
しかし、魔砲列車をさらに強化させるアイテムを高森くんが持っているということは・・・。
「・・・高森くん?」
僕は湧き上がるどす黒い感情を必死に抑えて、努めて平静を保ったままで高森くんに話しかける。
もし、僕のこの考えが正解なら・・・。
「梶よ、ワシの顔面になぜ思い切り指をめり込ませてくるのじゃ、さっきから頭蓋骨がミシミシミシと変な音を立てて、激痛が来てアダダダダダダダダッ!?」
「た~かも~りくぅ~ん?まさか、魔砲列車の設計図を僕たちにわざと発見させて開発させて、自分が魔砲列車のパワーアップアイテムを作っていることを松本さんに気づかれないために、カムフラージュとして利用していたとか言わないよねぇ?」
メキメキメキ、と骨がきしむ音が聞こえてくるような気がするけど気にしない。
もしここで高森くんが「はい」か「イエス」と言ったら、その瞬間、高森くんの頭はモザイクがかかった無残な状態になることだろう。
「し、仕方がなかろう!手元に魔導兵器の設計図があっても、ワシにはそれを作る技術も知識もないのじゃからな!!大浦は魔砲列車を起動させるためのマギ・エンジンを設計、開発することは出来たが、そのエンジンの能力を支えることが出来る魔導兵器の設計までは出来なかったのじゃから!しかし、お主たちの所にはビビアナ・ブルックスがいた。じゃから、お主たちに託すしか他に方法がなかったのじゃ!」
なるほどね。
高森くんが松本の計画をぶっ壊そうとしていることを彼女に知られるわけには行かない。
そこで、設計図を僕たちに見つかって奪われて利用されたという形にすれば、松本は僕たちの方に意識を向ける。その間、ノーマークになった高森くんが松本の魔力を無効化させるためのプログラムを作り上げて、時が来たら僕たちに渡すつもりだった・・・ということか。
「そのプログラムを完成させるために、必要な戦闘データを取るためにヴィルヘルミーナさんたちを誘拐して、この魔城に誘い込んだってわけか。わざわざ僕たちをバラバラにしたのも、出来る限り多くの戦闘データを手に入れるために」
「さよう。松本の魔力は強大じゃ。松本の魔力に相反する正反対の性質を持つ莫大な量の魔力を生み出すためには、より多くの戦闘データが必要となって来る」
「でも、どうしてそこまで・・・?」
僕たちに協力をするつもりだったら、最初から声をかけてきてくれればこんなややこしいことにはならなかっただろう。
「松本からすれば、お主たちがアレを完成させて強力な魔力をクロスにぶっ放すことは、好都合な話じゃからな。あやつは魔力を取り込んで自分の魔力に変換することが出来る。じゃが、ワシが作ったこのプログラムを組み込めば、松本の魔法を無効化させたうえで、クロスの結界を破壊することが出来る。松本は今頃、お主たちがいつ攻め込んでくるのか、首を長くして待っているはずじゃ」
「そ、そんな・・・!!」
「現に松本自身は何もしかけてはこないじゃろう?邪眼王やワシらを差し向けたのは、あくまでも松本がお主たちを苦しめて楽しむゲームに過ぎん。追い詰めているつもりで、実は自分たちの首を絞めていることに気づかないお主たちが最後の最期で絶望を味合わせるためにな」
それじゃ、邪眼王も松本に利用されているだけに過ぎないということか。
それだけじゃない、この世界に召喚されてから起きた様々な事件は全部松本が裏で仕組んでいた。
そして、僕たちが最終兵器として開発していた魔砲列車でさえも、松本の掌の上で踊っているに過ぎなかった。
「・・・ワシの言葉を信じられないかもしれん。じゃが、ワシもこの世界を守らなければならない理由が出来た。そのためなら、ワシは松本の野望を何が何でも阻止しなければならぬ」
そして、高森くんが影から巨大な薙刀を取り出すと、目の前で固まっている巨大な怪物に刃を向ける。
「ジール、お主にも分かってほしかった。ワシはただ、ここを守りたかった。お主たちのことを守りたかった」
そして高森くんが動き出そうとした瞬間。
影が、揺らめく。
何だ?
この違和感は。
物凄く嫌な予感がする。
そして、その予感は目の前で見事的中した。
喉元に向かって飛び込み、薙刀の刃を振り上げる高森くん。
しかし、彼はジールにとどめを刺すことだけに集中していて、気づかなかった。
「高森くん、戻れぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「え」
巨大な肉人形の腕が、時間が止まっているはずの空間で、大きく横に振られて。
グシャッ・・・!!
容赦なく、高森くんの身体を吹き飛ばした。
目の前で、何が起きたのか分からない。
高森くんの小さな身体が地面を何度もバウンドしながら転がっていき、倒れこんだ。
-・・・ジ・・・カン・・・ヲ・・・止メラレルノハ・・・貴方ダケジャ・・・ナインデスヨ?-
眼下に狂気の光が灯り、振り上げた巨大な腕を高森くん目掛けて容赦なく振り下ろした。
地面を殴りつけて、時が停まっている静かな空間全体が揺れるほどの衝撃が伝わる。
僕は高森くんの身体を抱きかかえたまま、ジールを睨みつける。
高森くんは不意打ちを受けたせいで、大量の生命の源が流れ出ていた。
生暖かい感触が服に染み込んで伝わってくる。
-・・・貴方モ、ソコノ魔王モ、ココデ、殺シテヤルヨ!!ソシテ、私ガ、現世ト常世ノ扉ヲ破壊シテ、コノ世界ヲ支配スル神トナルノヨ!!ギャハハハハハハハハ!!-
「・・・ゴホッ!!どうして、ワシの魔法が発動している間は、誰も、動けないはずなのに・・・!」
「・・・もしかすると、高森くんがこの魔法を発動した時、アイツも同じ魔法をわずかに遅れて発動させたんだ。だから、アイツも同じように動くことが出来るようになったんだ」
「・・・ウグッ・・・か・・・身体が・・・重い・・・?」
まずい、高森くんの魔法の効果が切れてきたんだ。しかし、ジールが時間を止める魔法を発動してまだ時間が経っていないから、このままじゃジールだけがこの世界で唯一動き回ることが出来る。
そうなったら、確実になぶり殺しにされる・・・!
『トーマ、我に変われ』
その時、僕の頭の中にオクタヴィアの声が聞こえてきた。
その声には冷たい怒りと憎悪が込められていた。
『・・・お前が死んだら我も死ぬ。この世界を破滅に導こうなどと愚かな真似をする連中を倒すまでは、何が何でも死ねない。ましてや、この世とあの世の境目を破壊して、自らが王となってこの世界を支配するだと?もはや見苦しさを通り越して、目障りじゃ!』
そして、僕に意識を無理矢理押し込めて、僕の身体の外に彼女の意識が表面化していく不思議な感覚に襲われた。意識が闇の中に吸い込まれていくような感覚、僕の代わりに最凶最悪の魔王【オクタヴィア】が再び現れていく・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【三人称視点】
「死人の分際で、現世と常世の均衡を乱すとは、随分と大きな口を叩いたものよ」
斗真の口調が変わり、声のトーンが低めの女性の声に変わっていく。
ゆらりと起き上がると、着ていたシャツを脱ぎ捨てて、女性の身体つきへと変化した身体に黒い紋章が刺青のように浮かび上がっていく。身体中から虹色に光輝く炎が噴き出し、髪の毛が腰まで長く伸びてオーロラを彷彿させるようなグラデーションがかかっていく。
虚無を司る魔王のの中でも最高位に君臨する伝説の魔王。
七つの大罪を司る魔王たちを従える、八人目の魔王。
虚無のオクタヴィア。
斗真の身体を使って、再び現世にその姿を現した。
彼女の身体の周りに赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色の七つの炎が浮かび上がって、そのうちの赤色の炎に触れると、反転した世界を明るく照らすほどの激しく燃え上がる炎を纏った大剣が現れた。
ーキ、キサマ・・・!?ー
「頭が高いぞ。控えろ、下郎が!!」
オクタヴィアが吼えると、大剣を振り上げて巨大な火炎をジール目掛けて放った。ジールがとっさに無数の人形で作り出した壁で塞ぐが、炎は人形たちを飲み込み、灰も残さないまでに激しく燃え上がる。人形たちの怨嗟に満ちた声に対して、耳障りだという不快な態度をあらわにする。
時が止まった反転した世界に、虚無の魔王が放った圧倒的な殺意と怒りに、ジールは思わず呼吸さえできなくなるほどの恐怖に息をのんだ。
「お前と邪眼王、そして異世界からやってきた勇者・・・。お前たちはこの手で確実に殺す。生ぬるい死でお前たちの罪が許されるなどと思うなよ?お前たちには絶対的な虚無の力で、魂も存在も全て蹂躙してくれるわ・・・!」
次回、再び登場したオクタヴィアとジールの決戦を書きます!
松本の目論見を察して、彼女に気づかれない様に裏をかくために行動していた高森の運命は?
次回もどうぞよろしくお願いいたします!




