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第二十三話「火の通路の戦い!②~ヴィナグラート魔城攻略戦⑰~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!新作がやっと完成しましたので、投稿いたします!どうぞよろしくお願いいたします!

 【三人称視点】


 その報せは、高森士郎にとっては最悪の知らせだった。

 斗真たちの行動を水晶玉で監視していた士郎こと【闇の魔神オプスキュリテ】が構える【玉座の間】の扉の前がやけに騒がしくなり、士郎が首をかしげる。


 「・・・梶たちがもうここまでたどり着いた、というわけではなさそうじゃな」


 扉が開き、士郎の前に現れたのは満身創痍で足取りもおぼつかないほどに傷ついた、オークの兵士だった。ヴィルヘルミーナたちの牢屋の監視を任されて、まんまと鍵を盗まれてしまった兵士である。


 「お主、一体何があったのじゃ?大丈夫か!?」


 「・・・オ、オプスキュリテ様、一大事デゴザイマス・・・!!」


 床に膝をついて倒れこみ、息も絶え絶えになりながらも、彼は必死で主に説明をしようとする。口からは血の混じった泡をゴボゴボと吐き出しながらも、力を振り絞って、目をカッと力強く開いた。


 「・・・ム・・・謀反デ・・・ゴザイマス・・・!!」


 「・・・謀反じゃと?」


 一瞬だけ驚いたように目を見開くが、兵士からの説明を聞いていくうちに、士郎はとやり切れないといったように大きくため息をついた。まるでその謀反がいつか起こることを、心のどこかで予想していたかのようだ。


 「・・・そうか、やはりあやつが邪眼一族と繋がっていたのか。邪眼王の闇の力に魅入られてしまったのか・・・」


 「・・・ゴ、ゴ存知ダッタノデスカ!?」


 「・・・ああ、前々から怪しい動きをしている輩の存在にはうすうす気づいておったが、何を企んでいるのか、ワシも手を尽くした。しかし、決定的な証拠が掴めなかったから、糾弾することが叶わなかった」


 士郎は衛兵たちを呼びつけると、しゃがんで傷ついたオークの兵士を気遣うように、柔らかな口調で話しかける。


 「”ラングー”、よくワシに報告をしてくれた。お主の忠義、確かに受け取った。誰か彼を転移魔法で、外の医務室に運んでやってくれ。絶対に死なせてはならぬぞ」


 「・・・ラングー・・・!!オ、オレノ名前ヲ、ゴ存知ナノデスカ・・・?」


 「ワシのために命がけで戦ってくれている部下の名前は全員覚えておるわい。大義である」


 ラングーは感動のあまりに涙を目に浮かばせて、強面な表情をくしゃくしゃに歪ませてオイオイと泣き出した。一兵卒に過ぎない自分の名前をしっかりと主は憶えていてくれたのだ。


 「これより、ワシも動く!あやつが持ち場を離れて動き出したことが何よりの証拠じゃ。ワシは通路を守れと申しつけたはずなのに、なぜ持ち場を離れていたのか・・・邪眼一族からどのような見返りをもらうことになっているのか、問いたださねばなるまい」


 威厳に満ちた口調にわずかに怒りをにじませながらも、士郎は自分たちしか知らないはずの情報が、邪眼一族のごくわずかの者たちが知っているという不自然な状況を怪しんでおり、部下の誰にも気づかれることなく、内通者の存在がいることを突き止めて、その正体が誰なのか、証拠を少しずつ集めていた。そして、決め手となる重要な証拠を手に入れて、内通者が誰か確信した時に、ラングーが内通者が謀反を起こしていることを突き止めたのだ。


 そして彼はその謀反を起こした内通者によって、瀕死の重傷を負ったのだという。


 「・・・あのような”まがいもの”の力に魅入られて、誇りも魂も売り渡すとはな・・・許さん」


 士郎が怨嗟に満ちた呪詛をつぶやくと、彼の背中から巨大な闇の翼がまるで蝙蝠のように大きく広がった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、その頃【風の通路】では・・・。


 「一体どうしたって言うのよ。突然アイツ、慌てたように姿を消すなんて・・・」


 「大方私たちの実力に恐れをなして、逃げ出したんだろうさ。さて、こんな時計台にはもはや用はない。急いで斗真たちの所に行くぞ。おそらく、火の通路が正解のルートだ」


 「どうしてそんなことが分かるのよ」


 「通路に飲み込まれる時に、サクラとユキが火の通路に吸い込まれていくところを目撃していたからな」


 アイリスたちと戦っていたファフナーが、突然慌てたように顔色が真っ青になると、アイリスたちとの戦闘を放棄して突然姿を消したのだ。主の命令を受けて戦っていたはずの彼女が、戦いを放棄してまで退かなくてはならない最悪の事態が起きたらしい。


 そして、アイリスたちもこれ以上風の通路を進んでも城にはたどり着けないことを悟ると、すぐさま引き返して、火の通路にやってきたのだ。アイリスが両足に雷の力を纏うと、雷の速さで移動をすることが出来る。それでも、かなりのタイムロスだ。時間を大幅に無駄にしてしまった。


 「でも、それでもサクラが外れだったら・・・」


 「それならニナ、レベッカやビビアナたちがもし正解のルートを選んでいたらどう思う?あんなバカたちに先を越されるなど、冗談ではないだろう?」


 「前言撤回、この通路が正解だわ」


 「なんでやねん」




 『トーマの下にたどり着くのは、私が一番じゃなきゃ嫌だ!!』




 アイリスとニナの魂と欲望がまるで隠れていない叫びに、オリヴィアが思わずズッコケた。


 そろいもそろって、この傭兵団のメンバーたちは負けず嫌いなのだ。自分たちが誰よりも先に城にたどり着いて、あとからやってきた仲間たちを大いに笑ってやりたい、どや顔で「お前ら、道を間違えたのか!」とマウントを取りたくて仕方がないのだ。チームワークは抜群だが、対抗心がむき出しで常にバチバチの状態なのだ。仲がいいのか、悪いのか、さっぱり分からない。


 「ア・アホや・・・!お前ら、ホンマにアホや・・・!」


 アイリス、ビビアナ、アレクシア、ニナの頭の中はこの時初めて同じことを考えていたことだろう。自分の欲望にとことん忠実な連中である。まあ、もうすでにレベッカが一番乗りで再会を果たしているのだが、そんなこと知る由もない。この段階で、すでにアイリスたちは敗北が確定しているのだ。


 この中でも辛うじてギリギリ常識人の部類に入るであろうオリヴィアは呆れ返ってしまった。


 「バカ(レベッカ)腹黒(アレクシア)宇宙人(ビビアナ)になど先を越されるわけには行かない!!そうだろう、ヘタレ(ニナ)ドケチ(オリヴィア)!!」


 「・・・今何だか、ものすごくバカにされたような気がするけど、まあいいわ。行くわよ、ショタコン(アイリス)!!」


 「・・・ヴィルヘルミーナは【色情魔】っちゅうことかいな。ウチら、こんなんでよく300年以上も付き合うてこられたな」


 こういう危機的状況に置かれても、お互いのことを罵り合いながらも協力して敵を倒していく、彼女たちは仲良し7人組である。仲良しと言ったら仲良しなのだ。


 「・・・まあ、だからこそ、バカ騒ぎするには最高の面子やねんけどな!」


 オリヴィアは、この先で待ち受ける戦いを楽しみにしているかのように、ニィっと不敵に微笑んだ。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 【三人称視点】


 「オラァァァァァァ!!」


 斗真の威勢のいい掛け声と同時に蹴りを放つと、極彩色の光を放ち、20以上の魔法陣から次々と魔法が発動し、容赦なく人形たちに襲いかかっていく。蹴りと同時に放たれた衝撃波が七色の光を帯びて、火炎弾や電撃など様々な魔法に変わって、あっという間に20体以上の人形たちを吹き飛ばしていく。


 「彩虹の戦乙女をナメんじゃねーぞっ!!」


 レベッカが威勢よく吼えると、大剣の刃から勢いよく青色の炎が噴き出した。

 青白く燃え上がる超高熱のを纏ったまま、大剣を構えると、炎が巨大な【狼】のような姿へと変わり、大きく裂けた口を開き、怒りに満ちた咆哮を上げる。


 そして、レベッカの左手の甲に刻まれた【憤怒】を象徴する【狼】の紋章が赤く輝きだし、彼女の瞳にも赤色の炎が宿った。


 「狂瀾怒涛・・・!!炎魔法、憤怒王の劫火(サマエル)!!」


 レベッカの背中から赤く燃え上がる炎の翼が、まるで天使のように大きく広がった。

 大剣から解き放たれた無数の炎の狼が一斉に、人形たちに向かって飛び掛かっていく。

 燃え盛る紅蓮の炎の身体を持つ狼は、人形の頭部を鋭い牙で砕き、爪で引き裂き、近づくものを片っ端から焼き尽くしていく。人形たちは恨みに満ちた叫び声を上げながら塵一つ残さずに燃え尽きていく。


 「チッ・・・!これが、彩虹の戦乙女の団長の実力か!」


 ジールが舌打ちして、さらに人形を召喚する。

 しかし、斗真たちの勢いはとどまることを知らない。闇の中から生み出し続ける人形のにも臆することなく、全力を振り絞って人形たちを撃破していく。


 「つばさ!」


 ワータイガーの姿に変身した光が、翼に襲い掛かろうとしていた人形の頭部に蹴りを放ち、人形を吹き飛ばした。恨みがましい悲鳴を上げながら、人形の頭部が木っ端みじんに砕け散り、眼窩から転がったガラス製の目玉が光たちを睨みつけていたが、すぐさま濁った瞳から光が消えていく。


 「お前、大丈夫なのか!?」


 「・・・大丈夫さ。私は”まだ”死ねないからな」


 つばさがいつものようにクールに微笑んで、指を鳴らして次々と風を起こして人形たちを吹き飛ばしていく。


 「・・・光」


 「何だよ?」


 「・・・絶対に斗真と、仲直り。しろよ?お前も斗真も、もう意地の張り合いは・・・終わりにしよう・・・。お前たちはお互いに思いやっているのに、それが原因でいつまでも素直になれないなんて、もう見ていられないからな・・・」


 その時、つばさが顔中に玉のような汗が噴き出し、幾分か顔色が悪くなっている。

 そして、光はその理由が、彼女の腹部が・・・真っ赤ににじんでいることに気づいた。


 足元には少しずつ大きくなっていく血液が、腹部から零れ落ちていた。


 「・・・お前、やっぱりあの時・・・!!」


 人形の放った凶刃は、つばさの急所を貫いていたのだ。

 身体から噴き出している粒子が少しずつ早く、そして目に見えるようになっていく。


 それはもう、つばさの命が今にも尽きようとしていることを意味していた。


 「・・・まだ死なないさ。お前たちの仲直りをしっかりと見届けなければ・・・死んでも死にきれない。全てが終わるまでは、絶対に私は倒れない!」


 つばさが激痛に歯を食いしばり、さらに風を起こして人形たちを吹き飛ばしていく。

 身体が少しずつ重くなっていき、意識が少しずつ薄れていく。痛みがやがて少しずつ感じなくなってきて、身体の熱が少しずつ冷めていこうとしている。少しだけ寒くなってきた。


 「・・・私に構ってないで、最後まで戦え!!」


 それでも彼女は必死で戦い続ける。


 つばさの覚悟に気圧された光は、再び背を向けて人形たちを光の爪で引き裂き、吹き飛ばしていく。


 「・・・死ぬなよ、つばさ・・・!!」


 「・・・ああ。分かっているさ」


 今にも泣きだしそうな激しい感情を必死で押さえつけるように、光は牙をギリリと噛みしめて、爪が掌に食い込むほどに。震えるほどに握りしめた。


 もう分かっている。


 もうつばさが助からないことも。


 それでも彼女は最後まで戦うことを選んだことも。


 自分には、もうつばさを止めることが出来ないことも・・・。


 「ウオオオオオオオッ!!」


 光の悲しみと怒りに満ちた咆哮が、荒々しく洞窟に響き渡った。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「おい、通路の奥から、何かが近づいてきているぜ!」


 レベッカが足音に気づいて、大声を上げた。


 「この魔力は・・・アイツらだ!!」

 

 そして、通路の奥から飛び出してきたのは・・・巨大な人型魔導兵器【パワードスーツ】だった。巨大な腕を振るって人形を殴り飛ばし、超重量級のパワードスーツを手足のように操るのは、ビビアナ・ブルックスだった。


 「ビビアナ!!」


 「・・・・・・彩虹の戦乙女、騎乗兵【ビビアナ・ブルックス】、参上!」


 「同じく魔術師【アレクシア・アッシュクロフト】、参上しましたわ~」


 「同じく剣術士【ヴィルヘルミーナ・ワイズマン】参上!!」


 ビビアナ、アレクシア、そしてヴィルヘルミーナが戦場に降り立った。


 「ビビ姉!アレクシアさん!!」


 「ミーナ!お前、無事だったのか!!」


 「フッ、ボクの愛するお姫様が必死になって戦っているのに、王子であるこのボクが駆けつけないわけにはいないだろう?サクラに会いたくて、脱獄してきちゃった」


 「・・・お前は本当にもう」


 ヴィルヘルミーナの茶目っ気たっぷりな笑みに、桜は心の奥から安堵した。


 「・・・・・・ダーリン、本来なら今すぐに抱き着いて、ペロペロして、離れていた間に底をつきかけていた”トーマニウム”を吸収したいところなのですが、どうやらそう言うわけにもいかないらしい」


 「ちょっと待って、何その訳の分からない成分は」


 「・・・・・・だから、あとでいっぱい×××して(放送禁止用語)しまくって、私にいっぱい、トーマを堪能させること。それまでは怠け者の節句働きということで頑張るぞい」


 「あらあらまあまあ~、空気を読むことがやっとできるようになったようですわね~。もしここでいきなり盛り始めたら、人形ともどもブッ飛ばしてやろうかと思っていたところですわ~」


 どうやら命の危機は回避できたらしい。


 -アレクシア、無事だったか。-


 「ええ、ユキちゃんもご無事で何よりですわ。・・・さてと、あの吐き気を催すような臭くてたまらないあの霊廟に邪眼王がいるみたいですわね~。早く乗り込んでシバきまくって差し上げますわ」


 「まあ、その前にお相手をしなくてはいけないレディがいらっしゃるみたいだけどねぇ」


 「どいつもこいつも・・・!!」


 ジールが怒りのあまりに歯噛みし、槍をギリリと握りしめた。

頼りになる、仲間たちがついに合流!

そして裏切り者の正体も次回明らかになります!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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