第二十一話「復活④~ヴィナグラート魔城攻略戦⑮~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
この度、100万PVをいただきました!
すごく嬉しいです!これからも頑張ります!!
【桜視点】
梶斗真。
もう二度と会えないかもしれないと、心のどこかで思っていた唯一無二の相棒。
俺にとってはかけがえのない存在となっていた、俺の兄弟分。
彼が俺たちの前にいる。
それだけで、さっきまでの疲労や不安が全て吹き飛び、身体の奥から力が湧き上がってくる。
「さてと、とりあえずこの先にいる、この人形たちを操っているヤツをブッ飛ばせばいいんだよね?」
「ああ、でもかなりの数がいるぜ?」
「リハビリにはちょうどいいさ」
斗真は好戦的な笑みを浮かべて、ゴキゴキと拳を鳴らした。
-ケケケッ!!随分と調子に乗ってくれているじゃないか!!-
-我々を全部倒せると本気で思っているのか!?それは不可能さぁっ!!-
-我ら千人部隊に対してお前たちはたった4人ではないか!!4人対1000人なんて、結果は目に見えているだろうがっ!!-
「1000人?あー、それしかいないの?」
斗真が拍子抜けしたように言った。
なんだか期待外れというか、少しだけムカッとしたような表情になると気だるげにため息をついた。その反応に人形たちの怒りが一斉に膨れ上がった。
-コ、コイツ、マジで頭がイカレてやがるぜっ!!-
-4VS1000、どっちが勝つかなんて普通分かるはずだろうが!!ナメるのも大概にしろよ!?-
「うるせえなあ」
斗真の表情から感情が消えて、冷たい瞳で睨みつけた瞬間、彼の全身から息が止まりそうな殺意が部屋中の人形たちに向けて放たれた。俺たちでさえも呼吸が出来なくなりそうな、圧倒的な威圧に言葉を失う。静かに言ったはずなのに、空気をビリビリと震わせるほどの迫力に満ちている。
-ヒッ・・・!?-
「1000人ぐらいじゃ足りねえよ。-俺たちを潰したけりゃ、1000万人連れてこいやっ!!!」
憤怒の形相で放った咆哮。
これを受けて、一気に形成が変わった。
圧倒的に数が多いはずの人形たちが恐怖の表情を浮かべて凍り付いた。たった一言、怒鳴りつけただけで人形たちは殺意を一気にそぎ落とされたようだ。
例え、どれだけ数が多かろうと、強力な武器を持っていようと、一度戦意を失ったらあっという間に負けというものは訪れる。そして、斗真が地面を蹴り飛ばすと目の前にいる人形に向かって右足を振り上げた。
「喧嘩の始まりだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
斗真が吼えると、彼の両脚に虹色のオーロラのような揺らめく光が現れた。
押し寄せてくる大勢の人形目掛けて飛び上がると、思い切り右脚を振り上げた。
「見せてやるぜ、これが俺の・・・とっておきの蹴りだぁぁぁぁぁぁっ!!」
蹴りと同時に無数の魔法陣が浮かび上がり、赤色の魔法陣からは空気を焦がす超高熱の火炎が飛び出し、黄色の魔法陣からは電撃が飛び出し、襲い掛かってきた人形たちを吹き飛ばしていく。火炎や電撃を浴びた人形たちは悲鳴を上げながら真っ黒な炭へと変わっていき、さらに紫色の魔法陣から放たれた毒液を浴びた人形がうめき声を上げながらドロドロに溶けていった。
その魔法陣は、この世界に存在する魔法の属性の全てを生み出すことが出来る魔法陣だった。水色の魔法陣から吹き荒れる吹雪を浴びて氷漬けになっていく人形、銀色の魔法陣から飛び出してきた無数の剣やナイフを食らって全身が切り刻まれていく人形、一度に20体以上の人形が吹き飛ばされていく。
ー全ての属性の魔法を一度に召喚するとはな。トーマ、お前今の魔力、これまでとは比べ物にならないほどに成長しているぞ。-
「ユキ、そんなにすごいのか?」
-ああ、我が昔相手にした高名な魔導師であったとしても、ここまでの技術や魔力は持っていなかった。もしトーマが我と戦っていたとしたら、我は封印される前に、この世から消滅していただろう。今のアイツの魔力は我の力を遥かに超えておる。全く味方でいることがこれほどなまでに心強いが、敵になったらと恩うとゾッとするな。-
かつて大陸を支配した魔獣の頂点に立ったユキでさえも、冷や汗を垂らすほどの実力なのか。
そこまでの強い魔力を持った魔王として転生した斗真が、どこか遠くに離れて行ってしまいそうな気がする。もしかしたら、もう追いつけないほどに遠いところに行ってしまったのかもしれない。
それでも。
「・・・俺はお前の横に並んで、どこまでも一緒に歩いていきたい」
お前がもし自分の力を自分で抑えきれなくなり、苦しんでいるときには、お前の支えになりたい。
どれだけの距離が離れて行ってしまっても、置いて行かれてしまったとしても、俺は絶対にお前のことを諦めない。
大事な家族を失って、どん底に落ちた俺のことを這い上がらせてくれたお前のことを支えるためなら。
どれだけ身体がボロボロになったとしても。
命が尽きることになっても。
「俺はもうお前から離れないって。決めたんだよっ!!命がけでついていくぜ!!」
刀に魔力を込めて、襲い掛かってくる人形を次々と叩き斬っていく。
不思議なことに、恐怖心というものが一切消えていて、身体が自分のものとは思えないほどに軽い。
もし死ぬことになったとしても、お前に看取られていけるのだとしたらそれも本望だ。
もうお前を失いたくない。放したくない!!
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
-我も本気で行くぞ!!-
ユキが両手から強烈な冷気を召喚して、猛烈な吹雪を発生させて、人形たちを飲み込んでいく。
さらに高橋さんが鋭い切れ味の風の刃を放ち、俺たちを取り囲んでいた人形の大軍は残りわずかとなり、人形たちも一歩、また一歩と後ずさりをする。
「・・・斗真、今の俺じゃもうお前のことを支えるには力不足かもしれねえ。でも、お前をもう二度と失いたくねえ。お前の背中は、俺が命を懸けて守り抜く!!」
「・・・分かった。僕の背中は桜に預けるよ。だから、僕にも桜の背中を預けさせて!!僕たち、血よりも濃い絆で結ばれた”兄弟”だろう。強大なら、最後まで一緒じゃないとダメじゃん!!」
どうして、そこまで言ってくれるんだよ。
お前のその優しさが、強さが、身体中にしみわたる。
いつだってそうだ。俺はお前のことを裏切ったのに、お前はどうしてそこまで俺のことを信じられる?
お前がそこまで俺のことを信じてくれているなら。
俺がお前の期待に応えないわけにはいかねぇだろうが。
奥から押し寄せてくる人形の大軍に向かって、斗真が足を構えると同時に、俺が刀を構えて前に突き出す。
「同時に行くよ!!」
「ああ!!」
再び斗真の両脚に虹色の光が揺らめき出し、俺も魔力を刀に込めて、刀の刃全体が黄金色の光をまぶしく合が焼き放つ。刃に竜の紋様が浮かび上がり、俺の身体にも竜の紋様が刺青のように浮かび上がった。
「・・・斗真!!」
「何?」
「・・・俺、お前と一緒なら死んでもいい。お前と一緒にどこまでもついてくぜ!!」
「・・・泣かせるなよ、相棒!!そんなの当たり前じゃん!!」
斗真がいつものようににかっと明るく笑った。
その笑顔だけでいい。その笑顔が何よりも暖かくて、心に響いた。
身体中の血が煮えたぎる、この熱い感覚。
ずっと、俺が追い求めてきた強さ。
誰かを守るために、命を懸けて戦う覚悟。
一歩を踏み出す勇気。
それを教えてくれた、俺の大切な家族たち。
かけがえのない仲間たち。
そして、唯一無二の・・・相棒!!
「全属性!!」
「双竜繚乱!!」
「「虹色の竜の咆哮!!」」
刀から放った黄金の竜が、斗真の蹴りから放たれた炎、吹雪、電撃を纏いながら極彩色の輝きを放つ巨大な竜と化し、大きな口を開きながら無数の人形たちに向かって飛んでいく。人形たちはなすすべもなくが放つ咆哮に吹き飛ばされて、塵一つ残さないまでに消えていく。通路の壁や床を巻き込み、辺り一面を破壊しながら竜は全ての獲物を食い尽くしていき、ついには通路の奥にあった巨大な扉を吹き飛ばした。
「あの先に魔城の入り口がある!!」
「行くぜ!」
俺たちが通路を走り抜けると、そこには地下に建てられたとは思えない、巨大な岩や地層を宮殿のような形に彫り上げて作られた荘厳な宮殿がそびえ立っていた。まさか、地下にこれほどの見事な宮殿があるとは思わなかった。俺たちが足を踏み入れると、燭台の蝋燭に勝手に火がともり、青白い輝きを放ちながら地下を照らしていく。
「あ、あれは一体なんだ!?」
「地下に作られた霊廟だよ。あの霊廟こそがこの世とあの世を結ぶもう一つの扉になっているんだ。魔城はこの扉を隠すためと、扉の存在を外に漏れないために作られたものだったんだ」
そう自分の中の魔王が言っていると、斗真が言った。
「あそこの霊廟の中に、邪眼王がいる。あそこにある死者の世界の力を取り込んで、彼女は魔力を強化させるつもりでいるみたいだけど、実際は松本に騙されているんだ。もうすでに邪眼王は死んでいて、アンデッドとして復活を果たしている。このままじゃ、この世とあの世を結ぶ扉が壊されて、世界が死者で溢れかえってしまう」
—現世が地獄に変わるか。我もさすがにゾッとするな。-
「・・・千鶴のヤツはそこまでして、この世界を破壊したいのか。本当に世界を滅ぼすことが、世界を救うことになると、本気で思っているのか?」
「・・・桜、いまさらそんなことを言っても僕たちには松本さんの考えていることなんて理解できないよ。アイツが本気でこの世界を破壊しようとしているというのは確かだし、そんなことは絶対にさせない。この計画を止めるためには、松本さんも邪眼王も倒すしかないんだ」
斗真の言葉が重く胸にのしかかる。
どうしてそんな狂気じみた妄想にとり憑かれてしまったのか、千鶴の思い描いているこの世界の救済が、俺たちにとっては受け入れることが到底できないものである以上、千鶴を止めるということは、千鶴をこの手で始末するしかない。
仁美たちを魔物に改造して、死に至らしめた憎い仇。
しかし俺の心の中には憎しみよりも、決して救われることのない千鶴の運命に、俺はやり切れない思いを抱いていた。
次回、邪眼王が待ち受ける地下霊廟にカチコミます!!
斗真たちの殴り込みにご期待ください!!




