第二十話「復活”相棒”③~ヴィナグラート魔城攻略戦⑭~」
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【桜視点】
炎をイメージさせる真っ赤に塗られた壁、風を受けるたびに揺れる燭台の炎、地獄の果てまで続いているのではないかと思ってしまうような長い長い通路をひたすら歩き続けていく。
一歩、また一歩進むたびに、不思議と魔力の濃度が濃くなっていくのが分かる。
間違いない、これが当たりの通路だ。
俺は確証はないが、直感でこの【火の通路】が魔城に繋がる正解の道だと確信する。
「この先から強い魔力を感じる。高橋さん、覚悟はいいかい?」
「私ならいつでも大丈夫さ。風の魔神の力を伊達に植え付けられているわけではない」
-我も問題はない。-
不気味なのは、ここに来るまでに一人も衛兵の姿がなかったことだ。
ゾンビやスケルトン、アンデッドの類も一人もいない。まるで俺たちを奥までやってくるのを、誰かが待ち受けているような気がする。罠である可能性もあるが、もう後には引けない。進むしかない。
やがて、目の前に大きな扉が見えてきた。
豪奢な装飾が施されている分厚い鉄の扉、これがこの通路のゴールだろうか。
俺たちは意を決して扉に手をかけると、鈍い音を立てて、扉が静かに開いていく。
ギギギ・・・。
扉を開き、お互いの背中を合わせるようにして身構える。灯りのついてない部屋の中は真っ暗で、どれほど広いのか、中に誰がいるのか、全く分からない状態だ。
部屋の中に入り、辺りを見回していると扉が急に閉まった。
「ちっ、やっぱり罠か!」
そして、どこからか不気味な笑い声が聞こえてきた。
風に乗って流れてくる笑い声は、俺たちを嘲り笑っているような耳障りな笑い声だ。しかも、どんどん増えてくる。そして、俺たちの周りの壁から一斉に大勢の殺気を感じた。
その瞬間、俺は高橋さんを抱き上げたまま、その場を跳んだ。
「高橋さん、風でバリアを張るんだ!!」
「あ、ああ!!」
高橋さんが風を操り、俺たちの周りに緑色の光を放つ風の障壁が出来ると、一斉に無数の光の矢が俺たちに向かって飛んできた。風の障壁に遮られて、光の矢は弾かれていく。
-ケケケ!!せっかく殺してやろうと思ったのに、しぶといガキだねぇ!!-
-お前たちはここで死ぬんだよっ!!アタシたちの玩具として、なぶり殺しにしてあげる!!-
-ギャハハハハハハハハハハ!!死ね!死ね!!-
部屋のランプに灯りがつき、俺たちの周りには無数の人形が取り囲んでいた。数えきれないおびただしい数の人形たちはギョロギョロと大きく飛び出しそうな目玉で睨みつけて、手にはミニチュアの剣や弓、斧、槍などの武器を持っていた。頭が割れているもの、首の骨が折れてしまっているものもあったが、人形たちは不気味な笑い声を上げながらじりじりと迫ってくる。
「・・・こういうのって、人形を操っている人形遣いを倒せば一気に片が付くんだろうね」
「そう簡単に姿は見せてはくれないだろうさ」
ーそれなら、まずは邪魔なコイツらから始末してしまうか。-
ユキが目を青く光らせて、手に強烈な冷気を召喚する。
そして、それを勢いよく祓うと冷気が強烈な吹雪と化して人形たちを飲み込んでいく。
-お前たち雑魚に構っているヒマはない!ー
冷気を浴びて、人形たちが不気味な悲鳴を上げながら氷漬けになって地面に落ちていく。
しかし、奥からぞろぞろと武器を持った人形たちがまるで虫の群れのように現れると、一斉に襲い掛かってきた!冷気を浴びてもなお、他の人形たちを盾にして冷気を防ぎ、襲い掛かってくる人形もいた。
「ちっ、数が多すぎる!!」
「物量作戦かよ!!」
それなら、道を切り開いて無理矢理でも通り抜けるだけだ!
「竜刀一閃・・・鳳凰の型!!」
黄金の輝きを放つ竜の力を刃に込めて、渦に変えて前に向かって放つ。
光の渦が巨大な翼を持つ鳳凰の形に変わると、人形たちを飲み込みながら縦横無尽に飛翔し、人形たちが炎に包まれていった。
しかし、部屋の奥からは再び人形の大軍がぞろぞろと群がって出てくる。まるで俺たちを弄んでいるみたいだ。どこかに俺たちの様子をうかがって、人形を操っている親玉がいるはずだ。
そいつをまずは見つけ出さないと・・・!!
「幕ノ内、後ろだ!!」
高橋さんが叫んだ瞬間、俺のすぐ近くまで鋭いナイフを振り上げて飛び掛かってきた人形が目に飛び込んできた。すぐさま斬り落とそうとするが、俺の腕にはいつの間にか数体の人形がくっついていて、必死で刀を振らせまいとしている。
-サクラ!!-
「ちっ・・・!!」
ーヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!勇者の首、とったぁぁぁぁぁぁっ!!-
ヤバい・・・!!
俺の首筋に鋭いナイフの刃が突き立てられようとした。
-ギャハッ!?-
その時だ。
人形が不気味な声を上げて、地面を数回バウンドしながら壁に向かって吹き飛ばされていった。
人形は首の骨が折れて、壁に思い切り叩きつけられて完全に沈黙した。
俺のすぐそばにあったのは、まっすぐに足を伸ばして、一人の人物が立っていた。
「何、人の相棒にちょっかい仕掛けてくれてンだ、殺すよ?」
その声。
俺は一瞬耳を疑った。
もう二度と聞くことは叶わないと、一時は諦めてしまっていた声。
もう二度と会えないと、心のどこかで覚悟を決めていたはずの存在。
目頭が熱くなる。
頬を伝って、熱いものが流れ落ちていく。
嘘だ。
お前ともう一度こうして会える時が、やってくるなんて。
黒髪のウルフカットヘアーをなびかせて、ヤツは俺に向かって振り向いて・・・今にも泣きだしそうな顔で無理矢理微笑んでいた。
「・・・桜、間に合ってよかった・・・!!」
「・・・斗真?本当に、斗真なのか・・・!?」
「・・・うん!!」
目の前で心臓を撃ち抜かれて死んだはずの相棒。
魔王に身体を乗っ取られて、もう二度と会えないかもしれないという覚悟もしていたけど。
もう一度、絶対に取り戻したいと願っていた斗真が、目の前にいる・・・!!
「・・・斗真・・・!!」
-トーマ・・・!!間違いない、この魔力は、トーマのものだ・・・!!-
ユキも驚きのあまりに目を見開き、ぽろぽろと涙を美しくこぼしていた。
高橋さんも普段のクールな表情が崩れて、目に大粒の涙が浮かび、身体を震わせている。
「・・・つばさ、ユキちゃん、心配かけて本当に・・・ごめん!」
「斗真!!」
-トーマァァァッ!!-
ユキと俺は斗真に抱き着いて、アイツの胸に顔を埋めて、溜まっていた感情を全てぶちまけるように泣き出していた。ユキも涙を流して、子供のようにワンワンと赤い顔で泣き、しゃくりあげている。
バカ野郎、勝手にいなくなるんじゃねえよ。
お前がいなくなったら、そう思うだけで胸が締め付けられて苦しくて、どうしようもなかったんだぞ。
お前が俺のことをよみがえらせてくれたのに。
お前に何の恩返しも出来ないまま、勝手にいなくなるんじゃねえよ。
そう言いたいのに。
言葉が出てこないよ。
会えてうれしいよ。
会いたかったんだ、ずっとずっとずっと!!
胸からは確かにトクン、トクンと生命の鼓動が聞こえる。
生きている。
斗真が生きて、ここにいる!!
ー魔族に生まれ変わって復活したのだな。全く、お前はつくづく面白いヤツだ。ただの人間が魔王に生まれ変わって復活を果たすとはな。-
「・・・ごめんね、ユキちゃん。ずっとみんなに心配かけちゃって」
「斗真・・・この・・・バカ野郎!!バカッ、バカッ・・・!!」
高橋さんがポカポカと斗真の頭を小突く。
そして、斗真に抱き着いてボロボロと涙を流した。斗真はそんな高橋さんの髪の毛を優しく撫でて慰めている。
-しかし、お前は魔王に身体を乗っ取られていたのではないのか?-
「・・・アイリスの下手な歌が城中に流れていてね、それを聞いてオクタヴィアが意識を保てなくなったから、僕の意識が外に出ることが出来たんだ。まあ、それでオクタヴィアと意識を交換する方法を思いついたんだけどね」
あ、あの悪魔の歌を聴いたせいで、結果的には斗真が戻ってきたってことになるのか。
何とも複雑な気分になるけど、まあ、戻ってこれたなら良しとしよう。
「この通路が魔城に繋がる正解のルートだって、オクタヴィアが言っている。魔力の気配を辿ってきたら、この先にある地下からヴェロニカの魔力が異常なまでに上昇しているらしい。きっとこの先で、ヴェロニカは自分自身をパワーアップさせているんだと思う」
「でも、ヴェロニカは何をやらかすつもりなんだ?」
「オクタヴィアの話によると、この魔城を中心に土地一帯に流れているあの世のエネルギーを自身の身体に取り込んで、不死の魔物に生まれ変わろうとしているらしいんだ。そして、魔城を破壊して、王家の墓で見たあのあの世とこの世を繋ぐ扉を開いて、死者の世界に作り変えようとしている」
-バカな!?そんなことをすれば、世界そのものが滅んでしまうぞ!?そんなことを本気で望んでいるというのか!?-
「松本の狂気にあてられて、世界を支配できるなら、例え死者の世界にだろうともう関係ないのかもしれない。自分自身がこの世に存在する全ての存在を超越する不死の存在になるために、アイツは自分の肉体も魂も全て捧げてしまったんだ。アイツはもう死んでいる」
斗真の話を聞いて、俺たちは言葉を失った。
まさか、邪眼王がもうすでに死んでいたなんて。
しかも、俺たちがゴールド・リヴァーで見かけたときには、アイツはもう死んでいたという。
千鶴に従うアンデッドとして復活を果たしていたというのだ。絶大な魔力を手に入れた反面、彼女は千鶴に従順な奴隷となった。悪魔に魂を売り渡したのだ。
ー邪眼王がすでに勇者に殺されていたとはな!-
「正確に言うと、ヴェロニカは世界を手に入れるために自分の命を松本に捧げて、その見返りとしてアンデッドの肉体と魔力を手に入れたんだ。アイツはもうヴェロニカでも何でもない。ただの操り人形さ」
哀れなもんだな。
そこまでして、結局最後は千鶴の操り人形か。
虚しさと、やり場のない怒りが胸の奥から込み上がってきた。
主人公、ついに復活!
桜と合流を果たし、次回も大暴れいたします!!
そしてヴェロニカが千鶴に魂を売り渡し、不死のアンデッドと化していたことが判明。
ヴェロニカとの決戦も間近に控えてきたので、これからも一生懸命書いていこうと思います!




